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山下裕二氏講演会「知られざる山種コレクション」

山種美術館で開催された「江戸絵画への視線展」関連講演会・特別鑑賞会:山下裕二氏(明治学院大学教授、山種美術館顧問)「知られざる山種コレクション」を拝聴して来ました。



山下裕二先生 プロフィール
1958年広島県生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院修了。日本美術史研究者、明治学院大学教授、日本美術応援団団長、山種美術館顧問。専門は室町時代の水墨画だが、縄文から現代まで幅広く応援する。主な著書に『室町絵画の残像』『岡本太郎宣言』『日本美術の20世紀』など。赤瀬川原平氏と共に「目本美術応援団」を結成し、独自の活動を展開中。共著に『日本美術応援団』『日本美術観光団』『実業美術館』などがある。


開催中の展覧会に関する講演会は今や当たり前となっていますが、今回山種美術館さんが考え出したのは講演会&ギャラリートーク。閉館後に講演会を開始し、その後参加者のみ山下先生の解説を直接作品を観ながら拝聴できるというとってもお得な企画。

2010年7月24日(土)17:15〜18:45
16:45〜17:15 受付
17:15〜17:55 ロビーにて講演会
18:00〜18:45 展覧会場にて特別鑑賞会(山下先生によるギャラリートーク)

山種美術館館長の山崎妙子氏から山下先生のご紹介があり、講演会はスタート。以下、山下先生が講演会でお話なされたこと簡単にご紹介します。

尚、会場内の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。

美術館にとって「顔」は大事。近現代の日本画を主とする山種美術館の「顔」と言えば間違いなく速水御舟。その他にも初代館長山崎種二氏が画家から直接買い求めた良質の作品がこの美術館の核となっていることは、皆さんもご存じの通り。

ところが、実は近現代作品以外にもクオリティの高い江戸絵画が山種美術館に所蔵されていることは、あまり知られていない。

前回の「浮世絵入門」展に出ていた写楽などピカイチ!


図録もオールカラーで今回新たに制作。前回の展覧会「浮世絵入門」と合本。
(これで2000円はお得)


近現代の日本画家たちのパトロンとして邁進した種二だが、そのルーツである琳派の作品をはじめ、戦前に購入したかなりの数の重要な江戸絵画が山種美術館に集積することとなった。

今から約20年前(平成元年2月)にまだ茅場町に山種美術館があった時代に一度だけ「江戸の絵画」と題する展覧会が開催されたのみ。

今回の展覧会を開催するにあたり、改めて作品調査を実施。私自身も驚くことが多々あった。「江戸絵画への視線展」では、これまでほとんど公開されることがなかった江戸絵画を約20ねんぶりに、まとめて公開する。

さて、具体的にどんな作品があるのかスライドを使って見て行きましょう。まずは、琳派から。


俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書)「四季草花下絵和歌短冊帖」17世紀
紙本・金銀泥

「しきくさばなしたえわかたんざくちょう」と読みますが、もっと分かりやすくすればいいのになーといつも思う。例えば「色んな草花を描いた上に和歌を書いた」とか(笑)。

作品の保存状態は一級。全部で18枚の短冊から成るものだけど、今回何とか両端を折り曲げ全て観られるようにしてある。因みに黒っぽくなっているのは元々は銀が塗られていた箇所。

本来なら真っ黒に焼けちゃうのだけど、この作品に関しては銀色がまだ残っているいい感じの焼け具合。今回調査していて「これ欲しいな〜」と思った。

絵師宗達は、短冊という細長いフォーマットを逆手に取り、小さな世界に大きな世界を作り出している。鉈でぶった切ったように思い切り両端を切り落としている。「野蛮なデザイナー」だね。


俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書)「新古今集鹿下絵和歌巻断簡
17世紀前半 紙本・金銀泥彩色 山種美術館蔵
 
元は益田鈍翁(1848-1938、三井財閥を支えた実業家)所蔵の、全長22メートルにおよぶ、鹿の群れが金銀泥で描かれた絵巻物であった。氏の没後(1947年)、「断簡」(切断して軸装したもの)となリ、売却された。最初は二分されたため、後半の部分はシアトル美術館の所蔵品となったが、その後、前半部分はさらに細分化され、複数の所蔵家のもとに散らばった。当館のものはこの絵巻の最初の部分にあたる。

表具がとっても凝っていて美しい。作品自体も観て欲しいけど、是非表具もじっくり観てもらいたい。お金かけてるよこれは。

益田鈍翁が所有していた絵巻の最初の部分だからね。きっと一番高額だったはず。

2009年にサントリー美術館で開催された「美しきアジアの玉手箱―シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展」にシアトル美術館所蔵の絵巻後半部分が公開された。

シアトル美術館では、2007年にデジタル復元を試み、ホームページ上で公開している。

POEM SCROLL with DEER (known as Deer Scroll) was created by two prominent artists: calligrapher Hon’ami Kōetsu and painter Tawaraya Sōtatsu.


