青い日記帳 

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「野見山暁治展」

ブリヂストン美術館で開催中の
特別展「野見山暁治」展に行って来ました。


http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

1920年12月17日生まれの野見山暁治氏。現在御年90歳。来月には91歳を迎えられますが、絵画制作の意欲は益々盛んになるばかり。

3月11日に東日本を襲った未曾有の大災害、東日本大震災の被災地を自ら訪れ目にしたもの、感じたものを縦横2mの大きなキャンバスに思いの限りをぶつけていらっしゃいます。怒りと共に。


こちらがその被災地を自ら歩きインスピレーションを得て描いた最新作と野見山暁治氏(ジーンズがこれだけ似合う90歳はいないのでは?!)

注:展示室内での画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

今から50年以上も前の1958年にブリヂストン美術館で「野見山暁治展」を開催。野見山37歳の時。この展覧会がひとつのきっかけとなり第2回の安井賞を受賞し日本の洋画界に名をしかと記すことに。

しかし、一見順風満帆のように見える野見山の画家人生も決して平坦なものではなく、逆にアップダウンの連続だったようです。渡欧中に体調を悪くした陽子夫人が29歳の若さで急逝(1956年)。その後しばらくは絵筆を握ることも出来なくなってしまったそうです。



パリから離れ知人の住んでいたパリ郊外のライ・レ・ローズに居を移し心にぽっかり空いた隙間を徐々に埋める毎日を。アトリエから見えるライ・レ・ローズの丘を眺めそして描くうちにこれまでとは違った作風に。

ライ・レ・ローズ丘陵という巨大な自然が弱った野見山に挑戦を挑んで来たのでしょうか。満身創痍であった彼はそれを受け止め、キャンバスにたたきつけ表現することで空虚な心の慰みにしたのかもしれません。しかし結果としてこれまでにない作風を生み出す事に成功するのです。

自然の本質を掴んだ野見山の作品には具象性が消え、何にも属さない独特の絵画を生み出します。



同じように何か大きな「事件」があり、その後作風ががらりと変化していくように展覧会全体を通して観ることができました。

幸いにも野見山暁治氏にインタビューする好機に恵まれました。すかさずその作風の変化について伺ってみたろころ意外な答えが返って来ました。
意図的に作風を変えているつもりはないんだ。僕の作品は必ずしも事件をきっかけに描いているわけではなく、あくまでも自分自身の変化なんだ。そうだから作品を通して変化していると言った方が的確かもしれない。

何十年も前に描いた形態が気が付けば今描いている作品に出てくるといった不思議な体験もしばしばある。意図して『何か』を描くのではなく、『何となく』描いている。でも本当はそこに『何か』があるはずであることは確か。でもそれが『何』であるかは結局は分からない。

だからこそ、日々あるべき形、色を探し求めてキャンバスに向かっているんだ。
同じ台詞を若手否中堅の画家が言ったとしたら無責任で格好付けているだけと思われてしまいますが、野見山暁治氏が語るとまさに言葉の重みが違います。説得力さえ持っています。

目で見たものを自分というフィルターを通して作品に落とし込んでいる。それが抽象という表現手段なら何であるのか説明は不要。それでも何となく形が見えてくるもの。そうすると観ている人たちは現実にあるものになぞられたくなる。

情緒的や文学的になってきたら僕の絵にはならない。あくまでも色と形に還元するように務めている。観る人の自由に任せるのは卑怯なのである程度こう見て欲しいという思いはあるがあまり説明的になってはいけない。

僕には生来変わったところがあって、写真や絵を見ても他人と違って見えることがある。既成概念に縛られないものの見方が出来るのかもしれない。
前述したパリ郊外のライ・レ・ローズ丘陵を描いた作品を思い返してみると、なるほど野見山氏の仰っていることよく納得できます。空想癖があるのではないかしら?と思わせるような不思議でそれでいて迫力のある作品なのです。

自然の本質を捉えたかのような。

そんな野見山暁治氏によるアーティストトーク「野見山暁治をもっと知る」が来る11月12日(土)にブリヂストン美術館で行われます。当日は質問もどんどん受付けそれに野見山氏が答えて下さるそうです。お時間のある方この貴重な機会に是非!詳細はこちらです


学生時代に描いた貴重な作品もあります。

野見山暁治氏略歴
1920年 福岡県穂波村(現 飯塚市)に生まれる
1943年 東京美術学校油画科を卒業とともに応召
1952年 渡欧 12年間を過ごす
1958年 安井賞受賞
1968年 東京藝術大学に勤務 以後81年まで
1978年 日本エッセイスト・クラブ賞受賞
1996年 毎日芸術賞受賞
2000年 文化功労者に選ばれる

