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「大エルミタージュ美術館展」

国立新美術館で開催中の
「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」に行って来ました。


公式サイト:http://www.ntv.co.jp/hermitage2012/

300万点をゆうに超える所蔵品を誇るロシア、サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館から、16世紀〜20世紀の各時代を代表する83名の画家(ティツィアーノ、ルーベンス、レンブラント、ブーシェ、レノルズ、モネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ等々)の作品、全89点から成る展覧会。

400年に渡る西洋絵画の歴史をその当時の「中心」で描かれた名画で辿る構成となっています。1章(16世紀)から5章(20世紀)まで壁の色をそれぞれ当時のイメージで塗り分けられています。

展覧会の構成に沿って画像を交えて簡単にご紹介。

1:16世紀 ルネサンス:人間の世紀

バルトロメオ・スケドーニ「風景の中のクピド」16世紀末-17世紀初め
バルトロメオ・スケドーニ「聖家族と洗礼者ヨハネ」16世紀末-17世紀初め

国立西洋美術館の高梨光正氏が若い頃イタリアでスケドーニの「キリストの墓の前のアリアたち」と対面し腰を抜かすほどの強い衝撃を受け、美術史家の道を歩むことを決意させたと、2007年に国立西洋美術館で開催された「パルマ展」でお聞きしてから、ずっとスケドーニは自分の中の「見逃してはならぬ画家」リストに入っています。

わけもわからず、開催されている展覧会へ足を運び、そこで実際の作品と対峙し何かを得ておく。この蓄積こそが絵画を観る目の根本、基礎となります。

「パルマ展」にもし行っていなかったらスケドーニのこの2枚の作品の前で、これほどまでに足を止めじっくり拝見することもなかったでしょう。今回の「大エルミタージュ美術館展」ではことの他このことを強く感じさせる場面が度々ありました。

2:17世紀 バロック:黄金の世紀

ウィレム・クラースゾーン・ヘダ「蟹のある食卓」1648年
ニコラス・ファン・フェーレンダール、カスパー・ヤコプ・ファン・オプスタル「ヴァニタス(はかなさの寓意)」1660年初め
ダニエル・セーヘルス、トマス・ウィレボルツ・ボスハールト「花飾りに囲まれた幼子キリストと洗礼者ヨハネ」1650年代前半

ルネサンス期が幕を閉じ新たにバロックの時代が訪れます。イタリアに端を発しヨーロッパ各地に伝わりましたが、17世紀にあってとりわけオランダ、フランドル(ベルギー)で優れた作家が登場しバロックの花を咲かせることになります。

ヴァン・ダイク、ルーベンス、ホーホストラーデン、ヤン・ステーン等々「フェルメール展」でもお馴染みの「黄金の世紀」17世紀を彩った画家の作品が展開しています。

そして「黄金の世紀」の四番打者といえばこの人。


レンブラント・ファン・レイン「老婦人の肖像」1654年
©Photo: The State Hermitage Museum, St. Petersburg, 2012

どうも最近、レンブラント作品の中でもこの手の荒いタッチの作品を好むようになって来ました。以前はもっと丁寧に描いたものが好きだったのですが…

老婦人の手や光の当たった白い襟など、筆致はかなり大胆で、ざっざっと絵具を置いている感すらありますが、トータルで観ると大変バランスの取れた完成度の高い作品となっています。

ここのところ、フェルメールばかりにスポットライト当てられレンブラントの影が少々薄くなってきている日本の展覧会に於いて、この「老婦人の肖像」は形勢を逆転するに十分な重みと深みを有した名作です。

3:18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀

ユベール・ロベール「古代ローマの公衆浴場跡」1789年
ヤコプ・フィリップ・ハッカート「ティヴォリの滝」1783年

オランダ、フランドル地方から絵画の中心はフランスへ。フランソワ・ブーシェ、ルブラン、シャルダンなどが活躍した時代の到来です。

ユベール・ロベールの「古代ローマの公衆浴場跡」先月、西洋美術館で「ユベール・ロベール展」を観てきたばかりなので「廃虚萌え」の視線で観られること出来ましたが、この画家の名前知らないと、「阿部寛 テルマエ・ロマエ」しか頭に思い浮かばないかも。やはり展覧会で絵を観ておくこと大事です。


