青い日記帳 

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2011年 展覧会ベスト10

兎年もあと2日となりました。
年賀状もやっと書き終え新しい年を迎える準備に追われています。

さて、毎年恒例となりました今年拝見した展覧会のベスト10を発表致します。ランキング付けるのもどうかと思いますが、一年の締めくくりとして、記憶に留めておく意味も含め。毎年毎年素人の分際で恐縮では御座いますが、お付き合い頂ければ幸いです。


鈴木春重・画

展覧会や個展に足を運びつつもブログに書けなかったものが多数あります。ご紹介しきれなかったこと反省しきりです。また12月上旬に不覚にも不注意から足の靱帯を切ってしまってからは外出も中々出来ない状態が続きました(今でも思うように観てまわれません)

健康でいることの有難さが痛いほど身に沁みたひと月でした。そして3月の震災以降多くの展覧会が開催延期・中止に追い込まれ、当り前のように美術展に通えることにあらためて奉謝せねばならぬと心新たにした一年でもありました。

「ベスト10」と称し、順位を付けてはいますが、ここにあげたベスト10以外の展覧会も含めいずれも素晴らしく、甲乙つけ難いものが多くかなり悩みました。それでも毎年恒例の縁起もの。これやらないと年を越せないので僭越ながら発表させて頂きます。

王冠22011年 私が観た展覧会ベスト10王冠2

青い旗1位:フェルメールからのラブレター展

Bunkamuraザ・ミュージアム:2011年12月23日(金・祝)〜2012年3月14日(水)

単にフェルメール作品を3点揃えただけでなく「手紙」「コミュニケーション」というテーマに沿って構成された展覧会。小規模ながらも見応え充分です。キリスト教の主題が前面に描かれていないオランダ・フランドル絵画って日本人も受け容れ易く、また江戸時代唯一ヨーロッパの中で唯一交易があった国。そんな身近さから親しみ易い内容。フェルメール以外の作品もプライベートコレクションからの出展が多く展示数の割に見所の多き展覧会。フェルメール好きでもありBunkamuraの大ファンでもあるのでこれは文句なしの1位!

京都展を真夏に観に行き、そして冬に東京で再び。一年で2度観たことになります。会場の違いで構成や展示もかなり違って観えました。リニューアルオープンしたばかりのBunkamuraで来年3月14日まで1月1日を除き無休で開催しています。

青い旗2位:狩野一信「五百羅漢図」展

江戸東京博物館:2011年4月29日(金・祝)〜7月3日(日)

震災の影響で会期が大幅にずれ込んでしまった展覧会ですが、待ち望んでいた以上のものがありました。狩野一信の五百羅漢図の凄みを一層際立たせるような空間演出にも惚れ惚れ。おかげで一信の世界観へどっぷり浸かること出来ました。何度目かにぼーとソファーに腰をかけ作品の前を過ぎゆく人々を観ていたことも。それがまた絵になるのですから何とも不思議な体験でした。

来年3月にはワシントンで狩野一信の「五百羅漢図」が公開されます。さてさてアメリカ人の反応や如何に。是非とも感想を聞いてみたいものです。

青い旗3位:春日の風景

根津美術館:2011年10月8日(土)〜11月6日(日)

大学時代に毎年教授と共に春日大社に現地調査として出向いていたこともあり、春日社には特別の思い入れがあります。信仰の対象として古くから崇められてきたこの神社。そんじょそこいらの神社とは格が違います。それはこの展覧会で展示されていた数々の作品からも明明白白。しかしこれだけの春日宮関連の作品を都内で拝見できるとはゆめゆめ思いもしませんでした。まさに有難い展覧会でした。

始まる前に担当学芸員である白原氏にこの展覧会の見どころや凄さを伺っておいたので、何をどう観たら良いのか、とても参考となりました。→「担当学芸員に聞く「春日の風景」展の見どころ。」感謝感謝です。

青い旗4位:「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展

千葉市美術館:2011年10月10日(月・祝)〜 11月13日(日)

