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「福田平八郎と日本画モダン」

山種美術館で開催中の
「福田平八郎と日本画モダン」展に行って来ました。


http://www.yamatane-museum.jp/

今年は福田平八郎(1892-1974)の生誕120年にあたる節目の年。

明治の開国以降急速な近代化(欧米化)が進む中で西洋画の影響を受けながら日本画の革新と変容を時代の流れと共に行い、最終的に「単純化」と道を自ら選んだ画家の変遷と同時代の「モダン」な日本画家を紹介する展覧会です。


「平八郎ロード」と名付けたくなる展示室初めのアプローチ。

福田平八郎作品が山種美術館所蔵作品のみではなく、京都国立近代美術館、京都市美術館、大阪市立近代美術館建設準備室、東京国立近代美術館より集結している様はまさに圧巻。(前後期展示替えあります)

2007年に京都国立近代美術館で開催された「福田平八郎展」で受けた衝撃に近い感動を再び時を経て今度は山種美術館で体験出来るとは夢のよう。

ゆかりの地京都や出身地の大分といった関西地方では名前を知らぬ人はいない存在の平八郎も関東での認知度はいまひとつ。しかしこの展覧会を通して必ずや平八郎の魅力に取り付かれること間違いありません。だってこれほど現代的な斬新な視線を持つ日本画家他にはいませんからね。


福田平八郎「青柿」1938(昭和13)
絹本・彩色 京都市美術館蔵

福田平八郎はしばしば「斬新な色と形を追求したカラリスト」と称されますが、多彩な色をふんだんに用いたわけではなく、逆に色を絞って(そぎ落とし)画面を構築した画家だと山下裕二先生が講演会で仰っていました。

なるほど確かにこの作品などまさにそれに当てはまります。画家の立場からするとちょっとこれだけだと不安なので色をもう少し加えたくなるとことですが、そこを敢えて寒色だけに絞り枝の部分だけにすーーと一筋暖色を引いて全体のバランスを保っています。

こんな絵描けませんよ。

でも、流石の福田平八郎もいきなりこんな単純化した色と形だけで構成された見事な作品を描けたわけではありません。逆に初めの頃の作品はこてこてとしたデロリ系の作品だったりします。


右「桃と女」1916年(大正5)
左「牡丹」1924年(大正13)
絹本・彩色 共に山種美術館所蔵

これが福田平八郎の作品だなんてキャプションが無ければまず分かる人いないでしょう。執拗なまでの描き込みと緻密な描写。特に「牡丹」は観ていて怖ろしくなるほど妖艶で不気味なリアルさを呈しています。
桃と女
顔や手にした桃にかなりはっきりとした陰影が付けられています。デロリとした濃厚な日本画の先がけ的な作品。しかし当時は理解されず、文展に出すも落選。審査員は土田麦僊の「大原女」(智積院の長谷川久蔵「桜図」の構図に人物の顔はゴーギャン風)を真似たと思われたのかもしれません。

牡丹
妖しい雰囲気の牡丹の花。花自らが妖艶な光を放っています。不思議な迫力を有した作品です。中国の李迪(りてき)によって描かれた国宝「紅白芙蓉図」に見られる近視眼的なリアリズム(クソリアリズム)に洋画から影響を受けた陰影表現を加えたかのような作品です。
山下裕二先生講演会「日本画モダンとは?―福田平八郎のセンス」より。

こうした濃い日本画を描いていた福田平八郎ですが、昭和に入ると突如としてそのスタイルを一変させます。その記念碑的な作品がこの「漣」です。


福田平八郎「漣」1932年(昭和7)
大阪市立近代美術館建設準備室蔵
前期展示(5/26〜6/24)

10cm四方の箔目が見えます。これは元々平八郎が銀屏風を注文したところ、間違えて金屏風が届いてしまい、仕方なくその上からプラチナ泥を塗ってこの地の色を作っているからだそうです。(平八郎はインタビューで銀箔を貼ったと述べていますが、銀なら経年劣化によりもっと黒ずんでいるはずです)

プラチナ泥が塗られた屏風の表面に青く短い筋がランダムに引かれています。タイトル「漣(さざなみ)」を観ないと一体何がそこに描かれているのか見当もつきません。意地の悪いクイズのようです。

しかしながら、たとえタイトルでこれが「さざなみ」を描いたものと分かってからも頭の中にクエスチョンマークは残ったまま。あれだけしつこく徹底的にリアルに描いていた平八郎の作品とは到底思えないからです。

これだけ短期間に作風を変えさせた原因は一体どこにあるのか?探りたくなるところです。もしかして平八郎という画家は絵画を自分のものとするのが異様に早かった人なのかもしれません。


右「花菖蒲」京都国立近代美術館蔵 1934年(昭和9)前期展示
左「」1940年(昭和15)山種美術館蔵

昔クラスにもひとりかふたりいましたよね、妙に勉強の出来るやつ。彼らは要は「吸収力」自分のものとする力が長けていたのです。平八郎も日本画壇では「出来る子」だったのでしょう。

