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木下史青氏に聞く「誕生!中国文明展」のヒミツ

東京国立博物館、平成館にて開催中の
特別展「誕生!中国文明」に行って来ました。


特別展「誕生!中国文明」公式サイト

隣国とはいえ文化の違いにかなり開きのある中国。数年前に開催された「中国国宝展」の際もそうでしたが、目の前にある文物がはるか紀元前から現代まで伝わってきた、超貴重なお宝であること頭では分かっていても、イマイチ感動が込み上げて来ません。

熱心にメモを取り単眼鏡で食い入るようにご覧になられている方がいるにも関わらず、何とも情けない限り。遊行七恵さんのようにお詳しい方とホントはご一緒すれば何十倍も楽しめるはずなのですが、生憎今回は自分ひとり。


王尚恭墓誌 (おうしょうきょうぼし)」
河南博物院蔵

「誕生!中国文明展」の良さ見所、ひとりではまず分からないので、今回は木下史青氏という大変心強い助っ人にお願いすることに。木下氏は、東京国立博物館で美術館・博物館の環境・情報・展示・照明のデザインといった業務を担当されています。

簡単な木下氏のプロフィールをご紹介。

東京国立博物館
事業部 事業企画課 デザイン室長 木下史青(きのした・しせい)


1965年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。東京藝術大学美術学部デザイン科助手、(株)ライティング プランナーズ アソシエーツを経て、現在、独立行政法人国立文化財機構・東京国立博物館デザイン室長。『国宝・平等院展』『プライスコレクション 若冲と江戸絵画展』『国宝 阿修羅展』などの数多くの特別展の展示を手がける。『東京国立博物館 本館日本ギャラリーリニューアル』(2004年)で平成18年度日本デザイン学会年間作品賞を受賞。著書に『博物館に行こう』(岩波書店)、『昭和初期の博物館建築』(共著・東海大学出版会)


(広報用画像)
「誕生!中国文明」“美の誕生”/鎮墓獣(ちんぼじゅう)
河南博物院蔵

折角、照明のプロにお話を伺えるのですから、展示作品に対する照明へのこだわりを中心にお話伺うことに。“木下史青氏に聞く「誕生!中国文明展」のヒミツ”とタイトル付けたのは自分が知らないことだらけだったからです。

それでは早速展覧会会場へ。
まだ行かれていない方(9月5日まで開催しています)既に行かれた方も必見です。

「誕生!中国文明展」は以下の3つのセクションから構成されています。

第1部「王朝の誕生」
第2部「技の誕生」
第3部「美の誕生」



注:展示会場内の画像は主催者の許可を得てしかるべき日に撮影したものです。

まず会場へ一歩足を踏み入れて感じるのは「国宝 阿修羅展」と雰囲気が似ている点。特別展のデザイン担当する会社は4,5社あり展覧会ごとに変わるそうです。今回の「誕生!中国文明展」と「国宝 阿修羅展」はデザインチームが同じなのだそうです。勿論、木下氏も。

同じ東博平成館でも特別展ごとに展覧会会場の「造り」の差異を見比べてみるのも面白いかもしれません。因みに、展覧会によっては木下氏も全くノータッチのものもあるそうです。


“王朝の誕生”/動物紋飾板(どうぶつもんかざりいた)
洛陽博物館蔵

中国最古の王朝といわれる「夏」時代のもの。今回のチラシからあちこちで使われています。美しいトルコ石がモザイク壁画のように嵌め込まれている手の込んだ逸品。

見るもうちょっと、浮かびあがるように見せたかったけど、これはこれで上手くいったと思います。照明はLEDを使用しています。4点から光をあて美しさを引き立てています。アクリル板で留めている5か所はもう少し工夫の余地はありますが。

※このアイコン見るのセリフは木下氏のものです。


白陶か」 伊川県南寨遺跡出土
夏時代・前18〜前17世紀 河南博物院蔵

見るこの時代に白い陶器を作るのだから中国って凄い。信じられないほど。ここは白さが引き立つような照明にしています。紀元前17世紀とかにこれ作ってしまう技術力の凄さをもっともっと上手くお客さんに伝えたいです。

画像A
九鼎(きゅうてい)」
河南省文物考古研究所蔵

見る今回の展覧会ではこの大きな春秋時代の鼎が9客揃って展示されることが、目玉のひとつなのですが、ただ並べるだけでは仕方ないので、会場全体を明るめにし、展示台がふわりと浮かび上がるように見えるように工夫しました。

画像B
九鼎」「八き」「九鬲」「方壺

公式サイトやチラシで「画像A」を目にしても、「東博まで観に行きたい!」と思う方、正直さほどいらっしゃらないはずです。いくら目玉作品でも。でも実際に足を運んでみると、多くの方が携わり如何にして「九鼎」を良く見せようか尽力されているのが分かります。

