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「ヘンリー・ムア」展

ブリヂストン美術館で開催中の
「ヘンリー・ムア 生命のかたち」展のプレス内覧会にお邪魔して来ました。



人体は、私が最も強い関心を抱いているものだ。しかし、小石や岩、骨、木、草などの自然物を研究することから、形態とリズムの原則を見出した。
(ヘンリー・ムア)

1970年代から1980年代にかけて雨後の筍のごとくあちこちの美術館で「ヘンリー・ムア(ヘンリー・ムーア)展」が開催されました。実際に足を運ばれた方も多いのではないでしょうか?

ヘンリー・ムアは、20世紀に活躍した海外の彫刻家で最も日本人に馴染みの深い芸術家であること異論なかろうかと。

そんな日本人に人気の高いヘンリー・ムアですが、意外や意外2000年以降展覧会らしい展覧会国内で開催されていません。(2004年に彫刻の森美術館で開催された程度)

さて、さて久々に国内で開催されるヘンリ・ムア展を簡単にご紹介。


『ファミリー・グループ』のための習作」1950-51年
石橋財団ブリヂストン美術館所蔵

注:会場内の写真は内覧会時に美術館の許可を得て撮影したものです。

ブリヂストン美術館が所蔵するドローイングと共に6点の立体作品から構成されるテーマ展示「ヘンリー・ムア 生命のかたち」

壮大でモニュメンタルな野外彫刻を展示室に持ってくることは不可能ですが、富山県立近代美術館、東京藝大美術館、福島県立美術館から出展された彫刻作品がブリヂストン美術館の展示室で静かに公開されています。


ふたつのかたちによる横たわる人体:2重円」1976年
富山県立近代美術館所蔵

後方の壁には関連する習作、ドローイング、リトグラフが展示されています。

そう、ここがこの展覧会の最も優れている点ではないでしょうか。約50点から構成されたテーマ展示(小展覧会)でありながら、作品構成が実に見事なのです。

数にモノを言わすような大型展とはそこが大きく違います。昨年拝見したテーマ展示「安井曾太郎の肖像画」でもそうでしたが、ひとつのテーマに対し深く掘り下げ良質な作品で読み解いていく。そんな上品な展覧会をブリヂストン美術館さんは毎回行ってくれます。


右:「母と子:腕」1976-80年
福島県立美術館所蔵
左:「母と子(ルーベンス風)」1979年
ブリヂストン美術館所蔵

2点の彫刻作品の後方には「波を背景にした母と子」の3種類の色違いのリトグラフが掛けられています。普段この3枚だけ展示されていてもそれほど深く見入ることないでしょうが、立体と共にこうして「母と子」というテーマで同時に展示されると、ぐんっと観方が変わるものです。

あまり大きな声では言えませんが「波を背景にした母と子」見てちょっと目頭にあついもの込み上げてきたほどです。「母と子」普遍的なテーマでありながら現代社会に生きる我々が失いかけているヒューマニズム。その大切さをあらためてムアに教えてもらった気がします。

ここ10数年しばらく日本でヘンリー・ムアの展覧会が開催されなかった理由、もしかしたらこんな部分に起因するのかもしれません。「愛はお金で買える」なんて公言して憚らない人が跋扈していたらねぇ。

書き忘れてました。展覧会の構成です。よく考えられてますよね。ほんと。有名美術館の引越し展だけでなく、こうした学芸員さんが努力に努力を重ねて開催に漕ぎ付けた良質な展覧会観られることに幸せ感じます。

第1章 生命(いのち)のかたち
1.横たわる人体
2.母と子
3.座る女のポーズ
4.頭部(ヘルメット・ヘッド)
第2章 ストーンヘンジー有機的なかたち



4.頭部(ヘルメット・ヘッド)展示風景

菅野美術館からお借りした彫刻作品「ヘルメッド・ヘッド」はとにかく必見。ムーアに対するイメージ変わります。(これだけ別室で公開されている理由よーく分かります)

東京都内でヘンリー・ムアの展覧会が開催されるのは、1992年セゾン美術館で開催された「ヘンリー・ムーアー自作と収集品にみる創造の原風景」展以来のこと。しかし毎年のようにそれまで開かれていたムア展がぱたりと無くなってしまったのはどのような理由があるのでしょうか。