伝俵屋宗達「槙楓図」17世紀前半(江戸初期) 山種美術館蔵

保存状態は良くないが、琳派の系譜を考える上で大変重要な作品。と言うのは尾形光琳がこれとそっくり同じ屏風を描いている(重要文化財「槇楓図屏風」藝大美術館蔵)。と言うことは、間違いなく光琳はこの屏風を観ていることになる。

因みに、琳派の4大絵師をそれぞれ刃物に喩えると…

俵屋宗達…鉈(なた)
尾形光琳…柳刃包丁
酒井抱一…カミソリ
鈴木其一…メス


鉈のような宗達の野蛮さがいいんだ。


右:酒井抱一「秋草鶉図」(重要美術品)19世紀前半
左:鈴木其一「四季花鳥図」 19世紀中頃
共に山種美術館蔵

江戸時代には上からあてる照明などなかった。反射光やロウソクの灯で観ていた。今回の展示も照明のプロにお願いしロウソクの灯で観た空間を再現。これからは美術館の照明のあり様も大事になる。

山崎種二が所有する以前、横浜の実業家の原三渓の所有。大正5年に三渓がインドの詩人タゴールにこの屏風を見せたところ、金地に黒々と柿の種の形のしたものを、どんなに「武蔵野の月だ」と説明しても理解してもらえなかったというエピソードを美術史家の矢代幸雄が書き残している。

秋草に鶉を描くのは土佐派が得意としたモチーフ。


左から:
酒井抱一「飛雪白鷺図」「菊小禽図」「秋草図」「月梅図

コレクター・山崎種二の原点は、小僧時代に主人の家で見た酒井抱一の掛軸。抱一による「柿の実」の絵の記憶を心に刻んだ種二は、基本的に、近代日本画を琳派に連なるものとしてとらえていた。

飛雪白鷺図」「菊小禽図」はプライスコレクションや三の丸尚蔵館所蔵の「十二ケ月花鳥図」のうちの2点だと考えられる。

菊小禽図」が9月、「飛雪白鷺図」が11月。この間に存在すべき10月には山崎種二が小僧時代に目にした「柿の実」が描かれたものが。

また「月梅図」を観ると抱一が伊藤若冲を意識していたことが読み取れる。バークコレクションや「動植綵絵」にある若冲が描いた少し不気味なが梅の作品が、抱一の手にかかると瀟洒な作品に変容。


酒井鴬浦「白藤・紅白蓮・夕もみぢ図」(3幅対)
19世紀(江戸後期) 山種美術館蔵

実は今回の調査で作者が変わった作品。

これまでは光甫(1601〜82 本阿弥光悦の養子)の作とされていたが、落款が手描きであることなどや添状から、酒井抱一の養子である酒井鴬浦(さかいおうほ 1808〜41)の作品となった。


岩佐又兵衛「官女観菊図」(重要文化財) 17世紀前半(江戸前期)  
山種美術館蔵

又兵衛の知名度は若冲などに比べるとまだまだ低いが、これから真価が知られていく絵師であることは間違いない。

官女観菊図」に描かれた女性のほつれ毛に注目。又兵衛のほつれ毛に対する執着が感じ取れる。これは見ぬ母(惨殺された母)への幻影が強く影響している。

墨単色の作品と思いきや僅かな朱が唇に。そして金泥が牛車上部に!!

【岩佐又兵衛略歴】
摂津国河辺郡伊丹(現在の兵庫県伊丹市伊丹)の有岡城主荒木村重の子として生まれる。誕生の翌年、村重は織田信長に反逆を企て(有岡城の戦い)、失敗。落城に際して荒木一族はそのほとんどが斬殺されるが、数え年2歳の又兵衛は乳母に救い出され、石山本願寺に保護される。
成人した又兵衛は母方の「岩佐」姓を名乗り、信長の息子織田信雄に近習小姓役として仕えたという。文芸や画業などの諸芸をもって主君に仕える御伽衆のような存在だったと考えられる。信雄が改易後、浪人となった又兵衛は、「勝以」を名乗り、京都で絵師として活動を始めたようだ。
Wikiより




こんな調子で、琳派、やまと絵の解説だけでほぼ時間を使いはたしてしまう熱いトークを展開。その他の作品についてもお話して頂いたのですが、ひとまずここまで。講演会自体もこの後は5倍くらいの速さで一気に最後まで捲し立てるようでしたので。

時間をオーバーしたものの山種美術館さんが機転を利かせてくれ、閉館時間を大幅に延長して下さったおかげで、展覧会自体もゆったりと貸し切り状態で堪能することできました。

こういった企画これからも是非開催してもらいたいです。



尚、ここで紹介された作品は展示替えなしで9月5日まで山種美術館で目にすること出来ます。20年ぶりに開催される「知られざる山種コレクション」江戸絵画の優品。是非お見逃しなく!

