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「伊藤若冲 アナザーワールド」(後期)

千葉市美術館で開催中の
「伊藤若冲 アナザーワールド」展(後期)に行って来ました。



連日夜遅くまでW杯観戦。それに加えここ数日立て続けに外せない楽しい〜飲み会が。昨夜も結局帰宅したのが午前1時前。W杯で声を嗄らし酒焼けのダブルパンチで別人のようなハスキーボイスに。今日会った人にも開口一番「どうしたの?その声」と白眼視。

久しぶりの土曜休み。家でおとなしくしていようかな〜何てつゆ思わず。想いは「アナザーワールド」へ。既に2回ほど足を運びましたが関東では初お披露目となる「象と鯨図屏風」をまだ拝見していません。迷うことなく京葉道路を一路千葉市へ。

「伊藤若冲 アナザーワールド」前期
辻惟雄氏講演会「伊藤若冲の魅力」


伊藤若冲「象と鯨図屏風」1795年
MIHO MUSEUM所蔵

北陸地方のとある旧家から発見されたという衝撃のニュースが飛び込んできたのが2008年12月20日のこと。その後、MIHO MUSEUMの所蔵となり修復を受けた後、昨年「若冲ワンダーランド」展にて初めて一般公開。観たい観たいと思っていた念願やっと今日叶いました。

これまでもこの屏風(またもう一対あるそっくりの作品)についてあれこれ書いてきました。

「ゾウとクジラ」が観たい。
発見!若冲の屏風絵「象と鯨図屏風」
若冲ワンダーランド講演会「若冲画の魅力」

想像、妄想だけが脳内で肥大化。こんな場合大抵実物を目にしても「何だ意外とたいしたことないじゃん」と複製芸術時代の悪弊が出るもの。しかし「象鯨図屏風」の持つアウラは半端なものじゃありませんでした。「おぉ!」と低重音の利いた酒焼けボイスでまず第一声。

そこからは腕組みしただひたすら作品を観入るのみ。不思議だったのは視点が定まらないこと。特に鯨図の方は「観よう」としても視線が作品中を彷徨。上手く焦点を合わせることが出来ませんでした。

千葉市美術館の展示の良さは展示ケースの奥行きが無い為、作品をとても間近で拝見出来る点にあります。引きで焦点定まらないならいっそ最前列へ行き食らい付くしかありません。すると鯨の身体は真っ黒のベタ塗りではなく「たらし込み」が大胆に使われていることが分かります。

蓮の葉の上で雨水ころころ転がしているかのようにしか見えない、ほとばしる浪しぶきがとってもキュート。元気溌剌と潮を吹いているにも関わらずもしかして浦や湾に迷い込んでしまった座礁鯨なのかもと、少しだけ不安な気持ちにも。

右隻の象は鯨とは打って変わり「安定感」感じさせます。

こちらは様々な物語を想像することが可能。充血しているようにも見える象の目。ラーメンにのってる味付け玉子のような耳。何故かギザギザな上唇?ー鼻。鯨図の水流と同じ形態のくるりとした鼻先。等など枚挙に暇がありません。

右端の画面を斜めに横切る線。そして象のおしりを軽くタッチする芍薬。これだけの要素(どれも謎めいている)が整えば、「物語」は幾らでも生れるはず。

因みに福岡伸一先生は…

福岡伸一「『エレファントム』は、ワトソンが死ぬ間際に書いた一種のファンタジーですけど、そのなかで、行方不明になった一頭のゾウを探していたら、海岸沿いで見つけた。そこでゾウは、じっと海を見つめている。ふと、海を見ると、そこには大きなクジラが泳いでいる。それを見たワトソンは、ゾウとクジラが会話していると直感した。」(『ソトコト』憂国呆談より)

今年2月に福岡伸一先生が『動的平衡』を上梓されすぐさま拝読。何とそこにはこの「象と鯨図屏風」の図版が掲載されているではないですか!(思わずTwitterでつぶやいてしまいました。)

二日酔い(三日酔い)の頭をしてもこれだけ軽く語れちゃいます。

まさかこの屏風がマージャン部屋の仕切りとして置かれていたなんてね〜嘘のような本当の話です。修復されてキレイになりましたがそれでも何となくタバコ臭いような…

おまけ画像その1

「伊藤若冲 アナザーワールド」静岡県立美術館のチラシ。

さて、「伊藤若冲 アナザーワールド」(後期)の目玉は実は他にあります。これが一番拝見したかった作品。(展覧会始まる前からI学芸員さんから色々とお伺いしていたので)


