青い日記帳 

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「上村松園 素描、下絵と本画」

川村記念美術館で開催中の
「松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画」展に行って来ました。



川村記念美術館が所蔵する「桜可里」を除き、およそ90点近い出典作品の全ては松伯美術館所蔵の作品。大和文華館と同じ近鉄奈良線、学園前駅が最寄駅となる松伯美術館。関東に住まう自分にとっては、そう簡単に行ける美術館ではありません。

そんな松伯美術館より遠路はるばる佐倉の地まで松園の制作の秘密を垣間見るような素描や下図が、やって来ていると知れば行かない手はありません。


上村松園「花がたみ 下絵」1915年

縦2mを超える大きさを誇る「花がたみ」。画像で目にするのとひと味もふた味も違う妙な「迫力」に満ちた作品です。今回の展覧会では「花がたみ」の本画と下絵が隣同士に展示。また2点を囲むように「花がたみ」の素描も。

観る者の心を捉えて離さない、松園の代表作のひとつが、どのような過程から誕生したのか、その一端を知る事ができます。ローマは一日にして成らず。「花がたみ」もまた然り。

東京国立近代美術館での「上村松園展」の際もそうでしたが、精神崩壊ギリギリの虚ろな目をした顔にまず視線が誘われます。なで肩というよりほぼ直線で表現された左肩から離れんとする着物。それをかろうじて食い止める細い髪。

着物の文様は下図やデッサンから相当計算し尽くされたものだと見て取れます。目線が地面まで下がるとそこには、彼女の心情を代弁するかのような壊れた扇が、寂しく描かれています。


上村松園「花がたみ」1915年

右手に抱えたバスケット(花籠)は素描によっては地面に落ちた状態で描かれたりもしています。試行錯誤の末、扇を地面に、バスケットは手に持たせたことが分かります。そうすることによって、最も注目すべき右手の表情が生きて来るのです。

この狂気をはらんだ作品の真骨頂がここに凝縮されています。右手の表現が生きているからこそ、一度観たら忘れられない作品となるのです。顔がいちゃっているから怖いのではなく、この手の、もっと言うなら指先の表現こそが、こちらとあちらの分かれ目。

女の情念は指先に現われる。

これより3年後に描かれたかの有名な「」もまた然り。左指注視してみて下さい。ねぇ、きてるでしょ。

少々お喋りが過ぎたようです。閑話休題。


上村松園「晩秋 下絵」1943年

大阪市立美術館が所蔵するこちらの作品の下絵です。


上村松園「晩秋」1943年
(こちらの作品は展示されていません)

本画だと鮮やかな青色に目が奪われてしまいますが、下絵だとたて膝つい状態が作り出す着物のラインなど「線」の持つ力により違った作品として魅了されます。

また、見慣れた山種美術館所蔵の「砧」の下絵も。


上村松園「 下絵」1938年

今更ながら、これ筆一本で描いているわけです。消しゴムなんてありません。一発勝負のラインです。この下絵を描くまでにどれだけのデッサン、素描に時間を費やしたのでしょう。

師である竹内栖鳳から写生を徹底的に叩き込まれ、時に「女のくせに」と白眼視されながらもひたすら続けた松園だからこそ引ける線。

素描、下絵だからと行って観なくていいや。じゃなく、逆に貴重な機会であり、松園の本画をより深く理解する為にも是非観ておくべき内容の展覧会でした。

最後に「今日の一枚


上村松園「人形つかい」1910年

上村松園展」でも感動したこの作品にこんなにすぐに会えるとは!それだけで満足なのですが、更に下絵も。そして障子で隠れて観えない「人形つかい」たちも下絵ではしっかりと絵が描かれています!!

「上村松園 素描、下絵と本画」展は3月27日までです。

松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画
川村記念美術館
http://kawamura-museum.dic.co.jp/

会期:2011年2月15日(火)〜3月27日(日)
開館時間:午前9時30分−午後5時
(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(ただし、3/21は開館)、3/22(火)
主催:川村記念美術館(DIC株式会社)
後援:千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会
協力:財団法人松伯美術館


松伯美術館
http://www.kintetsu.jp/shohaku/

企画展「松園の描く唐美人」〜唐美人に託した想い〜
平成23年3月15日(火)〜5月15日(日)
松園作品には江戸期の装いに身を包む女性たちが多く登場しますが、中国風俗の唐美人も繰り返し描かれています。当時の画家は漢文、漢詩を教養のひとつとして熱心に学び、絵の題材にも好んで取り上げました。松園も同様に故事に残る女性や理想像としての唐美人を手掛けました。唐美人の変遷をたどることで、松園が追い求めた女性像がどのようなものであったかを探ります。

ツイッターやってます。
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2432

JUGEMテーマ:アート・デザイン


近代日本画を代表する画家上村松園(1875-1949年)は、女性としての強い意志と品格を備えた美人画で広く知られていますが、多くの素描も残しています。本展は、素描や下絵を色鮮やかな本画とともに展示し、また、ゆかりの品々をあわせて紹介することで、制作の秘密や、線描のすばらしさ、さらにはその人物像に迫るものです。上村家三代のコレクションで知られる松伯美術館(奈良市)の協力により、本画7点、下絵・素描約80点に加え、愛用の筆や文化勲章などを展観します。

展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

こんにちは
私も先日、この展覧会をみてきました。
人形つかいの下絵は内幕を見た感じで面白かったです。
本画に出ないところまでしっかり設定しているんですね。
21世紀のxxx者 | 2011/03/10 12:23 AM
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前回ご紹介した川村記念美術館の常設を観た後、特別展の「松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画」を観てきました。 【展覧名】  松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画...
上村松園 素描、下絵と本画 【川村記念美術館】 | 関東近辺の美術館めぐり 〜美術・美景・美味を楽しむブログ〜 | 2011/03/10 12:19 AM