青い日記帳 

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「ゴッホ展」

国立新美術館で開催される
「没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」プレス内覧会にお邪魔して来ました。


「ゴッホ展」公式サイト

特定の師につかず、〜派にも属さなかったゴッホ。約10年しか画家として活躍していないにも関わらず、後世にこれだけの名を残すゴッホ。一体どんな秘密がそこにはあるのでしょう。もしかして秘密何て存在せず、ただシャカリキに眼前の目標に向かって突っ走っただけなのかも。

ある種神話化されたフィンセント・ファン・ゴッホ(1853年〜1890年)の短くも濃密な画業の足跡をアムステルだむ、ファン・ゴッホ美術館とクレラー=ミュラー美術館所蔵の優品で振り返る展覧会。

サブタイトル「こうして私はゴッホになった」自分もゴッホになった気分でどんな作品に接し受容していったのか。そんな視線で楽しめるこれまでに無い「ゴッホ展」です。

予習・復習にはこの本が欠かせません。我々がよく知るところの「Gogh」となる経緯を知るにはもってこいの一冊。ファン・ゴッホ美術館とクレラー=ミュラー美術館所蔵作品のみから構成される今回の「ゴッホ展」を補完する上でも大事な一冊です。

もっと知りたいゴッホ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
『もっと知りたいゴッホ―生涯と作品』
圀府寺 司

「ゴッホ展」の構成は以下の通り。

1:伝続―ファン・ゴッホに対する最初期の影響
2:若き芸術家の誕生
3:色彩理論と人体の研究―ニューネン
4:パリのモダニズム
5:真のモダン・アーティストの誕生―アルル
6:さらなる探求と様式の展開―サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ



フィンセント・ファン・ゴッホ「秋のポプラ並木」1884年 ファン・ゴッホ美術館所蔵、「曇り空の下の積み藁」1890年 クレラー=ミュラー美術館所蔵

何も知らずにこの絵を見てもバルビゾン派の作品にしか見えませんが、これもれっきとしたゴッホ作品。一方「曇り空の下の積み藁」の方は色彩こそゴッホらしくなっては来ているものの全体の構図などまだまだゴッホらしさ見受けられません。筆致も弱めです。

この頃傾倒していたであろう、テオドール・ルソー、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・クールベ、シャルル・ドービニーらバルビゾン派の作家やウイレム・ルーロフス、ヨゼフ・イスラエルス、テオフィールド・デ・ボッ句らハーグ派と呼ばれる作家の作品も展示。

ゴッホの上記2点とこれらの共通項を会場で容易に見出すことは困難ですが、間違いなくゴッホに影響を与えたことは確かだそうです。


右:「ヤーコプ・マイヤーの娘(ホルバインによる)」
左:フィンセント・ファン・ゴッホ「ヤーコプ・マイヤーの娘(バルグの教則本中のホルバインの素描による)」1880-81年
クレラー=ミュラー美術館所蔵

ホルバインの作品の模写。お世辞にも素人目にも決して上手いとは言えない作品。遠近法や構図その他習得中だったのでしょうか。升目のある紙にせっせと写すその真摯な姿勢は見習わなくてはいけない点。何事にも一生懸命さが足りない自分には。

気になって再度観た時はぐっと胸に迫るものすら感じました。観る者に意図せずとも強く訴えかけてくる何かを内包しているゴッホの作品、既にこの頃から萌芽していたのかも。


パースペクティブ・フレーム(復元)

ゴッホが対象の比率や遠近法を調整するために用いた秘密兵器。その名もパースペクティブ・フレーム(遠近法の枠)

単に影響受けた画家の絵と対比させるだけでなく、こうした実際に絵画制作にあたり用いたあまり知られていないものも展示紹介されています。当然ながら随所に弟・テオとの書簡も紹介。


フィンセント・ファン・ゴッホ「セーヌの岸辺」1887年
ファン・ゴッホ美術館所蔵

ゴッホの作品には、彼の指紋が多く残されているそうです。偶然付着したもの以外に明らかに意図的に何らかの効果を狙い付けたものも。ここでは、左上の雲を表現するために指紋を(指の痕跡)を用いています。

