弐代目・青い日記帳 

  
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『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』
新潮社(とんぼの本)より刊行された『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』をご紹介します。


イタリア古寺巡礼―ミラノ→ヴェネツィア (とんぼの本)
金沢百枝/著 小澤実/著

昨年2010年9月に発売となったこちらの本。
美術史家の金沢百枝さんと、歴史家の小澤実さんとの共著。訪れた町を双方の視線から捉え、語りかけて来るこれまでに無かった魅力的な一冊です。

著者である金沢百枝さんの出版記念トークショー(森岡書店)へ足を運んだり、参加者約70名での『イタリア古寺巡礼』出版記念会を豚組しゃぶ庵で開催したりと、もう自分でもびっくりするくらいどっぷりと中世ヨーロッパの世界に魅了されたにも関わらず、肝心の本をご紹介していませんでした。(猛省)


「イタリア古寺巡礼 ギャラリートーク」金沢百枝
2010年9月26日(日)@森岡書店


Twitterや出版記念パーティーで完全に燃え尽きてました。

ヨーロッパ文化、とりわけイタリアを語ると、どうしてもルネサンス期の芸術ばかり取り上げらる傾向にあります。教科書でもルネサンスとは「再生・文芸復興」の時代であり、それまでの時代(中世)とは違い個の自由が発揮され、近代の基盤が形成された時代であると、習った記憶があります。

確かに、レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロ、ミケランジェロ、ティツィアーノ等が遺した作品は文句なしの輝きを現在でも放ち続け我々をとりこにさせます。ルネサンスの遺構、作品をめぐるツアーも相変わらず高い人気を誇っています。

しかし、実はルネサンス期よりも前の「中世」こそが面白いのではないかと金沢&小澤両氏は美術、歴史の双方から読み手に語りかけてきます。

面白いとはこれ如何に?と思われる方多いはず。
具体例を金沢さんが森岡書店で紹介して下さった作品を用いてご紹介。

まずは、イタリア、ルネサンス中期を代表する画家であるフィリッポ・リッピの作品。

フィリッポ・リッピ「ヘロデの宴」(ヘロデ王の宴会)
1452-65 フレスコ プラート大聖堂

ここに描かれた場面を改めてご説明するまでもありません。あの有名なサロメがヘロデ王の前で舞踏を披露しているシーンです。ヨハネの首が飛ぶシーンでもあります。(画面右手にヨハネの首を差し出す女性が描かれています)

この後、美術史ではサロメは美女として単体で描かれ、近代に差し掛かる頃には例えば我々が良く知るギュスターブ・モローらにより運命を掌るセクシーな女性として表現されるように変遷していきます。

さて、そんなファム・ファタール的な要素満載のサロメがルネサンス以前、中世ではどのように表現されていたのかというと…


ヘロデの宴とサロメの踊り」1138年頃
ブロンズ ヴェローナ、サン・ゼノ・マッジョーレ聖堂

とても同じ場面を表現したとは思えません。えーーとサロメは一体どこにいるのでしょう?なんと手前(テーブル足元)でエビのような格好をしているのがサロメだそうです。フィリッポ・リッピの描く優美なサロメとは似ても似つかない風情。

でも、これこそ「中世」美術の面白さだと金沢百枝さんは断言します。そして文中でもこのシーンをコラムで紹介しています。
中世のサロメ像の見どころは「踊り」の表現です。ヴェローナのブロンズ彫刻はとくこアクロバテイックで、よく見ると右手で足をつかんでいます。眼を見開いた表情も真剣です。
この優しい語り口でイタリア中世美術(主に教会内)を紹介して下さっているのが、何と言っても『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』の大きな魅力のひとつです。

目次
ミラノ:中世的世界の幕開け サンタンブロージョ聖堂
パヴィア:看板建築の起源 サン・ミケーレ・マッジョーレ聖堂
チヴァーテ:山上に残された絶品 サン・ピエトロ・アル・モンテ聖堂
ヴェローナ:ロマネスクとジュリエット サン・ゼノ・マッジョーレ聖堂
アッピアーノ:アルプスの小聖堂 アッピアーノ城礼拝堂
チヴィダーレ・デル・フリウリ:古代と中世のかたち サンタ・マリア・イン・ヴァッレ修道院聖堂祈祷堂
ヴェネツィア:寄せ集めの聖地 サン・マルコ大聖堂
トルチェッロ:聖母の島へ サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂
ポンポーザ:平原に聳える名塔 サンタ・マリア修道院聖堂
ラヴェンナ:モザイクと東ローマ帝国の栄華 サン・ヴィターレ聖堂
モデナ:教会建築のお手本 モデナ大聖堂
パルマ:中世とルネサンスの競演 パルマ大聖堂