百合図

完全な若冲スタイルが完成する前の幻の作品。これまでほとんど公開されることの無かった。一部の人のみしか観たことの無かった作品。大変不思議な一枚です。

2種類の百合の花が描かれていますが、手前は彩色が施されているのに対し、後ろの百合はモノクロ。墨で描かれています。若冲は水墨画も彩色画も共に手掛けましたが、この作品のように一枚の絵の中に二つの描き方が同居しているものはまずないかと。

これぞまさしく「パラレルワールド」。東浩紀氏の『クォンタム・ファミリーズ』や「渋谷駅構内図」ほど入り組んではいませんが、それでもどうして色付きとモノクロを一枚の作品内に同居させようとしたのでしょう。

去る、6月5日に千葉市美術館にて開催された辻惟雄先生の講演会で述べていらしたこと思い起こさせます。

辻惟雄先生「村上春樹さんの『1Q84』が大人気で何百万も売れている現象と、若冲人気は必ずしも別ではないと思う。どちらも現実と非現実を彷徨っているような不思議なシュールな感じがする。それでいて結構楽しませるところがある。そういう意味でのアナロジーというものが両者には共通してあるように思える。

そうか、そうすると、手前の色付きの百合はパラレルワールドに迷い込んでしまった「青豆」なのか!そして実はもうひとつ「色付き」がいます。右下の小鳥。すると小鳥は「天吾」!!どうりで天吾小鳥の視線が真っ直ぐ青豆百合を見つめ、見守っているわけです。


↑クリックで拡大。
左:「隠元豆・玉蜀黍図」。中央「百合図」。右「牡丹・百合図

関連性のある作品全て出揃っています。比較するにはもってこい。こんな機会もうこれから先ないかもね。(あるとしても2016年に開催されるかもしれない若冲の展覧会を待つことに)


玉蜀黍図(隠元豆・玉蜀黍図)」
和歌山・草堂寺禅寺


百合図(牡丹・百合図)」
京都・慈照寺

そうそう、「牡丹・百合図」はこちらの記事で以前ご紹介した通り、2007年に日産ブルーバードシルフィのCMで使用されていました。さり気なく。





しかし、終わり間際の展覧会に行くと知人に会う会う。もうびっくりするくらい。今日だけで5人も。しかも後でTwitter見ると同じ時間帯に行かれていたフォロワーさんも数名。

若冲人気オソルベシ。


伊藤若冲 アナザーワールド」展は6月27日(日)までです。

静岡、千葉まで足を運べなかった方も今なら図録手に入ります。
http://www.ccma-net.jp/publication_01.html

千葉市美術館次の展覧会は「MASKS―仮の面(かりのおもて)」2010年7月6日(火)〜8月15日(日)そして8月21日からはいよいよ「田中一村展」がスタートします!


開館15周年記念 特別展「田中一村 新たなる全貌」
会期:2010年8月21日(土)〜9月26日(日)

 田中一村(1908-77)は、栃木に生まれ、千葉市に20年住み、奄美大島へ渡って亜熱帯植物を題材にした日本画を描き、生前それらの作品を公表する機会もなく無名のまま没した画家です。画業一筋の生涯のあり方や作品が没後テレビ番組で紹介されたのをきっかけに全国にブームともいえる現象がおこりましたが、そうした人気の一方で作品に関する基礎的な研究が広く行われないままにありました。
  本展は、一村ゆかりの地にある美術館が共同で本格的に取り組む初めての回顧展で、近年の調査成果をもとに、新たに発見された資料を多数含む約250点の出品作品により、画家としての実像を改めて見直す大規模な展観となります。


おまけ画像その2

「百花若冲繚乱」金刀比羅宮
2010年3月19日〜6月13日

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2170

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狩野 博幸
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 780
(2010-05-25)

