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「ぬぐ絵画」

東京国立近代美術館で開催中の
「ぬぐ絵画−日本のヌード 1880-1945」展に行って来ました。


超話題となっている特設サイトはこちら

その昔、父親が買ってきた週刊誌に一頁だけ載っていたモノクロのヌード写真にドキドキしたこと今でも妙に覚えていたりします。Google先生が何でも見せてくれる現代っ子にそんな話をしても只の昔話にしかなりません。

絵画の世界(明治以降の洋画)でも初めの頃は女性の裸を描くなんてとんでもないことであり、タブーもいいところだったようです。

現代では信じられませんが、黒田清輝の描いたこの作品が1901年(明治34)に白馬会第6回展に出品した際に、警察から猥褻物とされてしまいました。


黒田清輝「裸体婦人像」1901年
静嘉堂文庫美術館所蔵

結局、作品下部に布を巻き付けて展示することを命じられ、後に所謂「腰巻事件」と呼ばれるようになったこの騒ぎ。今見るとどこが猥褻なのかさっぱり分かりません。それよりもこの事件が今から僅か100年前に起きたという点に驚きを禁じ得ません。

近代化と共にヨーロッパから渡って来た「ヌード」を日本はどのように許容して行ったのか、また画家たちはどのような手法でそれを表現して行ったのか、1880年代から1940年代までに描かれた代表的な油彩画100点で振り返る、東近美開館以来の大規模なはだかの展覧会です。

展覧会の構成はシンプルな3章構成。

第1章 はだかを作る
第2章 はだかを壊す
第3章 もう一度、はだかを作る



「第2章 はだかを壊す」展示風景

裸体を日本に定着させるのに精一杯であった黒田清輝の時代(第1章)、僅か5,6年後、黒田の生徒であった萬鉄五郎の時代になると同じ裸を描くのでも大きな違いが出て来ます(第2章)、そして社会的に大きく問題視されなくなった時代の作品たち(第3章)

東京国立近代美術館の美術課長である蔵屋美香氏があたため練りに練った末に開催に漕ぎ付けた展覧会。構成のみならず作品のチョイスに至るまで完璧な展覧会となっています。また会場デザインを西澤徹夫氏が担当。すっきりと観やすい工夫がなされています。


「第1章 はだかを作る」展示風景

「はだかの展覧会」となると得てして総花的なラインナップになりがちですが、今回の「ぬぐ絵画展」は近代に描かれた主に洋画に的を絞っています。

作家数も敢えて絞り作家内で起きた造形の変化に注目させる展覧会となっている為、裸体画で有名な作品、例えば東近美所蔵の小倉遊亀「浴女 その一」等は展示されないなど潔い構成となっています。

常設展同時開催
所蔵作品展「近代日本の美術」
特集:ぬぐコレクション
日本画、彫刻、写真など、コレクションよりはだかの名品さらに90点!
2011年10月29日(土)〜2012年1月15日(日)




作家数を絞ったことで完成作品と下絵を並べて展示可能に。下絵(下図)ではモデルの個性が強く描かれているのに完成作では数々の修正が加えられ特徴が消され一般化されてしまっている例もみられます。

そうそう、初期に描かれたはだかの絵は立ちポーズがほとんどです。それはモデルを寝せてしまうとエロティックになり社会的に許容されないばかりか、前述のように警察の取り締まりの対象となってしまったからだそうです。

今では重要文化財に指定されている黒田清輝「智・感・情」が立ちポーズであることもそんな理由から。そしてまたこの作品は当時の日本人ではあり得ない八頭身の体型をしているそうです。こうした日本人離れしたプロポーションにすることにより裸を芸術として苦慮難渋していたわけです。


黒田清輝「重要文化財 智・感・情」1899年
東京国立博物館所蔵

この立ちポーズを寝ているポーズへ移行させたのが萬鉄五郎。そして恋人の裸体を思い切り描いたのが中村彜。ルノワールの裸体画に恋し官能的なはだかを描いた甲斐庄楠音等々、第2章で壊して行きます。

第3章となると寝ている(横たわる)ポーズでほぼ定着。(安井曽太郎、小出楢重、梅原龍三郎)プロポーションも八頭身美人から日本人そのものに。


「第3章 もう一度、はだかを作る」展示風景。安井曽太郎

今回の特別展に出せなかったはだかの作品は常設展示室に大量に展示されています。東京国立近代美術館全体が「はだか祭」を開催していると言っても過言ではありません。

行かれる際には常設展も観られるよう時間に余裕を持ってお出かけあれ。特設サイトも要チェックです。

同時開催
所蔵作品展「近代日本の美術」
特集:ぬぐコレクション
日本画、彫刻、写真など、コレクションよりはだかの名品さらに90点!
2011年10月29日(土)〜2012年1月15日(日)

ヴァレリオ・オルジャティ展
2011年11月1日(火)〜2012年1月15日(日)


それにしても、約100年前に女性のはだかを描いて警察の取り締まりにあったことを果たして現代人は笑うことができるのでしょうか?

