青い日記帳 

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『西洋絵画のひみつ』

朝日出版社より刊行されている『西洋絵画のひみつ』をご紹介します。


西洋絵画のひみつ』 藤原えりみ(著)

昨年(2010年)3月に刊行された『西洋絵画のひみつ』。このブログをお読みになっていらっしゃる方ならほとんどの方がお持ちであろう、絵画鑑賞にか欠かすことの出来ない一冊。

印象派の風景画と違い、それ以前の西洋絵画には多くの約束事が含まれていることはご存じの通り。それは主にキリスト教の主題ですが、それ以外にも多くの決まりがあります。

それらを一冊の本に現わすことは、とても無理なこと。あらゆることを網羅しようと意気込んでしまった結果、読者からそっぽ向かれてしまうような本では困ります。


「持っているもので、だれだかわかる!」
ギリシャ・ローマ神話のアトリビュートの例


その辺のさじ加減が絶妙なのがこの本の人気のひとつでしょう。著者の藤原えりみさんは、雑誌『BRUTUS(ブルータス)』の美術特集や『美術手帖』での執筆をなされています。制約のある紙面にどう「情報」を盛り込んでいったらいいのかはお手の物。

また東京藝術大学他で教鞭を執られ学生とのやり取りも積極的に行っていらっしゃることもあり、上から一方的に伝えるのではなく、まさに双方向的な謂わば読者目線に立った文体、内容となっています。

【『西洋絵画のひみつ目次

ひみつその1 キリスト教美術は、聖書の「さし絵」だった!
キリスト教美術は、聖書の「さし絵」
どうして「旧約」と「新約」があるの?
旧約聖書よりユダヤの民の歴史ダイジェスト
新約聖書よりイエスの生涯ダイジェスト

ひみつその2 「日常」が描かれるまで、長い時間が必要だった!
聖堂から絵画や彫刻が消えた
風俗画が生まれる
風景画が生まれる
静物画が生まれる

ひみつその3 なぜ、ヌードなの?
古代ギリシャ人にとって、「はだか」とは?
ヌードを描くには口実が必要?
口実をぬぎすてたヌード

ひみつその4 むかしといまでちがう絵画の「つくる」「売る」「飾る」
ひとりで絵を描いてたわけじゃない
キャンバス画が美術品市場を広げた
「驚異の部屋」と美術館の誕生


比較的大判なサイズの本書には多くのカラー図版が用いられ、合間に合間に、いとう瞳さんのちょい緩めなイラストが挿入されています。美術書にありがちな堅苦しさも排除しているのも大きな特徴のひとつです。


「すべてははかない」
ヴァニタス画


このページだけ読んだだけでも、現在渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」に並んでいた静物画(ヴァニタス画)のひみつが手に取るように分かります。

カラー図版を掲載するには画像使用料がかかります。そこを逆手にとってのイラスト。しかしあくまでもイラストは補助的な役割であって、メインは本物の絵画。著者の意向でなるべく多くのカラー画像を盛り込んだそうです。

色々な面から考えて定価1600円は安過ぎると思うのですが、果たして採算はとれているのでしょうか?ちょいとこちらが不安になってしまうほど充実した内容中身です。

そう言えば、昨日金沢百枝さんとのTwitterでのやり取りで計画停電になったら大学の授業パワポ使えないし、電子黒板を使っているところどうするんだろ…なんて話題でちょっと盛り上がりました。
(金沢さんの著書イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』レビュー


@taktwi 美術史の板書。案外、いい授業形態にできるかもしれない!思いつきました!!手書きにすると要点が絞られるし、そのひとが見て気づいてるか気づいてないかが明確になるのでいいかも!ありがとうございますless than a minute ago via Echofon


計らずとも藤原さんの『西洋絵画のひみつ』はまさにそれを紙上で具現化しているかのようです。画像使えないならいっそのこと分かりやすいイラストで!


「キリスト教の聖人たち」

まさにこれまでに無かった切り口で、難解とされる西洋絵画にやさしくアプローチできる一冊。どこかのレビューに「入門書に過ぎない」なんてこと書いてありましたが、前書きしか読んでない浅はかな感想。

これから西洋美術を学ぶ人も、もう何十年も西洋美術に触れて来た人にもおススメ出来ます。「知っているつもり」で知らないこと沢山ありますからね。我々。


「イエスの弟子。十二使徒を紹介します。」

著者との距離感がこれほど近しく感じられる本も珍しいかと思います。山ほど知識があり『でも、これがアートなの?―芸術理論入門 』といった難解な本の翻訳もなされている方が書いたとは思えません。

言ってみれば著者の人がら、人間性がそのままこの本の読みやすさ、分かりやすさに繋がっているのでしょう。全ての方に強力にお勧め出来る一冊です。

藤原 えりみ(@erimi_erimi
美術ジャーナリスト。1956年、山梨県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了(美学専攻)。美術雑誌「みづゑ」編集スタッフを経て、フリーランスで単行本・雑誌の編集、翻訳などにたずさわる。武蔵野美術大学・女子美術大学・東京藝術大学非常勤講師

いとう 瞳
イラストレーター。1973年、千葉県生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業。以後、個展等で作品制作を続けながら主に書籍、広告を中心にフリーで活動中。TIS会員


西洋絵画のひみつ』 藤原えりみ(著)

(前書きより)
ここでお話しできることは、西洋美術の「ひみつ」の入り口にすぎないかもしれません。けれども、みなさんがもっと知りたいと思われるなら、このひみつの部屋はどんどん奥が深くなっていくことでしょう。隠し通路や隠し部屋、隠し階段さえ見つかるかもしれません。この本が、ひみつの部屋探索のためのガイドとなってくれればうれしく思います。


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2457

JUGEMテーマ:アート・デザイン


今までにない切り口で、西洋美術にまつわる4千年をあざやかに解き明かす。誰もがすっきり、絵をもっと楽しめる「絵画の見方」決定版!難しそうなキリスト教絵画から、ヌードばかりのギリシャ神話画、一見ただ豪華な食卓を描いたかに見える静物画まで——描かれたのには理由があります。実は西洋絵画は、現代の私たちにも共感できるエピソードの宝庫なのです。本書は、聖書やギリシャ神話にまつわる悲喜こもごものエピソードにはじまり、宗教上の考え方がどのように深く絵画とリンクしているか、歴史が絵画をどう変えたかなど、イラストと名画満載で、楽しく解き明かします。そして最後に、4つの「ひみつ」を通して全体をながめると、あるひとつの大きな絵画の「流れ」を体感できることでしょう。聖書の時代から印象派まで、美術にまつわる4千年をこの一冊で。西洋美術を根っこから理解するための、いちばんわかりやすくて深い絵画入門。

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