青い日記帳 

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「古賀春江の全貌」

神奈川県立近代美術館葉山で開催中の
「新しい神話が始まる。古賀春江の全貌」展に行って来ました。



古賀春江(こが・はるえ)の名前や性別は知らずとも今回の展覧会のポスター、チラシに使用されている東京国立近代美術館所蔵のあまりにも有名なこの絵を知らない方はいないはずです。


古賀春江「」1929年 油彩、カンヴァス 
東京国立近代美術館蔵

現在の中高生が使っている教科書に載っているか定かではありませんが、自分が学生時代の美術の教科書には間違いなく掲載されていました。子供ながらに強い衝撃受けた記憶と共に頭の中にこびりついている作品です。

このある種、傍若無人とも言えるちぐはぐな作品が1929年に描かれたことや、古賀春江という38歳の若さでこの世を去った画家の手によるものだと知ったのは大人になってからのこと。

東京国立近代美術館の常設展示室で実物と対面し「あっ!教科書にあった絵だ!!」と本物を観られた悦びを感じ、しばし絵に没頭。テレビでしか見たことのない芸能人に会えたようなミーハーな気分に。ドキドキしてしまい、古賀春江(こが・はるえ)の名前や性別は未だ出る幕なし。。。

さて、展覧会の構成は以下の通り。

第1章:センチメンタルな情調 1912-1920
第2章:喜ばしき船出 1921-1925
第3章:空想は羽搏き 1926-1928
第4章:新しい神話 1929-1933


古賀春江(1895-1933)の作風は僅か38年の人生の中で激しく変容していきます。展覧会の構成はそれにうまく合わせたものに。これ以上細かく分けたりすると逆に変容ぶりが分かりにくくなってしまうはず。

まず初めは水彩画から描き始めたというのも古賀のユニークな点。第1章のほとんどは初期水彩画で構成されています。そして最も展示替えが多いのがこのセクションでもあります。


古賀春江「竹林(竹藪)」1920年 水彩、紙 
福岡県立美術館蔵 ※後期のみ

「水彩は長編小説ではなく詩歌だ。」と言い放つ古賀。水彩画家としてスタートを切った強い自負が言葉の端に感じ取れます。また作品もしっかりとした構成の元に淡い色の織り成す質の高い水彩画を遺しています。

最後にもう一度どのセクション観たい?と聞かれたら迷わず第1章と答えるでしょう。水彩画好きということ差し引いても見応え十分です。水彩画は「センチメンタルな情調の象徴詩。」であるとも古賀は述べています。自身も水彩にかける想い相当なものがあったかと。

ベタな比較ですが、セザンヌの水彩画や塗り残し具合とかなり共通項が見て取れました。その点でもこの水彩画セクション良いです。


古賀春江「埋葬」1922年 油彩、カンヴァス
浄土宗 総本山知恩院蔵(京都国立博物館寄託)

この時代の作品について、自ら「出タラメの画」と突き放すような表現を残しています。1920年に我が子の死産という重い悲しみが写生一点張りの画風から変容のきっかけに。

「埋葬」を一目見て分かる通り、キュビズムに傾倒した作風です。それぞれの人物に用いられている色が強烈です。これくらい派手さがないと我が子を失った悲しみを乗り越えることが出来なかったのでしょうか。

同じ時期、マリア様や跪くポーズのキリスト、そして一つ目小僧の如きイエス等を描いています。ただいずれも嫌みのないキュビズムであり、自分なりに昇華させている様子伺えます。

窓辺の女」1924年などマティスの描いた金魚鉢と同じような作品に見えるものもちらほら。「」1924年も同じく和装の女性が描かれていますが、手前に置かれたコップに圧倒的な存在感が。観る者を惑わすようなタイトル&作品です。

そうそう「将棋」1924年という作品は、まんまセザンヌの「カード遊びをする男たち」でした。


古賀春江「蝸牛のいる田舎」1928年 油彩、カンヴァス 
郡山市立美術館蔵

水彩画→セザンヌ→キュビズム(ピカソ、マティス)と渡り歩いて来て1926年を迎えると今度は作風が一変しパウル・クレー風に。

「夢のようなとりとめもない」独自の幻想性あふれる作品。

どちらかと言うとクレーの方が哲学的かな。古賀の作品には優しさと可愛らしさが見え隠れします。「薄暗の中に働く水色の幻は、実存性がなくて善い。私の空想は羽搏き、私は息を吸ひ込んだ。

