青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< August 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 特別展「孫文と梅屋庄吉」チケット&「絆伽哩」プレゼント | main | 「ルドゥーテ『美花選』展」オリジナルグッズ >>

「展覧会の仕掛け人に聞く」(後篇)

前回インタビュー記事を掲載したこちらの記事「展覧会の仕掛け人に聞く」(前篇)の続きとなります。

今回はひとつの展覧会に的を絞りどのように作品出展交渉をされていくか等、普段知り得ない、展覧会開催の裏側のお話をまとめてみました。

過去に東映さんが手掛けた展覧会で直近のものと言えば、2009年8月から昨年2010年8月22日まで日本全国5か所を巡回した「トリノ・エジプト展」があります。

まだ記憶に新しいこの展覧会が日本で開催されるまでの経緯を東映株式会社事業推進部 展博事業室室長のアイリーン近藤さんに引き続きお話を伺ってみましょう。


東映株式会社事業推進部 展博事業室室長アイリーン近藤さん

Tak「単刀直入に伺いますが、日本ではほとんどの方が知らないトリノ・エジプト博物館の展覧会を開催しようと思った経緯を聞かせて下さい。」

アイリーンさん「東映が過去に2回、展覧会を開催したドイツのヒルデスハイム博物館にお勤めされていたエレーニ・ヴァシリカさんがトリノへヘットハンティングされ異動になったのがそもそものきっかけです。

(参考)
ドイツ・ヒルデスハイム博物館所蔵
「古代エジプト展ー永遠の美」(2002年3月〜2003年2月)
「古代エジプト展ー甦る5000年の神秘」(2005年7月〜2006年10月)

2005年だったでしょうか、エレーニ・ヴァシリカ館長からお誘いを受け、トリノまで行ってみたところ、エジプト美術品がまぁあるわあるわ。その質の高さ数にビックリしてしまいました。こんな作品がまさかイタリアにあるなんて…そしてそこで、これを日本に紹介しない手はないと思い立ち展覧会開催に向け交渉へ入った次第です。


アメン神とツタンカーメン王の像」新王国第18王朝時代、ツタンカーメン王〜ホルエムへプ王治世(前1333-前1292年頃)の前で微笑むトリノ・エジプト博物館 エレーニ・ヴァシリカ館長

Tak「2005年から展覧会開催に向け動き出し実際に開催されたのが2009年ですが、展覧会準備期間としてこれくらいはかかるものなのでしょうか?」

アイリーンさん「そうですね。4,5年は準備期間として必要です。前回もお話しましたが、我々は現地へ直接自分たちで出かけ、相手の博物館スタッフと面と向かい話をしてくることでメールやFAXでは築けない信頼関係を得ながら展覧会作りを行っているので、どうしても時間がかかります。

オーバーな表現かもしれませんが、自分の生涯のうち準備期間の4,5年間をずっとひとつの展覧会開催に向け突き詰めていくことにより、観に来て下さる方の記憶に残る展覧会になるのではないかと思っています。


トリノ・エジプト博物館(Museo Egizio)

Tak「だいたい何回くらい現地トリノへ足を運ばれたのでしょうか?」

アイリーンさん「多過ぎて(笑)記憶定かではありませんが少なくとも20回は現地へ出向いています。長い時ですと4週間もトリノに滞在したこともありました。

我々は専門家ではないのでアジェンダの中で高いプライオリティーを築くしかありません。確実に内容のある展覧会にする為には相手が示して来たものだけではなく、こちらが欲しい作品をリクエストしていかねばなりません。交渉を重ねることで『日本人が好きな展覧会』に仕立て上げて行きます。

Tak「相手側が示してくる貸出しリストと自分たちが借りたい作品リストとの溝を埋めていくのに、かなりの時間を要するわけですね。」

アイリーンさん「はい。まずは自分たちがどんな展覧会を開催したいのかという『ドリームリスト』を作り、それに基づいて少しずつ小出しに交渉していきます。その為にも何度も足繁く通う必要があるのです。