ラヴェンナ市内にあるガッラ・ブラチーディアの霊廟内部のモザイク。ラヴェンナはフィレンツェから鉄道で約3時間。この写真はかれこれ10年前に自分が撮影した写真ですのでとても写り悪いのですが、『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』には同じ場所を撮影したとは、到底信じ難いほど美麗な菅野康晴氏によるカラー写真が満載です。

金沢さん曰く『古寺巡礼』シリーズはこれから15年の歳月をかけ一冊ずつ刊行して行きたいそうです。その記念すべき一冊目にミラノ〜ヴェネツィアを選んだのは、この地(アディージェ川とポー川流域の平野)が「ヨーロッパ中世美術のゆりかご」と認識しているからだそうです。

しばしば中世は「暗黒の時代」であったなどと評されますが、美術・歴史双方から丹念に観ていくと一概にそう言えないばかりか、ルネサンス期から現代までの間に我々が忘れてしまった「大事なもの」がそこにまだ残されているように思えてきます。

合理的、理性的な生活を佳しとしながら馬車馬のように働き、「不幸」しか手に入れることの出来ない現代人よりも、遥かに人間味あふれる豊かな暮らしぶりが「中世」に見て取れます。

時計の針を「中世」に戻すことは出来ずとも、現代人には見えなくなってしまったものを見つける鍵が隠されているのが「中世」であると、金沢百枝さんの優しく語りかける素直な文章と小澤実さんの実直で堅実なお人柄がそのまま現われた文章から教えてもらえる、そんな一冊です。


チヴァーテ:
山上に残された絶品 サン・ピエトロ・アル・モンテ聖堂


路傍には西洋サクラソウほか可憐な草花が咲いていた。

金沢百枝さんは東京大学大学院理学系研究科博士課程で植物学を学ばれた後、東京大学大学院総合文化研究科博士号を取得し現在美術史家を務めるとんでもない経歴の持ち主です。美術史家として上梓された今回の本にこうした道端の小さな花に目が留まるのもそのせい。


森岡書店のトークショーではクリスマス・ローズもスライドで紹介して下さいました。

また、Twitterもやっていらっしゃいます。

@momokanazawa

@taktwi 今、ちょうどカンタベリー大聖堂の写真みてました!上はゴシックだけど、地下はロマネスクなんです。ちょっとイタリア風な。 http://plixi.com/p/72161028less than a minute ago via Echofon


@taktwi よさこい悪魔もどうぞ(この柱頭を見るとわたしはなぜか、反射的にハトヤの宣伝を思い出します) http://plixi.com/p/72161837less than a minute ago via Echofon


第2冊目に向け、これから取材の旅に発たれるとのこと。
毎年1冊ずつ。15ヶ年計画でヨーロッパ各地の中世美術を紹介される予定です。

その記念すべき第1冊目。
もう既に読まれた方も多いと思われますが、もしまだお読みになっていないようでしたら春までに是非!


イタリア古寺巡礼―ミラノ→ヴェネツィア (とんぼの本)
金沢百枝/著 小澤実/著

また秋には小澤さんもお招きして出版記念パーティー開催しましょう!!



金沢さんのお気に入り、ウサギのスタンプの秘密を知りたい方は古本屋で芸術新潮「イギリス古寺巡礼」を見つけるべし!


芸術新潮 2007年 04月号 [雑誌]

美術史家の金沢百枝さんとイギリスをたずねたのは、昨年の秋でした。ロンドンからまず南へ、それから西へ、東へ、北へという順で、左頁の地図の太字の町や村にのこる、おもにロマネスク時代(11世紀半ばー12世紀)の教会をまわってきました。

ツイッターやってます。
@taktwi

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すてきな 御本の紹介 たのしく拝見!
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| Baroque | 2011/01/25 7:00 PM |










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