そして、こうしたちょっと未来的な展示をすることにより、スルーしていまいがちな青銅器作品にも足が止まるのも事実。「画像B」観たら俄然観に行きたくなっちゃいますよね。


編鐘(へんしょう)」葉県文物局蔵

見る明るい展示室から一転し次の作品は照度ぐんと落としてあります。目の前に妖しく『編鐘』が浮かび上がるようにしました。ここでは展示ケース内にLEDを組み込み光源としています。

こうした展示の新たな取り組みは現在改装中の東洋館の新しい展示のヒントになるそうです。成功も失敗も含めて。

それともうひとつ面白いお話伺えました。それは…

見るこの『編鐘』の展示ケース実は「長谷川等伯展」の際に『松林図屏風』を展示したものと同じです。言われてみないと分かりませんよね。因みにこのケースはガラスに低反射フィルムを装着しているので写り込みが少ないのも特徴です。

なんですって〜〜松林図図屏風が入っていたケースがそのままこうして転用されているのですか!まぁ当り前と言えばそれまでですが、分かりませんよねー普通。「誕生!中国文明展」観に行かれる際は作品も去ることながら展示ケースも要チェックです。


金縷玉衣(きんるぎょくい)」河南博物院蔵

高貴な人物の遺体を玉(ぎょく)の衣で覆うことにより、亡骸を永遠に保てると古代中国人は考えたそうです。玉(ぎょく)に対する思い入れは日本人には理解できない点でもあります。

見る『金縷玉衣』の展示ケースには照明器具は取り付けてありません。ここは天井からのスポットライトで照らしています。カッタースポットというもので、真四角に展示作品の周りに照明があたっています。これも展示品を浮かび上がらせる効果を狙っています。カッタースポットは展覧会会場の案内板などによく用いています。

見る玉(ぎょく)の展示は難しいものがあります。日本人の方に価値をどう上手く伝えるか毎回頭を悩ませます。今回は一般の展示ケースではなく「歴史的展示ケース」に玉を並べてみました。


玉環」「玉璧」「玉製剣装具

見るこの「歴史的展示ケース」は「染付展」や「土偶展」でも用いたものです。博物館で捨てられそうになっていたものに免震や最新の照明を加え甦らせました。明治時代から戦前まで使われていた風格漂う展示ケースです。


玉環」「玉璧」前漢時代
永城市博物館蔵

見る地付いてみるとガラスがないように思えますが、これも低反射フィルムを両面に張り付けてあります。尚、本館2階展示室も順次取り入れ、現在本館2階は低反射フィルム全ての展示ケースに装着済みです。


七層楼閣(しちそうろうかく)」後漢時代
焦作市博物館蔵

見るこの巨大な作品は32個のパーツから出来ています。4点から光ファイバーによる照明をあてています。

高さ180センチもある陶器の建築模型。実際にこの建物は存在したのでしょうか?はたまた空想の世界の産物でしょうか?人物も居たりして妙にリアルに感じてしまいます。それにしても大きい!


アクセサリーが展示されているこちらは個人的にお勧めな場所です。

見る玉(ぎょく)で作られたアクセサリーを美しく見せるために光ファイバーを用いているのは、勿論ですが、ガラスではなくより透明度の高いアクリル板を使用しています。

アクリル板は透明度が高い代わりに細かな傷が付き易く展覧会終了間際には傷だらけだそうです。使いまわしが利きません。

見るまた少々マニアックな話ですが、このセクションの20枚のキャプションは「LED導光板」を用いています。現在東博にあるLED導光板全てフル稼働しています。


「玉虎」「玉製牛形調色器」「玉龍」「玉鳳凰」「玉梟」「玉羊」等
この展覧会動物を取り入れた作品が多いのも特徴のひとつです。

たかがキャプション(解説版)されどキャプション。それらも含めてトータルで開場作りを考えていらっしゃる証。玉(ぎょく)の美しさそして貴さ完璧な展示環境の下思う存分堪能してきて下さい。

まだまだお聞きしたことは山ほどあるのですが、時間と私の能力の限界の都合上この辺まで。でもこれだけでも十分この展覧会の魅力&ヒミツ知ること出来ましたよね。

お忙しい中、普段聞けない貴重なお話色々と教えて頂き有難うございました。

展覧会はまだまだこの先も「仏の世界」や「人と動物の造形」そして書道ファン感涙の「書画の源流」まで続きます。


宝冠如来坐像」唐時代
龍門石窟研究院蔵

立秋も過ぎ暑さもだいぶ落ち着いてきたようです。「オルセー美術館」で疲れてしまった方も東博「誕生!中国文明展」へ是非是非。

最後に木下氏から皆さんへ
見るLED、光ファイバー、スポット、蛍光灯と4種類の照明をフル活用した初めての展覧会です。是非、東博へ足を運んでお気に入りの一点見つけて下さい。