今年は砲一イヤーの一年でもありました。巡回しやっと千葉市美術館で拝見することが叶った展覧会。抱一が抱一にいかに成っていったのか、また抱一の弟子たちの活躍まで幅広く、そして大量の出展作品で回顧することの出来た大展覧会でした。この展覧会をベスト10から外すまっとうな理由が見つかりません。

前期、後期とも当然ながら伺い、単眼鏡で隅々まで拝見し、幾つもメモを取り…きりがありませんでした。ブログの記事も逆にシンプルなものに。千万言尽くすよりもこの展覧会に行けたことだけで幸せなことです。来年の曾我蕭白もまたまた楽しみです。

青い旗5位:トゥールーズ=ロートレック展

三菱一号館美術館:2011年10月13日(木)〜12月25日(日)

絵を見始めた頃、たまたま「ロートレック展」が開催されていました。そこで受けた衝撃は言葉にすることが不可能なほど。それからロートレックについてあれこれ調べ展覧会は必ず観に行ったものです。今回の三菱一号館美術館での「ロートレック展」は今まで観た中でも最も作品状態の良いものがずらり初公開。もう嬉しくて嬉しくて。

所蔵品だそうですので、また数年後に拝見出来ること心待ちにしています。そうそうチラシやポスターも素敵でしたよね。

青い旗6位:ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション

原美術館:2011年6月25日(土)〜8月28日(日)

『第53回ヴェネチアビエンナーレ』において審査員特別表彰を受賞したシンガポール生れの作家ミン・ウォンの映像作品を展示する為に原美術館が「映画館」に大変身を遂げた展覧会。クスッと笑える作品に潜むシンガポール生れでベルリン在住のミン ウォンが問題意識を持つ国家、言語、ジェンダー、ポストコロニアル…といった意識。イギリスや日本が大きく加担している「シンガポールの歴史」や複雑な言語体系が抱える数多の問題を具現化した展覧会でした。自分の「立ち位置」を考えさせれる深い内容の展覧会でした。

青い旗7位:感じる服 考える服

東京オペラシティ アートギャラリー:2011年10月18日(火)〜12月25日(日)

今でもそうですが、服には絵と同等に興味関心があります。単なるファッション展ではなく美術展の領域までに昇華させている点に大変惹かれるものがありました。同時に建築家、中村竜治氏によって生み出されたこれまで誰も経験したことのないある種の不便さを強要する展示空間もこの展覧会だからこそ評価できるものだったかと思います。純粋に楽しく、そして服に対してのワクワク感が満載の展覧会でした。

青い旗8位:江戸民間画工の逆襲

板橋区立美術館:2011年4月2日(土)〜5月8日(日)

板橋区立美術館所蔵作品のみで構成された展覧会であるにも関わらず、これほどまでに魅力的で尚且つ愉快に鑑賞できるとはある種の感動を覚えます。ここの美術館のスタンスも記事に書いた通り評価出来る大きな要因です。館長の柔軟な思考が立地の不便さをカバーして余りある板橋区立美術館。展覧会毎に目が離せません。

ほぼ同時期に府中市美術館で開催された「江戸の人物画」とどちらをベスト10に入れるかどうか最後まで悩みました。

青い旗9位:森と芸術

東京都庭園美術館:2011年4月16日〜2011年7月3日

美術館(建物だけでなく木々に囲まれた空間全体)と展示内容がこれほどまでに合致した展覧会は珍しいのではないでしょうか。そしてタイトルからでは到底推し量れない深く充実した内容の展示。庭園美術館だからこそこの展示は生きると確信。アプローチから展覧会の一部と言ってもいいほどまとまりのある内容でした。出来ればリニューアルオープン後に再度また開催して頂きたいほどの展覧会でした。

青い旗10位:イケムラレイコ うつりゆくもの

東京国立近代美術館:2011年8月23日(火)〜10月23日(日)

イケムラレイコさんは以前より大好きな作家さんです。会場構成から図録に掲載された担当学芸員さんのコメントまでどれも納得の内容でした。今年の国立近代美術館での展覧会はどれも甲乙つけがたくベスト10に入れたいものばかりでした。

青い旗10位:神戸智行展─イノセントワールド─

佐藤美術館:2011年11月15日 (火)〜12月18日 (日)

神戸君は若手の作家の中で最も注目しているひとりです。佐藤美術館で展覧会が開催されると知り今年最も知人に「観に行ったほうがいいよ」と吹聴したのがこの展覧会です。来年は大宰府へ巡回し開催されるとのこと。九州の方是非!

