青い日記帳 

  
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『レンブラント 光と影のリアリティ』
角川書店より刊行された『レンブラント 光と影のリアリティ』を読んでみました。


レンブラント 光と影のリアリティ熊澤 弘(著)

【著者紹介】
熊澤弘(クマザワヒロシ)
1970年生まれ・東京藝術大学大学院修了。東京藝術大学大学美術館において、「線の巨匠たち展」(2008年)などの企画展を担当。現在は国立西洋美術館客員研究員。オランダ美術史、西洋素描・版画研究を専門とする。


日本において現在でこそ、オランダの画家の一番人気はフェルメールですが、ほんの10年前までは、オランダを代表する画家と言えば間違いなくレンブラントでした。

現存するさ作品が約35点しかないフェルメールにくらべ、レンブラントその10倍の作品が残されています。(レンブラント・リサーチ・プロジェクト[RRP]が調査に乗り出す前は実に600点以上のレンブラント作品が世界中にあったそうです)

また油彩画のみならず、版画も数多く手掛けたレンブラント。63歳という長寿も当時のオランダでの名声もフェルメールとは比較になりません。


レンブラント・ファン・レイン(1606-69)
東洋風の衣装をまとう自画像》1631年
パリ市立美術館/ⒸPetit Palais/Roger-Viollet

『レンブラント 光と影のリアリティ』によると、明治期、黒田清輝は日本美術が向かう方向として「レンブラントではなく、光琳になろうではないか」と声高に語ったそうです。

100年以上昔から日本美術の「仮想敵」としレンブラントを日本人が意識していたこと物語るエピソードです。しかし、現在の我々がどれほどこの大画家のことを理解しているかというと疑問符がとたんに頭の上に現われます。

著者、熊澤氏もこのように述べられています。
黒田と天心がこのような「レンブラント観」を提示してから、100年以上の年月が経過した。この間に、私たち日本人の西洋美術史の知識は比較にならないほどに増え、オリジナルの作品を鑑賞する機会も激増した。黒田や天心が日本美術のカウソターパート、あるいは「仮想敵」としたレンブラントに触れることは実に容易になった。しかし私たち日本人がこの芸術家に対して抱くイメージは、100年前からほとんど変わっていない。


レンブラント・ファン・レイン(1606‐69)
音楽を奏でる人々》1626年
アムステルダム国立美術館/ⓒCollection Rijksmuseum, Amsterdam

国立西洋美術館で開催される「レンブラント展」を前にし、自分もただ茫漠としか捉えていなかったこの大画家について体系的な知識が欲しいと思い手にした本がまさにレンブラント 光と影のリアリティでした。

角川アートセレクションシリーズは、一人の芸術家に焦点を当てた「初心者にも最適なハンディサイズのガイドブック」です。これまで、フェルメール、ピカソ、ルノワール、若冲、黒澤明、ゴッホまで刊行されています。

文庫本サイズながら、カラー図版も比較的多く盛り込まれた贅沢な作りになっているものです。

熊澤氏にお伺いしたところ、元々刊行の時期は早い時期だったそうですが、諸般の事情により遅れてしまい、展覧会の日程とタイミングを合わせて出されることになったそうです。


レンブラント・ファン・レイン(1606-69)
三本の十字架
◎第3ステート、1653年
大英博物館/ⓒThe Trustees of the British Museum

地震と停電の影響で「レンブラン展」自体の開幕がずれ込んでしまい、まだオープン出来ない状況にあります。災い転じて福となすではありませんが、この機会に名前だけは知っているけど、その生涯・作品については具に知らないこの画家について文庫本で軽く予習をしておくのがよろしいかと。

【目次】
プロローグ 「レンブラント」に対するイメージ
第1章 才能ある若き天才のデビュー(〜1631)
第2章 アムステルダムでの活躍
第3章 称賛と批判
第4章 レンブラントのコレクション
第5章 “夜警”前後
第6章 レンブラントの後半生
第7章 晩年と「ラフな様式」


これまで知られているレンブラントの生涯・作品に関わる情報を、できるだけ簡素化して紹介することを主眼に置き書き進められています。そのため、この本に書かれていることで、「新発見!」という類の情報は殆どありません。

しかし、同時代の証言を多めに紹介されている点がこの本の真骨頂とも言える点です。レンブラントという画家が当時どのように「見られて」いたのか、と言う点に自ずと関心が行くように書かれています。


レンブラントが当時から他の画家の追随を許さぬ人気を誇っていた理由を熊澤氏は「オリジナリティー」に焦点を当て見事読み解いています。

レンブラント作「トビトとアンナ」とそれに先行し存在していたウィレム・バイテヴェッフによる同主題版画を対比させながら、レンブラントの歴史画としてのオリジナリティーを解説。成程、こうして見るとレンブラントが何故人気を博していたのかが手に取るように分かります。


レンブラント・ファン・レイン(1606-69)
書斎のミネルヴァ》1635年
個人蔵/ⒸPrivate Collection, New York

最後にいま一度、著者の熊澤氏より。

レンブラントのような画家の「モノグラフ」を作るのは、扱う領域が多岐にわたるのでなかなか難しいものがあります。「手際よくまとまった」というものではないと思いますし、そもそも図版サイズが小さいため、詳細が分からない、というところもあると思いますが、さらに多くの専門的なレンブラント本へと継続していただく切っ掛けになれば幸いです。レンブラントの作品本体をじっくりと鑑賞するための後押しになればと思っております。

レンブラントはどのように画家としての成長を果たし、何を意図して作品を生み出したのでしょう。生み出した作品は、100前から現在に至るまで、どのように受け止められてきたのでしょう。



「レンブラント展」監修者の幸福先生のこちらの本と併せて是非!もっと知りたいレンブラント―生涯と作品


レンブラント 光の探求/闇の誘惑
2011年3月12日(土)〜2011年6月12日(日)

展覧会公式サイト

3月25日(金)まで臨時休館。3月26日(土)27日(日)は企画展「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」開館予定。

因みにこの記事の中で紹介している4点のレンブラント作品は、全て「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」で観ることが出来ます!!


Kadokawa Art Selection
レンブラント 光と影のリアリティ
熊澤 弘(著)

“黄金の世紀”と賞賛された17世紀のオランダで、随一の画家として名を馳せたレンブラント。輝かしいデビューを飾り、芸術家としての「華やかなりし前半生」を過ごした彼は、代表作“夜警”を完成させると一転、「転落・没落の後半生」を送ることになる。そんな浮き沈みの激しい生涯、彼は光と影を自由に操り、最後まで傑作を世に出し続けた…。レンブラント絵画の魅力と、その波乱の人生をたどる、レンブラントファン必読のガイド本。


もっと知りたいレンブラント―生涯と作品
幸福 輝(著)

本書ではレンブラントの生涯をたどりつつ、「光と影」「物語画」「版画」「家族」など多角的なテーマのもとに作品を読み解く。特に最大のテーマ「光」の探求について、そして明暗表現の可能性を追求した版画について詳しく考察する。

Twitterやってます!

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