青い日記帳 

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『個人美術館の愉しみ』

光文社より刊行された赤瀬川原平著『個人美術館の愉しみ』を読んでみました。


個人美術館の愉しみ』(光文社新書)
赤瀬川原平 (著)

赤瀬川原平さんの著書を一冊でもお読みになられたことのある方には説明は不要だと思います。良い本です。

いつもの赤瀬川原平節が見事利いたいい感じの緩さのある独特の文体で、全国46の個人美術館についてのレポートが掲載されています。カラー図版342点と共に。

タイトルにある「個人美術館」については、赤瀬川さんが以下のように定義なされています。
個人美術館とは、一人の作家だけの美術館と、一人のコレクターによる美術館と、二通りの意味を持つ。
秋野不矩、植田正治、小磯良平、ベルナール・ビュフェ、熊谷守一、香月泰男、河鍋暁斎、イサム・ノグチ、安野光雅、猪熊弦一郎、杉本健吉etc.
個人美術館の愉しみは、近現代を彩る芸術家たちの足跡を眺められること。もう一つの愉しみは、その作品の山を築くことになったコレクターの、熱情を見ること。大金を投げ出して手に入れた人の熱情が並ぶと、その熱を通して見えてくるものがある。
これだけ多くの個人美術館がある国も珍しいのではないかと、この本を通して思わされます(公立美術館の多い国でもありますが…)そんな魅力ある個人美術館の中から46館を厳選。赤瀬川さん独自の視点と語りで紹介されると、居ても立ってもいられなく衝動にかられます。

「ちょっと、滋賀県の大津市立三橋節子美術館まで行って来る。」なんて気持ちにさせます。ある意味とてもいけない本です。はい。取り扱い要注意(笑)


植田正治写真美術館

植田正治の写真は、上品なカステラみたいだ。きちんとナイフを入れた奇麗な立方体が、白い更に載って、紅茶といっしょに出てくる感じ。無駄なくシンプルで、あまりにも正統な三時のお茶に、こちらも思わず姿勢を正しそうになったりする。

「老人力」全開!!のらりくらりとした緩い文章でありながらも、きちんとツボはおさえるというある種の職に居ん芸。こんな文章書ける人、そう滅多にいらっしゃいません。

長い経験と、知識に裏打ちされた「凄味」さえ感じる緩〜い文章で個人美術館の魅力へ読者を誘います。

【目次】
まえがき
第1話 足立美術館  田んぼの町に隠れた日本庭園
第2話 大田区立龍子記念館  筆力旺盛に舌を巻く
第3話 かみや美術館  岡の上の静寂美術館
第4話 何必館・京都現代美術館  品格の内に宿した狂熱
第5話 浜松市秋野不矩美術館  丘の上の岩絵の具の砦
第6話 植田正治写真美術館  田んぼの中の写真館
第7話 小平市平櫛田中彫刻美術館  どこまでも探求する彫刻家
第8話 細見美術館  古典の魅力を今に繋げる
第9話 徳川美術館  “新品同様”の揃う宝庫
第10話 真鶴町中川一政美術館  風景の現場がアトリエだった
第11話 大津市立三橋節子美術館  花折峠の美術館
第12話 玉堂美術館  自然のリズムを掴む
第13話 神戸市立小磯記念美術館  折り目正しい自然描写
第14話 ベルナール・ビュフェ美術館  苛立つ線の画家
第15話 熊谷守一記念館  まったく慌てたところのない絵
第16話 台東区立朝倉彫塑館  才能フル回転の彫塑館
第17話 香月泰男美術館  「私の地球」のある美術館
第18話 出光美術館(門司)  キャンバスに描かれた禅画
第19話 河鍋暁斎記念美術館  掛け値なし、絵筆の天才
第20話 稲沢市荻須記念美術館  パリを描き、パリに死す
第21話 弥生美術館・竹久夢二美術館  額のない絵の美術館
第22話 イサム・ノグチ庭園美術館  屋島と五剣山を借景とする
第23話 鎌倉市鏑木清方記念美術館  賑やかな通りの閑静な美術館
第24話 大塚国際美術館  泰西名画の原寸図書館
第25話 メナード美術館  粒よりの絵が味わえる
第26話 DIC川村記念美術館  明るく賑わうホリデーの場所
第27話 河村美術館  青木繁絶筆の地
第28話 宮本三郎美術館  常に先走る描写力
第29話 長崎市野口彌太郎記念美術館  長崎の景色を愛した画家
第30話 根津美術館  緻密に練られた展示環境
第31話 笠間日動美術館  画商ならではの芸術保護区
第32話 喜多美術館  田園の孤独な目の軌跡
第33話 アサヒビール大山崎山荘美術館  大山崎での熱意のかたまり
第34話 山口蓬春記念館  画家と建築家による幸福な建物
第35話 ウッドワン美術館  「目玉」を揃えた山の美術館
第36話 津和野町立安野光雅美術館  昔の教室のある美術館
第37話 上原近代美術館  くつろぎの丘のコレクション
第38話 ひろしま美術館  ピカソまでの粒選り名画
第39話 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館  ニューヨークのゲンちゃん
第40話 ポーラ美術館  緑の中のガラス容器
第41話 中野美術館  薄味と渋味が光る小品
第42話 杉本美術館  観察の先の描写の味わい
第43話 大川美術館  絵は心のマッサージ
第44話 太田記念美術館  原宿のエアポケット
第45話 大原美術館  進取の気に富む美術館
番外編 夢見る谷内六郎美術館
あとがき


