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ホキ美術館 建築探検セミナー

昨年、千葉市緑区あすみが丘にオープンした日本初の写実絵画専門美術館、ホキ美術館。2010年11月3日の開館日より140日で入館者7万人を突破したそうです。


ホキ美術館 開館記念特別展
2010年11月3日〜2011年5月22日

2011年5月22日まで「ホキ美術館開館記念特別展」として写実絵画コレクション約300点の中から163点と美術館オープンに際し100号サイズで描き下してもらった大作が公開されています。

NHK日曜美術館にて放送された「原点にして究極! 超写実絵画 野田弘志」野田氏の作品も勿論展示公開中です。

ホキ美術館 HOKI MUSEUM
http://www.hoki-museum.jp/

今日は去る2月17日(木)に日建設計の鈴木隆氏を招き、開催されたギャラリートーク「建物探検セミナー」の様子をお伝え致します。(掲載に際しては美術館の許可を得ています。)

建築探検セミナー 第1回 日建設計 鈴木隆氏

(美術館建築に携わった日建設計の山梨知彦チームの鈴木隆さんがわかりやすく解説しました。)

ホキ美術館は、北側の住宅地と南側の昭和の森に挟まれた立地条件にある点がまずユニークです。美術館へのアプローチは北西の住宅地側からとなっています。見ていただくと分かりますが、住宅地にあってその存在感が威圧的でなく、うまく周辺と馴染むように配慮しました。積み上げられたギャラリーは西側では束ねられています。



一方昭和の森側に移動してみると、束ねられていたギャラリーは、反対側(西)ではこのように徹底的に配置されています。昭和の森は年間を通して非常に多くの来園者で賑わいます。公園の来園者が一目見て「入ってみたい!」と思ってくれれば美術館も賑わいます。

タ方になると窓を通して、外から絵画が見えてしまう構成も、意図的なものです。これなら公園で遊んだ後、入ってみたくなりますよね。そしてこの跳ね出しは根元から約30mになります。

構造は薄い鉄板を骨の両面に張り合わせた厚さ25cmの板を組み合わせて作っています。薄い鉄板というとフニャフニャなイメージがあるかもしれませんが、紙で出来たダンボールを想像してみてください。紙もダンボールのように心材に両面から張り合わせると、とても強い強度が得られます。この建物では鉄で出来たダンボールのような板で床・壁・屋根をつくっていますので、このような宙に浮いたかたちが可能になっています。



外から見える面は全て構造体の鉄板で、構造体がそのまま外装になっている他、内部を見て頂くと分かりますが、構造体である天井(屋根)の板に殆どの設備機器が埋め込まれています。一般的な建物は、骨を最初につくって、その後に設備機器をつけて、最後に仕上げ材を貼って設備を隠し、そして完成。という流れで作られますが、ホキ美術館では構造=設備=仕上げという大変ユニークなものになっています。兼用できることは無駄の削減に繋がりますから合理的な設計といえると思います。ただし沢山の要素を一体化するわけですから技術面での検証は多岐にわたります。この建物はBlM(ビルディングインフォメーションモデル)という3次元設計を通して進めることで、複雑な条件や多岐に渡る検証が可能になりました。

1本のギャラリーだけが下のギャラリーから60cm浮いていますが、この60cmという寸法も中庭の樹木の健全な発育のために必要となる風環境(通風の無い場所では樹木が枯れる)を3次元シミュレーションにより確認した上で設定しています。

内部は細密画鑑賞に相応しい空間づくりを徹底しています。細密画は非常に繊細ですから、鑑賞にあたっては、絵画以外のものは存在を主張してはならないと考えました。ですから、この美術館には吊り下げ照明や絵画を吊るすワイヤー、壁面の目地は一切ありません。床は長い時間の鑑賞に配慮して、足腰の負担が少なくなるようにゴムチップ舗装にしています。沢山の来館者の足音も「コツコツ」と響くことはありません。



天井を見上げると無数の孔が開いています。この孔に照明や空調の吹き出し、非常時の排煙、放送設備といった建築設備的なものを全て落とし込んでいます。わずか6cm程度の無数の孔に全ての機能を落としこんでしまっているので、一目見てもそれがスピー力一なのか空調なのか専門家で無ければ判断できません。

