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「イケムラレイコ うつりゆくもの」

東京国立近代美術館で開催中の
「イケムラレイコ うつりゆくもの」展に行って来ました。


展覧会特設ウェブサイト「イケムラレイコ Side B

絵画、彫刻、ドローイングと多岐に渡る制作活動を続ける傍ら、現在ドイツ、国立ベルリン芸術大学で教授も務めるイケムラレイコの日本国内における初の回顧展が竹橋の近代美術館で開催されています。

奈良美智の描く少女とは違い、イケムラのそれはとてもぼんやりフォギーがかかったようなまさに「空ろ」な存在として描かれます。目も鼻も描かれず虚空に佇む少女。

好きなんですよね〜実は。イケムラの描く少女たち。


イケムラレイコ「横たわる少女」1997年 
東京国立近代美術館

この展覧会のキュレーター保坂健二朗氏は図録に「なぜ彼女たちは匍匐するのか?『古事記』とエコロジーを手がかりに」と題した長文のテキストを載せています。これが色んな意味で鋭く素晴らしい。まだ卒読しただけですが、じっくり読むべき内容のものです。

その図録及びビジュアルですが…ポスター、チラシなどのメィンヴィジュァルは、あの川内倫子(木村伊兵衛賞受賞作家)が本展のためにドイツで撮影しました。カタログには、川内の撮影したイケムラレイコのミニ写真集も収録されます。そのカタログのデザインは、中島英樹。もちろん、ポスター、チラシ、チケットも中島が手がけます。

何とも豪華な布陣です。今や世界所狭しと活躍の場を広げるイケムラレイコを迎え入れるにはこれくらい当然といえば当然かもしれません。

そしてまた会場デザインも前回のパウル・クレー展とはまたがらりと変わり仕切りを多用し幾つもの部屋を設けています。東京都現代美術館で開催中の「名和晃平展」と似ているようでまた全然違った雰囲気を醸し出すことに成功しています。

この展示デザインは、ここ数年イケムラの展覧会に関わってきた建築家のフィリップ・フォン・マットが全面的に協カし作り上げたものだそうです。「場」を味わいに行くだけでも十分価値のある展覧会かと。

イケムラの作品はとても静かで時に浮遊感さえ漂わせるものが多くみられます。ふわふわと軽い感じ。しかし、何か事が起きた時のイケムラの行動たるやまるで正反対の大変アクティブな一面が見られるそうです。例えばこんなこともやっていらっしゃいます。

作品の中では私的で詩的なアプローチをとるイケムラですが、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故という母国日本が見舞われた未曾有の事態に対しては、公共の場での積極的な行動を選びました。
3月にはケルンでチャリティイベントを行い、6月から7月にかけては、ベルリンのKW Institute for Contemporary Artにおいて、友人のヴィム・ヴェンダースやボリス・ミハイロフなど、アーティストや建築家を集めた展覧会を組織したのです。この決然たる行動カもまた、イケムラの魅カのひとつと言えるでしょう。

2011年6月9日〜7月17日
@ KW Institute for Contemporary Art (Berlin)
展覧会URL http://www.kw-berlin.de/


とかく現代社会では人間関係が希薄で伝えたいものが伝わらず、伝える手だてすらなく人々は疲弊し諦めムードが漂っています。「自分」は要らぬものでいつでも「他人」と交換可能な機械の安いパーツのように思っている人で満ち溢れています。

そんな時にイケムラのうつ伏せに横たわる(「匍匐する」)うつろな少女をふと目にすると、何故だか優しく包みこまれる(抱きかかえられる)ような気分にさせられるのです。身体性もあやふなやぼんやりとした少女の絵、ドローイングにそして彫刻に。

とても不思議なことです。
でも事実です。

今回の回顧展はそんなうつろな少女を描いた代表作を中心にサイズ的にも大きく、挑戦的で威圧感すらある初期作品、それに多くの彫刻作品。また新作「山水画」等、約145点を、1300平方メートルの空間に散りばめられています。

半分以上の作品が日本初公開となっています(ドイツのアトリエからの出品)。今だからこそ観ておかなくてはならないイケムラレイコの世界が存分に味わうことが出来ます。

以下、イケムラレイコの言葉です。
私が日本から出たのは、母国でも異邦人のように感じたからかもしれません。つまり、ヨーロッパで何かが違うと思うのは、自分が日本人だからということだけが理由ではない。だから、生活が浮き上がらないようにするためにも、何かをつくっていく必要があるんです。生活するんじゃなくて、生活をつくっていくとでもいえばよいでしょうか。

あの頃主流だったのは、バゼリヅツだとかリヒターだとか、マッチョでゴジラみたいな男ばかりでした。だから、ドイツという国では繊細さのような心理は全然受け入れられないだろうと思っていました。

