弐代目・青い日記帳 

  
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『知っておきたい世界の名画』
角川学芸出版より刊行された宮下規久朗著『知っておきたい世界の名画』(角川ソフィア文庫)を読んでみました。


知っておきたい世界の名画 』(角川ソフィア文庫)
宮下規久朗(著)

美術史家の宮下規久朗先生が上梓された極上の一冊。ジョットからゲルハルト・リヒターまで西洋絵画700年の歴史の中から選び抜かれた名画50作品が紹介されています。

「絵画が好き」であることと「絵画を理解している」ことは決してイコールでないにも関わらず、とかく分かった気分になりがちです。

この点について知っておきたい世界の名画の「はじめに」に宮下規久朗先生は警鐘を鳴らし、この本を書かれた意図を明らかにされています。
学校で美術史教育がなされていない日本では、美術というものは各人の勝手な感性や好き嫌いで見れば十分だと思われているが、どんな美術作品にも、その背後にある文化や思想が反映されているため、それに関する知識は鑑賞に不可欠である。優れた美術が文字の壁や文化の違いを超えるのはたしかだが、西洋と異なる文化圏にいる私たちは、ある程度の知識を学ばなければ、西洋美術の奥深さを味わうことはできないといってよい。日本人にはなじみの薄いキリスト教や、美徳を人物で表現する擬人像や寓意・象徴についての基礎的な知識は、最小限必要であろう。
また昨年の暮れ宮下先生にお話を伺った際も絵画を観る際の「知識」の重要性について強く語られていました。(詳しくはこちら

Tak「絵画を「観る」ことの他に「知識」は必要でしょうか?」

宮下「よく絵を観るのに余計な知識は不要だという方がいますが、大きな間違いだと思います。知識は視覚経験と同様に、あればあるほどよいものです。あって困ることは絶対にありません。」

「例えばある画家をあらかじめ知っている場合と知らない場合では、展覧会で鑑賞に費やす時間が違うはずです。知らない画家(アーティスト)の作品の前では、立ち止まることすらしないかもしれません。セザンヌの美術史における重要性を理解している人は、小さなセザンヌが展示されていてもじっくり見るものですが、セザンヌについて何も知らない人は、さっさと通り過ぎてしまうでしょう。」


知っておきたい世界の名画【目次】
はじめに
1:巨匠の時代のはじまり−ゴシックからルネサンスへ
2:西洋絵画の栄光と頂点−バロックとロココ
3:近代絵画の多彩な展開−モダニズムの時代



アムステルダム国立美術館

『知っておきたい世界の名画』で取り上げている50作品の中にはもしかして初めて目にする作品も含まれているかもしれません。単に有名な作品だけでなく美術史上重要で一度は観ておきたい作品を主眼に選ばれているからです。

美術が三度の飯よりも好きという方から、最近美術に興味を持ち始めたという方まで全方位的にカバーする一冊です。

構成はシンプル(作品解説&作家紹介)でありながら、内容は持ち前の溢れんばかりの知識と優れた審美眼で客観的に分かり易く綴られています。

例えば、ヨハネス・フェルメール「牛乳を注ぐ女」については、「光と時間が凝固した天才画家の名作」と題し、まず「質朴な日常生活の栄光」で約3ページに渡り全体の解説したのち、「光の粒のたわむれ」でこの作品の細部へと読者を誘います。

文庫本の6ページ分ですので、電車ひと駅分の時間で読める分量です。にも関わらずこの6ページに凝縮された「知識」が有るのと無いのでは作品を目にした際の見方がまるで違うはずです。

これまでありそうで無かった文庫本の名画鑑賞の指南書。いつもカバンの中に入れておき繰り返し読みたい一冊です。

また紹介されている50作品は全て美術館や教会で実際に目にすることが出来るものです。「いつか絶対本物を観に行きたい!」と強い気持ちにさせる「誘惑の多い一冊」でもあります。

これ読まずして西洋美術語ること勿れ!超お勧めの一冊です。知っておきたい世界の名画


宮下規久朗(みやしたきくろう)
1963年名古屋市生まれ。美術史家、神戸大学大学院人文学研究科准教授。
東京大学文学部卒業、同大学院修了。著書に、『カラヴァッジョー聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞など受賞)、『カラヴァッジョ一西洋絵画の巨匠11一』『モディリアーニ モンパルナスの伝説』(以上、小学館)、『食べる西洋美術史」『ウォーホルの芸術」(以上、光文社新書)、『カラヴァッジョヘの旅』(角川選書)、『刺青とヌードの美術史』(NHKブックス)、『裏側からみた美術史』(日経プレミアシリーズ)など多数。

《写真:ヴェネツィア、カ・ドーロにて 筒口直弘氏撮影『芸術新潮』掲載写真(2011年)》

美術史家に聞く第五回:宮下規久朗先生(前篇)
美術史家に聞く第五回:宮下規久朗先生(後篇)


知っておきたい世界の名画 』(角川ソフィア文庫)
宮下規久朗(著)

それぞれの作品解説は独立しているため、どこから読んでいただいてもかまわない。あえて★をつけてその重要性を示した。

★★★ 死ぬまでに一度は見るべき人類究極の至宝     5作品
★★  わざわざ見に行く価値のある西洋美術の最高傑作  20作品
★   見ることができれば幸福な最重要名画       25作品


14世紀イタリアのジョットから現代のウォーホルまで、西洋絵画の巨匠が描いた屈指の名作50を厳選し、いま注目の美術史家がその見どころをわかりやすく解説。日本人にはなじみの薄い「羊飼いの礼拝」などキリスト教にかかわる主題やかたちの意味、画家の技法上の特徴など、背景の歴史や文化とともに「名画の理由」を読み解く。
この50作品さえ知っていれば、西洋美術鑑賞のための知識とツボがよくわかる、とっておきの入門書。

1 巨匠の時代のはじまり―ゴシックからルネサンスへ(ジョット“マギの礼拝”;ロレンツェッティ“善政の効果”;マザッチョ“貢の銭” ほか)
2 西洋絵画の栄光と頂点―バロックとロココ(エル・グレコ“聖衣剥奪”;カラヴァッジョ“聖マタイの召命”;アンニーバレ・カラッチ“バッカスとアリアドネ” ほか)
3 近代絵画の多彩な展開―モダニズムの時代(ジェリコー“メデューズ号の筏”;ドラクロワ“サルダナパロスの死”;ターナー“雨・蒸気・速度―グレート・ウェスタン鉄道” ほか)

ボッティチェッリの≪プリマヴェーラ(春)≫はどこが見どころか? 日本人にはなじみの薄いキリスト教にかかわる主題やかたちの意味、技法の違いなど、背景にある歴史や文化とともに名画の理由をやさしく解説。

おまけ

デルフトの街中にある「牛乳を注ぐ女」の石像。

Twitterやってます。
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