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「上村松園展」

東京国立近代美術館で開催中の
「上村松園展」に行って来ました。


上村松園展公式サイト

「女らしい」ことが貴ばれぬ現代に於いて、「美人画」を面と向かって称賛することは、ともすれば「恥ずかしいこと」のように思われてしまう嫌な時代。

景気もろもろ先行き不安で打開策見つからない今。せめて展覧会へ出かけた時くらい心解放し目の前にある「美人画」に男女問わずうっとり心酔してもよいのでは?

「松園作品なら他でも観られるから」なんて考えは甘い甘い。

少々辛口な展覧会評をお書きになられるあの、いづつやさんをして「チラシで‘珠玉の決定版’と謳っているが、このフレーズに偽りなし!学芸員は多くの作品のなかから、1点々時間をかけて検討し、展示の構成を考えたにちがいない。これぞプロの眼力。画集に載っている有名な絵は全部あるのだから、なんとも贅沢な展示である。」と言わしめるのですから観に行かない手はありません。


上村松園「夜長」1907年(明治40)

松園32歳の時の作品。今回の展覧会ではキャプションに作品タイトル、制作年、そしてその絵を描いた時の松園の年齢が記されています。ほぼ年代順に展示され、気を衒うような展示構成は一切排除。ストレートに年代順に松園作品を思う存分堪能してもらおうという主催者の意図が感じ取れます。

これだけ「作品力」のある絵師そうやたらいるわけではありません。

一応展覧会構成載せておきます。

1章 画風の模索、対象へのあたたかな眼差し
2章 情念の表出、方向性の転換へ
3章 円熟と深化
−1 古典に学び、古典を超える
−2 日々のくらし、母と子の情愛
−3 静止した時間(とき)、内面への眼差し



上村松園「清女褰簾之図」1895年(明治28)

三の丸尚蔵館所蔵の「雪月花」の一枚にも同じく『枕草子』の有名な一節を描いた作品があります(「雪月花」の場合視点は外から中へ)そちらは10月5日から17日までの期間限定で展示されます。

簾の先に降り積もった雪をどう表現するかが、この画題のテーマでありますが、松園は簾の節で出来る自然なグリーンの明暗を巧みに使い上手いこと表しています。

尤も本来なら松園作品の大きな見所のひとつである着物の柄に注目すべきなのでしょうが…ついつい清少納言の機転の利いた(他の人からは嫌味とも捉えられる)行為の方へ眼が行ってしまいます。

「美人画+日本古典文学」これ上回るペアは存在しません。まさに最強ペア。チラシに用いられている松園芸術の頂点を極めた作品との呼び声高い「」(9月26日まで出品)もまた『源氏物語』の六条御息所がモデルとなっています。

」久々にまじまじと拝見したけどあの情念は尋常ではありませんね。下衆な話ですが、実際この絵を描く前に松園が想いを寄せていた男性に見事振られたこともやはり関係しているのでしょうか。


上村松園「人形つかい」1910年(明治43)

もうひとつ松園作品の特徴をあげるとすればそれは「余白」。この作品でも人物が描かれているスペースの方が明らかに少なくなっています。

でも「余白」は単なる塗り残しではありません。(セザンヌの余白とも違います)言うなれば「描かずして見せる」その為の余白。

「人形つかい」というタイトルを知っているからこそ、襖の奥に女性たちが注視す耳を傾ける「主役」が居ること分かります。さてどんな装いの人でどんな芸で女性たちを魅了しているのでしょう?気になります。想像力全開で、もしくは透視能力使い襖の奥に居る「人形つかい」を脳内イメージ。

松園35歳の時の作品。今回の展覧会最初に展示されている「四季美人」は僅か17歳で描いたもの。松園は始めから松園であり、時代や女性蔑視に耐えつつ自分の作風を貫き通した、強靭な精神力伺い知ること出来ます。


上村松園「花がたみ」1915年(大正4)

謡曲「花形見(花筐)」から題材を取った作品。

「大衆的な美人画」ばかり描く画家と揶揄され思案に暮れ「婦人の悲哀の情緒を崇高に森巌に現はすには如何したら宜いでせうか」女性の内面、感情表現に重きを置き始めた頃の作品。

その割には表情はまるで能面のようです。しかしそれこそ想いを寄せる男性への気持ちが沸点に到達してしまった先にある、どうにもならない絶望と背中合わせの想いの錯乱の表情。

この絵を描くにあたり精神病院へデッサンしに行ったそうです。

尚、今回の展覧会では貴重なもう二度と観られないであろうデッサンが大量に松伯美術館の協力により出展されています。その中にある「花がたみ」のデッサンを見ると、当初は扇の代わりに花籠を地に落としていたりしたり、かなり前のめりに描かれていることなど本図からは分からない新鮮な発見が多数あります。