若冲のアナザーワールド、水墨画の世界に浸る

伊藤若冲(1716-1800)のブームが継続中です。京都国立博物館での「没後200年 若冲展」展で、一般にも広くその名を知られる存在となり、その後も展覧会の開催、画集の刊行が続いています。もはや一過性のブームではなく日本絵画の大スターとしての地位を確立したようです。
《動植綵絵》(宮内庁三の丸尚蔵館)のような華麗な着色の作品だけが若冲の世界ではありません。若冲は晩年にいたるまで多くの水墨の作品を残しました。もしかしたら水墨画のほうが若冲の個性であるかたちの面白さは際立つかもしれません。
本展覧会は、若冲の水墨の作品を中心に、関連する着色の作品をも含めて構成します。加えて、河村若芝・鶴亭らの黄檗絵画の作品によってその水墨表現の前史を示し、若冲水墨画の世界に迫ります。前期(5月22日〜6月6日)後期(6月8日〜6月27日)合わせて165点を展示する予定です。
首都圏での若冲の大規模な展覧会は昭和46年(1971)に開催された東京国立博物館での特別展観以来、約40年ぶりとなります。若冲のアナザーワールド、水墨画の世界をご堪能下さい。
展覧会 | permalink | comments(9) | trackbacks(6)

この記事に対するコメント

最後の金曜の夕方に行きましたら、大変空いていて、しっかり見ることができました。8時まで開いているのは有り難い。

まず「アナザーワールド」というタイトルがいいですね。学芸員の方が、若冲は極彩色の作品ばかりが取り上げられるが、京博の展覧会を見て、水墨画の方がずっと比率が高く、ぜひ、水墨画の展覧会を開きたいと思ったとの趣旨が図録に書かれています。

若冲に影響を与えた画家の紹介から始まるのが、新鮮でした。確かに似た作品もあるのですが、それによって余計若冲の異能ぶりが際だちます。
構図の妙、筆遣いの勢い、大らか・ユーモアが漂う画面の雰囲気、どれをとっても、まったく異次元の世界です。

takさんのご指摘通り、ウィンドウの奥行きが狭いので、肉眼でも大変よく見えます。
mihoミュージアムで見たときよりも、黒鯨・白像のタッチがずっとよく観察できました。軸物も、他の博物館のように高いところから掛けていないので、上方までもよく見え、腰を落とすと、下部まで、目の真ん前で見ることが可能です。
いつも思うことですが、同じ作品でも会場によってまったく見え方が異なるのが、おもしろいですね。
blue moment | 2010/06/27 11:50 AM
@blue momentさん
こんにちは。

ここの美術館は毎月一度しか休館日がなく
しかも金曜だけでなく土曜も8時まで開館してます。
市立美術館とは思えません。

学芸員さんも沢山いらして
それぞれの展覧会もいつも濃いものとなっています。

次の「仮面」そして「田中一村」など
今から楽しみな展覧会のオンパレード。

>若冲に影響を与えた画家の紹介から始まるのが、新鮮でした。確かに似た作品もあるのですが、それによって余計若冲の異能ぶりが際だちます。

ですね。仰る通り。
この構成はとても良かったと思います。
Tak管理人 | 2010/06/27 4:06 PM
こんばんは。
本日、最後の最後に行ってきました。

象は何度目であってもじーっと見てて見飽きないですね。

行方不明になってるもうひとつの象と鯨にもいつかお目にかかりたいものです。

辻先生の講演、まだ拝聴する機会を逸しているので次回こそはと目論んでおります。
あおひー | 2010/06/27 8:54 PM
〆までも楽しい展覧会が多い美術館でしたが、あまり混まず、企画された方々が寂しかったのではと思っていましたが、今回は大入りですね。
⊂櫃鳩漾江戸時代にどこで飾ったのでしょう?額縁に入った象もありましたが、象のいる二つの絵は胡粉が重くてとても巻けなかったのでは?
2崢察次次爾鮓ながら、祇園祭の鉾車のゴブラン織りの絨毯を連想しました。
とおりすがりその | 2010/06/27 10:28 PM
こんばんは。
村上春樹さんの『1Q84』あの本と若冲ですか、なるほど、
村上さんの本はじめて読んで、とりこになってましたから、
そうなんだと、わかったような、不思議な現象ですね。
あの百合はとても気になっていましたので、Takさんの
説明とても面白いです。
田中一村さん千葉に来るのですか、2004年横浜そごうで、
観て以来です。たのしみです。
すぴか | 2010/06/27 11:21 PM
田中一村、ついにカラー版のチラシが出ましたね。
楽しみだなぁ〜
一村雨 | 2010/06/28 6:06 AM
@あおひーさん
こんばんは。