以上独断と偏見で選んだベスト10(ベスト11)です。ギャラリーでの個展やイベント系の展覧会はランキングから除外しました。

以下、ベスト10入り惜しくもしなかったものの二重丸を付けた展覧会を列挙しておきます。いずれも甲乙付け難く最後の最後まで悩みました。(以下順位不同)

「幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷展」
「運慶展」
「包むー日本の伝統パッケージ展」
「グランヴィル展」
「香り かぐわしき名宝」展
「岡本太郎展」
「シャッフル展」
「ヘンリー・ダーガー展」
「母たちの神-比嘉康雄展」
「ルドゥーテ『美花選』展」
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」
「磯江毅展」
「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」
「パウル・クレー展」
「日本画どうぶつ園」
「名物刀剣」
「アンリ・ル・シダネル展」
「世紀末、美のかたち」
「知られざる歌舞伎座の名画展」
「華麗なる〈京蒔絵〉」
「ヴェネツィア展」
「松岡映丘展」
「来世のための供物展」
「ぬぐ絵画」
「南蛮美術の光と影」
「歌川国芳展」


洋の東西を問わず、また時代も何もかもハチャメチャに展覧会観てまわっています。主体性が無いと謗られたこともありますが、このスタンスは変えるつもり全くありません。

先日、神戸大学大学院人文学研究科准教授で美術史家の宮下規久朗氏にインタビューした際に、宮下先生がこんなこと仰っていました。 

Tak:絵(作品)を観る際のポイントや気を付けている点や身に付けておくとよいことなど教えて頂けますでしょうか。

宮下:これは自論なのですが、美術はすべて繋がっているので、例えばイタリア美術に興味や関心があっても、実際に目にすることのできる日本美術やアジアの美術、そして現代アートまで、よいものなら何でも観てまわることが大事だと思います。だから、美術史をやる者は学芸員になれば、専門分野や館の方針に関わらず、必ず得るものがあり、勉強になるのです。

視覚的な記憶の蓄積がすべてだといってよいでしょう。単純に言うなら、以前観た作品と目の前にある作品を比べながら観ることが肝要です。自分の心の中に、鑑賞の座標軸を設けて、そこに位置づけるのです。比較のための作品の記憶やデータがあればあるほどよいわけです。

だからこそ沢山色んな作品を観て比較ファイルをどんどん厚くすることが大事なのです。西洋美術は好きだけど仏像は興味がないからまったく観ないとか、曼荼羅は好きだがモダン・アートには興味がないなんていう学生もいますが、それでは駄目なのです。神戸大学文学部の美術史研究室では、隔週の金曜日の午後に、関西の美術館・博物館や古社寺を回るゼミをずっと続けていますが、美術史を専攻する学生は4年間のうちにかなりの数の美術にふれることができます。たくさんの作品を、説明を受けながら実際にじっくり見るという経験ほど重要なものはありません。分野は関係ないのです。



宮下規久朗先生
ヴェネツィア、カ・ドーロにて 筒口直弘氏撮影『芸術新潮』掲載写真(2011年)

インタビュー記事は年明けにでもこのブログの「美術史家に聞く」コーナーに年明けに掲載します。興味深いく、目から鱗のお話満載です。掲載お楽しみに〜

ご参考までに2004年〜2008年までのベスト10はこんな感じでした。
2004年 展覧会ベスト10
2005年 展覧会ベスト10
2006年 展覧会ベスト10
2007年 展覧会ベスト10
2008年 展覧会ベスト10

2009年 展覧会ベスト10
2010年 展覧会ベスト10

こちらの記事もあわせてどうぞ。
プロが選ぶ「2011年 ベスト展覧会」
かみさんが選ぶ「2011年 展覧会ベスト10」

仲間たちや美術館・博物館関係者、主催者等々今年も多くの方々に支えて頂いた一年でした。素人個人ブロガーとして身に余る光栄。来年もまた少しでもお役に立てれば「展覧会好き」として嬉しい限りです。

