青い日記帳 

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「諸国畸人伝」

板橋区立美術館で開催中の
江戸文化シリーズ No.26「諸国畸人伝」展に行って来ました。



奇想の画家と辻惟雄先生に称された伊藤若冲、長沢芦雪、岩佐又兵衛、狩野山雪ら江戸時代の絵師たち。現在ではすっかり展覧会の顔へと成長。

勿論、彼ら以外にもおかしな作品を描いていた絵師は日本中に数多くいたはず。「奇想の画家」が扱い切れなかった「畸人」たちを紹介する展覧会。

絵師10人、驚愕の不協和音。

展覧会学級崩壊していないかと心配になり板橋まで行って来た次第。自由過ぎる絵師10人の作品を全て観終えた頃、自分の心の中に在る小さい殻の中で蠢いていた「何か」が表に出て来ること必至。

それではサクッと10人の畸人絵師ご紹介。

菅井梅関(すがい・ばいかん)


菅井梅関「鵞鳥図」文化9(1812) 紙本淡彩 一幅
仙台市博物館蔵

陸奥の国、現在の仙台市に生れた梅関。江戸→京都→長崎→大阪と各地を渡り歩きながら絵の修業を。47歳の時に実家に不幸があり帰省。そのまま最期は極貧生活に耐えかね井戸へ身を投げてしまったという、何とも波瀾に満ちた生涯。

5点出ていた中では「鵞鳥図」が断然お気に入り。ここまで弱々しい線、描けと言われてもそう描けるものではありません。っと変なところで感心してしまいます。

鳥たちに対し手前の植物の描写はさっさっと描いたであろう割には非常に上手さが見て取れます。画中内のアンバランスさも魅力かも。

林十江(はやし・じっこう)


林十江「十二支巻」紙本淡彩 一巻(全13図)

常陸の国、現在の水戸市に生れた十江。画面いっぱいに溢れんばかりの大きさでトンボの絵を描いた絵師と言えば「ああ!」と思い浮かべる方もいらっしゃるかも。身近な命を独自の視点で描いた十江。

このウサギの絵だって色んなところがちょっとずつ何か違いますよね〜十江にはこう見えていたのかしら?結局かれの才能は認められることなく、37歳の若さでこの世を去る事に。

世間に認められずとも自分の好きなものを自分の解釈で描けたのですから幸せだったのかも。パトロンの指図を受け渋々描くよりは。

佐竹蓬平(さたけ・ほうへい)


佐竹蓬平「虎図」絹本著色 一幅

信州飯田出身で、あの芥川龍之介に愛された絵師。南画のカテゴリーに入れるのが憚られるほど緩く自由な「山水画」がこの他数点展示されています。

観ているだけで幸せになれそうな「山水画」ではなく、敢えて虎の絵を一枚掲載したのは、何と言ってもこのヘンチクリンな愛嬌ある顔に負けたから。



これまた、色んな意味で反則でしょう〜これ。

曾我蕭白(そが・しょうはく)


曾我蕭白「群童遊戯図屏風」紙本銀地著色 六曲一双
九州国立博物館

蕭白が普通の絵師に見えてしまうという奇妙な展覧会。その為だけに蕭白が加えられているように思えてなりません。蕭白の作品はこの屏風1点のみ。

しかし、初めて目にする銀屏風。相変わらず子供たち全く可愛らしくないです、見事なまでに。爪がみんな緑色しているのも妙に気になったポイント。銀色に緑は映えるのかな〜

絵図がほしければ応挙に頼め、本物の絵画がほしければ我に頼め。」by蕭白

加藤信清(かとう・のぶきよ)


加藤信清「出山釈迦図」寛政12(1800) 紙本著色 一幅
天真寺蔵

江戸、府中の小役人だった加藤信清。ある時突然「お経で絵を描けば功徳が備わるのではないか?」と思い立ちそれを実行。彼の作品を観るには単眼鏡必須。

釈迦の向かって左側の海面に見える3つの小さな岩。その一つを拡大してみると…ゲッ!!本当に文字(お経)が寄り集まって「絵」になっていること分かります。



徹頭徹尾この特殊(変態)技法により、一枚の絵を仕上げています。もう言葉出ません。確かにここまでやってのけたら御釈迦様もお喜びになろうかと。やり過ぎ感否めませんが…

