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美術史家に聞く第四回:金沢百枝先生(後篇)

毎回ご好評を頂いている「インタビュー記事シリーズ

美術史家に聞く第四回:金沢百枝先生(前篇)」では金沢さんの他に類を見ないキャリアを経て美術史家になられたことをお聞きしました。


金沢百枝(かなざわ・ももえ)
美術史家。東海大学文学部ヨーロッパ文明学科准教授。
西洋中世美術、主にロマネスク美術を研究。1968年東京都生れ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。理学博士・学術博士。2011年、島田謹二記念学藝賞を受賞。著書に『ロマネスクの宇宙 ジローナの《天地創造の刺繍布》を読む』(東京大学出版会)、共著に『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』(新潮社)。
《補足》
東京大学理学系研究科 植物学専攻
東京大学大学院総合文化研究科 超域文化科学専攻比較文学・比較文化コース
(ロンドン大学附属コートールド美術研究所留学)
Twitter→@momokanazawa

今回は先月上梓された『イタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ』 (とんぼの本)とこのシリーズについてお話伺ってきました。


イタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ』 (とんぼの本)
金沢百枝/著 小澤実/著

・新潮社とんぼの本
http://www.shinchosha.co.jp/tonbo/

前回のおさらいを簡単に。

金沢「聖堂めぐりの本をつくろうという企画は、新潮社の菅野さんが「とんぼの本」に異動されてからのことです。『芸術新潮』に書いている頃はまだ、本の形にすることも、シリーズ化のことも念頭になかったように思います。」

Tak「15巻から成るシリーズ本として執筆され、毎年1冊ずつ上梓されているのですよね?」

金沢「シリーズ化の話がいつ出たのか憶えていませんが、ロマネスク好きなら誰でも敬愛しているフランスの本で、ゾディアックのシリーズというのがあります。この本は、ヨーロッパのロマネスク聖堂を地域毎に紹介する体裁で、旅心を誘われます。(ブルゴーニュのロマネスク聖堂を撮影・取材し、1951年に出版した『ブルゴーニュ・ロマーヌ』は累計14万部売れているそうです。2001年までに88巻出ています)」

Tak「和辻哲郎ではないのですね…それにしても88巻!ですか。」

金沢「菅野さんも私もこのシリーズが大好きで、こういったものを作れないかなあと旅先で、あるいは打ち合わせ中に話していました。50年以上前のフランスの修道士さんと、日本人の私たちが今、撮るだけでも違うものが見えてくるような気がしています。機材も視点も違うのですから。」


『ブルゴーニュ・ロマーヌ』

それでは、今回のインタビューはここからスタート。

Tak「以前トークショーで拝聴しましたが、不思議に思っている方も多いと思うのでもう一度お聞きしますね。ヨーロッパのロマネスク聖堂をメインに中世の聖堂を訪ねていますが、そもそもイタリアからスタートさせたのはどんな理由からなのでしょう?」

金沢「そうですね〜一般的にロマネスクといえばブルゴーニュが有名ですが、イタリアから始めたのはここから『ロマネスク』が始まったという説が有力だからです。西洋美術の揺籃の地として重要なイタリアを選びました。」

Tak「昨年、記念すべき1冊目『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』を上梓され、今回の『イタリア古寺巡礼 フィレンツェ→アッシジ』イタリアが2冊続きましたが、この先の展開を分かっている範囲で結構ですので聞かせて下さい。」

金沢「今後は、イタリア2冊、スペイン、フランス、ドイツ、イギリス、北欧と15年計画でヨーロッパの聖堂をめぐるつもりです。まだ2冊だしただけのヨチヨチ歩きです。ゾディアックのシリーズには遠く及びませんが、日本人の視点から美術と歴史の両面から見たヨーロッパ中世古寺巡礼を完成すべく頑張ります!」

Tak「なるほど〜ライフワークのような夢のある計画ですね。シリーズ完結するの見届けますね。」


リスに言い寄られる金沢百枝さん(笑)

Tak「さて、1冊目の『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』まだお読みになっていない方や既読の方にも再度見どころ、読み所となるポイントを教えて下さい。」

金沢「第一巻目の序文にも書きましたが、本来、西洋絵画の多くは聖堂で使われていた「実用品」でした。日本では、西洋美術というと美術館で鑑賞するものという印象が強いようですが、それは近代になってからの現象です。日本では馴染みが薄い教会美術ですが、西洋美術の基礎として重要です。そこにポイントを置かれて読んで頂けると嬉しいです。」

Tak「2作目となる今回の『イタリア古寺巡礼 フィレンツェ→アッシジ』は如何でしょう?同じく読み所、ポイントがあったらお願いします。」

金沢「二巻目は、ルネサンス芸術誕生の地フィレンツェと「西洋美術の創始者」とされるジョットの描いたアッシジというふたつの町を起点としたことから、中世の美術・建築を扱っていますが、「ルネサンス」との関係も射程に入れました。」

Tak「確かにフィレンツェと聞くとまず「ルネサンス」がまっ先に頭に浮かびます。」

金沢「「ルネサンスの萌芽」あるいは「ルネサンスの先駆け」としての中世。古代ローマを復興するという意の「ルネサンス」って、じつは中世からあった考え方なんです。日本の西洋美術観は、少しばかり、ルネサンス美術に傾倒しすぎている向きがあると思っているので、このシリーズを着実に続けることによって、そうした考え方に一石を投じらればいいなと思っています。」

Tak「なるほど〜遠い昔学んだ世界史の資料集でも突如としてレオナルド、ラファエロ、ミケランジェロがどーーんと登場したような印象が強く残っています…この本読んで考え改めなければなりませんね。当然と言えば当然ですよね。歴史は連続性の中に存在しているわけですから。」


イタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジの裏表紙はフィレンツェ。ブックデザインは長田年伸氏が担当されています。

金沢「またこのシリーズでは、古寺巡礼という体裁をとりつつ、キリスト教美術の入門書となればいいなあと考えています。じつは、1巻と2巻は通史的な見方も可能です。1巻は初期中世から中世盛期(ロマネスク)、2巻は、ロマネスクから中世後期まで。今後は、時間的広がりだけでなく、イスラーム文化との関わりなど、地域的広がりなども考えて行ければいいなあと、夢想しています。」

Tak「『イタリア古寺巡礼フィレンツェ→アッシジ』制作にあたり、大変だった事って勿論沢山あると思うのですが、幾つかあげるとすると、どのような点がしんどかったですか。」

金沢「10の教会に絞り込むのがつらかった。行きたいところは無数にあって、私を呼んでるんです(笑)。自分の好き嫌いではなく、重要性を優先しようとするのだけれど、なかなかそれもできなくて、ついつい、私の基準の「カワイイもの」「ビックリなもの」を選んでしまいます。その後、旅の順序を決める作業。これは楽しいのだけれども、時間がかかりました。」

Tak「メニューどれを選んだらいいのかとことん迷いますものね(笑) その他には?」

金沢「取材のときは、聖堂の遠景も撮るので、とにかくよく歩く!「いい撮影場所を知ってるよ」と教えてくれたおじさんについて行ったら、急な山道を1時間登るはめに陥ったり、大きな石ころがゴロゴロして歩きにくい浜辺をえんえん歩いたり。見た目よりは、ハードなんですよ〜」


Twitterでも話題になった脚立上から床のモザイクの撮影にチャレンジする金沢百枝さん。

Tak「とんぼの本ひと回りサイズアップし写真もより見やすく美麗になりましたけど、あれ自分で撮っているものもあるのですね。」

Tak「それとこの本の魅力として「旅先で食べるなら」という各地方の美味しいものを紹介するコーナーありますよね。」

金沢「イタリアは美食の国ですからね〜これ載せないわけにはいきません。食事もその地方地方の立派な文化です。テキストはフードライターの粉川妙さんにお願いし書いてもらっています。写真を見ているだけでお腹鳴ってきますでしょ。」



Tak「それと各地方の聖堂のファザードや平面図、これって手描きなんですか!?」

金沢「そう、私が描いたんです!現代建築ならこうした図面幾らでもあるでしょうが、中世の聖堂の図面そう易々とあるわけでもないので自分で描いちゃいました。だから良く見るとあちこち歪んでいたり「遊び」があったりします。これもある意味大きな見どころですよ〜(笑)」


「中世の聖堂を知るために」(監修:金沢百枝)

拡大


確かに手描きですね、これ。

Tak「話は幾らでも続けられそうですが、そろそろこの辺でいつもの定番の質問を。高橋館長や小池先生、池上さんにも伺いましたが、金沢さんのお好きな美術館3つj順不同であげるとすると何処でしょう?簡単な理由も一緒に。」

金沢「日本民藝館:柳宗悦の民藝運動は、世紀末の中世主義との関連で、いつか論文を書きたいと思っています。民芸館には、学部1、2年の頃、講義をサボって、ぶらりとここにひとりで来て、壷を見たりするのが好きでした。天気ならば、近くの近代文学館の庭で日向ぼっこも。エスケープ・コース。」
http://www.mingeikan.or.jp/

金沢「テートギャラリー:高校時代、ほぼ毎週末、テートに通っていた時期があります。その頃はモダンとブリテンにまだわかれていませんでした。
なかでも気に入っていたのが、ルチオ・フォンタナの空間概念という作品です。なんだか寂しくなったときなど、これに会いに行き、会うと安心するのです。親友がつきあってくれることもありましたが、たいていはひとりでした。ちなみに、ここのカフェは、トラディッショナルなイギリス料理が食べられます。アップル・クランブルがオススメ。」
http://www.tate.org.uk/

金沢「バルセロナのカタルーニャ美術館:パリのクリュニー中世美術館も好きですが、ロマネスクといえばここ。壁画のコレクションは世界随一だと思います。」
http://www.mnac.cat/


待合室も大事な執筆場所です。

Tak「長々とお話聞かせて頂きありがとうございました。15巻完結した暁には派手にお祝いしましょうね!」

※さて、来る10月30日『イタリア古寺巡礼 フィレンツェ→アッシジ』の出版をお祝いする会をささやかながら開催いたします。出版記念パーティーと銘打った「オフ会」のようなものです。

どなたでも参加可能です。ドレスコードも一切ありません。お気軽にいらして下さい。参加ご希望の方はいずれかの方法で参加表明お願い致します。お友達お誘い合わせの上奮ってご参加下さい。
※定員に達した時点で募集締め切ります。
1:Twitterアカウントをお持ちの方。
こちらのサイトからTwitterでログインし「参加する」をクリックして下さい。

2:Twitterアカウントお持ちでない方。
参加希望の旨、メールでお知らせ下さい。

Tak(たけ)メールアドレス

皆さまとお会い出来ること楽しみにしております!!今回の本に紙面の都合上収録出来なかった貴重な写真をスクリーンで上映&金沢さんのスペシャルトークもあります。

《関連エントリ》
【美術史家インタビュー記事】

『美術史家に聞く』第一回:小池寿子先生
『美術史家に聞く』第二回:池上英洋先生
『美術史家に聞く』第三回:高橋明也先生(前篇)
『美術史家に聞く』第三回:高橋明也先生(後篇)
『美術史家に聞く』第四回:金沢百枝先生(前篇)


「展覧会の仕掛け人に聞く」(前篇)
「展覧会の仕掛け人に聞く」(後篇)


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