でも、不思議なもので長い間、何回も話をしていくと相手もシンクロしてきます。時にはこちらが「これは無理」と初めから諦めていたものまで、あちらから「これなんてどう?」と提示してくれたりもします。ここまで来ると話はスムーズに進みます。


神秘的な雰囲気を醸し出し、ドラマティックな空間演出でトリノ・エジプト博物館を訪れる人々を魅了している空間演出。「アビエイター」や「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」など主に映画の美術監督を務め、2度もアカデミー賞を受賞した美術監督ダンテ・フェレッティによるものです。

相手が渋々「貸してあげる」という段階ではダメなのです。自然と作品がレベルアップしてこないと、良い展覧会となりません。相手も中途半端なものを出したら美術館の顔に傷がつくことに気が付いてくれると良い展覧会ができるのです。

Tak「全て手作りの展覧会。ゼロから作り上げていらっしゃるのですね。他に御苦労された点などありますでしょうか?」

アイリーンさん「やはり、ヨーロッパから見ると日本は遠い遠い国です。自分たちの博物館・美術館の所蔵品がどんな場所で展示されるのかこちらが幾ら説明しても分かってもらえないことが多くあります。

そんな時は企画の段階で現地の博物館・美術館の館長さんや学芸員さんを日本にお呼びします。日本のミュージアムを観てもらうのと同時に、日本人がいかに展覧会が好きなのかを実際に目で確かめてもらいます。こうすることにより日本とヨーロッパの間にある『距離』がぐんと縮まるのです。


トリノ・エジプト展ーイタリアが愛した美の遺産ー

東京都美術館で開催された「トリノ・エジプト展」の様子。会場の造り込み凄かったですよね〜音声ガイドナビゲーターを俳優の沢村一樹さんが担当されたのも話題となりました。

Tak「なるほど〜『距離を縮める』という発想は素晴らしいですね。それと以前から気になっていたのですが、東映さんが主催される展覧会は他と比べ数多くの会場を巡回しますが、何か理由でもあるのでしょうか?(「トリノ・エジプト展」は5か所に巡回)

(参考:「トリノ・エジプト展」巡回先)
東京都美術館 2009年8月1日〜10月4日
宮城県美術館 2009年10月17日〜12月20日
福岡市美術館 2010年1月5日〜3月7日
神戸市立博物館 2010年3月20日〜5月30日
静岡県立美術館 2010年6月12日〜8月22日

アイリーンさん「シンプルに日本全国のより多くの人に観て頂きたいからです。その為に色々な地域で今後も開催したいと思っています。そして出来るだけ長期間お借りして多くの美術館、博物館を巡回させたいと思っています。

福岡で「トリノ・エジプト展」をご覧になられた方が、この展覧会で初めてトリノにこれだけのエジプト美術を所蔵する博物館があることを知り、現地トリノまで観に行かれたそうです。これは現地の学芸員さんから教えてもらったことです。これまで博物館で目にすることの無かった日本人の姿が目に入り思わず聞いてしまったのだそうです。

Tak「現在、東博で『手塚治虫のブッダ展』映画公開に合わせ開催されていますが、次に予定されている海外の美術館からの展覧会何かありますか?」

アイリーンさん「『世界遺産 ヴェネツィア展 〜魅惑の芸術-千年の都〜』の開催が決まっています。まず江戸東京博物館で2011年09月23日〜2011年12月11日の期間開催され、その後5会場へ巡回します。


「世界遺産 ヴェネツィア展」公式サイト

これも当初は4会場だったものを交渉し合計6会場、15ヶ月の開催としてもらいました。出展作品も当初予定していたよりも素晴らしい作品がやって来ます。沢山の方に是非ご覧になって頂きたいと思っています。

(参照)
東映60周年企画 「世界遺産ヴェネツィア展〜魅惑の芸術‐千年の都〜」記者発表会レポート!


