青い日記帳 

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「コレクションを未来へ」

根津美術館で開催中の
新創記念特別展 第8部「コレクションを未来へ 根津嘉一郎蒐集品と寄贈作品」展のプレス内覧会にお邪魔して来ました。



昨年2009年10月7日に新生・根津美術館としてオープンして以来これまで7回に渡り開催してきたコレクション展も今回の第8部でいよいよ最後を迎えます。

根津美術館の所蔵品は、初代根津嘉一郎(1860〜1940)が蒐集した数多の作品を軸に、多くの方から寄贈された作品を加えて成り立っています。私立の美術館ではこれは稀有なこと。

もしも、ご自身で蒐集した重文級作品を寄贈するとしたら一般的には国公立の博物館・美術館へと考えるはず。ところが次にあげる篤志の方々は、私立の根津美術館へご自慢のコレクションを寄贈。


左:初代根津嘉一郎 以下順不動:茂木克己、植村和堂、山本正之、卯里欽侍、秋山順一、小林中、福島静子、吉澤義則

今回の展覧会では寄贈者ごとに展示がなされているのが大きな特徴としてあげられます。

中でも希少な作品を含む室町時代の水墨画を中心とした150件にも及ぶコレクションを1981年に根津美術館へ寄贈された小林中氏。

初期伊万里に鍋島さらに柿右衛門や染錦手、青磁釉作品など系統的にまとまった肥前陶磁666件を寄贈された山本正之氏。

他の博物館・美術館が羨むような優品を「根津さんのところへ」と迷いなく寄贈された方々。「あそこの美術館ならきっと大丈夫」という思いがあるからこそ。

そう思わせる最も大きな要因はやはり初代根津嘉一郎の日本美術を愛する心に行き着くのでしょう。それを最も顕著に表すのがこちらの作品にまつわるエピソード。


重要文化財「花白河蒔絵硯箱」室町時代
初代根津嘉一郎蒐集

注:展示会場内の様子は内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。

明治39年(1906)の売立(オークション)にて当時最高額で初代根津嘉一郎が落札した記念碑的な作品。

その当時の公務員の月給が10円以下だった時代、何と16,500円もの高額で落札。これにより根津嘉一郎は収集家として一躍注目を集めることになったのです。

花白河蒔絵硯箱」の後方には国宝「無量義経・観普賢経」平安時代が鎮座しています。この二つのお経元々セットであったものがいつしか離れ離れとなり別の所有者へ。そして数百年の時を経て根津嘉一郎の手により根津美術館にて再会を果たしたそうです。


無量義経」「観普賢経」それぞれ同じ文言を写した箇所があるそうで、そこを見比べてみると筆跡が完全に一致。同じ人の手によるものと分かります。

離れ離れになってしまった親子、または恋人が時を隔てて再会を果たす。文才に乏しい自分でも擬人化し物語でも書けそうなほど、とてもドラマチックな作品でもあります。

この他に国宝はもう一点「根本百一羯磨」奈良時代に書写された全10巻のうちの1巻。他1巻は白鶴美術館、そして残りの8巻は何と正倉院に!!

円山応挙「藤花図屏風」江戸時代
初代根津嘉一郎蒐集

建て替える前の根津美術館で拝見した作品の中で最も大きな衝撃を受けたのがこの「藤花図」薄墨でほぼ重なりなく描かれた藤の幹・枝。「自由闊達」という言葉はこの屏風の為に存在していると言っても過言ではありません。

それに対し、西洋の厚塗り油彩画の如き藤の花の描写。

一見、アンバランスに思えますが画面の中でこれしかない!という程絶妙のバランスで成立しています。更に左右隻単独で観ていた目を少し広げ共に観ると…これだけ余白があるにも関わらず圧倒的な存在感と重量感を観る者に与えます。


円山応挙「藤花図屏風」江戸時代
初代根津嘉一郎蒐集

手前の単独ケースには「花白河蒔絵硯箱」が。この下手な写真でもお分かりになる程、照明の効果が最大限に生かされています。以前はもっと白っぽく見えた記憶があったのですが、新装・根津美術館ではどっぷりとした金地に軽やかに藤の枝が軽やかに舞っているようです。

今回の展覧会では展示室1〜6まで全て初代根津嘉一郎と寄贈者の方からの優品で埋め尽くされています。展示室5には近年、卯里欽侍氏より寄贈を受けたちょっと珍しい作品も。

そしてお茶室が誂えてある展示室6は野々村仁清「色絵武蔵野茶碗」を中心に「月見の茶」と銘打ち秋山順一氏寄贈作品を含め、しっとりとした空間美が演出されています。


勿論、第4室の「双羊尊」はじめとする古代中国の青銅器の数々も見逃せません!

新しくなった根津美術館をご覧になったなら「根津さんのコレクションと一緒に並べて欲しい」という願いと共に寄贈された多くの篤志家の方々も、更にお悦びになられることでしょう。

自分のコレクションがこんな抜群の環境で末永く展示(+大事に保管)されるなんて夢のようですね。展覧会タイトル上手いこと付けたものです。

「コレクションを未来へ 根津嘉一郎蒐集品と寄贈作品」は9月26日までです。

そうそう、こちらもご覧になるのお忘れなく!

根津嘉一郎氏像

中2階の休憩室奥で皆さんのこと見つめていらっしゃいます!



根津美術館次回展

根津美術館創立70周年記念特別展
南宋の青磁 宙(そら)をうつすうつわ

2010年10月9日〜11月14日
本展では、国内の砧青磁を一堂に会し、南宋官窯の名品を加えて、国宝2件、重要文化財7件を含む65件の作品を出品します。青磁の姿と釉色の美しさにふれることができるまたとない展覧会です。


Twitterやってます。
 @taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2228

JUGEMテーマ:アート・デザイン


根津美術館のコレクションは初代根津嘉一郎(1860〜1940)が蒐集した茶道具や仏教美術、そして青銅器が大きな核となっています。これに加えて、折々に、篤志の方々から寄贈された作品は、根津の収集範囲を補うばかりでなく、コレクションにバランスをもたらし、それをいっそう魅力あるものにしてきました。

第1部から第8部にわたる新創記念特別展の締めくくりとして、コレクション形成の過程をテーマに、各ジャンルにわたる初代根津嘉一郎の蒐集品とともに、秋山、小林、植村、茂木、山本など8つの寄贈コレクションから特徴的な作品を展示します。わたしたちには、このすぐれたコレクションを未来へ継承するという大きな使命があるのです。
展覧会 | permalink | comments(2) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

東京にある私立の美術館は、規模も大きく企画展のもしっかりしているのが、流石です。神戸の香雪や白鶴も「えっ!」と驚くようなものを所蔵していますが、企画展もなかなか東京の美術館の様には充実していないのが残念です。キューレーターの力の差でしょうか?財力の違いでしょうか?
新生・根津美術館は、建物も隈研吾さんでとてもいいとらしいですね。
根津、山種、五島、bunkamura、出光、三菱一号館、原、静嘉堂文庫。。。行きたい。。。
licoluise | 2010/08/24 4:18 PM
以前、日曜美術館でこの「藤花図屏風」を見てから
根津美術館に行こう!と思っていました。
もう少し、涼しくなるのを待ちたいのですが
気持がはやります。
takさんの評をみたら、
ますます早く見に行きたくなりました。
どんぐり | 2010/08/25 10:47 PM
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