ピエール=ナルシス・ゲラン「モルフェウスとイリス」1811年

また、ジャン=バティスト・シメオン・シャルダンの「洗濯する女」など観ると、どうしても前章のオランダ・フランドル絵画との関連性を探りたくなります。研究者によって意見は分かれるそうですが、この作品を観る限りではシャルダンが影響を受けたことに間違いないように思われます。

因みに、前出のレンブラント・ファン・レイン「老婦人の肖像」をシャルダンは模写しています。そうそう、日本であまり馴染みのないこのシャルダンを紹介する展覧会が今年の秋から三菱一号館美術館で開催されます。

「シャルダン展 ― 静寂の画家」@三菱一号館美術館
会期:2012年9月8日(土)〜2013年1月6日(日)

昨年、「マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展」を開催したのも三菱一号館美術館でした。あまり触れる機会の少ない、ロココ時代に活躍した画家を紹介する展覧会を定期的に開催してくれるはとても有難いことだと、「大エルミタージュ美術館展」会場であらためて思いました。
http://mimt.jp/vigee/

4:19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀

ジェイムズ・ティソ「廃虚(内なる声)」1885年
フランソワ・フラマン「1802年マルメゾン宮殿でのパーティ」1894年

パリコミューンにより破壊された街で呆然と座り込む人々(右端の男性はイエスでしょうか)を描いた作品とまるで正反対の富裕層たちの宮殿パーティーの様子を描いた作品が、まるで対をなすかのように展示されています。

生活の多様化はこれまで以上に様々な場面を生み、画家たちの想像の源になっていきます。この時代を生きた画家たちがそれぞれ何を注視していたのかをざっと絵を観るだけでもはっきりと分かります。

都市部に背を向け自然を対象にした画家たち(ドラクロア、コロー、ルソー)らに続き、印象派の画家たちがパリで登場したのもこうして観てくると歴史の必然だったことが手に取るように分かります。


アルフレッド・シスレー「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの風景」1872年
クロード・モネ「霧のウォータールー橋」1903年
フェリックス・ヴァロットン「アルク=ラ=バタイユ風景」1903年

ここの美術館で(しかも2階で)ヴァロットンに出逢うとどうしても一昨年開催された「オルセー美術館展 2010」思い浮かべずにはいきません。(その前の都美館の「オルセー美術館」も)

今日は何度でも言います。作品をどれだけ観ておくかによって展覧会の面白さ満足度変わって来るものです。例えば自分が、10年前にこの「大エルミタージュ美術館展」を観たらこれほどまで楽しめなかったはずです。

「『何とか美術館展』なんてミーハーなだけだよ」なんて見栄張ってないで観にいかなくちゃ。生きている間ずーーっと「勉強」です。蓄積した分だけ絵を観る目が養われます。

先日某展覧会の内覧会(社交に追われろくに絵など観ていない人がほとんどの中)で目を皿のようにして作品をご覧になっていた高階秀爾先生の姿が印象的でした。

5:20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀

アンリ・ルソー「ポルト・ド・ヴァンヴから見た市壁」1909年
アンリ・マンギャン「サン=トロペの風景」1905年

絵画の果たしていた役割が写真に以降してしまった20世紀。キュビズムやフォービズム等様々な絵画の形態が誕生し消えて行きました。その流れで観るとアンリ・ルソーはまさに自由人です。こんな人に憧れてしまうのも無理ありません。

そして最後の部屋で特に注目なのは、今回の展覧会の目玉作品である、マティスの最高傑作の一つ「赤い部屋(赤のハーモニー)」です。東京では実に約30年ぶりの展示だそうです。

