青い日記帳 

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「ヘンリー・ダーガー展」

ラフォーレミュージアム原宿で開催中の
「ヘンリー・ダーガー展 アメリカン・イノセンス。純真なる妄想が導く『非現実の王国で』」に行って来ました。



ハウス オブ シセイドウで2005年に開催された「Passion and Action―生の芸術 アール・ブリュット」展で初めて目にしたヘンリー・ダーガー.あの日から6年。再び予測不能な衝撃と他では決して味わえない感動を得るため雨の降る中ラフォーレ原宿まで。

ヘンリー・ダーガーが日本で初めて紹介されたのが1993年「パラレル・ヴィジョン展」@世田谷美術館。ダーガーが40年暮らした部屋の家主で、遺作の発見者であるネイサン・ラーナー氏からのオマージュも展示されています。


まずはヘンリー・ダーガーの生い立ちから「大人」になるまでをパネルで解説する「Early Days」でダーガーが歩んだ道のりをしっかり予習。ここ大事です。

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

ダーガーの作品の謎を解き明かすためのヒントが幾つも隠されています。例えば執拗に彼の作品に登場する少女たち。しかし生きた眼差しはほとんど感じられず、作家との距離感が異様なまで感じ取れます。

それもそのはず、彼の人生の中で女性と接した時間が極端に少ないのです。ヘンリー・ダーガー4歳の誕生日を迎える直前、出産時の感染症により母親が他界。生れたばかりの妹はすぐさま養子に。

幼い男の子の心に深い傷を残したことは想像に難くありません。ヘンリーは「自分には母親の記憶がなく、妹の顔も、名前も知らない。」と綴っているそうです。


ヘンリー・ダーガー(左)『サリー・フィルダー、デイジー、へティ、ヴァイオレット、アンジェリニア・アーロンバーグ、ジョイス、ジェニー、アンジェリン、キャサリン、マージョリー・マスターズ』(右)『マルコチノの第二戦、グランデリニアンが仕掛けた破壊的爆発からも逃走。
Collection of Kiyoko Lerner (C)Kiyoko Lerner,2011

男の子にとって女性親は幾つになっても恋しいもの。それなのにその大事な大事な母親の記憶が欠落し、妹も家から連れ去られ、父親と暮らす破目に。

ほどなく父親も亡くし天涯孤独の身となったダーガー。シカゴの街を一歩も出ることなく54年間黙々と淡々と病院の掃除夫として働きながら糊口を凌ぐ暮らしを。


ヘンリー・ダーガーが暮らした部屋と本邦初公開の遺品の数々。彼が使用していた画材も展示されています。水彩絵の具は子供用のものだったりします。

しかし、皮肉なことにこうした「孤独」な環境こそが大作を生み出すことに。来る日も来る日も幼い時と同じあだ名「クレイジー」と呼ばれながら病院の掃除夫として働き、アパートに帰り独り黙々とタイプライターに向かい世界一の長編小説『非現実の王国で』を打ち続けたダーガー.

費やした時間何と60年!!間違いなく世界一の長編小説『非現実の王国で』(1万5千ページ以上)の挿絵として描かれたこれまた膨大な数の絵画。


作品展示風景。横長の薄い紙両面にびっしりと水彩画で描かれているヘンリー・ダーガーの作品。両面を観られるような工夫がされています。「プロペラ型」?のパネルを採用。

照明も明るくし過ぎると支持体が薄いので裏に描かれた絵が透けて見えてしまうそうで、やや照度を落とした展示会場となっています。これが効を奏し独特のムードを漂わせています。


ヘンリー・ダーガー『キラキラ輝くブレンゲン。ボイ・キング・アイランズ。一匹は年若いタスカホリアン、もう一匹は人の頭をしたドロテリアン
Collection of Kiyoko Lerner (C)Kiyoko Lerner,2011

誰に頼まれたわけでもなく、誰に見せることもせず、ひたすら書き・描き続けた『非現実の王国で』を軸に展覧会は展開されています。

物語の正式名は『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリニアン戦争の嵐の物語

悪魔を信奉し、子供を奴隷として虐待する邪悪な大人の男たちが君臨するグランデリニアと、子供奴隷制の廃止を求めるキリスト教の国々の間で繰り広げられた、4年と7カ月におよぶ戦争の歴史。


「プロペラ型」の展示がその迷宮を更に深化させ、鑑賞者の通常の感覚(美術館での鑑賞の常識)をどこかへ連れ去ってしまいます。

ヘンリー・ダーガーの非現実と現実のまさにパラレルワールドの如き世界観。来歴を読んでも作品を目の前にしてもその謎は晴れることありません。そればかりか迷宮の奥へ奥へ自然と足が向かってしまいます。そう無意識に。

残虐なシーンあり、一面のお花畑のシーンありと一見荒唐無稽の破天荒な作品に観えますが、それは理性的、合理的に観ているからに過ぎません。

アウトサイダーアート、アール・ブリュット。そんな言葉はあくまでもこちら側の理屈から派生したもの。ヘンリー・ダーガー自身はいつだって大真面目で彼の王国を築きあげていたのです。来る日も来る日も。。。


そうそう、ヘンリー・ダーガーの作品とかく女の子に目が行ってしまいがちですが、実は最もユニークで彼の「本性」が現われていると思われるのが、雲です。

よーく、雲に注目して観て下さい。

「狂気」「子供」などを近代的価値に対峙するものとして再認識・・・なんてご託を並べる必要ゼロ。まずは彼の作品と対峙してみて下さい。

映像作家のブリュノ:デシャルム氏(abcdコレクション代表)の映像作品に、2008年滋賀県立近代美術館が展覧会を開催した際、日本語字幕が付けられた約10分間のビデオも会場内で流れています。必見!