出来る子は何かしら新しいことに手を出したくなるものです。飽き足らなくなり。平八郎の場合はそれが「単純化」だったわけです。

時計の振子が「写生」「リアル」に大きく振れもうそれ以上自分を昇華させるものが無いと悟った平八郎は一気に振子を反対の「写真」「単純化」に自ら移行させたのでしょう。

尚、福田平八郎と写真に関しては、『動物・植物写真と近代日本絵画』中川聲著(2012年発刊)に、福田平八郎と大変仲の良かった岡本東洋という写真家が撮影した同タイトルの「漣」という写真が存在することが明らかにされています。


山口蓬春「夏の印象」1950(昭和25)
紙本・彩色 個人蔵
©公益財団法人JR東海生涯学習財団

同じように新しい表現を模索した画家たちに福田平八郎が日本画に新風を吹き込んでから、日本画は一気に「モダン」なものへ舵を切ります。平八郎から影響を受けそれぞれ創意工夫を重ねた作品を「日本画モダン」と括り後半でまとめて紹介しています。

新たな切り口、視点から日本画を観直せる絶好のチャンスです。

斬新な色と形を追求したカラリスト・福田平八郎(1892-1974)の生誕120年にあたることを記念し、平八郎の画業を振り返るとともに、大正から昭和にかけて活躍した作家たちの「モダン」な作品を紹介する展覧会。山種美術館所蔵作品以外の作品も他館より多く借り開催されるています。

平八郎生誕120年の節目の年に相応しい内容の展覧会となっています。関東でまとめて福田平八郎の作品が観られるのはとても珍しいことです。お見逃しの無きように。

※会期中展示替えがあります。
前期展示(5/26〜6/24)  後期展示(6/26〜7/22)


「【特別展】 生誕120年 福田平八郎と日本画モダン」
会期:2012年5月26日(土)〜7月22日(日)
会場:山種美術館(東京都渋谷区広尾 3-12-36)  
http://www.yamatane-museum.jp/

主催:山種美術館、日本経済新聞社
一般お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル 受付時間:8:00〜22:00 年中無休)

「福田平八郎と日本画モダン」フォトコンテスト応募受付中
http://www.facebook.com/yamatanemuseum.photocontest

【対象作品(テーマ)】
「トリミング」、「斬新な構図」、「反復」、「抽象化」、「色彩美」など、福田平八郎の表現を意識した写真をこちらのページにご投稿ください。
【応募資格】どなたでもご参加いただけます。(お一人様3点まで応募可能)
【応募締切】2012年7月22日(日)(展覧会終了日まで投稿を受け付けます)
【賞】
・グランプリ…平八郎賞(1名)
・審査員特別賞…山下裕二賞、フクヘン賞、山種美術館館長賞(各1名)
・優秀賞…ポピュラー賞(1名)
・入選…奨励賞(50名)
【審査員】
山下裕二氏(山種美術館顧問・明治学院大学教授)、鈴木芳雄氏(美術ジャーナリスト・編集者)、山妙子(山種美術館館長)
【結果発表の方法】
展覧会会期終了後に最終審査を行い、当館ホームページ、facebook にて選考結果を発表いたします。
【応募に関するご注意とお願い】
・写真はご自身で撮影された作品にかぎります。
・過去に受賞歴のある作品はご遠慮ください。
・応募写真の著作権は山種美術館に帰属します。
・応募写真の肖像権、著作権については事前にご確認いただき必要な場合はご自身でお手続きください。
トラブルが生じた場合の責任は当館では一切負いません。
・投稿に不適切と判断される写真については、ご本人の同意なく削除させていただく場合がございます。
・facebook への投稿ができない場合は郵送およびメールでのご応募も受け付けます(送付先:〒150-0012東京都渋谷区広尾3-12-36 山種美術館学芸部/E-mail: yamatanephotocontest@gmail.com)。
但し、作品のご返却はいたしませんので予めご了承ください。また、郵送、メールでご応募いただいた作品は、facebook への反映までに時間がかかる場合がございますので、予めご了承ください。



【次回展】

夏休み企画 美術館で旅行―東海道からパリまで―
2012年7月28日(土)〜9月23日(日)
前期展示(7/28〜8/26) 後期展示(8/28〜9/23)

注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影されたものです。

Twitterやってます!
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2903

JUGEMテーマ:アート・デザイン


今年は斬新な色と形を追求したカラリスト・福田平八郎(1892-1974)の生誕120年にあたります。この節目の年に、平八郎の画業を振り返るとともに、大正から昭和にかけて活躍した作家たちの「モダン」な作品を紹介いたします。

明治以降、日本画は日本の伝統絵画としての一面を持ちつつ、西洋画の影響を受けながら革新と変容をくり返してきました。特に1920年代前後、経済の繁栄と海外との交流により、大正デモクラシーと呼ばれる自由闊達な雰囲気の中、おおらかな民衆文化が花開きました。そして昭和に入ると、新しい時代感覚を取り入れた、単純化されたフォルムと明快な色調の作品が見られるようになります。

本展では、代表作《漣》、《雨》を含む平八郎作品約20点と、同時代に活躍した画家たちのモダンで洗練された作品を集めて展観します。(会期中展示替えあり)デザイン的でリズミカルな落ち葉と写実的な筍の取り合わせが新鮮な平八郎《筍》、爽やかな朝の風が竹林を吹き抜ける小野竹喬《晨朝》、理知的な画面構成と明るい色調の山口蓬春《卓上》――いずれも日本画に新風を吹き込んだ作品です。新しい表現を模索した画家たちの創意工夫に満ちた作品の数々をご紹介いたします。

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