因みに信清がこの文字絵を用いなかった絵はたった一枚しかないそうです。逆にそれが気になりますが…

狩野一信(かのう・かずのぶ)


狩野一信「五百羅漢図・第50幅・十二頭陀・露地常坐」絹本著色一幅
(全100幅)増上寺蔵

全100幅完成を目の前にしてこの世を去ってしまった一信。さぞかし無念だったことでしょう。師匠の想いはちゃんと弟子が受け継ぎ芝・増上寺にこんな立派で気色悪い「五百羅漢図」を無事奉納。

近年修復がなされほぼ全て完成。平成23年度(2011)3月15日より江戸東京博物館にて開催される「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展で、晴れて一挙公開となります。

狩野一信「五百羅漢」展のチラシが凄過ぎる件。

白隠(はくいん)


白隠「眼一つ達磨図」紙本墨画一幅

駿河の国、原生れ。臨済宗の僧侶である白隠もまた今更説明する必要もないくらい有名な存在。ニューヨークで白隠展が開催されるなどこの10名の中でも蕭白ともども世界的にもメジャーな絵師。

白隠の人気の秘密は何と言ってもその分かりやすさでしょう。ストレートにしかも力強く(筆使いはよれよれで緩い感じですが)訴えかけてくるものがあります。

以前はさほど好きな絵師ではありませんでしたが、歳を重ねるごとに白隠の包み込むような、全てを許してくれそうな穏やかな魅力に惹かれてます。

若者よ。今、白隠の良さ分からずとも観ておくことは大事だよ。

祇園井特(ぎおん・せいとく)


祇園井特「美人図」紙本著色 対額
摘水軒記念文化振興財団蔵

京都の浮世絵師として活躍した祇園井特。本居宣長の肖像画を描いたのがこの井特だそうです。ほうほう。今回一番のヒットだったかもしれません、彼の作品が観られたことが。

↑の「美人画」に描かれた女性と同じく彼の描く女性の唇は大変特徴があります。「笹色紅」と称される緑色の唇。

一度観たら忘れられない作品何点かありますが、この井特の描く美人画もまさにその筆頭。忘れられずに夢の中まで付いて来ちゃったら困りますが。。。

そうそう簪から透けて見える髪もまた何とも言えません。

絵金(えきん)


絵金「伊達競阿国戯場 累」紙本著色 二曲一隻
赤岡町本町二区蔵

「絵師の金蔵」略して「絵金」。土佐で生れ紆余曲折はありながらも大いに腕を振るった絵師。スプラッター系の超ド派手な演出で歌舞伎のワンシーンを描きます。

「伽羅先台萩 御殿」はまだ良い方で、「播州皿屋敷 鉄山下屋敷」を描いた作品など血しぶきがこちらまで飛んできそうな勢いの激しい激しい作品。

絵金は様々なメディアで取り上げられていますが、都内で彼の作品をこうして拝見できるのは大変貴重なこと。しかも今回は屏風絵4点が遠方より板橋まで来ています。これだけでも観る価値十分にある展覧会かと。

絵金蔵公式サイト - Ekingura official site
Web高知−土佐の技−絵金

中村芳中(なかむら・ほうちゅう)


中村芳中「菊花図」紙本淡彩一幅

最後の10番目の絵師として芳中持って来ちゃうあたりが何ともニクイ。京都生れ大阪育ち。1802年に江戸で『光琳画譜』を刊行。自分は光琳の継承者であるとの自負があったかどうか分かりませんが、とにかく出したことは事実。

ところが『光琳画譜』中身は芳中独特の世界観満載。丸っこく、無駄にたらし込みを用いた作品のオンパレード。↑にあげた「菊花図」だって、キャプション見なければ菊が描かれているとは思わないはず。どう見ても柿です。

