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「バルビゾンからの贈りもの」

府中市美術館で開催中の
府中市美術館開館10周年記念展「バルビゾンからの贈りもの〜至高なる風景の輝き」展に行って来ました。



バルビゾンの森に差し込む光は、
夕景の美とともに
武蔵野に「いのち」の輝きと
光に満ちた彩りの実りをもたらした。


日本人ほど風景画の好きも世界広しといえどもいないのでは?印象派の人気だって風景画に支えられているようなもの。

府中市美術館は開館以来、武蔵野を描いた風景画に重点を置き積極的に蒐集して来ました。10年で集めたそれらを軸に風景画の展覧会を開催しようと模索。

初めはそれこそ「風景画」なら何でも!といった具合だったそうですが、テーマを途中からバルビゾン派に絞って他美術館に貸出し交渉を。これも井出洋一郎館長が就任されたことが大きく作用しているはずです。

以前お勤めになられていた山梨県立美術館からミレーの作品を。またフランス、バルビゾン美術館やプチパレ美術館にも直接交渉して下さり思わぬ名品が出展されることに。


↑クリックで拡大。

バルビゾン派と武蔵野。テーマを狭めたことで結果として質の高い、そして濃密で味わい深い作品からなる展覧会と成っています。


アントニオ・フォンタネージ「沼の落日」1876-78年
三重県立美術館蔵

バルビゾン派系イタリア人画家フォンタネージ。来日した際に日本の風景を描いた作品でしょうか。工部美術学校で浅井忠など多くの画家に多大な影響を与えた「明治洋画の父」


松岡寿「工部大学校風景」1878年
神奈川県立近代美術館蔵

フォンタネージに師事した松岡が16歳の時に描いた一枚。「沼の落日」を反転させた上に、校舎を後景に描き込んだような作品。

このように直接師弟関係にあった作家の作品を並べ比べる工夫が随所に盛り込まれています。以下の2枚も同様。松岡以上に直接的な影響観てとれます。


ラファエル・コラン「荒地(「晩夏」のための習作)1888年
久米美術館蔵


和田英作「三保の松原」1911年
府中市美術館蔵

バルビゾン派と印象派の間の微妙なポジションに位置するラファエル・コランにも多くの日本人が学び影響を受けたことはご存じの通り。和田以外にも黒田清輝、久米桂一郎、岡田三郎助等など。

バルビゾン派にはあまり観られなかった光を積極的に画面に取り入れんとする所謂「外光派」らしい作品。それにしても和田とコランの作品よく似ています。


本多錦吉郎「豊穣への道」制作年不詳
個人蔵

風景の存在しない世界などどこにもありませんが、戦後高度成長期を境に身の回りの風景は一変しました。近代洋画家が描いた日本の風景はもうどこを探しても見つかりません。

江戸絵画もそうであったように、日本人は自分たちの国の作品を良しと思もわない(思えない)風潮がどうもあるようで、本多錦吉郎「豊穣への道」などアメリカに渡っていたものをつい最近、日本に買い戻した作品であったりします。

失われて気付く「身近な風景」


中川八郎「神社の桜」制作年不詳
府中市美術館蔵

また中川八郎「神社の桜」の美しい風景を描いた水彩画も、これまで単なる「土産絵」としか思われておらず軽い扱いしかされてこなかった作品です。

バルビゾン派との影響を考慮する上で欠かすことの出来ない日本美術史上大変重要な作品であるにも関わらず、この2点をはじめとするこの時代の作品の扱われ方は酷いものがあります。

こうした作品を開館以来10年間に渡りコレクションしてきた府中市美術館。ただやみくもに作品を購入したり、超メジャー作品を1点だけ買うのではなく、ひとつの大きなビジョンに沿ったある種堅実で、地に足のついた蒐集を重ねてきた集大成を府中市民のみならず、多くの方に知ってもらいたいという願いのこもった展覧会です。


オーギュスト・ルノワール「森の小路」1870年
吉野石膏美術振興財団蔵

印象派の大家ルノワールだってこんなバルビゾン派の影響受けた作品を描いているほどです。また右も左も分からない日本の画家たちにとって如何にバルビゾン派に触発されたか容易に想像出来ます。

