青い日記帳 

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美術史家に聞く第四回:金沢百枝先生(前篇)

すっかりご無沙汰しているこのインタビュー記事シリーズ。候補者は沢山いらっしゃるにも関わらず中々アップ出来ないのはひとえに管理人の怠惰によるところが大。

そんな中、今回白羽の矢を立てインタビューをお願いしたのは先日、新潮社よりイタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ』 (とんぼの本)を上梓されたばかりの金沢百枝さん。

後篇はこちらに


イタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ』 (とんぼの本)
金沢百枝/著 小澤実/著

Twitterでも@momokanazawaとして含蓄あるツイート(笑)を日夜連発しているプリンセスモモさんにお時間割いて頂きインタビューして来ました。

ヴェネツィアからトルチェッロへ向かう船の中でぼーっとしている@momokanazawa

金沢百枝(かなざわ・ももえ)美術史家。東海大学文学部ヨーロッパ文明学科准教授。
西洋中世美術、主にロマネスク美術を研究。1968年東京都生れ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。理学博士・学術博士。2011年、島田謹二記念学藝賞を受賞。著書に『ロマネスクの宇宙 ジローナの《天地創造の刺繍布》を読む』(東京大学出版会)、共著に『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』(新潮社)。

Tak「まず、最初に美術史家になろうとしたきっかけ、経緯を教えて下さい。大学当初から目指していたわけではないのですよね。確か。」

金沢「わたしの略歴で変わっているところと言えば、海外で育ったということと、理系から文転したことでしょうか。理系のときには、植物生態学が専門でした。」

Tak「きっと自分が聞いても分からないと思いますが具体的にどのような研究をされていたのでしょう。」

金沢「植物生態学の中でも、生理生態学という分野で、光合成の研究をしていました。具体的には『雨による濡れが光合成にどのような影響を与えるか』という研究です。本郷の理学部2号館近くの温室で、手作りの人工降雨装置に育てたインゲン豆の苗を入れて、葉っぱの光合成を測ったり、タンパク質を抽出したり、電子顕微鏡で葉の表面を観察したりなどしていました。ジーンズにTシャツ、ポケットにウォークマンいれてよれよれの白衣姿で、夜中まで大学をうろついていたものです。」

Tak「そんな滅茶苦茶理系人間で大学院まで進まれたのに何故に文転したのでしょう?」

金沢「文転したのは、「世界」と世界の美そのものよりも、「世界を見る人間の視点」に興味が移ったからです。というと抽象的ですが、詳しくは『ロマネスクの宇宙』のあとがきを読んでくださるといいかもしれません。」

Tak「当時、東大文学部に非常勤で教えにいらしていた小池寿子(現・國學院大學教授)の講義がきっかけとなっているのでしたよね。」

金沢「はい。自然物の美しさに魅せられて生物学を志し一通り学んだのですが、いつしか美へのまなざしそのものに興味が移り、どのような仕組みが自分の心に「美」を生じさせるか考えるようになりました。」

(補足)
東京大学理学系研究科 植物学専攻
東京大学大学院総合文化研究科 超域文化科学専攻比較文学・比較文化コース
(ロンドン大学附属コートールド美術研究所留学)


「羊飼いになれば良かったと思う程、私が呼ぶと羊さんたちが集まるんです揺れるハート

Tak「念願叶い美術史家になられた今、目標のようなものはお持ちですか?」

金沢「ヨーロッパ中世の聖堂、とくにロマネスク期の聖堂をできればすべて見尽くしたい、というのが私の生涯の夢です。美術史家は実見しなければ仕事になりませんから、時間ができれば旅に出ます。すべてはとても無理でしょうけれど、厳選して廻ることはできるはずです。」

Tak「今回で2巻目となる著書『イタリア古寺巡礼』(新潮社)をお出しになるきっかけもそんな聖堂巡りの延長線上にあるのでしょうか。」

金沢「『芸術新潮』のイギリス特集ではじめて菅野さんやカメラマンのTさんと一緒に、聖堂を廻りました。緊張感があって、ひとりで見てまわるよりもとってもたのしい。勉強になりました。ノルウェーにも行きました。」


芸術新潮 2007年 04月号 [雑誌]
美術史家の金沢百枝さんとイギリスをたずねたのは、昨年の秋でした。ロンドンからまず南へ、それから西へ、東へ、北へという順で、左頁の地図の太字の町や村にのこる、おもにロマネスク時代(11世紀半ばー12世紀)の教会をまわってきました。

Tak「『芸術新潮』の記事拝見しました。それでは当初から一冊の本にまとめようとされていたのでしょうか。」

金沢「聖堂めぐりの本をつくろうという企画は、新潮社の菅野さんが「とんぼの本」に異動されてからのことです。『芸術新潮』に書いている頃はまだ、本の形にすることも、シリーズ化のことも念頭になかったように思います。」

Tak「15巻から成るシリーズ本として執筆され、毎年1冊ずつ上梓されているのですよね?」

金沢「シリーズ化の話がいつ出たのか憶えていませんが、ロマネスク好きなら誰でも敬愛しているフランスの本で、ゾディアックのシリーズというのがあります。この本は、ヨーロッパのロマネスク聖堂を地域毎に紹介する体裁で、旅心を誘われます。(ブルゴーニュのロマネスク聖堂を撮影・取材し、1951年に出版した『ブルゴーニュ・ロマーヌ』は累計14万部売れているそうです。2001年までに88巻出ています)」


『ブルゴーニュ・ロマーヌ』

Tak「和辻哲郎ではないのですね…それにしても88巻!ですか。」

金沢「菅野さんも私もこのシリーズが大好きで、こういったものを作れないかなあと旅先で、あるいは打ち合わせ中に話していました。50年以上前のフランスの修道士さんと、日本人の私たちが今、撮るだけでも違うものが見えてくるような気がしています。機材も視点も違うのですから。」

Tak「ところで、ロマネスク期の聖堂を全てご覧になりたいとのことでしたが、『イタリア古寺巡礼』ではロマネスク以外にも中世全般の聖堂を訪ねていらっしゃいますよね。」

金沢「はい。これも新潮社の菅野さんと相談し、ロマネスクに限定せず、「中世」に時代を広げました。時代を広くとることで新たに見えてくるものがあるのではないかという期待もありました。「中世」という時代は、ヨーロッパ社会の基礎が形成される時代なので、西洋の歴史とその美術を考えるうえで、とても重要です。」



Tak「なるほど〜それでは、前篇の最後に『イタリア古寺巡礼』の歴史部門の執筆を担当されている小澤実さんについて教えて下さい。」

金沢「小澤さんは、『芸術新潮』ノルウェー特集のときに書いていただいたのがきっかけで、『イタリア古寺巡礼』でも歴史パートをお願いすることになりました。小澤さんのご専門は北欧史ですが、お若いけれども大きな視野をもった稀有な歴史家です。」

インタビューは後篇へ続きます

後篇では新潮社より発売になったばかりのイタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ』 (とんぼの本)について更に詳しく。乞うご期待!

こちらは昨年(2010年に上梓された記念すべき第1巻)紹介記事はこちらです


イタリア古寺巡礼―ミラノ→ヴェネツィア (とんぼの本)

《関連エントリ》
【美術史家インタビュー記事】

『美術史家に聞く』第一回:小池寿子先生
『美術史家に聞く』第二回:池上英洋先生
『美術史家に聞く』第三回:高橋明也先生(前篇)
『美術史家に聞く』第三回:高橋明也先生(後篇)


「展覧会の仕掛け人に聞く」(前篇)
「展覧会の仕掛け人に聞く」(後篇)


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