弐代目・青い日記帳 

  
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「バーネット・ニューマン展」
川村記念美術館で開催中の
開館20周年記念展「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」に行って来ました。



昨年2009年に「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」展を開催し大注目を浴びた川村記念美術館が、同じくアメリカで抽象表現主義とカラーフィールド・ペインティングの担い手として活躍したバーネット・ニューマンの展覧会を開催しています。

川村記念館には常設展示として「ロスコ・ルーム」と「ニューマン・ルーム」という、それぞれの作品の個性を最大限に引き出す特別室が用意されています。

これだけ立派なパーマネントコレクションルームを有する美術館は日本では大変珍しいこと。ましてやある種伝説化しているロスコとニューマンの作品を上下1階と2階に配置された特別室で鑑賞できるのは非常に贅沢なことです。

自分がアメリカ現代美術作品に興味を持つ契機となったのは、川村記念美術館と軽井沢セゾン美術館のお陰。いつ訪れてもその充実したコレクションに直に目にする事が出来るのですから。

「ニューマンルーム」(「バーネット・ニューマン展」は閉鎖。作品は特別展示室へ)

バーネット・ニューマン「アンナの光」 1968年
アクリル、カンヴァス 276.0 x 611.0cm

マーク・ロスコ(1903-1970)とバーネット・ニューマン(1905-1970)には幾つもの共通項があります。1970年に突如この世を去ったことや、二人とも活躍の場はアメリカであってもルーツはユダヤ人であること。(ロシア生れのユダヤ人移民の息子)そして何といってもその作風。

実生活でも友人であった二人。

しかし、一見似ているような二人の作品ですが、実は大きく方向性が違うこと分かります。昨年のロスコ展と今年のニューマン展において、川村記念美術館がそれぞれの特別展会場入ってすぐの展示室に示した一枚だけを見比べてもそれは明らか。

昨年のロスコ展まず会場内に入るとこちらの一枚が。

マークロスコ「赤の中の黒」1958年 東京都現代美術館所蔵

今年のニューマン展ではこちらの作品がお出迎え。

バーネット・ニューマン「存在せよ I」1949年 
メニル・コレクション、ヒューストン

ロスコが感性に信頼をおいた画家だとすれば、ニューマンはむしろ知性の画家であった。」木島俊介氏はその著『アメリカ現代美術の25人』の中でこの似通った二人の画家の違いを僅か40文字で単刀直入に言い表しています。

とりわけロスコに比べ難解とされるニューマン作品を鑑賞するにあたり「ニューマンは知性の画家であった」との指摘はまさに言い得て妙。

共に「崇高」さをその大きな画面から感じ取れる二人でありながら、本質から明らかに違い表わさんとしたことも別な方向性を示していたことを理解する上での貴重な提言かと。


バーネット・ニューマン「異教的空虚」1946年
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

しかし、ロスコがそうであったように、ニューマンもいきなり単調で明快な画面を描いていたわけではありません。初めはのうちは、カンデンスキー崩れのような所謂抽象画を描いていたそうです。

今回の展覧会ではその時代の貴重な作品も4点ほど拝見することが可能。ニューマンは後にこの時代の作品を処分してしまった為現存する作品は極めて少ないそうです。

元々40歳を過ぎてから描き始め、一枚を仕上げるのに時間がかかったニューマン。作品数はロスコに比べ圧倒的に少なく回顧展を開くのは至難の業。


バーネット・ニューマン「18の詩編」1963-64年
富士ゼロックス株式会社

ニューマン唯一の色刷り版画18点が理路整然と並べられた空間自体、彼の作品のようにも見えます。この版画にはニューマン作品に不可欠な「zip(ジップ)」と呼ばれる潔い縦線が登場。

「zip(ジップ)」が初めて本格的な作品に登場したのも同じ頃。1948年。ニューマン実に43歳の時でした。以下の文章は川村記念美術館にて2010年9月4日に開催されたイヴ=アラン・ボワ氏による講演会「ニューマンにおけるユダヤ性」配布資料からの転載です。

【バーネット・ニューマン、未公刊のインタヴユー録音、1963年8月】

1948年の誕生日だったと思いますが、ひとつ絵を描きまして、そこで初めて、何というか……空気感のないものをつくることができたんです。それまでの作品では、はじめのころの、46年の《異教的空虚》という名前をつけた絵画なんかでは、空虚を否定するということに取り組んでいたんです。大きな黒い円がある絵画で、わたしにとっては、この円から何かしら生命が発散してくるような、生命が創造されたような、そんな感じがしてたんですが……。48年にこの《ワンメントI》という名前をつけた絵をつくったとき、ああ、それまで自分がやってたのは、ある意味では彩でもって空虚を満たすってことだったんだなと気がついたんですね。ある面では空想に取り組んでたわけです。ところがこの絵〔=《ワンメントI》〕は、ちょっとわたしの人生を変えたというようなところがありまして、この絵画をつくったことで、色彩とか、新しいドローイングの仕方とかいった面で、絵画の全体を言明する(declare)することができるんだとわかったんです。そうして、直接的でリアルなことが言えるようになったんです。同時に人間的なことが言えるようになったんです。



Barnett Newman「Onement I」 1948
(この作品は展示されていません)

これからこのキャンバスに「何か」を描く予定だったものが、「完成」してしまった。それも非の打ちどころがないほど完璧に。後の作品と比べればまたひ弱な赤子のような「zip(ジップ)」が作り出す世界。