ヴィットーレ・カルパッチョ《二人の貴婦人》 1490-95年
コッレール美術館

ヴィットーレ・カルパッチョ「二人の貴婦人」

Tak「最後に一言、アイリーンさんの展覧会にかける思いを聞かせて下さい。」

アイリーンさん「展覧会事業は会社の利益を出すことも勿論しなくてはいけないことですが、私としては日本という国をもっと海外の人に知ってもらえるチャンスだと思っています。経済的な関係とは違うイメージの『Japan』を打ち出し、世界にアピールして行かなくてはならないかと。日本美術を海外で紹介する展覧会も開催して行きたいと考えています。それが日本の繁栄にも繋がると信じています。

映画のようにストーリーラインがあり物語が自然と聞こえてきそうな展覧会をこれからも多く手掛けてゆければと思っています。

Tak「長時間に渡り貴重なお話聞かせて頂き有難うございました。」


現在、東京国立博物館では東映主催で「手塚治虫のブッダ展」が好評開催中です。2011年5月28日(土)より全国ロードショースタートした映画「手塚治虫のブッダ -赤い砂漠よ!美しく-」とのコラボ展。


手塚治虫のブッダ展公式サイト
http://www.budda-tezuka.com/

海外から多くの作品をこれまで借り、展覧会を開催して来られた、アイリーンさんは一方的に日本がレンタルするだけでなく、これからは日本の文化等をもっともっと海外に紹介して行きたいとの思いがここ数年強くなってきたそうです。


「手塚治虫のブッダ展」会場風景

この映画や「手塚治虫のブッダ展」がそのきっかけになればと思われているそうです。日本で成功した暁には映画のみならず、展覧会もそのまま海外で開催できると良いですね。

そうそう、6月6日(月)〜6月26日(日)まで【賞品付】水樹奈々さん音声ガイドを聞いて、クイズに答えよう!キャンペーンも開催中です。



ブッダ展を、声優・アーティストの水樹奈々さんが深く、わかりやすい解説でナビゲートする大好評の音声ガイドを借り、クイズに答えて応募すると抽選で10名の方に、水樹奈々さん直筆サイン入り非売品ポスターが貰えるそうです。

詳しくはこちらで。


特別展「手塚治虫のブッダ展」

会期: 2011年4月26日(火)〜6月26日(日)
会場: 東京国立博物館 本館特別5室(上野公園)
開館時間: 2011年4月26日(火)〜4月30日(土) 10:00〜16:00
(入館は閉館の30分前まで)
2011年5月1日(日)〜6月26日(日) 9:30〜17:00
(入館は閉館の30分前まで。土・日・祝日は18:00まで)
※4/26〜6/26の会期中、金曜日の夜間開館は行いません
休館日:2011年5月16日(月)、5月23日(月)、6月13日(月)、6月20日(月)、6月21日(火)

主催: 東京国立博物館、東映、TBS
協力: 手塚プロダクション、日本通運、財団法人全日本仏教会、ニトリ、カラーキネティクス・ジャパン
後援: 文化庁、読売新聞社

展覧会ホームページ
http://www.budda-tezuka.com/


映画ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/buddha

「手塚治虫のブッダ展」 | 弐代目・青い日記帳

前回のインタビューはこちら「展覧会の仕掛け人に聞く」(前篇)

これまでのインタビュー関連記事まとめてあります。
インタビュー記事まとめ

【参考】
新聞社の展覧会と著作権・所有権
──朝日新聞社文化事業部「山内 健」


次はこんな人、あんな事をインタビューして欲しい!とご要望御座いましたらTwitter経由でお気軽にお知らせ下さい!

Twitterやってます。
@taktwi


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2531

JUGEMテーマ:アート・デザイン


インタビュー | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
この記事に対するトラックバック