弐代目・青い日記帳 

  
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「鍋島展」
サントリー美術館で開催中の
「誇り高きデザイン 鍋島」展のプレス内覧会にお邪魔して来ました。


誇り高きデザイン 鍋島
2010年8月11日(水)〜10月11日(月・祝)

焼き物に関して知識も乏しくズブの素人。何をどう拝見したらよいのか未ださっぱり分からないそんな自分でも、「曜変天目」と「鍋島」だけは展覧会が開催されると知ると心昂るものがあります。

※静嘉堂所蔵の曜変天目(稲葉天目)は三菱一号館美術館で8月24日から始まる「三菱が夢見た美術館—岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」展にお出ましに(但し8/24(火)〜9/5(日)期間限定)

妖艶な7色の光を発する曜変天目は元々中国・南宋時代に建窯で焼かれたいわば「舶来品」。それに対し鍋島は佐賀藩が藩の威信(存続)をかけて作り出したもの。

「技」「色」「構図」「主題」どれを取って観ても現代でも十分通用するハイセンスなものばかり。例えばいつも例に出しますが、これなんてAfternoon Teaやお洒落な雑貨屋さんにあっても全く違和感ありません。


薄瑠璃釉染付花文皿
サントリー美術館所蔵
(展示期間9/1〜10/11)

焼き物の展覧会と聞いて「パス!」即断せず是非是非「鍋島展」へ。もうたまらないですよ!そして何より作品を生かす展示構成と定評ある照明(空間作り)でより一層鍋島焼の魅力引き立たせています。

あの、藤原えりみさんをしてこう言わしめるほどですからね。

@erimi_erimi 鍋島展@サントリー美。鍋島を好まない方もいるだろうが、職人技の冴えと斬新なデザインセンスはやはり凄い。一分の隙もない造形と技術への執念。薩摩切子にも通じる職人の心意気と誇り----。まさに「誇り高きデザイン」。

展覧会の構成は以下の通りです。

1.鍋島藩窯の歴史
2.構図の魅力
3.鍋島の色と技
特別展示 十四代 今泉今右衛門作品
4.尺皿と組皿
5.鍋島の主題 四季と吉祥



絽の着物のようなパーテンションがとても涼やかな印象を与えます。

注:会場内の画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

1.鍋島藩窯の歴史

ここでは約20展の作品から約200年の鍋島焼の歴史を概観。まずはじめに驚いたのは展示作品番号1「色絵山水花鳥文大皿(佐賀県重要文化財)」が17世紀前半に作られた中国・景徳鎮のお皿であること。

これには佐賀藩のお家事情が…佐賀・鍋島藩初代藩主勝茂は、関ヶ原の戦いで反徳川に属し敗れながら、家康によって赦されたことが負い目となり、早くから幕府への「献上品」に気を遣っていたそうです。

他大名が入手出来ない中国・景徳鎮をその献上品として利用していた鍋島藩ですが、1640年代以降中国王朝がそれまでの明から清に替わったことにより景徳鎮磁器の入手が困難に。

それなら自前で質の高い焼き物を作ってしまえ!という経緯が「鍋島」誕生の契機になったそうです。

色絵群馬文皿(佐賀県重要文化財)五客」17世紀後半の5客組の小皿。形はしっかりと揃っていますが、絵柄にはバラツキが見られます。初期鍋島作品。

染付枝垂桜文三足大皿」こちらも初期鍋島。1690年代までの鍋島を「初期鍋島」と称するそうです。有田、岩谷川内にあった藩窯を東インド会社の活躍により輸出景気に沸き出すと幕府は鍋島の技術秘密保持のため、より山間部の伊万里、大川内藩窯へ移転させたそうです。


今回の展覧会「誇り高きデザイン 鍋島」担当学芸員の安河内幸絵さん。
図録に「鍋島に関する一問一答」と大変分かりやすくためになる文章を書かれています。図録2000円(しかも会員なら1800円)は超お買い得かと。


我々が「鍋島」と称している大半は伊万里、大川内藩窯へ移転後の1690年以降に焼かれたものを指すそうです。特徴としてはお皿の裏面にも絵柄が施されている点でしょうか。

その後も江戸幕府とは密接な関連性が。8代将軍徳川吉宗による享保の改革時には鍋島も色数が少なくなり落ち着いた雰囲気のものとなります(「色絵輪繋文皿」18世紀中葉)

幕末には色は単色となり染付に!「染付楼閣山水文皿」「染付蝶文皿」19世紀 しかしそこは腐っても?鍋島。形だけはしっかりと最盛期のスタイルを保っています。

そして「1.鍋島藩窯の歴史」の最後にはこれまた大変珍しい青磁の鍋島が展示されています。とりわけ「青磁染付竹文三足大皿」は必見。竹の絵柄が大皿に描かれたまさにレアもの青磁。