映像音楽が適度な音量で会場内に響き一層独特の展示空間となっています。日本初公開となる約80点にものぼる作品に加え、ヘンリー・ダーガーの遺品の数々それに彼を畏敬する著名人からのオマージュなどから構成されています。

今回の展覧会は、作品所有者であるキヨコ・ラーナーさん、ロバート・ロスさん、シカゴのヘンリー・ダーガー研究拠点「イントゥイット」からの貴重な作品提供に加え、日本側の監修者に小出由紀子さんが加わりタクトを振っていらっしゃいます。質・量・内容の三拍子揃ったダーガー展です。

「ヘンリー・ダーガー展」は5月15日までです。是非!

小出由紀子さんら貴重なインタビュー等満載の『芸術新潮』古本屋さんで見つけたら迷わずゲットです!


芸術新潮 2005年 11月号
特集:アール・ブリュットの驚くべき世界


ヘンリー・ダーガー展」
〜アメリカン・イノセンス。純真なる妄想が導く「非現実の王国で」

会場:ラフォーレミュージアム原宿 (ラフォーレ原宿6階)
会期:2011年4月23日(土)〜5月15日(日)   
時間:11:00〜20:00
[5月15日(日)は18:00まで]
料金:一般800円 / 学生600円
※ 小学生以下、ラフォーレカード会員は無料

こちらの展覧会も併せて是非!
アール・ブリュット・ジャポネ展

Twitterやってます。
@taktwi

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JUGEMテーマ:アート・デザイン


家族も友人もなく、天涯孤独に生きたヘンリー・ダーガー。彼はその侘しい実生活を棄て、自身が夢想した物語『非現実の王国で』の中で生き、そこで起った出来事を、生涯を賭して記録しました。

ダーガーにとって『非現実の王国で』を綴り描くことは、人に見せるためでも、余暇の楽しみでもなく、生きることそのものでした。この特異な創作は、下宿先の大家夫妻によって偶然に発見され、彼の死後、人々の目に触れることになりますが、その不可思議な世界観と強烈な表現欲求は観る者を圧倒し、魅了し、心を捉えて離しません。

しかし、この物語を生み出したダーガーという人物は多くの謎に包まれたままです。彼は一体何者で、何を考えていたのか?何を愛し、求めていたのか?心穏やかに最期を迎えることができたのか?など、多くの謎が残されているのです。

本展は、最新の研究成果のもと、ヘンリー・ダーガーの実人生と『非現実の王国で』を解き明かすことを試みる企画展です。会場は、ダーガーの幼少期にフォーカスをあてる[Early Days]、ダーガーが興味を抱いていた事物を紹介する[Archeology of Henry Darger's Room]、『非現実の王国で』の挿画64点(この内、21点が本邦初公開)を展示する[Welcome to the Realms of the Unreal]、自叙伝と本邦初公開となる遺品6点を紹介する[History of My Life]、様々な分野の著名人から寄せられたコメントを通じてダーガー像に迫る[Hommage]という5つのセクションで構成。

彼が人生の後半40年を暮した部屋から見つかった遺品や書き物を手がかりに、ヘンリー・ダーガーの虚実に迫ります。


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この記事に対するコメント

こんにちは
ヘンリー・ダーガー展は見逃せませんね。
何年か前に原美術館でも見ましたが、作品の数々は今も脳裏に浮かびます。
見た目の衝撃も凄いですが、内面的なものがストレートにくるので、色々と考えさせられます。
21世紀のxxx者 | 2011/04/26 12:36 AM
妻に連れられ見に行ってきました。
作品はすべてパノラマ状になってまして、まるで目の前でくり広がる情景
そのものでした。彼にはこだわりがいくつかありまして『絞殺シーン』と
『雲』の描写でした。『絞殺』には抑えがたい衝動というか願望のような
ものを感じました。そして、『雲』なんですが彼は気象現象に興味を持って
いて、数少ない他人との会話においても気象について話したそうです。会場内
にある説明にもあるように『気象現象=天啓』つまり『雲=神性のなにか』
ってことでしょうか。なにやら永遠のトラウマを感じます。
懐かしさと魂の底から感じる危険への憧れ願望
ヘンリー・ダーガーの発見自体が一つの事件です。
追伸 題名忘れましたが、角のある少女達の絵の右上あたりの雲に注目して
見てください。
田舎の工員 | 2011/05/06 3:37 PM
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【アート】ヘンリー・ダーガー展 | 【@らんだむレビューなう!】 Multi Culture Review Blog | 2011/05/06 10:46 PM
ヘンリー・ダーガー 展 会場: ラフォーレミュージアム原宿 スケジュール: 2011年04月23日 〜 2011年05月15日 18:00 住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-11-6 LAFORET HARAJUKU 6F 電話: 03-6406-5979 ファックス: 03-6406-6425 ヘンリー・ダーガー。 ご存
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