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:不安から覚醒へ—戦前から戦後にかけて
第2章:形をつかむ—滞欧時代
第3章:自然の本質を突きつめる—90年代まで
第4章:響きあう色彩—新作をめぐって


2003年に東京国立近代美術館他で開催された大規模な「野見山暁治展」からおよそ10年。その間も精力的に新たな作風の作品制作に取り組んで来られた野見山氏の最新作が第4章で展開されています。

この章がスタート地点だから、また10年後に展覧会を開催したい。」野見山先生どんだけお気持ちお若いんですか!



驚いたことに、これまでよりもアグレッシブにそして色彩も鮮やかな色合いの作品となっています。年齢を重ねる毎に作品が瑞々しくなり若返っているかのようです。

鮮やかな赤色やピンク色なども画面に登場。炭鉱の町を描いていた初期の色の無い世界とは180度違います。地下鉄副都心線、明治神宮前駅に設置されている2008年制作のステンドグラス作品「いつかは会える」の原画も会場内に展示されています。

最後に野見山氏に作品のタイトルについてお伺いしまいた。これまたユニークな回答が返ってきました。
そもそも何かを描くと決め描いていることが少ないので、タイトルは作品が完成した後に付けている。それは親が子供に名前を付ける作業と同じこと。

日常生活の中のコトバから連想してタイトルのヒントを得ている。例えば電車に乗る際に『白線の内側まで下がって下さい』とアナウンスが耳に入る。それに対し『嫌なこった』『命令するな』とか頭の中で様々な答えを思い浮かべていく。そうした中から作品と合うタイトルが生れてくる。
最後の最後までチャーミングな野見山氏でした。それにしてもインタビュー中ずっと立ちっぱなしだったのにも驚きました。「僕だけ座るのは悪いから。」色んな意味で頭の下がるお方です。ありがとうございました。これからも益々お元気にそして精力的に作品を描き続けて下さい!10年後また展覧会開催されること期待してます。

最後に野見山暁治氏が仰っていた印象的な一言を。

目で意識して描くと絵はとたんにダメになる。

「野見山暁治展」は12月25日までです。
記憶に留めておくべき展覧会です。ひとりの画家の生きざまとして。


特別展
野見山暁治展


会期:2011年10月28日(金)〜12月25日(日)
会場:ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

休館日 月曜日 
(祝日の場合は翌日)
開館時間 10:00〜18:00

とにかく絵を描くのが大好きな野見山暁治氏。ミュージアムグッズの制作を依頼したところ、二つ返事で快諾して下さったそうです。



今回のグッズのために描いて下さった絵が使われています。

そうそう、こんな企画もあります。お時間あれば是非!

青い日記帳企画「野見山暁治展」担当学芸員ギャラリートーク
日時:2011年11月23日(水・祝)16:30〜17:30

今回の「野見山暁治展」を企画担当されたブリヂストン美術館の中村節子学芸員によるスペシャルギャラリートークです。参加費無料(チケットは各人でご用意下さい)参加ご希望の方は、こちらのページからログインして「参加する」をクリックして下さい。

Twitterやってます!
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2675

JUGEMテーマ:アート・デザイン


昨年90歳を迎えた野見山暁治は、日本の洋画界において、最も長く活動を続けてきた画家の一人ですが、絵を描くことへの情熱が衰える事はなく、現在も新たな境地を見出すべく活発な創作活動を続けています。
鮮やかな色彩と大胆な筆遣いによる独特の表現は、みずみずしく軽やかでありながら、同時に骨太な力強さをも感じさせます。しかしその底には、どこか謎めいた不思議なものの気配が漂い、心象風景とも感じさせるその作風は、多くの人々の心を魅了していると言えます。
ブリヂストン美術館は、野見山が滞欧中の1958年に、早くも彼を紹介する展覧会を開催し、それは第2回安井賞を受賞するきっかけとなりました。この展覧会から半世紀を経て開催される本展では、戦前の作品から、戦後の12年近いヨーロッパ滞在を経て現在に至るまで、野見山の自由奔放でエネルギーに溢れた絵画世界が形成されていくプロセスと、さらに表現の幅を広げようとする画家の姿勢を展観します。代表作や初公開となる作品など、総数約110点をご紹介いたします。
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