特別展「誕生!中国文明」は9月5日まで開催しています。


特別展「誕生!中国文明」 

会期:2010年7月6日(火)〜9月5日(日)
会場:東京国立博物館 平成館 (東京・上野公園)
主催:東京国立博物館、読売新聞社、大広、中国河南省文物局

誕生!中国文明 (tanjochina) on Twitter

もっともっと木下史青氏について知りたい方は下記リンク先をご覧下さい。

・情熱大陸「木下史青(展示デザイナー)
・コクヨe-THEORiA.comミュージアムレポート「展示デザインが引き出す日本美術の魅力
・丹青社tansei.net「開館以来の大リニューアルで生まれ変わった"日本美術の殿堂"東京国立博物館 平成の大改装」  
・東京国立博物館情報アーカイブ「研究員紹介:木下史青

『東京国立博物館ニュース』第702号に掲載されている【東洋館リニューアルオープンへの道】より
束洋館の耐震補強工事のかたわら、新たな展示ケースの製作も進んでいます。研究員たちの要望を集約した展示ケースは、これまでよりガラスの部分を多くしています。東洋館の展示室は、以前とは違った軽快な印象になることでしょう。
展示ケースのうち、代表的なものの試作品が完成したので、博物館から四名が、確認のため、展示ケースの製作されているドイツを訪問しました。外観や大きさ、扉の開閉しやすさや安定性、施錠の方法、作品の保存環境を守るための調湿剤の収納方法など、時間をかけて調べ、改善してほしい点も指摘しました。

おまけ
ポスター、チラシそしてwebにも登場するヒヨコ君。


ショップで販売中です。

Twitterやってます。
 @taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2217



JUGEMテーマ:アート・デザイン


 2010年夏から東京国立博物館を皮切りに九州国立博物館、奈良国立博物館の国立三博物館で、中国の河南省[かなんしょう]で出土した名品により、中国文明の誕生と発展のあとを振り返る特別展「誕生!中国文明」を開催します。
 河南省は、中国大陸を西から東へ流れる黄河の流域に位置する中国王朝発祥の地です。かつては幻とされ、近年中国最初の王朝であったとする説が有力となっている夏[か]の中心地は、河南省にありました。以後、商[しょう](殷[いん])、東周[とうしゅう]、後漢[ごかん]、魏[ぎ](三国時代)、西晋[せいしん]、北魏[ほくぎ]、北宋[ほくそう]などの王朝が河南省に都を置きました。夏が始まった紀元前2000年ごろから北宋が滅亡した12世紀ごろまで、河南省は中国の政治、経済、文化の中心地として栄えました。王朝、工芸技術、文字(漢字)など、中国文明を特徴づけるさまざま要素が、この河南省で生まれ、発展したのです。


展覧会 | permalink | comments(5) | trackbacks(5)

この記事に対するコメント

昨日、この展覧会を見に行きました。
展示法については全く意識してなかったのですが、
そういえば小さい展示品などで近づいてみる時、
見やすかったのが印象的でした。
見せ方で一番印象的だったのは編鐘でした。
違う角度での見方で展覧会を思い出すことができました
ありがとうございました。
yapa | 2010/08/13 7:17 AM
九鼎八キの部屋はたしかに鼎が浮かび上がるようで、
展示の周りをぐるぐるまわってしまいました。
ライティングのひみつを知るとまた見たくなりますね。
このところ関係者のお話を伺えるような記事が多くて、
こちらのブログますます楽しみにしています。
よめこ(nest_design) | 2010/08/13 8:25 AM
こんにちは
この展覧会はまた来週に再訪しますが、Takさんと木下さんの「!!」なヤリトリのおかげで、ますます楽しみになってます。
すごく嬉しいナビゲーションのおかげで、これからご覧になられる方も楽しみが増すのは確実ですね!
どの照明がどれ、というのを念頭においてイザ再訪!のわたしです。
遊行七恵 | 2010/08/13 12:57 PM
こんばんは。この美しい展示も木下さんのお力があってからこそなのでしょうね。
低反射フィルムやファイバーなど、素人には分からない仕掛けなども本当に勉強になりました。

近いうちに再訪問する予定です!また予習しに参りますね!
はろるど | 2010/08/19 1:12 AM
はじめてコメントさせていただきます。
「誕生!中国文明」の担当研究員です。
この展覧会のヒミツや新しい見所について、「青い日記帳」で紹介してくださり、ありがとうございました!
私も「誕生!中国文明」や東博所蔵の中国考古モノに、より親しんでもらえるよう、最近ツイッターを始めました。http://twitter.com/tantokenkyuin

「誕生!中国文明」HPからもアクセスできます。
http://tanjochina.jp/main/news/tokyo/28121301.html

まだまだ不慣れですが、それでも担当研究員の視線で気づいたことを日々つぶやいています。
キャプションには書ききれなかった作品の魅力やヒミツに、もっともっと迫ることができるよう、奮闘中ですので、あわせてチェックしていただければ幸いです。
担当研究員 | 2010/08/22 9:36 PM
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