青い日記帳 

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黒いビーナス

と言っても「腹黒いビーナス」でもなく
「ガングロなビーナス」でもありません。

東京国立博物館で開催中の
ベルリンの至宝展」に展示されている
ボッティチェリのビーナス」のことです。



Sandro Botticelli(1445-1510)
サンドロ・ボッティチェリ「ヴィーナス」(ボーデ博物館所蔵)

この作品を「ベルリンの至宝展」で観て
ちょっと違和感を覚えました。
悪い意味での違和感ではないのですが、
なんとなく変だな・・・って感じを。

誰もがこの「ビーナス」を観てイタリア
フィレンツェのウフィッツィ美術館にある
教科書でもお馴染みの名画「ヴィーナス誕生」を思い浮かべるはずです。

しかし、ウフィッツィの「ビーナス誕生」と比べて観ると…
周りの神様たちは、さておいてビーナスだけに注目見る

一目瞭然比べるまでもなく「背景」の違いが分かります。

劇作家の別役実さんが興味深いことを書かれていたのを思い出しました。
私たちは背景を黒く塗りつぶすことによって、デッサンそのものを「非日常化」したのである。そしてそれは、背景を白く残したデッサンよりも、デッサンそのものとしては、どぎつく、迫力を持つものになったが、そのようにして特殊化された分だけ、広がりを失い、言ってみれば貧しくなったのである。またさらに言えば、背景を白く残したデッサンには、デッサンとしての「日常性」から、そこに石膏像が描かれているという「非日常性」までを連続して保証している何ものかがあった。我々はそれを見ながら、あちらからこちらへ、こちらからあちらへ、ゆるやかに往復してみることができたのである。背景を黒く塗りつぶし、それを特殊な空間に結びつけ「非日常化」することにより、我々はそれを失ったのである。
電信柱のある宇宙
電信柱のある宇宙
まだ作者が学生だったころのエピソードを書いた一節です。
絵を描く時に背景を黒くすると描かれているものが上手に見えると知って
実際にやってみると、まさにその通り!しかし先生にはそれは「いけないこと」
と諭されてしまったと書かれています。

東博・平成館の会場で目にしたたボッティチェリの「ヴィーナス」
それと対面した時に感じた一種の違和感。

「非日常的」なビーナスを背景を黒くすることによって
より一層「非日常性」を高めた作品に対する違和感だったのでしょう。

こんな不思議な体験ができる絵が今、上野に来ています!
(この後は神戸へ巡回します!)
博物館に代わって宣伝させていただきます。

観に行って損なしです!「ベルリンの至宝展

追記:いつもお世話になっている「美術散歩」のとらさんから
「ベルリンの至宝展」のコメントに和辻哲郎の文章の紹介がありました。
快諾を得ましたのでこちらで紹介させていただきます。

ベルリンとフィレンツェのヴィーナスの比較について、和辻哲郎が,1928年3月26日に「フィレンツェ古寺巡礼」のなかで面白いコメントをしています。

ボティチェリの作ではやはり「ヴィナスの誕生」が一番いいと思う。色もわりにあっさりしてゐていゝと思う。しかし実物を見てあっと驚くほどのことはなかった。中央のヴィナスの髪の毛などは、金色で中々美しいし、右側のニンフの白い衣み散らしてある藍色の文様なども中々いゝと思ったが、しかし全体の色調は何となく眠そうな、鈍い調子である。写真で想像してゐた、デリケート過ぎるほど鋭い神経の慄え、と言ったやうなものは、色彩の上では見出すことが出来なかった。
中央のヴィナスと似通った格好をしたヴィナスの絵がベルリンにある。あれは非常に感服してみたものであった。あれを思い出して、こちらの方は、ベルリンの絵のようにボティチェリ式ではない。これは甚だ皮肉な現象であるが、実際、ボティチェリ風の癖はこちらの方が少ないのである。肉体の描き方の非常にデリケートな鋭さというやうなものは、ベルリンの絵の方が強く感じさせる。

その他 | permalink | comments(11) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

「黒いヴィーナス」、ミステリアスな美しさでしたね。
私はヴィーナスとの距離感に、フシギな感覚を覚えました。
ウフィッツィのヴィーナスは華々しい背景の中にいるので
「別の世界の住人」としてただただ見惚れましたが、
こちらのヴィーナスは黒一色の中に立っているがために、
どう対峙していいのかと一瞬戸惑ったのです。
すごく遠くにいるような、でも実は近くにいるような。
この不思議な距離感こそが、高められた非日常なのかも。

ヴィーナスが髪の両脇に垂らしていた、三つ編みも印象的でした。
秋津 | 2005/04/22 1:41 AM
うーちゃんはベルリンに展示しなかった。
しかしきょううーちゃんは、所蔵ー!
また東京国立博物館は観に巡回するはずだったみたい。
しかし東京国立博物館と開催したかったの♪
また神戸で保証したの?
BlogPetの「うーちゃん」 | 2005/04/22 10:53 AM
@秋津さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

