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映画「ブリューゲルの動く絵」

映画「ブリューゲルの動く絵」(原題:The mill and the cross)を観て来ました。


映画『ブリューゲルの動く絵』公式サイト
http://www.bruegel-ugokue.com/

タイトルにある「動く絵」というコトバがもたらすワクワク感とは裏腹に、鑑賞後様々な事柄(とりわけ人間の死について)が頭の中を巡るまさに「摩訶不思議な映画」です。

美術評論家のマイケル・フレンシス・ギブソンがこの映画の監督であるレフ・マイェフスキの映像に魅了され、自著『The Mill and the Cross』を送ったことがこの映画が作られるきっかけになったそうです。

因みにレフ・マイェフスキ監督は、映画『バスキア』の原案・脚本を手掛けたほか、MoMAやヴェネツィア・ビエンナーレにビデオアート作品が展示されるなど多彩な才能を有するポーランド出身の監督さんです。

その『The Mill and the Cross』はブリューゲルの「十字架を担うキリスト」を分析した著書。よってこの映画も「十字架を担うキリスト」が「舞台」となっています。

クリックで拡大します。


ピーテル・ブリューゲル「十字架を担うキリスト」1564年
124×170cm ウィーン美術史美術館蔵

ゆうに100を超える数の様々な人々が描かれている作品。この絵を映像化すると言われても今一つピンとこないかと思います。

自分も予告編を観るまではさっぱり意味が分かりませんでした。でも数十秒でも見ればその謎は明らかに。確かに絵が動くのです!!そして自分が絵の中に居るかのような錯覚さえ。

「ブリューゲルの動く絵」予告編


最新のCG技術と3Dエフェクトを使用した映画でありながら、ハリウッド映画のような派手さは微塵もありません。それどころか映画が始まって約30分は台詞が一切ありません。

淡々と16世紀フランドル地方(アントワープ)の日常の人々の暮らしぶりを描いています。当時の人々の生活を忠実に再現しているのが最初の30分間の一番のポイント。衣服から食べ物、ちょっとした仕草まで克明に調べ上げ映画の中に落とし込んでいるそうです。

「30分は台詞が一切ない」と聞くとあたかもフェルメール作品のような静謐さが描かれているのでは?と思ってしまうかもしれませんが、残念ながらあくまでもこれは賑やかな人々の様子を生き生きと描いたブリューゲルの映画。求める静謐さは全く感じられません。

それどころか逆に常にノイズ(音)に支配されています。風車の音、子供たちのはしゃぐ声(後に画家となるブリューゲルもこの中に)、ハエの飛ぶ音、馬の蹄の音、そして生活の中の様々な音。

音と言うよりも明らかにノイズと表現した方が的確と思われます。最初の30分間のみならず映画全編を通してこれらのノイズたちが存在感を示している作品です。


ピーテル・ブリューゲル「十字架を担うキリスト」1564年
124×170cm ウィーン美術史美術館蔵

絵画ファンにとっての見どころは、ブリューゲル作品の中でも2番目に大きな作品である「十字架を担うキリスト」がどのようにして描かれていったのか、またその作品に含まれた意図とは何かを、映画『ブレードランナー』で敵役を演じたルトガー・ハウアー演じるブリューゲルが映画の中でつまびらかにしていく点でしょう。

ヒントは「蜘蛛の巣」です。

派手さは全くありませんが、慎ましくその日を精一杯生きようとした17世紀フランドル地方の人々の様子が見事に表現された作品です。逆に台詞が少ないのが功を奏しているようです。



キリスト教の宗教的知識、この当時の歴史背景も知っていた方が理解度断然深まります。フランドルの牧歌的な風景の中にゴルゴダの丘へ向かうキリストが描かれているわけですからね。

