青い日記帳 

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『裏側からみた美術史』

日本経済新聞出版社より刊行された『裏側からみた美術史』をご紹介します。


宮下規久朗著裏側からみた美術史』(日経プレミアシリーズ)

イタリア17世紀バロック美術とりわけ、カラヴァッジョ研究者としての第一人者である宮下規久朗先生の新書本です。発売になったのは昨年の秋。幾つか読み返したい箇所があったので今回あらためて目を通してみました。

宮下先生のお書きになる本はどれも買って決して損はしません。

カラバッジョ関連は勿論ですが、このブログでも度々紹介している『食べる西洋美術史』や『刺青とヌードの美術史』それに現代アートまで『ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡』その守備範囲の広さはプチ高階秀爾先生と言っても過言ではないほど。

今回上梓された裏側からみた美術史は、その幅広い守備範囲を裏付ける一冊。

カラバッジョ、モディリアーニから歌川国芳、藤田嗣治、それにウイリアムブレイクまで。最も驚き興味関心を抱いたのが山形県等に伝わる「ムカサリ絵馬

聞き慣れない「ムカサリ絵馬」とは
病気や戦争で若くして結婚前に死んだ息子や娘のために、彼らが幻の配偶者と結婚式を挙げている情景を描かせて奉納した絵馬である。
第15話「記録と追悼」の中で紹介されています。僅か8ページの文章の中の展開が如何にも宮下先生らしいものとなっているのです。

その流れを追ってみましょう。

キリスト教美術の「ピエタ」(ミケランジェロ「ピエタ」)

悲しみの聖母(マーテル・ドロローサ)

神戸の大震災で息子を失った母親

セガンティーニ、小川利八郎

写真の発明『影を捉えるーアメリカの死と写真』(1955)

喪中画(モーニング・ピクチャー)

「ムカサリ絵馬」

モネ、ロセッティ、ピカソ

熊谷守一「陽の死んだ日」

そして最後にこう結びます。
死は人間の文化を促進させてきた大きな要因であり、フランスの中世史家フィリップ・アリエスの言うとおり、人間の文化は、死の恐怖を克服し、「死を飼いならしてきた」歴史であるといえる。だが、愛する者との死別の悲しみは、どんな時代にも容易には飼いならせないものだった。それがときに造形表現を要請し、美術はそれに応えてきたといえるだろう。やり場のない死別の悲嘆は、ときに大きな創造の原動力をもたらすのである。
ジェットコースターのように洋の東西を問わず飛び回り作品を紹介しながらも、最後の着地は見事決めてくれます。

普遍性のある結論に落とし所をきちんと持って来られる辺り、数ページの文章ながらかなり計算された構成になっていることの証。

だからこそ、読んでいて安心感があります。
それでいて面白いのですから言うこと無しです。

【目次】
第1話 天才の嫉妬 
第2話 不良か優等生か
第3話 ヌードが取り締まられるとき
第4話 肖像と権力
第5話 死刑囚と美術 
第6話 誹謗の肖像
第7話 危険な食物 
第8話 究極の身体芸術 
第9話 天国への階段
第10話 本物と偽物のあいだ
第11話 聖像が隠されるとき 
第12話 社会不安は美術を変え得るか
第13話 芸術家の晩年と絶筆
第14話 語ることができることとできないこと
第15話 記録と追悼
第16話 映画になった画家たち 
第17話 医学と美術のあいだ
第18話 聖人の力と呪い
第19話 戦争と美術
第20話 回顧展の流行 

正直それ書いちゃってどうなの?!と思うことまで。美しい美術の裏側に潜む闇の部分を、自由闊達な筆と類まれなる数多の引き出しをフル活用し15の短文で紹介する痛快な一冊です。

裏側からみた美術史まだお手に取られたことのない方、是非是非!超お薦めです!!

尚、神戸大学の学生さんが宮下規久朗先生にインタビューを行った記事がこちらに掲載されています。とっても怖そうな写真が載っていますが、実際はもっと怖いです(笑)



でもでも、人はみかけによらないもの。強面ではありますが、とっても家族思いで気持ちの優しい先生です。サインをお願いすると「Takさま」に加え「ハートマーク」と「魚マーク」まで書いて下さったりするチャーミングな方です。


宮下規久朗著裏側からみた美術史』(日経プレミアシリーズ)

ルネサンスや印象派などメジャーなジャンル以外でも、美術史の中にはかなり刺激的で興味深いエピソードがあふれている。一風変わったトピックの中から炙り出される意外な逸話。凡人に嫉妬した天才、ヌードが取り締まられるとき…美術史の教科書には載っていない異色の掌編20話。カラー口絵つき

池上先生のブログでも太鼓判押されています!

Twitterやってます!

@taktwi

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