距離感に戸惑う。
言われてもっともです。
確かにそうですよね。
体のS字ラインは背景が黒いせいも
あってかはっきりとしていましたが
それ以外はやはりミステリアスな雰囲気が。

これってお金持ちの貴族の部屋に
飾ってあったのですよねーー
贅沢ですね〜
また、変なことで感心してます。

@うーちゃん
こんばんは。

相変わらずだね(~_~)
まぁ何もしゃべらないよりいいか。。。

更に、
コメントに窮するよううなこと
言われても困るし・・・
今のままのうーちゃんで!
Tak管理人 | 2005/04/22 11:25 PM
こんばんは。
こちらには初めてコメントさせていただきます。
「ベルリンの至宝展」の「黒いヴィーナス」は
私はこれまでどの画集や美術事典でも
見たことがありませんでした。
確かイタリアで購入したボッティチェリの画集にも
掲載されてなかったと思います。
背景の色が異なるだけで、
ずいぶんと印象の異なるヴィーナスになりますね。
生まれたばかりのヴィーナスというよりも、
人生の機微をたっぷりと知っている
大人の女性という感じに見えます。
千露 | 2005/04/23 12:25 AM
@千露さん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

ボッティチェリのこのビーナスの画像探すの
結構大変でした。海外のサイトで紹介されていましたが
ほとんど見つかりませんでした。
こういった画像探すのも楽しみのひとつですよね。

ボッティチェリはきらびやかなイメージあるので
この絵のような黒を背景にした、渋い
しまりのある作品を観ると、見え方ずいぶんと
変わってきますね。いろいろ考えるものありました。
Tak管理人 | 2005/04/24 12:08 AM
こんばんは。
TBありがとうございます。
黒いヴィーナスは華やかな「ヴィーナスの誕生」と異なり、
ヴィーナスの細部と対峙している気になります。
髪の毛の一筋一筋の表現はボッティチェリならではだと思いました。
千露 | 2005/07/23 6:58 PM
@千露さん
こんばんは。

ボッティチェリってひと目見てすぐにわかりますよね。
何て言ったらいいのか独特の特徴あります。

それにしても背景の違いでこうも変わってくるものなのですね〜
絵画ってこういう楽しみも出来るんだ!と思いました。
Tak管理人 | 2005/07/23 11:06 PM
初めまして。ちょこぱんと申します。
もうだいぶ前から読み逃げ常連(^^;だったんですが、
ちょこぱんも先日、神戸市立博物館で
「ベルリンの至宝展」を観て参りました。
せっかくなので勇気を出して、
足跡を残させていただきます。
ちょこぱんもボッチェリの「ビーナス」観ましたが、
背景が黒くてビーナスひとりに注目した分、
華やかな「ビーナスの誕生」よりも、
かえって荘厳な印象を受けました。
でも、ちょこぱんのイメージする「美の女神ヴィーナス」
に一番近い雰囲気を持つのは、
フランソワ・ブーシェの「ヴィーナスとアモル」
に描かれたヴィーナスでしたねぇ。
ちょこぱん | 2005/08/20 8:38 AM
@ちょこぱんさん
初めまして、こんばんは。

コメント&TBありがとうございます。
拙いblog見ていただいて感謝感謝です。

「ベルリンの至宝展」今思い返しても
凄い展覧会でした。そうそうたる顔ぶれ。
随所で圧倒された記憶残っています。

「ボッティチェリのビーナス」を観てすぐに
別役さんの書いた文章が頭に浮かんできました。
背景が黒いだけで全く違った印象受けることに
驚いた作品でもありました。

ブーシェの描く女性はとても綺麗ですよね。
ちょっと浮世離れした感じの女性描かせたら
中々右に出る者いないかもしれませんね。

またどうぞいらしてくださいませ。
Tak管理人 | 2005/08/20 9:51 PM
初めまして
Botticelliを調べているうちにたどり着きました
和辻先生の文章は知りませんでした。早速探してみたいと思います。

若冲も好きなので又ゆっくり読ませてもらいますね!!
らっきー | 2006/09/04 12:03 AM
@らっきーさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。
和辻先生の文章は古い本なので
見つかるといいのですが。。。

Tak管理人 | 2006/09/04 10:07 PM
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 本日ちょこぱん、27歳になっちまいました。(あは♪)そんなわけで、今日は誕生日祝いも兼ねて神戸市立博物館で行われている「ベルリンの至宝展」を観に行ってきました。先日のルーヴル美術館より人数は少なかったですねぇ。彫刻も絵もじっくりゆっくりたっぷり時間
ベルリンの至宝展 | BRIGHTER DAYS | 2005/10/13 3:32 PM