青い日記帳 

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誰も知らない「名画の見方」

小学館より刊行された高階秀爾著『誰も知らない「名画の見方」』を読んでみました。


Art 1 誰も知らない「名画の見方」 (小学館101ビジュアル新書)
高階秀爾著

1969年10月に刊行された高階先生の『名画を見る眼』は、続編にあたる『続 名画を見る眼』共々岩波新書の誇るロングセラー本。

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし。

鴨長明がこの世の儚さを『方丈記』に記したが如く昨今の新書ブームの中、出ては瞬く間に消え去る新書多い中にあって40数年も読み継がれているのはまさに瞠目に値します。

高階先生の講義や講演会は何度となく、これまで拝聴してきましたが、毎回、簡潔明快で知識をごり押しすること一切なく丁寧に自分のような素人と同じ目線に立ち解説をして下さることにひたすら感心させられます。

そうでありながら、とても深い部分にまで切り込み解説して下さる。ある種魔法にかけられたような感じすら覚えます。シンプルでありながら深い解説。この一見矛盾するかのようなことをいとも容易に示してくれるわけです。

これまで数多くの作品に接して来られた高階秀爾先生の真価ここに思う存分発揮されています。切れの良い名刀で余分な文章そぎ落とし、小気味よく小刀で歯切れのいい短文に仕立て上げています。



また小気味良く奥深い文章に加え、美麗なカラー図版が各画家に対し贅沢に4枚程度掲載されています。新書でここまで美しく画像を載せているの、未だ嘗て見たことありません。

↑ファン・エイク「ロランの聖母」の解説では全図と共にクローズアップした部分も。読者の理解度を深めるため、具体的作例を参考図版として必ず載せるようした本書の作り実に見事。お金かかるでしょうがこれは助かります。

『誰も知らない「名画の見方」』で紹介されている画家は24名。
ひとつの章に3名ずつ。同じテーマで括られることによって新たな補助線が引かれ、これまで気が付かなかった「見方」がふっと目の前に現われてきます。

【目次】

第1章 「もっともらしさ」の秘訣
白い点ひとつで生命感を表現したフェルメール
見る者を引き込むファン・エイクの「仕掛け」
影だけで奥行きを表したベラスケス

第2章 時代の流れと向き合う
激動の時代を生き抜いた宮廷画家ゴヤ
時代に抗った「革新的な農民画家」ミレー
時代を代弁する告発者ボス

第3章 「代表作」の舞台裏
いくつもの「代表作」を描いたピカソ
タヒチでなければ描けなかったゴーガンの「代表作」
二種類の「代表作」をもつボッティチェリ

第4章 見えないものを描く
科学者の目で美を見出したレオナルド・ダ・ヴィンチ
人を物のように描いたセザンヌの革新的な絵画
音楽を表現したクリムトの装飾的な絵画


この本読んで一番観方の変った画家はルーベンスでした。

第5章 名演出家としての画家
依頼主を喜ばせたルーベンスの脚色
演出した「一瞬」を描いたドガ
絵画の職人ルノワールの計算

第6章 枠を越えた美の探求者
女性の「優美な曲線」に魅せられたアングル
見えない不安を象徴したムンクの「魔性の女性像」
イギリス絵画の伝統を受け継いだミレイ

第7章 受け継がれるイメージ
カラヴァッジョのドラマティックな絵画
働く人々を描いた色彩画家、ゴッホ
西洋絵画の歴史を塗りかえたマネ

第8章 新しい時代を描き出す
人間味あふれる農民生活を描いたブリューゲル
新しい女性像を描いたモリゾ
20世紀絵画の預言者モロー



ベラスケスやマネのような関連性の高い画家については章をまたいで比較画像が掲載されていたりもします。こう見ると、僅かな影だけで遠近法を用いずに奥行きを表わしてしまったベラスケスの影響をマネは完全に踏襲していること一目瞭然です。

高階氏は「その画家が誰からなにを受け継いできたのかをたどってみるのも、絵画の楽しみ方のひとつといえる。」とこの章(第7章)の最後に書かれています。

多く作品に触れていると、ある時突然閃き時空を超え二つの作品が結びつく瞬間を自分でも極僅かですが経験したことあります。この感覚はたまりません。ぞくぞくっと背筋に何か感じる稀有な一瞬。

しかし、そう滅多にそんな機会訪れません。特に物忘れの激しい自分などには。もう一枚だけご紹介して終わりにしたいと思います。



カラバッジョ「慈悲の7つの行い」1606〜07年 に描かれている天使は、ミケランジェロがヴァティカン宮パオリーナ礼拝堂に描いた「聖パウロの改宗」1542〜45年 に描かれた神の姿に一致。

姿形を踏襲しながらもカラバッジョは光と影によりより劇的なシーンを作り出すことに成功しています。バロック絵画誕生の契機ともなったカラバッジョの斬新な絵画表現もゼロから創造されたわけでなく、視覚的なイメージを過去の名画から継承していることが分かります。

この本の前書きにはこうあります。

美術の専門家にとっても、わからないことはいっぱいある。」しかし「多くの作品に接し、互いに比較し、また歴史や背景を探っていくうちに、まるで山道で突然、眺望が開けるように、今まで気づかなかった新しい視点が浮かび上がってくる。

そして、様々なことに気付きあらためて絵を見直すと「そこに新たな発見があり、理解が深まり、喜びと感動は倍加する。『絵の見方』というようなものがもしあるとすれば、そのような視点を見出すことにほかならないだろう。

『絵の見方』を高階先生が新たに提示された8つの視点から、丁寧で平易な言葉で伝授してくれます。美麗な画像と共に。買って損無し。

ひとつだけ難点があるとするならば、この本を読んでいると、どうしても本物を観たくなってしまうこと。困ったな〜(ニヤニヤ)


『 誰も知らない「名画の見方」』
高階秀爾著

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この記事に対するコメント

こんばんは。
久々に夜更かしして今、読んでいました。
『誰も知らない「名画の見方」』すばらしいです。

Takさんの解説も素晴らしく、楽しみが倍になるようです。
ありがとうございました。
すぴか | 2010/10/23 1:05 AM
わーー面白そうですね!

わくわくしてきます。さっそくamazonに直行ですう。
aki | 2010/10/24 11:39 PM
買いました。目からウロコなことが沢山書いてありますね。絵画鑑賞が益々楽しくなりました。お薦めありがとうございました。特にびっくりしたのはボスの快楽の園。ダリの絵かと思っちゃいました。500年前の絵なんですね。プラドには何度も行っているのに、見落としてました。次回しっかり観て来ます。
サヨ | 2010/12/01 10:54 PM
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