青い日記帳 

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「マウリッツハイスへの道」Vol.4

気が付けばもう5月。ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」がやって来る「マウリッツハイス美術館展」開催まで二ヶ月を切りました。

交通広告でも目にする機会がぐんと増えて来た「マウリッツハイス美術館展」と拙ブログ「青い日記帳」のオリジナルコラボレーショングッズ制作企画。
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2788


女優の武井咲さん扮する現代版「真珠の耳飾りの少女」

建築家の弥田俊男さんに、フェルメール作品に描かれているステンドグラスの縦横比率を算出して頂き、その数字を風呂敷で大事に包み、小学館の写真集や24hといった装丁も手掛けるデザイナーさんの事務所へ出かけて来ました。

もう少しで、デザインの原案が数点あがってくるはずです。こちらの意向はほぼお伝えしましたが、果たして実際にどんな図案になるか楽しみです。

これまでの経緯
業界初:「マウリッツハイス美術館展」×「青い日記帳」連動コラボグッズ
「マウリッツハイスへの道」Vol.1
「マウリッツハイスへの道」Vol.2
「マウリッツハイスへの道」Vol.3

さて、今回は美術史家で飲み仲間の池上英洋先生にお願いして、この「Road to Mauritshuis−マウリッツハイスへの道」プロジェクトのために、スペシャルエッセイを書き下ろして頂きました〜(拍手!)

タイトルがまた凄い!「処女性と窓
何やらフェルメールの絵にはない微エロな芳しい香りを感じさせるタイトルです。

池上英洋(いけがみ・ひでひろ)美術史家・國學院大学文学部准教授
1967年、広島県生まれ。東京芸術大学卒業、同大学院修了。
専門は西洋美術史。現在、恵泉女学園大学准教授を経て國學院大学文学部准教授。2007年の「レオナルド・ダ・ヴィンチー天才の実像」展での日本側監修者。
レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、中世からバロック時代の芸術家の分析を通じて、杜会構造や思想背景を明らかにする方法に定評がある。著書に『ダ・ヴィンチの遺言』(河出書房)、『Due Volti dell’Anamorfosi』(ボローニャ大学出版局)、『レオナルド・ダ・ヴィンチー西洋絵画の巨匠8』(小学館)、、イタリア・ルネサンス美術論』(共著、東京堂出版)、『イメージとテキスト』(編著、ブリュッケ)、『レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知』(共著、平凡杜)、『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界』(編著、東京堂出版)等他多数。



現在、Bunkamuraル・シネマで上映中の映画「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 in シアター」の字幕監修もなさっています。

あわせて読んで下さい。
シリーズ『美術史家に聞く』第二回:池上英洋先生

先の弥田さんといい、今回の池上さんといい、第一線で活躍なさっている専門家を巻き込んでの大げさなまでの展開。しかも皆さん全て御好意謂わばボランティアとして参加して下さっています。本当に有難いことです。

それでは、お待たせ致しました。池上英洋先生の特別書き下ろしエッセイ「処女性と窓」存分にお楽しみ下さい!

《ここから》

  わたしの妹、花嫁は、閉ざされた園。
  閉ざされた園、封じられた泉。
  ほとりには、みごとな実を結ぶざくろの森
  ナルドやコフェルの花房
  ナルドやサフラン、菖蒲やシナモン
  乳香の木、ミルラやアロエ
  さまざまな、すばらしい香り草。
  園の泉は命の水を汲むところ
  レバノンの山から流れて来る水を。
  (雅歌 4: 12-15 新共同訳)


 引用した詩は、旧約聖書におさめられている『雅歌』の一節である。若者が愛する女性へ捧げた恋の詩は、旧約聖書の中でもひときわ甘い響きにつつまれている。このような世俗文学的な一節の存在は、旧約聖書が、あるまとまった一時期に限定的な集団によって書かれたものではなく、さまざまな時代と地方に典拠をもつ寄せ集めの書であることをよく示している。

 中世以来、キリスト教圏でさかんになされた学問に「予型論」というものがある。これは新約聖書中のエピソードを原型とみなし、その予型にあたるものを旧約聖書中に認める学である。なんのことはない。旧約と新約で、よく似た構造をもつエピソードを探す作業だと言ってよい。その意図するところは、キリスト以降の新興宗教でしかなかったキリスト教が、誰もさからえない絶対的な権威をもつ旧約聖書の世界において、すでに予言されていたと主張し権威づけするところにある。

 引用した詩がよく知られているのも、予型論の対象となったからこそである。詩中の「閉ざされた」「封じられた」といった表現が、比較的早い時期からマリアの「処女性」を暗示するものとして解釈され、また「命の水」も、マリアの清らかさとともに、イエスによる贖罪を予告するともとられるようになった。


 (図1: <閉ざされた庭 Hortus Conclusus>、1410年頃、フランクフルト、州立美術館)

 こうして、美術においても<閉ざされた庭 Hortus Conclusus>という図像伝統ができあがったのだが、ライン地方の逸名画家によって描かれた有名な作品(図1)をとってみても、典拠となる『雅歌』における描写になど、画家は一切頓着していないことが一目瞭然である。ともあれ、聖母マリアのいる空間は、周囲を取り囲む頑丈そうな高壁に護られている。聖母マリアの聖性が、イエス懐胎時の純潔ただ一点にほとんど依っているため、必然的にマリアの処女性は現代的な視点からは滑稽なほどに固く固く守られなければならない。