「ムアのヒューマニズム溢れる作品がそぐわなくなってきたから」

それも一理あるように思えなくもありません。しかしムアの追求してきたものはそんな一時の時代の風潮に左右されるような薄っぺらなものではないはずです。

得体の知れぬ閉塞感に苛まれている現代日本人が「過去のもの」として置き去りにして来てしまった大事なモノがヘンリー・ムアの作品に宿っているとするなら、今回の「ヘンリー・ムア展」は振り子の揺り戻しのひとつの起点となる大事な大事な展覧会ではないでしょうか。


第2章 ストーンヘンジー有機的なかたち 展示風景
(ここもまた違った意味でガツンとやられました。その作家について、知っているようで知らないこといつも展覧会会場で見せられ驚かされます。)

最後にヘンリー・ムーア(Henry Spencer Moore、1898年7月30日〜1986年8月31日)が、第二次世界大戦後に発言した言葉を図録から引用して終わりにします。

そして、善良な芸術家が生命に答えて反応するのに、刺激や大変動や戦争などは必要ではないのです。結局、太陽は輝き、季節は巡り、男女の関係は続き、形と色は存在し続け、芸術はこうしたずっと変わらず基本的な物事へ応答する人間の表現であります。

「ヘンリー・ムア展」は10月17日までです。


「ヘンリー・ムア 生命のかたち」
2010年 7月31日(土)-2010年10月17日(日)

ブリヂストン美術館

尚、このこの展覧会の他にもブリヂストン美術館ご自慢の常設展示もしっかりたっぷり拝見すること出来ます。17世紀から印象派、そしてポスト印象派、20世紀美術まで余すところなく堪能出来ます。

そしてつい最近ブリヂストン美術館さんが新たに購入したロートレックの貴重な油彩画も特別展示中です!

トゥールーズ=ロートレック「サーカスの舞台裏」1887年頃 油彩・カンヴァス

こうして画像で観ると、刷りもののように見えてしまいますが、実際目の当たりにするとそれはそれは立派な油彩画。画面の凹凸から馬を取り囲む3人のそれぞれの顔つきまで丹念に描き分けられているの確認出来ます。


新収蔵作品トゥールーズ=ロートレック「サーカスの舞台裏」展示風景

次回展もこれまた着眼点がよろしいこと!


セーヌの流れに沿ってー印象派と日本人画家たちの旅
2010年10月30日(土)-2010年12月23日(木)


いつ、伺っても「ハズレ」無しのブリヂストン美術館。逆にいつでも行けるからと、ついつい行きそびれてしまうことも多いのでは?勿体ないですよ〜

東京駅から歩いてスグの場所にこんな美術館がある幸せ。


Twitterやってます。
 @taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2214



JUGEMテーマ:アート・デザイン


ヘンリー・ムアは、20世紀のイギリスを代表する彫刻家です。人間と自然との融和を感じさせる、壮大でモニュメンタルな野外彫刻で有名です。しかし世界的な名声にもかかわらず、ムア自身は田舎の小さな村に住み、石や骨のような拾った自然物から霊感を得ながら制作を続けました。
本展では、彫刻に加えて、パステルや水彩、リトグラフなど40点の紙作品をご紹介いたします。1950年代から彫刻制作のための下絵は希になり、ムアにとって素描や水彩は、次第に独立した作品となっていきました。紙作品においても「横たわる人体」「母と子」という、生涯を通して追求し続けたテーマがご覧頂けますが、謎に満ちた人類の偉大な遺跡である「ストーンヘンジ」の版画19点も見応えのあるものです。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

こんばんは。こちらにも失礼します。

しかしミニ企画だと思ってたかを括っていましたが、
その分非常に密度の濃い好企画でしたね。

しかし今回はムアのストーンヘンジにしびれました。あんなに重みのあるリトグラフ作品を見たのは久しぶりです。

ロートレックも仰るように図版とまるで印象が違いますよね。
モノクロなのに色が輝いていました。
はろるど | 2010/08/19 1:30 AM
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