笠間日動美術館

紹介されている46の美術館(実際は45)のうち、まだまだ足を運んだことのない美術館が沢山あります。ついつい都内で開催されている大規模展覧会ばかりに足が向いてしまってしまうことを反省。

また通い慣れた美術館(DIC川村記念美術館、根津美術館、太田記念美術館など)も赤瀬川さんの文章を読むと、今まで気が付かなかった魅力に出会え、すぐにでもまた行きたくなってしまいます。(やっぱり危険な本だ〜)

これだけのボリュームに豊富なカラー図版が満載で1300円はほんとお得。出版社さんこれでやっていけるの?

【著者の言葉】
東海道新幹線のグリーン車には、座席の前の椅子の背に「ひととき」という雑誌が挟んである。この本は、その雑誌に「個人美術館ものがたり」として四年近く連載していたものをまとめたものだ。でも、グリーン車以外には置いていないので、今回はじめて目にする人もいるはずだ。
個人美術館というのは、一人の作家だけの美術館と、一人のコレクターによる美術館と、二通りの意味がある。作家にしろ蒐集家にしろ、そこには多くの歴史が積み重なってあるので、訪ねればどうしても、しみじみとその人生を想うことになる。


フェルメール作品も全部観終え、次の「目標」丁度探していた自分にはもしかしてこの本、渡りに船かも。ここに掲載されている個人美術館を観てまわる旅。悪くないかもしれません。『個人美術館の愉しみ』片手に。


個人美術館の愉しみ』(光文社新書)
赤瀬川原平 (著)

赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)
1937年神奈川県生まれ。画家、作家。武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)中退。
60年代、前衛芸術家として活動。70年代、独自の批評を盛り込んだイラストレーターとして活躍。
81年、「尾辻克彦」名義の『父が消えた』で芥川賞を受賞。86年、藤森照信、南伸坊らと「路上観察学会」を結成。
著書に、『赤瀬川原平の名画読本』(光文社知恵の森文庫)、『超芸術トマソン』『老人力』(以上、ちくま文庫)、『新解さんの謎』(文春文庫)、『千利休 無言の前衛』(岩波新書)など多数。

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@taktwi

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いつか、島根県へ行くことがあったら、庭がきれいな「足立美術館」へ行ってみたいと思ってました。田んぼの中にあるという、高松伸が設計した「植田正治写真美術館」も、一度は行ってみったいと思ってました。京都に行ったら、「何必館・京都現代美術館」や、「細見美術
赤瀬川原平の「個人美術館の愉しみ」を読んだ! | とんとん・にっき | 2011/12/01 8:21 PM