因みにこのルノワール「森の小路」コローっぽいな〜と最初感じました。緑に包まれる森の中のに「赤」がぱっと目に飛び込んできたからです。

画像ではわかりにくいですが、女の子のハイソックスが赤色なのです。

バルビゾン派との関連はさておき、ルノワールの風景画観て初めて良いと思いました。だっていつもはモヤモヤがこの画面にはありませんから。あれが一番苦手です。


高島野十郎「霧と煙のニューヨーク」1930年
府中市美術館蔵

キャプション見なければ、まさかこの作品があのロウソク画で美術ファンの心を釘付けにしている高島野十郎が描いた風景画とは全く思えません。

蒸気船の煙突から出る煙をロウソクの煙に見立てたりは…しませんよね。ちょっと(かなり)観たいでしょ!これ。


児島善三郎「田植」1943年
ひろしま美術館蔵

田植えは体力勝負です。自動田植え機なんて勿論ない時代。人々は身をかがめ、一本一本丁寧に豊作を願いながら苗木を植えていきます。

ところがこの作品、風景の全面に力強い、ある種暴力的なまでの激しい雨が降っています。夕立か何か特別の飴だったのでしょうか。

しかし、キャプションを見て(今回の展覧会は一枚ごとにとても丁寧なキャプションが付されています)ビックリ。児島善三郎の「田植」は「反戦」的なメッセージが多分に含まれていると。

確かに言われてみれば、制作年代や暴力的で激し過ぎる雨の描写にも納得が。第二次世界大戦で疲弊しきった日本の風景を描いた作品なわけです。さながら雨は敵の銃弾、否、飛行機からの対空砲火を表わしていたのでは?とのこと。

戦時中、人が虫けらのように扱われた時代だからこそ描くことのできた一枚。だって田植えをする人が皆タガメのような昆虫のように描かています。ご納得できるかと。(水田のあぜ道を上手く繋ぎ合わせると巨大な田植えする人が現出?!)

最後に「今日の一枚


テオドール・ルソー「森の大樹」1835-40年
村内美術館蔵

丁度この作品を手掛けたころのルソーは不運続きだったそうです。それでもフォンテブローの森に向かい目の前の自然と対峙し自分の道を突き進むことに。画面中央にどんと存在する大樹はそんなルソーの強い信念を具現化しているかのようにも見えます。

勇気の湧いてくる作品です。

およよ100年後バルビゾン派の影響を受けた日本人画家たちも風景画の中に独自の表現を示します。その最たる例が児島善三郎「田植」。

一見何の繋がりもないように思えますが、この展覧会に出ている総数120点の作品を全て順番に沿って観れば継承性見て取れるはずです。

第3クォーター(7月〜9月)展覧会ベスト3入り間違いありません。

「バルビゾンからの贈りもの展」は11月23日まで。
行くべし!!


府中市美術館開館10周年記念展
「バルビゾンからの贈りもの〜至高なる風景の輝き」


会期:2010年9月17日(金)〜11月23日(火・祝日)
休館日:9月20日、10月11日をのぞく月曜日、9月21日(火)、9月24日(金)、10月12日(火)、11月4日(木)



「バルビゾンからの贈りもの展」のチケット半券は栞としても使えます。栞用のリボンも美術館で無料配布中です。これは嬉しい!

【会期中関連イベント】
20分スライドレクチャー
日時:10月9日(土曜日)午後2時
場所:講座室
定員:60人
費用:無料
講師:志賀秀孝学芸員
申込み:当日直接会場へ

講演会「バルビゾンその芸術と遺産」
日時:11月3日(水曜日・祝日)午後2時
場所:講座室
定員:60人
費用:無料
講師:井出洋一郎館長
申込み:当日直接会場へ

講演会「バルビゾンからの贈りもの」
日時:11月13日(土曜日)午後2時
場所:講座室
定員:60人
費用:無料
講師:志賀秀孝学芸員
申込み:当日直接会場へ


↑クリックで拡大。

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平成12年に開館して以来、美しい日本近代風景画作品をコレクションの柱の一つとして収集してきました。今年開館10周年を迎え、フランス・バルビゾン派の自然主義風景画が、その後の日本近代絵画へ影響し、発展へとつながっていったという新しい視点から、あらためて当館のコレクションの作品群を国際的な美術潮流の中におき直し、その意味と美しさをたどります。
本展では、ミレー、ピサロ、ドービニーなどのバルビゾン派の画家に加え、バルビゾン村を訪れたモネなどの印象派の画家の作品、そして浅井 忠、高橋由一、児島善三郎などの日本絵画の名品とともに約120点をお楽しみください。

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