 この「閉ざされた」処女マリアという構図は、生物学的には説明しえないからこそ、教義によって人々を納得させる必要があった。この論議はちょうど、イエスは誰かという論争と軸を一にしていた。イエスとは何者か。ただの預言者の一人ではないとなれば、神聖なるものが現世に姿をあらわしたものとなるのか―。

 延々と続くかと思われたこの論争はしかし、イエスを神とは異なる存在とする派が異端とされ、神をイエスと同一視する三位一体派が正統教義とされて決着をみた。イエスと神と聖霊(教えそのものと言って良い)とが、同一なるものの別の位格(ペルソナ)とされたのである。こうしてイエスは、はれて神聖なる世界の住人となった。

 しかし、このことが聖母マリアの処女懐胎を一層難解なものにすることになった。なぜなら、イエスはこの世界での活動時には明らかに人間の肉体をまとっているが、先ほどの教義に従えば、もとは実体などもたない聖霊的な存在のはずである。この奇妙な現象を説明する方法はひとつしかない。

 つまり、「実体のない霊的なイエス」がマリアの母体に入り込み、そこで「人間としての肉体をまとった」とするのである。なにやらアリストテレス的な、「女性の肉体は、人間の根本(ミニチュアといってよい)たる男性の精液に、ただ肉を与えているにすぎない」との思想との関連をここに見ることは誤りではない。さらに言えば、精神的(霊的)な存在を善とみて、物質的(肉的)な存在をすべて悪しきものとする、ギリシャ化された善悪二元論をベースとするグノーシス主義と、いったいなんの違いがあるというのだろう。キリスト教があれほど、異端とみなして徹底的に排除しようとしたグノーシスと―。


 (図2: ヤン・ファン・エイク、<受胎告知>、1435年頃、ワシントン、ナショナル・ギャラリー)

《ここまで》

如何でしたでしょうか。旧約聖書の詩の引用から最後は何とグノーシス主義へまで話が発展・展開しています。

池上先生の真骨頂!ぐいぐいと引き込まれてしまいます。まさに「読ませる文章」です。池上先生のこちらの本まだ読まれていない方はこの機会に是非!


「恋する西洋美術史」(光文社新書 384)池上英洋

この本の「はじめに」には、こう記されています。
 神々は激しく愛しあい、文学作品の登場人物たちが熱く抱擁しあっている。こちらでは抱かれる寸前の女性が木々に姿を変えようとしており、あちらではなぜか女性が短剣で自らの胸を貫こうとしている。そのうちにいやでも気がつく。美術作品のかなりの部分を、恋愛のテーマが占めているということに。
 つまるところ、人類の二大関心事は、ずっと死と愛だったということだ。美術作品に描かれた主題に、そのふたつのテーマに関係するものが多いのも当然だ。
今まで人間の最大の関心事である「恋」の側面から美術作品、作家を読み解いていこうという類の本が無かったことが不思議なくらいの良著です。

ところで、肝心のステンドグラスや「光」そもそもフェルメールのことが、今回の寄稿文「処女性と窓」には書かれていません。

それもそのはず、実はこの文章にはまだまだ続きがあるのです!続きはグッズの原案デッサンがあがって来てから、公開します。出し惜しみしているわけではありませんよ〜その方が読まれている方もきっと楽しいからです。

5月に入ったので、いよいよ本腰入れて参ります。これまで同様熱いエールを送って下さい。皆様の応援だけが頼りです。そうそう、キーホルダーの他にもう1アイテム他のグッズ作るかもしれません。決まり次第またご報告しますね。


フェルメールの故郷デルフトにある「レストラン・フェルメール」

「マウリッツハイス美術館展」×「青い日記帳」連動コラボグッズ:
Road to Mauritshuis−マウリッツハイスへの道」プロジェクト
乞うご期待!

ブログカテゴリーも新たに設置しました。過去記事はこちらから。
Road to Mauritshuis

6月30日,東京都美術館「マウリッツハイス美術館」でお会いしましょう!


展覧会公式サイト:
http://www.asahi.com/mauritshuis2012/

「マウリッツハイス美術館展」
オランダ・フランドル絵画の至宝


会期: 2012年6月30日(土)〜9月17日(月・祝)
会場 : 東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)
開室時間 : 9:30 〜 17:30(金曜日は20:00)、入室は閉室30分前まで
休室日 : 月曜日(7月2日は開室。休日の場合は翌日休室)
お問い合わせ : ハローダイヤル 03-5777-8600
主催 : 公益財団法人 東京都歴史文化財団 東京都美術館、朝日新聞社、フジテレビジョン
後援 : オランダ王国大使館
特別協賛 : 第一生命保険
協賛 : ジェイティービー、ミキモト

※前売券やグッズ付き鑑賞券を販売中。
※2012年9月29日(土)〜2013年1月6日(日)神戸市立博物館にも巡回します


【「マウリッツハイス美術館展」関連エントリ】
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Bunkamuraル・シネマ「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 in シアター」予告編

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