ファン・ゴッホの時代には浮世絵などジャポニスムの影響で新しい空間の表現方法を日本から学んだ。またキュビスムの時代にはアフリカ彫刻から構成方法を学んだ。
そこを私は逆戻りしたいと思う曲彼らが学んだことをなぜ日本人も意識しないのか、逆に問うという方法で。岡倉天心がおこなったように、ヨーロッパ人が学んだ「現代」というものが日本人にとって何だったのかということを考えたいんです。

なぜ私の彫塑の中に「うつろ」があるかというと、存在と無という弁証法的なことに関心があるからです。

私が描く少女も、幽霊なんです。足もないし。あれは、影なんですよ。すーっとでてきて消えていく。そういうイメージなんです。だからスカートには形があるけど、足ははっきりさせない。
私にとって幽霊というと、『源氏物語』ですね。怨念や情念で生霊になったり。ああいうの私は超自然的だと思うんです。騙されたからと、ばーっと出てきて男を驚かせる。「ざまあみろ」なんてよく子どものときに思ったんですよ。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:イントロダクション
2:新作:山水画
3:インターヴァル(写真)
4:横たわる人物像:彫刻と絵画
5:写真
6:うみのけしき
7:樹
8:成長
9:インターヴァル(本)
10:ブラック・ペインティング
11:出現
12:アルプスのインディアン
13:1980年代の作品
14:インターヴァル(これまでの展覧会)
15:新作:人物風景


この記事の最後に展示会場の風景画像アップしておきます。


イケムラレイコ うつりゆくもの
会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
http://www.momat.go.jp/

会期:2011年8月23日(火)〜10月23日(日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)
主催:東京国立近代美術館、三重県立美術館
協力:ルフトハンザ カーゴ AG

巡回
2011年11月8日(火)- 2012年1月22日(日) 三重県立美術館

【イベント情報】

シンポジウム
「芸術におけるエコロジー」
登壇者:
イケムラレイコ
加須屋明子(京都市立芸術大学准教授)
保坂健二朗(東京国立近代美術館研究員・本展企画者)

日程:2011年8月27日(土)
時間:13:00-15:00
場所:東京国立近代美術館地下1階講堂

申込不要・聴講無料(先着140名)
ギャラリー・トーク
保坂健二朗(東京国立近代美術館研究員・本展企画者)

日程:
2011年9月17日(土)
2011年10月15日(土)
2011年10月22日(土)
時間:13:00-14:00
場所:1階 企画展ギャラリー

※いずれも参加無料(要観覧券)/申込不要

東京国立近代美術館 ギャラリー4ではこちらの展覧会も企画展も開催中です。

レオ・ルビンファイン
傷ついた街


会期:2011年8月12日(金)〜10月23日(日)


以下、「イケムラレイコ展」覧会会場風景。





















「イケムラレイコ展」は10月23日までです。是非是非!!

Twitterやってます。
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2599

JUGEMテーマ:アート・デザイン

なぜ今イケムラレイコ展か?
本展は、絵画、彫刻、ドローイング約145点を、1300平方メートルの空間の中に展示する、日本では初めてとなるイケムラレイコの本格的な回顧展です。半分以上の作品がドイツのアトリエからの出品(つまり日本初公開)で、新作も展示されます。

ちょっと不思議な存在。それがイケムラの作品のキーワードです。キャンバス地から浮かびあがってくる女、キャベツの頭を持つ人、うつろをはらんだ横たわる少女、岩の中にふと見える怪物のような顔などなど。イケムラが幽霊とも思えるような存在をつくるのは、「うつりゆくもの」への関心を持っているからだと言えます。存在と無。動物と人間との間の進化論的関係。手つかずの自然と人間による文明。ともすればAからBへの一方向の移行として捉えられがちなうつりゆきを、彼女は、相補的で、往復可能で、蛇行的で、終わりのないものとみなし、それを自らの作品において表現しているのです。

彼女はまた、自らの作品がエコロジカルであってほしいと願っています。絵画は人間の身体に合わせた大きさ。彫刻の素材には土へと返りやすい粘土を選び、ドローイングでは木炭やパステルに紙といったシンプルな材料を使っているのです。そこには、この時代にアーティストとしてモノをつくることの意味について実践的に考えてきたイケムラならではの思想を見てとることができるでしょう。

そうしたイケムラの作品には、詩情の中に哲学が、静けさの中に情動的な強さが感じられます。またフラットに見えて奥行きがあります。相反する質を優しく包みこむ彼女の作品は、これからの「うつりゆき」を考えなければならない今こそ、深く感じとれるのではないでしょうか。

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