芳中の作品、「大琳派展」にも出ていたほどメジャーではありますが、あまり人気は高くないようです。そこで高らかに宣言します!「芳中が好きだ〜

何を隠そう、中村芳中の大ファンである自分。「芳中展」開催希望。『もっと知りたい中村芳中』も是非!(一部マニアックなファンしか反応しなさそうですが…)なーにそのうち時代が追いつくさ。

琳派の系譜の中で尾形光琳の継承者を自任する酒井抱一が1815年の光琳百回忌に展覧会を開催し多くの図書を出したのも、慌てて芳中の『光琳画譜』に対抗したとも言われています。

丸っこくて愛らしい作品ですが破壊力抜群です。

こんなに愉快で楽しい「諸国畸人伝」展は10月11日までです。
行かなきゃ!!板橋!!!

見える世界が変わると言ったらオーバーですが、枠にハマらない生き方もありなのかな〜と思わせる展覧会です。


諸国畸人伝
しょこくきじんでん

会期:2010年9月4日(土)〜10月11日(月・祝)
開館時間:午前9:30から午後5:00
(入館は午後4:30まで)
休館日:月曜日(ただし9/20、10/11は開館し、9/21は休館)


板橋区立美術館へのアクセス

【次回展】
福沢一郎絵画研究所展
2010年11月20日〜2011年1月10日

福沢一郎は、1924年にフランスに渡り、当時流行していたシュルレアリスム絵画に直接触れて帰国しました。彼は1937年頃に本郷動坂の自宅に「福沢一郎絵画研究所」を開設します。そこには全国から若い絵描きが集まり、講義を受け、デッサン会を開き、福沢の指導を受けました。ここに学んだ山下菊二、早瀬龍江、眞島建三、堀田操、岩崎鐸らをはじめとする様々な分野で戦後活躍した画家たちの作品を、当時の雰囲気とともにご紹介いたします。

記念講演会も今から要チェック!

11月28日
講師:大谷省吾(東京国立近代美術館主任研究員)

12月4日
講師:岡崎乾二郎氏(美術家)


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江戸時代は、文化が全国に拡散し、浸透した時代だといえます。絵画について見ると、上方を中心に栄えていた絵画文化が18世紀中期ごろにようやく江戸にも浸透し、官学御用絵師狩野派のほか、市民層の支持を得て民間画壇をも活性化してゆきます。

こうした活況のもと、日本各地に既存の流派にとらわれない個性的な絵を描く画家たちが登場してきます。彼らの絵は「畸人(きじん)」と呼ぶにふさわしい奇抜な表現と斬新な視覚によって描かれています。

寛政2年(1790)、伴蒿蹊により著された『近世畸人伝』は、あらゆる階層の有名無名の人々の奇異な行状を伝える人物伝です。本展はそれに倣い、陸奥、常陸、信濃、江戸、駿河、京、大坂、土佐の諸国より、18世紀後半から19世紀前半にかけて活動した10人の絵師を選りすぐり、48件の作品を紹介することで、江戸時代絵画の多様性と面白さをお見せします。

地元で大切にされたために中央で紹介される機会が少なく、一般にあまり知られていない絵師もいます。しかし、彼ら10人による強烈な表現力は、会場に驚愕の不協和音を響かせてくれることでしょう。
展覧会 | permalink | comments(3) | trackbacks(6)

この記事に対するコメント

コピーの名手 板橋区立美術館。畸人の揃え方も流石
よく集めて企画して下さいました!ホント面白い美術館です。
panda | 2010/09/29 12:16 AM
こんばんは
・・・実は私、あのイケメンなウサギと、八重歯にょっきりな虎のファンです♪

お経の文字絵やブキミな羅漢たちにはうなされそうでした。
遊行七恵 | 2010/09/29 12:34 AM
絶対観に行こうとおもいつつ、ギリギリのところまで来てしまってます^^;
今週末は行ってこよ〜っと♪

芋銭なんかもあれば超うれしかったけれど…時代が違いますもんね☆
珠希 | 2010/09/29 1:39 PM
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