ですね〜象のあの前脚とかどうなっているのでしょう。
考え出すと眠れなくなってしまいます。

辻惟雄先生の講演いつも大人気です。
基本同じ話がベースなのですが
常に新しい視点や解釈が加わっている。
ご立派です。ほんと。

@とおりすがりその,気
こんばんは。

おなじような名前で失礼な輩が横行していますので
ハンドルネームは控えた方がよろしいかと思います。

さて、仰る通り、千葉市美術館ではあり得ない人の
多さでしたね!駐車場入れるのも出すのも大変でした。

どこに飾ったかわ存じ上げません。残念ながら。
ゴブラン織りの絨毯とはまたイメージ豊か。
素晴らしいですねー

@すぴかさん
こんばんは。

百合図が今回のナンバー1でしょう。
ずーとあの絵の前に立って見入っていました。
ほんと不思議な空間ですよね。
実験的にせよどうしてあんな絵を描こうと思ったのか
若冲のその真意が知りたいものです。

田中一村の鮮やかな色の世界
白黒若冲から一転ですね!

@一村雨さん
こんばんは。

カラーチラシ出てました!
これはご一緒しましょう。是非。
Tak管理人 | 2010/06/28 7:02 PM
私は20日に行きました。
小林館長の講演会の整理券もgetしたので
参加してきました。
takさんは、いらしてないのかしら
なんて思っていましたよ〜

講演会は、うわさ通りすごい人でした。
図録の印刷が会期中に間に合うかと
心配されていました。

朝から夕方まで、何度も見たのですが
改めて、takさんのブログを拝見すると
そんな見方があったかー
なんて思ってしまいます。

ますます、若冲の世界にのめり込んでいく〜
どんぐり | 2010/06/28 11:21 PM
@どんぐりさん
こんばんは。

小林館長の講演会の日は
生憎仕事で美術館行くこと叶いませんでした。
土曜日も仕事の日が多いので
行きたい講演会も行けないこと多いです。

最終日前に伺いましたが
図録はまだ十分あったようです。
間に合ったのでしょう。良かった良かった。

若冲歴まだまだ短いので
拝見するたびに新鮮な発見があり
楽しくて仕方ありません!

また、まとめて観られる日ありますように。
Tak管理人 | 2010/07/04 11:10 PM
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今日、有給休暇を取って千葉市美術館で「伊藤若冲 アナザーワールド」を再度観てきました。以前ご紹介したのは前期でしたが、今回は後期の...
伊藤若冲 アナザーワールド 2回目【千葉市美術館】 | 関東近辺の美術館めぐり 〜美術・美景・美味を楽しむブログ〜 | 2010/06/27 12:26 AM
伊藤若冲―アナザーワールドー千葉市美術館に行ってきました。(6/16)        前期は行けなくてやっと後期に、特に14日から公開の《象と鯨図》が観たくて。    東京駅まで中央特快、東京駅から総武線で千葉へ、友人と二人だったので2時間も    ち
先週の土曜日、伊藤若冲アナザーワールドへ再訪してきました。 (関連記事:伊藤若冲アナザーワールド−前期展示−(千葉市美術館)) 6/8からスタートした後期展示。 ...
後期は新発見の「象と鯨図屏風」の関東地方初のお披露目。私はMIHOまで見に行ったので、2回目の出会いである。象の三日月まなこは、いつ見てもかわいい。口の部分が波打ったように太...
伊藤若冲展 後期 千葉市立美術館 | つまずく石も縁の端くれ | 2010/06/28 5:51 AM
 千葉市美の若冲展は大人気。前期については記事を2本書いているが(その1 白と黒、その2 前期水墨画のお気に入り)、もう後期も半ばを過ぎて、お目当ての《鯨と象図屏風》↓も登場している。 これは近年再発見された作品で、すでにMIHO MUSEUMや静岡県立美術館で
静岡美術館へ行ってひと月ほど後の6月中旬
伊藤若冲 アナザーワールド <千葉美術館> | どんぐりのひとりごと | 2010/07/06 11:34 PM