青い日記帳 

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「フェルメールからのラブレター展」(京都)

京都市美術館で開催中の
「フェルメールからのラブレター コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」展に行って来ました。


「フェルメールからのラブレター展」公式サイト
http://vermeer-message.com/

世界中に多く見積もってもおよそ35点しか現存しないヨハネス・フェルメールの作品がこの日本に3点も同時にやって来ている奇蹟。

数の多さだけで見るなら、2008年に上野、東京都美術館で開催された「フェルメール展〜光の天才画家とデルフトの巨匠たち」に7点。2000年の大阪市立美術館で開催された「フェルメールとその時代展」に5点フェルメール作品が来日しています。

しかし、日本にフェルメールブームが興り既に10年以上経過した今、単に数だけではなく、描かれた作品のテーマでフェルメールの世界観にアプローチをかけて行こうとする、新たな契機になる展覧会が今回の「フェルメールのラブレター展」です。

参考:「これまで来日したフェルメール作品


フェルメール3作品展示風景

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

オランダの黄金時代といわれる17世紀。市民たちの識字率の高さと、郵便制度の飛躍的な発達に伴い、庶民の間でも手紙のやり取りが広く普及しました。

手紙を書くことすら億劫になりより簡便なメールでやり取りを済ませている現在の我々の想像のはるか上を行くものがあったはずです。手紙が身近なものとなった17世紀のオランダ市民の興奮たるや。

生活、仕事、人との付き合い、そして恋人同士。「手紙」の現出はまさに劇的な変化を当時の人々にもたらしたに違いありません。そんな時代だからこそフェルメールは6点にも及ぶ手紙を主題とする作品を描いているのです。

今回来日しているフェルメールが「手紙」をモチーフに描いた作品は以下の3点です。


ヨハネス・フェルメール「手紙を読む青衣の女
“Woman in Blue Reading a Letter”1663-64年頃
アムステルダム国立美術館

世界中が注目するこの修復作業を無事終え、まっ先に「フェルメールからのラブレター展」で公開されます!

2010-2011年にかけ「手紙を読む青衣の女」は長年に渡るワニスの変色などを最新の技術により修復され全世界に先駆けて日本で初お披露目となっています。「フェルメールが意図した繊細な細部のニュアンスに富んだ色彩を可能な限りよみがえらせることに成功」したと図録には記されています。

修復以前のこの作品をよく知る者としては、かなり青味が強くなり想像以上に画面全体が明るくなった印象を受けます。仏像など経年変化し独特の味わいを出すものを佳しとする日本人にとっては、この修復は少々躊躇いがあるやもしれません。

しかし、初めてこの作品と対峙する方にとっては「何て美しい作品だろう」という好印象をまっ先に抱くはずです。それは単にラピスラズリの美しい発色の青色に魅せられるからだけでなく、フェルメール作品の中でも大変シンプルで構成、バランスに優れた作品だからです。


「手紙を読む青衣の女」の修復とラピスラズリ、顔料

画面右端に見える椅子の背を試しに隠してみると、あら不思議。途端に絵のバランスが崩れてしまいます。女性を中心に構成されている貴重な縦軸が無くなってしまうからです。また壁に掛けられた地図も若干右上がりになっていたりします。

また、よく観るとこの女性は口を少し開けていることが分かります。今まさに手紙を音読しているのでしょう。音読の習慣は当時一般的なものだったそうで、まさにこれこそ「風俗画」と言えます。

手紙を読む青衣の女」は、個人がアムステルダム市に寄贈した作品であり、貸出しは不可能と以前から聞いていました。今回どのような訳で日本で公開されることになったのか、その経緯は定かではありませんが、とにかく国内(京都、宮城、東京)でこの作品が拝めるのは大変有難いことです。


ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」 
1665年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

手紙を書く女」は久々の来日です。「かしっ!」としたまとまりのある良品です。女性が美しい三角形を形成し、そこにフェルメール作品に共通する左から差し込む光がまるでスポットライトのようにあたっています。

ライトと言えば、京都市美術館の照明がこの作品だけややてかって(光って)いたように見えました。作品に塗られたニスの状態の所為かもしれませんが。

さて、書いている手紙はどのような内容のものなのでしょうか?2005年にドイツ、シュテーデル美術館で開催された展覧会「Senses and Sins」では、この作品に「E-mail」と大きく文字をかぶせポスターにしていました。