また展示室2では速水御舟「名樹散椿(重要文化財)」はじめ、江戸絵画に何らかの影響を受けた近代日本画の名品が公開されています。

開館記念特別展VI
「江戸絵画への視線―岩佐又兵衛《官女観菊図》重要文化財指定記念―」

会場:山種美術館
会期:2010年7月17日(土)〜9月5日(日)
開館時間:10時〜17時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
アクセス:
JR・東京メトロ日比谷線 恵比寿駅より徒歩10分
恵比寿駅前より都バス(学06番 日赤医療センター前行)広尾高校前下車、徒歩1分
渋谷駅東口より都バス(学03番 日赤医療センター前行)東4丁目下車、徒歩2分


日本画の展示期間は保存の関係上短期間。すぐさま次の展覧会が始まります!


開館1周年記念特別展 日本画と洋画のはざまで
2010年9月11日(土)〜11月7日(日)

「日本画と洋画のはざまで」展では、日本画と洋画の作品約75 点を比較展示し、「近代化の中の日本画」「ヨーロッパからの感化」「日本画vs. 洋画」「日本画と洋画の交錯」「劉生と御舟」という5つの視点から、それぞれの作品が「日本画」と「洋画」のはざまで揺れ動くさまを探ります。

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2201

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山種美術館は、近代・現代日本画専門の美術館として親しまれていますが、コレクションの中には江戸期の絵画も多く含まれています。2008年3月に、当館所蔵の岩佐又兵衛《官女観菊図》が重要文化財の指定を受けたことを記念し、これまでほとんど公開される機会のなかった当館所蔵の江戸絵画を、開館記念特別展第6弾としてご紹介いたします。
300年におよぶ泰平の世を謳歌した江戸時代は、それまでの貴族や武士中心に発展してきた日本文化を、一気に庶民のレベルにまで押し広げ、多様性と厚みをもたらしました。当館の江戸絵画コレクションは、数としてはさほど多くはありませんが、うち2点が重要文化財、3点が重要美術品であり、江戸絵画史上、重要な位置を占める画派と画家が揃っています。なかでも、酒井抱一《秋草鶉図》をはじめとする琳派の優品が数多く含まれていることは、注目に値するでしょう。当館創立者・山種二の美術品を蒐集するきっかけが、小僧時代に見た抱一の赤く熟した柿の絵の美しさであったというエピソードからも、彼の抱一への思いの強さが偲ばれます。
本展覧会では、土佐派の伝 土佐光吉、浮世絵の祖と言われた岩佐又兵衛、琳派の俵屋宗達や酒井抱一、狩野派の狩野常信、円山・四条派の伝長沢芦雪、文人画の池大雅、復古やまと絵の冷泉為恭などの作品を通して、江戸絵画の流れをたどります。
講演会 | permalink | comments(5) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント


 とても贅沢な企画ですね。

 ますます、見に行きたくなりました。

 岩佐又兵衛さんの絵は、見たことがないので、特に…。


家麿 | 2010/07/28 1:12 AM
一度、山下裕二先生のお話を聞いてみたいと思いながら、

なかなか機会に恵まれないのが残念です。


今までの見かたとは違った鑑賞ができそうですよね。

はやくそんな機会がきますように☆
リラ | 2010/07/28 8:58 PM
@家麿さん
こんにちは。

東京へ是非!!

@リラさん
こんにちは。

山下先生が企画されている
「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展
これ必見です!

関連企画で講演会もあろうかと。

Tak管理人 | 2010/07/29 4:39 PM
わー!ありがとうございます。来年が楽しみです。江戸東京博物館に行くのも初めて楽しみです。
関西在住ですが、予定しっかり組んで観に行きたいと思います☆
リラ | 2010/07/29 10:58 PM
こんにちは。

ご紹介頂いた、新しい発見、
今まで光甫とされていた
酒井鴬浦「白藤・紅白蓮・夕もみぢ図」(3幅対)
だったともこと。

歴史は今でも動いているんだなぁと。
ありがたいお話です。

落款の場所もいいところに入っている、
お気に入りの3幅です。

動く、聴く、観る、探る、味わうのtakさんならではの
充実記事でございます!!
あべまつ | 2010/07/31 5:38 PM
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山種美術館(渋谷区広尾3-12-36) 講演会「知られざる山種コレクション」 日時:7月24日 17:15〜 講師:山下裕二氏(明治学院大学教授、山種美術館顧問) 山種美術館で開催中の「江戸絵画への視線」展に関連した山下先生の講演会、「知られざる山種コレクション」を