青磁と言えば、根津美術館で10月9日より開催される「根津美術館創立70周年記念特別展 南宋の青磁」も楽しみです。

さぁ、「1.鍋島藩窯の歴史」で鍋島の歴史をしっかり学んだ後は、色、デザイン、構図、モチーフどれを取っても魅力たっぷりの鍋島ワールドを思う存分堪能です。

最初の20点でお堅い(でも大切な)鍋島の歴史を辿ってしまうのは全体の構成的に大正解かと。あとはもう自由気ままにお気に入りの鍋島見つけて花から花へ。


染付雲雷文大皿」サントリー美術館所蔵
鍋島は裏面にも絵柄が施されているのがポイント。表と裏ではちがった「顔」に出逢えるのも愉快。

画像奥の展示ケースには「色絵組紐文皿」や「青磁染付水車文皿」と並び鶴やウサギのお皿が…


右:「色絵組紐文皿」17世紀後半〜18世紀前半サントリー美術館蔵
左:「染付月兎文皿」18世紀前半(財)今右衛門古陶磁美術館所蔵

ウサギの胸元の不揃いな毛の一本一本まで精緻に描写。
ちょっとやり過ぎな感もなきにしもあらずですが…

こうした斬新なデザインは寛永、元禄、享保頃、浪華江戸から出版された絵手本や小袖雛形本類に取材していることが指摘されているそうです。それを受け、展示開場には関連性のあるであろう『御ひいな形』をパネル展示してあります。

全然紹介仕切れていません!是非会場で。

「構図の魅力」を十分堪能した後はお次は「鍋島の色と技」

手前:「色絵蒲公英文皿」サントリー美術館所蔵

江戸幕府が秘匿注の秘匿にした鍋島の技がここでは包み隠さず公開されています。何だか見てはいけないものを拝見している気分にさえなります。

色鍋島は、染付の青色に上絵の赤・緑・黄を加えた4色以内で構成します。特に赤絵は、濃淡の使い分けや点描によって紫色から桃色、茶色まで自在に表現することができます。金彩、紫、黒は用いません。
サントリー美術館サイトより引用。

お馴染みとなったサントリー美術館所蔵の関連する名品と共に愛でる鍋島も格別なものがあります。


狩野晴川院養信筆「四季耕作図屏風

そうそう、この章では「墨弾き」の技の解説がなされています。これとても重要。ここで軽く頭に入れておくと階段降りたあとに控えている「特別展示 十四代 今泉今右衛門作品」がより一層輝いて見えます。

「4.尺皿と組皿」ここは鍋島の中でもスター選手が勢ぞろいしているセクションです。まぁ滅多にこれだけあちこちの美術館や個人から借りてくること出来ないでしょう。

他の焼き物と混じって拝見したことあっても、またこうして「鍋島」だけをまとめて見るのでは印象がまるで違うものです。


右から4作品
色絵桃文大皿(重要文化財)」MOA美術館
色絵藤棚文大皿(重要文化財)」九州国立博物館
色絵蕎麦花畑文大皿」(財)田中丸コレクション
色絵唐花文大皿」個人蔵

更にその奥には鳥をあしらった「染付鶺鴒文皿(伊万里市重要文化財)」「色絵鶺鴒文皿 五客」と花を描いた「色絵桜樹文皿 五客」「色絵唐花文向付 二客」組皿が展示されています。このT字部分の展示だけでも観に来る価値ありです。

「5.鍋島の主題 四季と吉祥」出発点がそもそも幕府への献上品。所謂贈り物だった鍋島。他のやきものにはない大きな特徴のひとつが「吉祥文様」をあしらった絵柄が大変多いことだそうです。

自分たちが日常使うものではなく、相手に贈答するもの。吉祥文様が多いのもなるほど合点がいきます。こういった視点を教えて頂けると観ていてホント楽しめると同時に深く観察・鑑賞が可能になります。まさに「何事にも先達はあらまほしきことなり」です。

最後にサントリー美術館学芸員、安河内幸絵氏のおススメは次の2点


色絵宝尽文大皿」(財)林原美術館 9/20まで展示
色絵宝尽文大皿」個人蔵

数多のおめでたい品々が描かれた「宝尽くし皿」の大皿2枚。
色絵宝尽文大皿」個人蔵の方は今回新発見され初お披露目されるもの。同一のデザインを持つ大皿は極めて稀だそうです。

この2枚の大皿の関連性については今後の研究に委ねられるそうですが、まぁ難しいことは抜きにして意匠を再度見て見ると、これでもか〜とおめでたいものが福袋の如く詰め込まれています。

鍋島を見ていて単純に「いいな〜」と感じるのはこうした相手の幸せを願う気持ちが全面に溢れ出ているからなのかもしれません。幸せな気分にさせる焼き物、そう滅多にあるものではありません。(曜変天目は気持ち揺らいじゃいますからね)

「誇り高きデザイン 鍋島」展は10月11日までです。
混雑する前に是非。(と言いつつ何度も通います)