今ならワンクリックで世界中瞬時にメール飛んでいきますが、17世紀のオランダでは例えば日本(長崎・出島)まで片道一年も要していたそうです。当時の人々の「手紙」に対する思い入れ現在ではとても想像できません。

熱心に手紙をしたためているところを、あたかも覗き見しているかのような距離感。覗き見が女性にばれ、何だか迷惑そうな顔つきでこちらに目を遣っているようにも見えなくもありません。

この作品には「手紙」だけでなく、アーミン柄の衣装、真珠、ライオンの頭部が付いた椅子など他のフェルメール作品にしばしば登場するアイテムが盛りだくさん描き込まれています。

壁に掛けられた画中画は人生の無常を描いたヴァニタス画。判別できませんが、ヴィオラ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)と頭蓋骨を描いた静物画だそうです。

しかし、それにしても9月13日から京都市美術館では「フェルメールのラブレター展」と「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」が同時開催というスケジュール。まさかワシントンを経ち、京都で再会するであろうとは思いもしなかったでしょうね。。。


ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女と召使」 
1670年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー

2008年の「フェルメール展」にウィーン美術史美術館の「絵画芸術」のピンチヒッターとして急遽初来日した作品。今回は堂々と主役としての登場です。

自分自身思い入れの深い作品。フェルメール全作品中で最も最後に観たのがこの作品なのです。

女性単身像の前2点と違い、「手紙を書く女と召使」には2人の人物が描かれています。しかも距離感がぐんと離れます。全体に引きで描いている為、床の市松模様も描かれ構図的にも面白いものとなっています。

この作品では、画中画として描かれた「モーセの発見」(「川から救い上げられるモーセ」)がはっきりと見て取る事が出来ます。それにより、女性が書いている手紙の内容が、恋愛に関するものとの意見もあります。

また、「余計な詮索をフェルメールは許さない」と断言する千足伸行先生のように、画中画との関連性を否定する見方も一方であります。 

この作品に描かれているステンドグラス。フェルメールの他の作品でも観ることが出来ます。「フェルメールのステンドグラス

蛇足ですが、これまで二度も盗難の憂き目にあっている「手紙を書く女と召使」泥棒さんの心を捉えてやまないもの、何かあるのでしょうか?盗難事件に関しては、朽木ゆり子氏の「盗まれたフェルメール」に大変詳しく書かれていて参考になります。

上野で拝見した時から、手紙を書く女性の白い頭巾が、夏の暑さに溶けてしまったソフトクリームのように観えてしまい…もうそれ以外の見方出来なくなってしまっています。

「手紙」をモチーフとしたフェルメール作品残り3点。


窓辺で手紙を読む女」ドレスデン
恋文」アムステルダム
女と召使(婦人と召使)」ニューヨーク

簡潔に書くつもりがだらだらと…「ラブレター展」に話を戻します。

会場の構成は以下の通りです。

1:人々のやりとりーしぐさ、視線、表情
2:家族の絆、家族の空間
3:職業上の、あるいは学術的コミュニケーション
4ー1:手紙を通したコミュニケーション
(休憩所、映像コーナー)
4−2:手紙を通したコミュニケーション(フェルメール3点)



「1:人々のやりとりーしぐさ、視線、表情」展示風景

テル・ボルフやデ・ホーホ、ヤン・ステーンといったオランダ・フランドル絵画の黄金時代を代表する作家の作品10点で構成。展覧会のアプローチ的な役割を果たしています。

気になった作品は次の2点。

クウィレイン・ファン・ブレーケレンカム「感傷的な会話
ヤーコプ・オホテルフェルト「牡蠣を食べる

どちらもフェルメールと同じく室内で繰り広げられる市民の姿を描いたものですが、決定的に違うのは濃密とも言える男女関係が前面に描かれている点です。

「牡蠣を食べる」という風俗画は、性的な意味合いを含んでいたそうです。

17世紀オランダという国で活躍した画家の中でフェルメールが特別視されている理由もこうした他の画家との作品との比較に於いて明らかになります。

「2:家族の絆、家族の空間」は11点で構成。


ピーテル・デ・ホーホ《中庭にいる女性と子供》1658-1660年  
油彩・キャンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー

毎回「フェルメール展」にフェルメールと同郷の画家として紹介されるデ・ホーホ。日本でまとめて観るチャンスありませんので大変有難いことです。

しかし以前はホーホが図録の表紙を飾っていたのに、今ではすっかりフェルメールの2番手のような存在になってしまっています。ちょっと寂しい。。。温か味のある親子の情景描かせたらこの人の右に出る作家いません。


「3:職業上の、あるいは学術的コミュニケーション」展示風景

フェルメール以外の作品ではこの3章が最も見応えがあったでしょうか。

ヤン・リーフェンスの「哲学者」 はじめ、極上なヘリット・ダウの「執筆を妨げられた学者」「羽根ペンを削る学者」は必見です。

ダウの作品は26cmほどの楕円形をした小品。小さきものに魂が宿ると云わんばかりの素晴らしい作品です。個人蔵(ニューヨーク)作品ということで、今後拝見出来る機会まず無いかと思われます。

そしてこちらの作品も!