なるべく多くの方に美術館。博物館に足を運んで頂けることが一番の望みです。ジャニーズのコンサートやディズニーランドや映画他様々なイベントに比べどうしても美術展はまだまだ敷居が高いのが現状です。

数多い選択肢の中で「今日は展覧会に行こうか」と言ってもらえる頻度が今よりもっともっと高くなるよう「繋ぎ役」として来年も頑張りたいと思います。


また今年、来年と大好きなフェルメール作品が数多く日本にやって来ます。“フェルメールイヤー”にあたりファンの新たな交流の場としてフェイスブックページ「クラブ・フェルメール」もOPENしました。どなたでも「いいね!」をクリックするだけで参加可能なコミュニティーです。

年明け1月8日には「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション展」会場で、山妙子館長によるギャラリートークも実施致します。
http://twipla.jp/events/15753

恒例のインタビュー記事も数は少ないものの今年も継続出来ました。来年も突然お願いするかと思いますが、その際は何卒宜しくお願い申しあげます。

【2011年 インタビュー記事一覧】
松岡映丘の身内が語る「松岡映丘展」鑑賞のツボ
美術史家に聞く第四回:金沢百枝先生(後篇)
担当学芸員に聞く「春日の風景」展の見どころ。
美術史家に聞く第四回:金沢百枝先生(前篇)
林綾野『フェルメールの食卓』
展覧会の仕掛け人に聞く」(後篇)
展覧会の仕掛け人に聞く」(前篇)
三菱一号館美術館「Café 1894」
インタビュー:音声ガイド(後篇)

これ以前のインタビュー記事はこちらにまとめてあります。

美術館・博物館:入場フリーショップ、カフェ一覧


そうそう、日経さんから美術館、展覧会アプリについて取材を受けたのも今年でした。
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2693


TBやリンクは各記事同様大歓迎です。
ブログをお持ちの方、ベスト10でなくとも今年ご覧になった展覧会で印象に残っているものでも何でも結構です。記事書かれたら是非TB送って下さい。

ブログ書かれていない方は「コメント」に書き込んで頂けると嬉しいです。宜しくお願い申しあげます。(コメントには昨年よりお返事書かないことにしております。ご了承願います。)



この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2729

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この記事に対するコメント

こんにちは
2011年は大変な年となりましたが、震災後も国内外の素晴らしい作品が観られたのは美術関係者の皆様のご尽力があったからでしょうね。
2011年は琳派好きの私としては見所が多い年でした。来年はフェルメールが話題の中心になりそうで、こちらも楽しみです。

また来年もよろしくお願い致します。どうぞよいお年を^^
21世紀のxxx者 | 2011/12/31 4:28 PM
春日、森と芸術、イケムラレイコ、あと酒井抱一もかぶってうれしいです♪ 今年も大変お世話になりました。
お忙しいでしょうが来年も「繋ぎ役」としてのご活躍を期待しています&来年もよろしくお願いいたします。良いお年を!!
noel | 2011/12/31 5:13 PM
こんばんは。今年も公私共々お世話になりました。本当にありがとうございます。

ロートレックってこれまで実はあまりピンと来なかったのですが、
この展覧会で一気にぐっと引かれました。三菱も蔵が深い、なんて…。

それでは良いお年を!
はろるど | 2011/12/31 7:24 PM
還暦のお祝い(?)にチケットをいただいた者です。その節はありがとうございました。
わたしの2011年ベスト10は、1位「酒井抱一と江戸琳派の全貌」 2位「橋口五葉展」(千葉市) 3位「伊東深水展」(平塚市) 4位「博物館に初詣」(国立博物館) 5位「磯江毅展」(練馬区) 6位「歌川国芳」(太田記念)  7位「ロートレック展」(三菱) 8位「江戸の人物画」(府中市)  9位「神戸智行展」(佐藤) 10位「大正イマジュリー」(松濤) 次点「藤島武二・岡田三郎助」(そごう)でした。
Takさんと重なるものもあってうれしいです。
佐野ゆかり | 2011/12/31 7:57 PM
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