元より詩を多く作ってきた古賀。クレーとの出逢いは偶然ではなく仕組まれた「運命の人」に出逢えたようなまさに必然であったように思えてなりません。


古賀春江「窓外の化粧」1930年 油彩、カンヴァス 
神奈川県立近代美術館蔵

ところが相思相愛の仲であるはずのクレーに1929年、古賀は突然「三行半」を叩きつけ決別。自らの命がもうそれほど長くないことを悟ったかのように。

そうして生れたのが初めに紹介した「海」をはじめとする作品。

絵葉書や雑誌等からイメージソースを切り取り、コラージュのように(モンタージュ技法)して作品を作るように。まさにコペルニクス的転換的な画風の変化。

展示室内には古賀のイメージソースとなった『原色写真新刊 西洋美人スタイル第9号』『科学画報』等の資料も展示されています。「海」の右手を挙げている水着姿の女性の正体はハリウッド女優グロリア・スワンソン。(こちらのブログを参照→古賀春江「海」

他も全て雑誌や図版からのコピペ。

しばらく観ていて気が付きました。これまで西洋の巨匠たちの影響をもろに受け自身の作風をコロコロ変えていった古賀が、最も「自分らしい」作品を創作するにはこれしかない!と辿り着いたのがこの一連のコラージュ作品なのではないかと。

それは詩人であったことも影響しているはず。言葉を選ぶ作業と素材(モチーフ)を選択する作業はまさに直結しています。「テキスト(text)」の語源はラテン語の「織られたもの」。詩もパッチワーク的な絵画も古賀春江の「textilis(織物)」に他なりません。

もし。古賀春江がもっともっと長生きしていたら、この先画風はまた変化したでしょうか?それともこれが到達点だったのでしょうか?美術館裏手の海を見ながらぼんやりと。

「古賀春江の全貌展」は11月23日までです。


一色海岸を望む絶好な眺望が自慢のレストラン オランジュ・ブルー
今回の「古賀春江の全貌」展は、神奈川県立近代美術館では1953年の「小出重、古賀春江展」以来となる57年ぶりの古賀春江の回顧展です。代表作《海》(東京国立近代美術館蔵)をはじめ、生前の古賀と親交のあった川端康成が旧蔵していた作品《煙火》など、油彩約60点、水彩約60点、スケッチなどの資料約60 点で彼の生涯と芸術を紹介します。


「新しい神話が始まる。古賀春江の全貌」
神奈川県立近代美術館 葉山
2010年9月18日〜11月23日
(前期/ 9月18日〜10月17日、後期/ 10月19日〜11月23日)

休館日:月曜日(ただし9月20日、10月11日は開館)
祝日の翌日[9月21日(火曜)、9月24日(金曜)
10月12日(火曜)、 11月4日(木曜)]
開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は4時30分まで)


11月3日(水曜・祝日)葉山館は無料に!
神奈川県立近代美術館 葉山では、11月3日(水・祝)文化の日を無料招待日だそうです。「古賀春江の全貌展」も当然無料!!

最後に「今日の一枚


古賀春江(こが はるえ、1895年6月18日 - 1933年9月10日)

一村雨さんの記事によると、奥様の名前は「古賀好江」らしい。

Twitterやってます。
Twitter @taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2263

JUGEMテーマ:アート・デザイン


 古賀春江(1895-1933)は、本名は亀雄(よしお)といい、福岡県久留米市の寺院の長男として生まれました。17 歳で画家を志して上京し、キュビスムやシュルレアリスムなど、同時代のヨーロッパ美術に学び、二科会を主舞台として大正から昭和の初めにかけて活躍しました。
 モダニズムが隆盛した時代、38 歳という若さでこの世を去った画家は、そう長くはない画業のなかで、「カメレオンの変貌」といわれるほど、画風をさまざまに展開させました。そこには、つねに新しいものを追いかけ、変化を求めつつも一貫して変わらない独自の世界観がありました。

  また、古賀は文学にも傾倒し、絵画作品の解題詩をはじめとしてさまざまな詩を残しています。絵画と詩が古賀のなかで、どのような関係にあったのか。今回の展覧会では彼の詩にも注目し、画家であり、詩人であった古賀春江の生涯と芸術を紹介します。
展覧会 | permalink | comments(3) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

古賀春江の「海」は、我々の世代の頭の中に刷り込まれているのですね〜
私も美術館、初恋の人に会いに行くようにワクワクしていました。でも実際は男でしたね〜
一村雨 | 2010/09/28 7:05 AM
古賀春江の画歴のめまぐるしい変遷を観にいったつもりでしたが、彼の女性遍歴や病歴にも目が行ってしまいました。

ランチはもちろんオランジュブルーでした。
とら | 2010/09/28 1:44 PM
こんばんは。葉山ツアーの件ではお世話になりました。ぐるっと一周、スムーズに廻れて感謝感謝です!

しかし古賀春江、一体何者かと思うくらい作風が変化していました。古賀のパッチワーク、なるほど彼の到達点だったのかもしれません。あえて次を見据えないということもあり得ますよね。
はろるど | 2010/10/13 12:49 AM
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