ハブリエル・メツー「窓辺で本を読む女」1653-54年
個人蔵、ニューヨーク

デルフトにフェルメールあるならば、ライデンにメツーあり。
メトロポリタン美術館のこちらのページ必見です。


「4ー1:手紙を通したコミュニケーション」展示風景

ヤーコプ・オホテルフェルト「ラブレター」、フランス・ファン・ミーリス(1世)「手紙を書く女」等、フェルメール作品とは違った画家の拘り(例えば服装の描写や顔の表情)を堪能できる優品たち。

またエドワールト・コリエルの騙し絵的な「レター・ラック」等も。

メイン・ディッシュであるフェルメール作品3点を観るまでに、順序立て構成された展示はお見事。当時の手紙事情やフェルメールについてのアウトラインを映像や展示資料で頭にいれたら最後の展示空間へ足を運びましょう!


「4−2:手紙を通したコミュニケーション(フェルメール)」展示風景

注:画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

「フェルメールのラブレター展」は京都市美術館で10月16日まで開催されています。その後、宮城県美術館、Bunkamuraザ・ミュージアムに巡回します。


「フェルメールからのラブレター展」開催(記者発表会)

宮城県美術館で「フェルメール展」開催!


京都展 開催概要
会期:2011年6月25日(土)〜1O月16日(日)
会場:京都市美術館
〒606-8344京都市左京区岡崎円勝寺町124
開館時間:午前9時〜午後5時(入館は各閉館の30分前)
休館日:月曜日(7月18日、9月19日、10月10日は開館)
お問合せ:075-771-4107(京都市美術館)
展覧会公式ホームページ:http://vermeer-message.com
京都市美術館ホームベージ:http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma
主催:京都市美術館、朝日放送、テレビ朝日、博報堂DYメディアパートナーズ
特別協力:朝日新聞社
特別協賛:大和ハウス工業株式会社
後援:オランダ王国大使館


会場限定オリジナルグッズ

東京展 開催概要
会期:2011年12月23日(金・祝)〜2012年3月14日(水)
会場:Bunkamuraザ・ミュージァム(渋谷・東急本店横)
〒150-8507東京都渋谷区道玄坂2-24-1
開館時問:午前10時〜午後7時(入館は各閉館の30分前)
毎週金・土は午後9時まで(12月30日、31日は除く)
休館日:2012年1月1日(日)
お問含せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式ホームベージ:http://vermeer-message.com
Bunkamuraホームページ:http://www.bunkamura.co.jp
主催:Bunkamura、テレビ朝日、朝日放送、博報堂DYメディアパートナーズ
特別協力:朝日新聞社
特別協賛:大和ハウス工業株式会社
後援:オランダ王国大使館

今回の展覧会開催に向けご尽力されている林綾野氏の新刊です。


フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』(講談社ARTピース)

林綾野さんについては後日別記事で!!

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この記事のURL
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JUGEMテーマ:アート・デザイン


17世紀オランダ絵画には手紙を中心に,家族や恋人たちの語らいが数多く見られる。フェルメール,ピーテル・デ・ホーホ,ヘラルト・テル・ボルヒといったオランダ黄金時代を代表する画家たちの家族の絆や対話を作品の中から読み解く。修復後世界で初公開となる《手紙を読む青衣の女》などヨーロッパやアメリカの各地から集められた約40点の名品で構成。

17世紀オランダ絵画には、手紙を中心に、家族や恋人たちの語らいが数多く見られる。ヨハネス・フェルメール、ピーテル・デ・ホーホ、ヘラルド・テル・ボルフといったオランダ黄金時代を代表する作家たちの家族の絆と対話を観る。修復後初めて美術館を出るフェルメール《手紙を読む青衣の女》など、ヨーロッパやアメリカの各地から集められた約50点の作品を展示。
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