ニューマンが千万言尽くしても表現出来なかった芸術の頂点が突然神から贈り物のように目の前に現われた瞬間。丁度その日(1月29日)はニューマン自身の誕生日でもありました。

ここから過去のカンデンスキーやマティスもどきの作品とは一切決別し崇高な「zip(ジップ)」が作り出すニューマン独自の作風に大きく転換。

そしてその後は推して知るべし。


右より、バーネット・ニューマン「ここ II」1965年 ダロス・コレクション、スイス、「そこではないーここ」1962年 国立近代美術館ポンピドゥー・センター、「原初の光」1954年 メニル・コレクション、ヒューストン

この展示室の後に「アンナの光」が待ち受けています。

1970年、心臓発作により突然この世に別れを告げることになる僅か2年前に描かれた作品が、ニューマンが手掛けた中で最大の作品であり、ここ川村記念美術館所蔵の「アンナの光」です。

通常のニューマンルームで見るよりも数倍迫力あるように感じさせる展示となっています。かといって気を衒った展示では全くありません。お楽しみに!!

因みに、一般的には大きな作品の場合距離を置いて拝見するのが良しとされますが、ニューマン自身が語っていたように彼の作品に限っては近付いて観るのが正しい?鑑賞法だそうです。

開館20周年記念展
アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン


会期:2010年9月4日(土)―12月12日(日)
開館時間:午前9時30分−午後5時
(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(ただし9/20と10/11は開館)、9/21(火)、10/12(火)
主催:川村記念美術館(DIC株式会社)
後援:千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会
助成:財団法人ポーラ美術振興財団


川村記念美術館1階のミュージアムショップでは、ニューマン関連書籍フェアも開催されています。


ニューマンはたいへんな読書家で、彼が残した膨大な蔵書は研究者の手で ”Newman’s Library” というリストにまとめられています。この資料を見ると、ニューマンは大学で専攻した哲学・鳥類学・植物学はもちろん、宗教から自転車、競馬まで実に幅広い興味を持っていたことがわかります。
当館ミュージアムショップでは、展覧会開催にさきがけて、邦訳されているニューマンの愛読書(おもに哲学)と、関連洋書を取り揃えたコーナーを展開しています。



東京駅から川村記念美術館へ便利な高速バスが運行スタート!


チラシPDFダウンロード(4MB)
裏面に東京駅バス乗り場の地図がついています。

【往路】
10:55東京駅発(八重洲中央口、京成バス3番のりば)

11:57川村記念美術館着

【復路】
15:29川村記念美術館発

16:26東京駅着

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2259

JUGEMテーマ:アート・デザイン


バーネット・ニューマン(1905-1970)は、20世紀のもっとも重要な画家のひとりです。一色に塗られた画面に「ジップ」と呼ばれる垂直線を配し、力強い色面の構成による独自のスタイルを確立しました。単純で明快、ごく限られた要素で構成された作品は冷厳さに満ち、人間味を一切排した印象がありますが、その奥には深い感情があふれています。ときに畏怖の念を感じさせ、ときに優しさの感情で包み込む彼の作品は、究極的には、芸術とは何かという根源的な問いを差し出します。本展は開館20周年を記念し、当館が所蔵する晩年の大作《アンナの光》を中心に、絵画・彫刻・版画など約30点を紹介するニューマンの国内における初個展です。果てしない自問自答を繰り返しながら、絵画の意味を伝えようとした芸術家の、その真摯な探求の軌跡をたどります。

| 展覧会 | 23:57 | comments(3) | trackbacks(2) |
takさん 川村美術館や歴史民族博物館への新アクセス情報ありがとうございます。便利なバスが運行開始されたんですね。今まで不便で行きづらく躊躇っていましたが、これでぐ〜んと近くなったような気がします。嬉しいです。
いつも役立つ情報ありがとうございます。
| ヨッコ | 2010/09/24 6:26 PM |

これ、赤で塗っただけですよね。
| 猫又 | 2012/10/15 7:58 AM |

始めまして。
ニューマン展の蔵書の販売写真が掲載されていますが、邦訳されている図書で何があったかわからないでしょうか。美術館や当時取引のあった出版社に問い合わせてもわかりませんでした。
工作舎様で黄色い本がメーテルリンクの『蜜蜂の生活』、赤い本が『蟻の生活』、青い本が『白蟻の生活』、その隣が『花の知恵』の4冊が分かったのみでした。
元写真であれば、そのほかの本も分かるのではと思い、ご連絡差し上げました。可能であれば、ご教示いただければ幸いです。
| inoue | 2018/06/11 2:35 AM |










http://bluediary2.jugem.jp/trackback/2259
「開館20周年記念展 アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」
間に合え!開催期間!! ということでギリギリに美術展レビューアップしました。 12日までやってます! 予定詰め込みすぎて、色々なものがギリギリな管理人です。 海外へのカード発送も、大掃除も...
| ライトオタクなOL奥様の節約入門日記 | 2010/12/10 7:46 PM |
「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」(Vol.1・速報写真) 川村記念美術館
川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631) 「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」(Vol.1・速報写真) 9/4-12/12 川村記念美術館で開催される「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」のプレスプレビューに参加してきました。 プレビュー時に
| はろるど・わーど | 2010/12/11 2:03 AM |
【お知らせ】
2018年8月6日に筑摩書房より本を出します。

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