う〜ん指摘されなければ気が付かなかった…有難いですね、こうした解説。


右から:アンリ・ファンタン=ラトゥール「静物(プリムラ、梨、ザクロ)」1866年頃、ジャン=フランソワ・ラファエリ「野の花」1895-1900年頃、フィンセント・ファン・ゴッホ「バラとシャクヤク」1886年、「花瓶のヤグルマギクとケシ」1887年、「マルメロ、レモン、梨、葡萄」1887年

第4章:パリのモダニズムへ入ると一気にゴッホらしさが開花する様子手に取るように分かります。最も大きな変化はやはり色彩。

とりわけ、かのゴーギャンが黄色い静物画と称賛した「マルメロ、レモン、梨、葡萄」はこの展覧会で見逃すことの出来ない筆頭株。ファン・ゴッホ美術館よくぞこの作品を貸して下さった!


フィンセント・ファン・ゴッホ「マルメロ、レモン、梨、葡萄」1887年
ファン・ゴッホ美術館所蔵

今回の展覧会には「ひまわり」展示されていませんが、それに代わる極上の逸品。こうした同色でまとめる手法を「トーン。オン・トーン配色」と呼ぶそうです。

ゴッホの力強くあくのある筆致があってこそ成り立つ一枚。他の画家が同じ配色でチャレンジしてもこうはいかないはず。またこちらはゴッホが生前額装し現存する唯一の作品でもあるそうです。

第4章:パリのモダニズムからは溢れんばかりのゴッホ作品のオンパレード。第5章:真のモダン・アーティストの誕生第6章:さらなる探求と様式の展開まさに怒濤のゴッホ名品セクション。

1章から3章まで、あまり力を入れ過ぎて拝見してしまうと、お目当てのゴッホらしいゴッホ作品に到達した頃にはエネルギー切れなんてこと無きにしもあらず。

ペース配分考えねばなりません。この部屋見えたらフルスロットルです。


「アルルの寝室」の立体再現。

今回の再現にあたり、青木ゆかりTBS美術デザイナーを筆頭とするTBSの美術チームが制作を担当。その他、女子美ゴッホクラブ、名古屋モザイク工業株式会社、家具よしのぶ、OFFICEオルフの協力を得たそうです。

そしてこちらは今回のゴッホ展監修者であるシラール・ファン・ヒューフテン氏(10月3日(日)14:00〜記念講演会あり)

フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」1888年
ファン・ゴッホ美術館所蔵

第5章:真のモダン・アーティストの誕生


手前から:エミール・ベルナール「ふたりのブルターニュの少女のいる風景」1892年、ポール・ゴーギャン「ブルターニュの少年と鵞鳥」1889年、ポール・ゴーギャン「ポン=タヴェン付近の風景」1888年、フィンセント・ファン・ゴッホ「タマネギの皿のある静物」1889年、フィンセント・ファン・ゴッホ「あおむけの蟹」1889年、フィンセント・ファン・ゴッホ「野原と家」1888年

これに加えてゴッホ美術館所蔵の浮世絵まで展示してあります。

第6章:さらなる探求と様式の展開


フィンセント・ファン・ゴッホ「サン=レミの療養院の庭」1889年、「蔦の絡まる幹」1889年、「渓谷の小道」1889年、「オリーヴ畑と実を摘む人々」1889年、「アイリス」1890年、「夕暮れの松の木」1889年 全てクレラー=ミュラー美術館所蔵

この最後の章まで来るとゴッホ以外の作家の作品は僅か1枚に。
もう180度どこを見渡してもゴッホ一色。

しかもサン=レミの療養院に入ってからのキレキレな作品ばかり。当初心に留めていた、如何にしてゴッホはゴッホと成ったのかという展覧会の大事なお題目もこれだけの作品に囲まれると雲散霧消。

決してゴッホ信者でない自分でもドキドキしちゃったのですから、ゴッホ好きにとっては心臓に悪い展覧会かもしれません。そしてなにより心身ともに疲れます。ヘトヘト。

体力ある元気な日に行きましょう。混雑覚悟で再訪します!