「花がたみ」「焔」を描いた後にスランプに陥り作品が描けなくなってしまった松園ですが、数年後に不死鳥の如く甦ります。お得意の「美人画」を引っ提げて。「3章 円熟と深化」ではもう迷うことなく自分の信じるものを素直にそして丁寧に描いていきます。


上村松園「母子」1934年(昭和9)

この絵に描かれている赤ん坊は松園の孫、同じく日本画科の上村淳之。

「花がたみ」や「焔」のように古典に拠らずとも、ましてや激しい情念を描かずとも女性の心情はこうも見事に描けるものかと感心してしまいます。何と心のこもったそして万人受けする作品でしょう。


上村松園「夕暮」1941年(昭和16)

夕暮れの明かりを求め障子の外へ手を出し針の穴へ糸を通さんとする女性。これもまた母親の姿を描いたものでしょう。

今の若い子「夜なべ」なんて言葉知ってるかな〜
母は偉大なり。親孝行出来る時にしておかなくちゃ!と思わせる一枚。

そしてこの自然な動作の一瞬を切り取ったような作風も松園の真骨頂。歌舞伎を観に行っても芝居半分。残りは所作をデッサンしていたそうです。動きの中に見せるほんのわずかな一瞬を描いた作品他にも沢山あります。

冷凍したような冷たさは全くないのが、心のある人間を描こうとした松園だからこそ。

今日の一枚」はこれにします。


上村松園「鴛鴦髷」1935年(昭和10)

松園作品の魅力もう一点。

この作品でも分かる通りズバリ「うなじ」の美しさ。
複数の女性を描いた作品でも必ず一人はうなじを大胆にフューチャーした人物が混じっています。

しっかりと男性目線も理解した上で描いていたのでしょう。
もうメロメロです。参りました。

「上村松園展」は10月17日までです。
今回の展覧会逃すともう観られない作品ある?!
迷わず行くべし!

↓「序の舞」は9月28日から出品

上村松園展」Uemura Shoen

会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー

会期:2010年9月7日(火)〜10月17日(日)
会期中、一部の作品を展示替えあり。
 前期:9月7日〜9月26日
 後期:9月28日〜10月17日

開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)





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http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2249

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京都に生まれ育った上村松園は、若くしてその頭角を現し、文部省美術展覧会(通称文展)など各種展覧会を舞台に気品あふれる人物画を次々と生み出しました。
その作品には単なる女性美ばかりでなく、画中の人物のさまざまな感情のひだが、市井の人々の営み、歴史や物語、謡曲などの題材にのせて表わされています。松園は近世初期風俗画や浮世絵など人物表現の伝統の厚みを受け止める一方で、対象の内面や精神性の表現が追求された近代という時代と向き合い、自分ならではの人物画を模索したのです。
本展覧会では、松園の画業を大きく3期に分け、代表作約100点によって創作の軌跡をたどるとともに、その本質を改めて探ります。
展覧会 | permalink | comments(7) | trackbacks(7)

この記事に対するコメント

明日都内に出るのですが、松園さんはすきでかなり作品も
見てるのでパスするつもりでした・・・が、

>今回の展覧会逃すともう観られない作品あります。
が、気になるのですが・・・その作品の題名は公表できないのですか?
行けばわかるのでしょうか?

くだらない質問かもしれませんが、すごく気になります。
| 2010/09/14 12:26 AM
チケット、入手済みです〜。
頑張って、前後期行くつもり!

そして今回もTakさんのブログを読んで、
勉強してから行きま〜す(^^)v
emicy | 2010/09/14 12:33 AM
前売りでチケットは購入してあるのでよく読まずに安心してたら、作品入れかえがあるのですね…
最近の美術展ってそーゆーことしれくれますよね… そういう精神…好きじゃないです…

焔は見たい作品の一つだったので26日までに必ず行かなくちゃ…

珠希 | 2010/09/14 9:27 AM
早く観たいですー☆。京都に来るのが待ち遠しい。

初めて、数十年前!?姫路での松園展で

「焔」「花がたみ」を観てただ美しいだけでない狂気なまで

の美に魅せられすっかり上村松園にはまってしまいました。

それと毎回松園展で楽しみにしてるのが「待月」♪大好きです。
リラ | 2010/09/14 8:01 PM
今回を逃すと、もう観れなくなってしまう作品も
あるのですね。
かなり混み合うんだろうな〜。
コンドル | 2010/09/14 8:10 PM
代表作がほぼ揃った素晴らしい展覧会で、会場を出るのが惜しい気持になりました。
さすがは近代美術館だと思います。
chariot | 2010/09/14 10:52 PM
こんばんは

PCも戻ってきたので、久しぶりにいくつかトラックバックしていただきました。よろしくお願いいたします(あれ、「ドガ」がない…。またいくつか送ります)。

松園、後期もまいりました。「雪月花」が出たらもう一度と思っているのですが、まだ予定が組めません。
上階も良いですね。滅多に見られないと言ったら、4階もなかなか……。
花散里 | 2010/10/02 10:55 PM
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