誇り高きデザイン 鍋島
会場: サントリー美術館
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
会期: 2010年8月11日(水)〜10月11日(月・祝)
※会期中、展示替えがあります。
開館時間: 〔日・月・祝〕10:00〜18:00 〔水〜土〕10:00〜20:00
※9月19日(日)、10月10日(日)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日: 火曜日


「鍋島展」や三菱一号館美術館で曜変天目の公開も近付いているのでこちらの本一冊入手し予習してます。「鑑定入門」となっていますが、「鑑賞入門」としてもとても重宝する一冊です。


日本のやきもの鑑定入門

112ページオールカラー。図版もたっぷり取り入れられているので、焼き物素人の自分にもとても分かりやすい仕上がりとなっています。因みに「鍋島」のページは…


江戸時代を代表する輸出磁器に成長した伊万里焼。それを支配していたのが肥前の鍋島藩で、献上品として特製の磁器を作るようになった。
鍋島藩窯は寛永5(1628)年に始まったとする説もあるが、遺品を見ると1680年代の伊万里焼の技術水準と同様のものが認められるので、実質は伊万里市大川内に藩窯を築いた延宝3(1675)年以降のことと推測される。窯は伊万里市の南の外れ、青螺山の山懐に用意し、ここで製作に勤しんだ。明治4(1871)年の廃藩置県まで窯は続き、現在では有田町の今泉今右衛門がその技を受け継いでいる。

日本のやきもの鑑定入門』より引用。

サントリー美術館「鍋島展」のお次はこちら!


「歌麿・写楽の仕掛け人 ―その名は蔦屋重三郎―」
2010年11月3日(水・祝)〜12月19日(日)

歌麿・写楽を育てた名版元、蔦重こと蔦屋重三郎に焦点を当て、蔦重周辺に集った歌麿・写楽・京伝・南畝らの文化・芸術を紹介します。蔦重は〈江戸吉原〉および〈芝居町〉で交友関係を培い、知識を深めましたが、本展では、この二つの地を題材とした作品や、吉原でのネットワークを利用した狂歌絵本、歌麿の美人図、写楽の役者絵などを通して、この〈二大悪所〉をめぐる文化ネットワークについても明らかにしていきます。

【展覧会関連プログラム】に@fukuhenさん登場!

(1) 記念講演会I「蔦屋重三郎という本屋」
講師 : 鈴木俊幸氏(中央大学教授)
日時 : 2010年11月21日(日)14:00〜15:30

(2) 記念講演会II「蔦重は何を仕掛けたのか?」
講師 : 田中優子氏(法政大学教授)
日時 : 2010年12月5日(日)14:00〜15:30

(3) トークライブ「メディア都市 江戸の天才編集者」
講師 : 鈴木芳雄氏(株式会社マガジンハウス ブルータス編集部 エディトリアル コーディネーター)
日時 : 2010年11月19日(金)19:00〜20:30

【関連エントリー】
- サントリー美術館開館記念展I 「日本を祝う」
- 「水と生きる展」
- 「水と生きる」展(後期)
- 開館記念特別展「鳥獣戯画がやってきた!」
- 「BIOMBO/屏風 日本の美」展
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工藤 吉郎
里文出版

鍋島は、江戸時代に佐賀藩から徳川将軍家や諸大名への贈り物として作られた最高級の磁器です。染付を基本として、赤、緑、黄の色絵や青磁釉がおりなす繊細で格調高い世界は、つねに多くの人々を魅了します。堂々とした四季花鳥の皿は、近世磁器の精華ともいうべき鍋島の地位をまさに象徴する作品です。一方、桃・宝尽くしなどの吉祥柄や、壺・糸巻・組みひも・本・水車・ウサギまでも洗練されたモチーフに仕立ててしまう鍋島のデザイン力は、明快かつ斬新な感性にあふれています。
本展は、5件の重要文化財を含む貴重な鍋島作品によって、「技」「色」「構図」「モチーフ」の側面からデザインの魅力をご紹介していきます。また、現代における色鍋島の名門・十四代 今泉今右衛門氏の作品も登場します。正統ながらも新しく、上品ながらも分かりやすい。この夏、展示室でお気に入りの一枚に出会ってくださることを願ってやみません。
| 展覧会 | 23:53 | comments(0) | trackbacks(4) |









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来歴さえあれば、たとえ贋作でも「ほんもの」になる。詐欺師は驚くべき方法で美術史を捏造した。美術界を震憾させた事件を追うドキュメンタリー。レビュー→こちら
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林 綾野
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塩野 七生,藤崎 衛,石鍋 真澄
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野兎の眼
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松本 典子
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Vixen 多機能単眼鏡 マルチモノキュラー4X12 1105
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掌に収まる単眼鏡は、必要なときにサッとポケットなどから取り出して使える便利な、美術館・博物館必須アイテム。
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日本美術のことば案内
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日高 薫
レビュー→こちら
日本美術鑑賞の際に、よく出てくる言葉を満載。絵画、彫刻、工芸品などの具体的な写真をふんだんに使い紹介
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