照明は細密画鑑賞用に今回新規開発したLEDライトです。一枚の絵に対して10灯から30灯の器具で照射しています。光源の数を増やすことで、作品のハイライトに光を集め、背景には光を抑えるといった非常にデリケートなフォーカシングが可能となりました。また、よく見て頂くと分かりますが、2色の光が混ぜてあります。白い光と赤い光です。実は作品によって、求められる光の色が違うのです。これらの照明は調光して明るさが調節出来るようになっていますから、作品一枚一枚に理想の光を的確な場所に照射することが出来るということです。



ギャラリーを進んでいくと、折り返して別のギャラリーに入ります。各ギャラリーの構成はまったく同じものですが、入り込む自然光の量や、天井高・幅を少しずつ変化させることで空間体験が単調にならないように工夫しました。

大階段の部分では室内楽コンサートが可能になっています。音響性能上、階段のけこみ部分が抜けていることが理想でした。この隙間は音響のためのものでもありますが、裏側のギャラリーに入って頂くと分かるとおり、とても印象的な風景をつくる仕掛けにもなっているのです。



細部へのこだわりは様々なところにあります。例えば階段の手すりや防煙垂れ壁といったものにも一工夫しています。細密画を最良の状態で見せるギャラリーをつくることが重要な訳ですから、絵画以外のものは存在感が消えていて欲しい。機能をきちんと守り、来館者が違和感なく使用できることが大前提での話です。こうして内部空間をつくり込んでいったわけです。

保木さんからの依頼は、コレクションを最大限に魅力的に見せる施設はもちろんであって、同時に、その機能をなんら損なうことなく、建築自体もまたコレクションの一部となりえるものにしてほしいというものでした。ですからまずは細密画鑑賞に最適なギャラリーの構築を徹底する。そして徹底的に作りこんでいく際には、様々な技術が必要です。



30m張り出す浮遊するギャラリーを作るための鋼板構造技術やそれに埋め込まれた空調システム、前例の無いLEDによる絵画用照明、サロンコンサートのための音響技術などなど…。こうしたギャラリーを作り上げるエンジニアリング自体を建築表現の主題にして、ギャラリーという形式だけで建築作品化することを目論んでいます。ですからこの建築においては、外部も内部もギャラリーしかない単純で明快な構成となっているのです。(2月17日)


注:館内の写真は内覧会時に美術館の許可を得て撮影したものです。

ホキ美術館の写真は以下の記事にたっぷりあります。
ホキ美術館:内観
ホキ美術館:外観

ホキ美術館概要
所在地:千葉県千葉市緑区あすみが丘東
敷地面積:約3,860
延床面積:約3,720
展示室面積:約1,800
階数:地上1階、地下2階
構造:RC造、一部鉄骨造
工期:着工2008年 10月〜竣工2010年秋
設計:日建設計
施工:大林組

こちらのインタビューも是非。
【保木博子室長インタビュー】
【片岡護シェフインタビュー】

(ホキ美術館イタリアン「はなう」をプロデュース)

写実絵画専門美術館 ホキ美術館 開館記念第2弾展覧会決定。

時を超えてー静物と風景画展
2011年5月28日〜11月13日

ホキ美術館 HOKI MUSEUM
http://www.hoki-museum.jp/

所在地 〒267-0067 千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15
開館時間 月・水・木・土 /10:00〜17:00
金 /10:00〜17:00
日・祝 /10:00〜17:00
(入館は閉館の30分前まで)
レストラン営業時間:
ランチ 11:00〜15:00(最終入店14:00)
ディナー 17:00〜21:00(最終入店20:00)


アクセスについてはこちらで。

Twitterやってます。
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2495

JUGEMテーマ:アート・デザイン


講師:日建設計 鈴木隆氏
2月17日(木)16:00〜18:00頃まで

5つの回廊を組み合わせ、そのひとつは30m宙に浮いているホキ美術館の建物は建築界でも新たな美術館建築として大変話題になっています。
2009年のスペイン建築祭ではFuture部門として世界のベスト5にはいりました。
ホキ美術館の設計に携わった日建設計の鈴木隆氏が、さまざまなこだわりの部分をていねいに解説いたします。建物外部の説明から始まり、閉館後は館内で内部を詳細にわたってご説明いたします。参加された方は、当日のみ絵画作品以外の建物内部の撮影もOKです。ぜひふるってご参加ください。

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