雑誌やネットでいとも簡単にヌード(それ以上の画像や動画)を見られはしますが、昨今話題となっている「東京都青少年の健全な育成に関する条例」等とどこが違うのでしょう。
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html

この展覧会の広告、某鉄道会社から「裸はダメ」との理由で出せなかったそうです。また記念切手に裸体画は一枚もないそうです。

明治は遠くなりにけり。しかし「近代」は未だ続いているかのようです。


ぬぐ絵画−日本のヌード 1880-1945

会期:2011年11月15日(火)〜2012年1月15日(日)
会場:東京国立近代美術館(1F企画展ギャラリー)
http://www.momat.go.jp/

会館時間: 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00) *入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし2012年1月2日、9日は開館)
年末年始(12月28日〜1月1日)、1月10日(火)
観覧料:一般850円/大学生450円
アクセス:東京メトロ東西線 竹橋駅 1b出口 徒歩3分

「ぬぐ絵画」関連イベント情報

横尾忠則(美術家)
「ヌードは難しくて解らない」
日程: 2011年11月26日(土)
時間: 14:00-15:30

岡乾二郎(美術家)
「皮膚を脱ぎ、臓腑(はらわた)を放つ。」
日程: 2011年12月3日(土)
時間: 14:00-15:30

蔵屋美香(展覧会企画者、美術課長)
「ぬぐ絵画」
日程: 2011年12月10日(土)
時間: 14:00-15:30

申し込みその他詳細はこちら


「第1章 はだかを作る」展示風景

「ぬぐ絵画」関連ギャラリートーク
「黒田清輝とヌード」山梨絵美子(東京文化財研究所)

日程: 2011年11月20日(日)
時間: 14:00-15:00
「萬鉄五郎とヌード」根本亮子(岩手県立美術館)

日程: 2011年12月11日(日)
時間: 14:00-15:00
「古賀春江とヌード」大谷省吾(東京国立近代主任研究員)

日程: 2011年12月17日(土)
時間: 14:00-15:00
「〈ぬぐ絵画〉について」蔵屋美香(展覧会企画者、美術課長)

日程: 2012年1月6日(金)
時間: 18:00-19:00
「安井曽太郎とヌード」貝塚健(ブリヂストン美術館)

日程: 2012年1月7日(土)
時間: 14:00-15:00

*いずれも会場にて。申込不要・参加無料(要観覧券)

Takeshi Nakamura | バナーを作成


尚、この展覧会のペアチケットを拙ブログご覧の皆さまに抽選でプレゼント致します(5組10枚)。チケットご希望の方は上記のgmailアドレスまで「ぬぐ絵画チケット希望」とお名前を明記しメールでお申し込み下さい。
※受付終了しました。沢山のお申込みありがとうございました。チケット順次発送します。

Twitterやってます。
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2689

JUGEMテーマ:アート・デザイン


今日も盛んに描かれ続ける、はだかの人物を主題とする絵画。絵といえば、風景や静物とともに、まずは女性のヌードを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

しかし、はだかの人物を美術作品として描き表し、それを公の場で鑑賞するという風習は、実はフランス、イタリア経由の「異文化」として、明治の半ば、日本に入って来たものでした。以後、これが定着するまで、はだかと絵画をめぐって、描く人(画家)、見る人(鑑賞者)、取り締まる人(警察)の間に多くのやりとりが生じることになりました。

「芸術にエロスは必要か」「芸術かわいせつかを判断するのは誰か」にはじまり、「どんなシチュエーションならはだかを描いても不自然ではないのか」「性器はどこまで描くのか」といった具体的な事柄まで、これまで多くの画家たちが、はだかを表現するのに最適な方法を探ってきました。

今日も広く論じられるこうした問いの原点を、1880年代から1940年代までの代表的な油彩作品約100点によってご紹介します。
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竹橋 chariot 竹橋の東京国立近代美術館では「ぬぐ絵画 日本のヌード 1880-1945」展が 開かれています。 会期は2012年 1月15日(日)までです。 従来の日本文化には無かった芸術としてのヌードが明治時...
東京国立近代美術館 「ぬぐ絵画 日本のヌード 1880-1945」 2011/11/15-2012/1/15 東京国立近代美術館で開催中の「ぬぐ絵画 日本のヌード 1880-1945」へ行ってきました。 元々、日本人にとってはだかとは比較的身近なものでしたが、美術の枠組みを通して鑑賞すると
「ぬぐ絵画」 東京国立近代美術館 | はろるど・わーど | 2011/12/24 2:18 PM