最後に「今日の一枚


フィンセント・ファン・ゴッホ「サン=レミの療養院の庭」1889年
クレラー=ミュラー美術館
©Kröller-Müller Museum, Otterlo

注:会場内の写真はプレス内覧時に主催者の許可を得て撮影したものです。

「ゴッホ展」は12月20日までです。その後以下に巡回。

九州国立博物館(博多)
2011年1月1日(土・祝)〜2月13日(日)

名古屋市美術館(名古屋)
2011年2月22日(火)〜4月10日(日)


没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった
2010年10月1日(金)〜12月20日(月)

会期:2010年10月1日(金)〜12月20日(月)
休館:毎週火曜日
ただし11月23日(火)は開館、24日(水)は休館
開館時間:10:00から18:00まで 
※金曜日は20:00まで。入場は閉館の30分前まで。
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)

主催:国立新美術館、東京新聞、TBS
企画協力:ファン・ゴッホ美術館、クレラー=ミュラー美術館


それでは最後に「今日の美味」


ゴッホ展ミュージアムショップで販売中の「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」展覧会限定「マカロン ラスク」瓶入りで1365円は安い!と思ったらこれあくまでもラスクなのね。

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フィンセント・ファン・ゴッホ(1853−1890)の作品は、これまで、日本でも数多くの文献や展覧会を通じて、幾度となく紹介されてきました。画家の熱い思いを伝える激しい筆遣いと鮮やかな色彩による独特の絵画スタイルは、その劇的な生涯とともに、多くの日本人の心を捉えています。しかし、ゴッホがいかにしてそれを創り上げるに至ったかについては、これまで十分に紹介されてきたとはいえません。
27歳で画家になることを決意したゴッホは、同時代の画家たちやその作品から、さまざまなものを吸収し、自らの作品に反映させていきました。本展は、ゴッホの代表作に加え、ゴッホに影響を与えた画家たちの作品、ゴッホ自身が収集した浮世絵などを展示し、「ゴッホがいかにして『ゴッホ』になったか」を明らかにするものです。今回のゴッホ展では、ゴッホの世界的コレクションを有するオランダのファン・ゴッホ美術館とクレラー=ミュラー美術館の全面的協力のもと、日本初公開作品を含め、選び抜かれたゴッホの油彩35点、版画・素描約30点と、オランダ時代のゴッホに絵画表現技法の基礎を手ほどきしたハーグ派のモーヴや、芸術の都パリ時代に出会ったモネ、ロートレック、ゴーギャン、スーラなどの油彩画約30点、その他関連資料約20点を一堂に展示します。
また、ゴッホのアルル時代の寝室を会場内に再現し、出品作《アルルの寝室》と見比べながら、ゴッホが空間をどのように捉えて絵画で表現したかを探る画期的な試みや、科学的な視点によるゴッホの技法の分析の成果も交えて、多方面からゴッホ芸術の秘密に迫ります。

展覧会 | permalink | comments(3) | trackbacks(10)

この記事に対するコメント

お疲れさまでした。
「サン=レミの療養院の庭」は涙が出そうな位美しい絵でしたね。
わたしもこの展覧会のNo.1に挙げます。
後半からぐんぐん加速して見せる展示でした。
お腹いっぱいです。
さちえ | 2010/10/01 12:53 AM
初日の午前中に行ってきました。
まだ空いてましたが、そううち大変なことになりそうな予感がします。
ゴッホ以外の画家の作品も厳選されており、刺身のツマにするにはもったいない気がしました。
とら | 2010/10/02 11:47 AM
こんばんは。
初日の午後に行きましたが、空いているのにびっくり、
おかげでゆっくりゴッホのいろいろを辿ることができました。
殆ど独学であそこまで、到達できた才能と努力、その結実した
ものを観られる幸せ、《サン=レミの療養院の庭》をはじめ
《アイリス》《松の木」まで続くあの部屋は圧倒的でした。
すぴか | 2010/10/03 11:46 PM
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