マティスは、作品により「あたり」「はずれ」の振り幅の大きな作家ですが、今回の「赤い部屋」は100人中100人が惚れ込むこと間違いない大作。

今の日本でこんな良いマティスが観られるだけで幸せです。この1点だけでも入館料払う価値十分過ぎる程あります。

16世紀から20世紀における西洋美術の「顔」ともいうべき名作を、その世紀を象徴するキーワード(16世紀=人間の世紀、17世紀=黄金の世紀、18世紀=革命の世紀、19世紀=進化する世紀、20世紀=アヴァンギャルドの世紀)を軸に紹介している教科書的な展覧会。

西洋美術の流れを通覧すること出来る、新しい生活がスタートした「新学期」にまさにぴったりの展覧会です。

「大エルミタージュ美術館展」は7月16日までです。会期中盤以降は混雑が予想されます。なるべくお早めに!


国立新美術館開館5周年
大エルミタージュ美術館展
世紀の顔・西欧絵画の400年


会期:2012年4月25日(水)〜7月16日(月・祝)
毎週火曜日休館(ただし5月1日は開館)
開館時間:10:00から18:00まで 
金曜日は20:00まで
(入場は閉館の30分前まで)
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)
http://www.nact.jp/

主催:国立新美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、エルミタージュ美術館
後援:外務省、在日ロシア連邦大使館、ロシア連邦交流庁
特別協賛:大和ハウス工業
協賛:光村印刷、日本興亜損保
協力:フィンエアー、エールフランス航空、KLMオランダ航空、日本通運、JR東日本、BS日テレ、 シーエス日本、ラジオ日本、J-WAVE、文化放送、tvk

公式サイト:http://www.ntv.co.jp/hermitage2012/


ミュージアムショップには、展覧会とコラボしたチェブラーシカのグッズも!

【記念講演会・上映会】
・「エルミタージュ幻想」上映会(上映時間96分)
5月6日(日)14:00-15:45(開場13:30)
※上映前にアレクサンドル・ソクーロフ監督が語るエルミタージュ美術館ミニ・インタビュー映像があります。

・「北国の美の宮殿:エルミタージュ美術館の名画を見る」
5月12日(土)14:00-15:30(開場13:30)
千足伸行(本展監修・成城大学名誉教授)

・シンポジウム「現代ロシアとエルミタージュ美術館」(仮)
6月3日(日)14:00-16:00(開場13:30)
沼野充義(東京大学教授、ロシア・東欧文学者)
鴻野わか菜(千葉大学准教授、ロシア文学者)
司会・進行:青木保(国立新美術館長)

・「エルミタージュ 女帝の時代」
6月9日(土)14:00-15:30(開場13:30)
中野京子(ドイツ文学者・早稲田大学講師)

・「チェブラーシカ」(ロマン・カチャーノフ監督)上映会(上映時間73分)
6月10日(日)14:00-15:30(開場13:30)
※上映前に沼野充義による、ミニ・トークがあります。

Twitterやってます。
@taktwi

注:会場内の画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影されたものです。
(撮影:yukitwi)

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2854

JUGEMテーマ:アート・デザイン


エルミタージュ美術館はロシアのサンクトペテルブルクに位置し、ロマノフ王朝の歴代皇帝の宮殿からなる建物と、300万点を超える所蔵作品とが見事な調和を織りなす、世界有数の美術館です。本展覧会では同館の優れた所蔵品の中から、16世紀から20世紀初頭における西欧美術の「顔」ともいうべき名作を、その世紀を象徴するキーワードを軸に紹介します。
16世紀=人間の世紀、17世紀=黄金の世紀、18世紀=革命の世紀、19世紀=進化する世紀、そして20世紀=アヴァンギャルドの世紀。各世紀を彩るのは、ティツィアーノ、ルーベンス、レンブラント、ブーシェ、レノルズ、モネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソら83作家の作品、全89点です。まさに400年にわたる西欧絵画の歴史をたどる豪華ラインナップです。特に注目されるのは、マティスの最高傑作の一つである《赤い部屋(赤のハーモニー)》(1908年)。東京では実に約30年ぶりの展示となります。
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