聖母マリア、シモン、ユダ、最後の晩餐、鞭打ち刑、磔刑。これくらいの知識で十分です。

そしてブリューゲルと言えば森洋子先生。今回の映画の監修?もなさっている他、字幕の翻訳のアドバイスもなさっているそうです。

映画「ブリューゲルの動く絵」は2011年12月17日(土)より渋谷・ユーロスペースにてロードショースタートします。上映館その他詳細については映画『ブリューゲルの動く絵』公式サイトで。
http://www.bruegel-ugokue.com/

今の自分の心の有り様を映し出すような映画です。


16世紀フランドル絵画を代表する巨匠で、寓話(ぐうわ)や農民の生活を中心としたテーマで多くの作品を残したピーテル・ブリューゲルの傑作「十字架を担うキリスト」を題材に、映像として再構築。数百人もの人々の姿が描かれた画面から十数人を抽出し、当時の彼らの暮らしを描くと共に聖書の物語も映し出す。絵の外側から自作を眺める画家ブリューゲルとして登場するのは、『ブレードランナー』のルトガー・ハウアー。絵画と映像が一体となった摩訶不思議な世界観に引き込まれる。

スタッフ:
監督/脚本/撮影監督/音楽 : レフ・マイェフスキ
脚本 : マイケル・フランシス・ギブソン
製作総指揮 : アンゲルス・シレジウス
プロデューサー : フレディ・オルソン
撮影監督 : アダム・シコラ
衣装 : ドロタ・ロクエプロ
美術 : カタジーナ・ソバンスカ
美術 : マルセル・スラヴィンスキ
音楽 : ヨゼフ・スカルツェク
編集 : エリオット・エムス
編集 : ノルベルト・ルジク

キャスト:
ルトガー・ハウアー
シャーロット・ランプリング
マイケル・ヨーク

Twitterやってます。
@taktwi

この記事のULR
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2678

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この記事に対するコメント

どうやら地元の映画館にも来るようなので観に行ってみます。
内容やエフェクトも興味がありますが、「ブレードランナー」で哀しきレプリカントを演じたルドガー・ハウアーがブリューゲル役というのも感慨深いものがあります。
方や人間の複製、方や人間を描く者として人間を外側から見る者という共通項を感じます。
たかぴー | 2011/11/11 11:49 PM
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11-90.ブリューゲルの動く絵■原題:The Mill And The Cross■製作年・国:2011年、ポーランド・スウェーデン■上映時間:96分■字幕:小野郁子■料金:1,700円■鑑賞日:12月23日、ユーロスペース □監督・製作・脚本・撮影監督・音楽:レフ・マイェフ
映画『ブリューゲルの動く絵』を観て | kintyre's Diary 新館 | 2012/02/18 8:47 PM
★★★“その発想は無かったっていう映像表現にびっくりです” 映画は農民の牧歌的な暮らしの傍らで、スペインの傭兵がプロテスタントを異端者として次々に処刑していく様子が描かれています。 そして、その様子を屈辱的と怒りを抱きながら見届けるヨンゲリング、絵に様
ブリューゲルの動く絵 | 映画とライトノベルな日常自販機 | 2012/03/12 1:48 PM
かなり期待して見ていたんですが・・・・・・度々睡魔に襲われました。。。 16世紀フランドルの巨匠ピーテル・フランドルの作品「十字架を担うキリスト」を題材にした群像劇、ということで良いのかな。絵の中には100人以上の人が描きこまれているようですが、その中
『ブリューゲルの動く絵』(2011) | 【徒然なるままに・・・】 | 2013/01/02 10:18 AM
 『ブリューゲルの動く絵』をDVDで見ました。 (1)本作については、本ブログのタイトルに「絵画的」と標榜しておきながら、都合がつかなくて見逃してしまい、ズット気になっていたところ(注1)、そのDVDが昨年12月に出され、TSUTAYAでもレンタル開始となったので、早
ブリューゲルの動く絵 | 映画的・絵画的・音楽的 | 2013/01/20 6:39 AM