弐代目・青い日記帳 

  
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『ルネサンス 歴史と芸術の物語』
光文社より刊行された池上英洋著『ルネサンス 歴史と芸術の物語』を読んでみました。


『ルネサンス 歴史と芸術の物語』 (光文社新書)池上 英洋 (著)

誰しもが「ルネサンス」と聞くとすぐさま「メディチ家」とフィレンツェの街並みを思い浮かべてしまうのは、日本の高等教育が、我々の頭に刻印のように押してきた証。

それはあながち間違いではありませんが、「ルネサンス」という大きな歴史の流れのほんの一場面に過ぎないのだと『ルネサンス 歴史と芸術の物語』は教えてくれます。

実際にこの本でメディチ家が登場するのは110ページを過ぎてからのことです。

中世に終りを告げ、古代ギリシヤ・ローマ時代に倣い人間中心の考え方を復興する文化運動であるルネサンス。その大きな転機は一体何が原因だったのでしょう?

「ルネサンスという事象の構造」を見て行くことがこの本の狙いであると前書きに記されています。「知っているつもりでいるルネサンス」とは、本当は何を意味するのか…

ルネサンスについて専門的な見地から難解な言葉を用いて書かれた論文は幾らでもあります。そう容易く解説出来るものではありません。しかし、そこは池上先生ならではの偉ぶらない表現で読者の目線に合わせてポイントを押さえつつ上手くまとめられています。

学生時代、日本史を専攻していましたが、もしこの本と学生時代に出会えていたら間違いなく世界史を選んでいたはずです。

とにかくべらぼうに読み易く、歴史の一事象を理論だて「これこれ、こういう理由だから、こうした考えに至った。」と解説なさっています。

因みに現在開催中の「ベルリン国立美術館展」2回観に行きました。初め観に行った時はまだこの本が発売になる前でした。6月20日発売後拝読し、2回目のベルリン展へ赴いたところ、「聖ゲオルギウス」や「トビアス」(『トビト書』)といった作品の理解度がまるで違い自分でも驚きました。

何故、「聖ゲオルギウス」や「トビアス」がルネサンス期において好まれたのかキャプションよりも分かり易くそして深く書かれています。

【目次】

第1章 十字軍と金融(地中海の覇者;“第三のパトロン”の登場;金融業の発達)
第2章 古代ローマの理想化(なぜ古代を理想視したのか;プロト・ルネサンス期における美術の変化)
第3章 もう一つの古代(ギリシャ文化の逆流;メディチ家の君臨;古代モチーフの「借用」と「消化」)
第4章 ルネサンス美術の本質(フィレンツェでの開花;空間を創出せよ!;多神教と一神教―ネオ・プラトニズム)
第5章 ルネサンスの終焉(ルネサンスの裏側;共和政の放棄と傭兵制の敗北;イタリアの斜陽とルネサンスの終わり)
第6章 ルネサンスの美術家三十選(フィリッポ・ブルネッレスキ;ドナテッロ ほか)


そしてこの本の大きな魅力のひとつは、美術分野だけでなく、ルネサンス期の庶民の生活なども具に書かれていることです。

当時の様子を知ることで芸術の理解度格段に高まります。(っと言うか、知らないでもしルネサンス芸術に触れたとしてもそれは現代の価値基準に無理矢理当てはめて観ているだけになってしまいますからね。)

例えばこの作品。「仲睦まじい夫婦を描いた絵」だけではありません。


クエンティン・マセイス「両替商とその妻
1514年、パリ、ルーブル美術館

それまで地位の低かった(「出産マシーン」だった)女性も個人経営による商店が増えることで、労働力の一部と見なされるようになったこと(社会的地位が少し上がったこと)のだと記されています。また所謂、読み書き算盤が出来る女性が増えたこともルネサンス期の特徴なのだと。

個人的に「おおっ!」と唸ったのはペトラルカとボッカッチョという文学の面でまずルネサンスが胎動したことが綴らている箇所でした。なるほどね〜

「第6章 ルネサンスの美術家三十選」も多いに役立ちます。

掲載されているカラー図版は池上先生自らが撮られたものだそうです。著者の視点と写真の視点が見事にマッチしているので図版が生き生きとし輝いて見えるのもこの本の特徴です。

これだけの内容の本が1000円以下の新書で読めちゃうのですから、良い時代です。一家に一冊。カバンに忍ばせておいていつでもどこでも。ただし一度読み始めちゃうと中々止められないのでご注意を(笑)

そうそう、池上先生ツイッター始められましたよ〜
@hidehiroikegami (池上英洋)


『ルネサンス 歴史と芸術の物語』 (光文社新書)池上 英洋 (著)

ルネサンスとは、一五世紀のイタリア・フィレンツェを中心に、古代ギリシャ・ローマ世界の秩序を規範として古典復興を目指した一大ムーブメントを指す。
しかし、古代の文化が復興した理由、あるいは中世的世界観から脱する流れに至った理由を明確に答えることはできるだろうか。
ルネサンスとは本来、何を意味し、なぜ始まり、なぜ終わったのか―。
皇帝と教皇による「二重権力構造」をもち、圧倒的な存在として人々を支配していた中世キリスト教社会は、いかにして変革していったのか。
美術との関係だけで語られることの多い「ルネサンスという現象」を社会構造の動きの中で読み解き、西洋史の舞台裏を歩く。


池上英洋[イケガミヒデヒロ]
1967年広島県生まれ。國學院大学文学部准教授。東京芸術大学卒業、同大学院修士課程修了。海外での研究活動、恵泉女学園大学人文学部准教授を経て現職。専門はイタリアを中心とする西洋美術史・文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

シリーズ『美術史家に聞く』第二回:池上英洋先生 | 弐代目・青い日記帳
(2008年インタビュー記事)

Twitterやってます。
@taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2912

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| 読書 | 23:51 | comments(3) | trackbacks(1) |
こんばんは。
よい本を教えていただいて、早速明日買いに行きます。
ちょうどこの展覧会の予習をしようと思っていましたので、ありがとうございました。
フェルメールの本、2冊とも今読んでいるところです、すばらしいですね。
| すぴか | 2012/06/26 12:57 AM |

ありがとうございます!

文章の専門家に言うのもなんですが、ほんといつも完成度の高いレビューですよね。これまでのTakさんの書評記事を集めて本にしたら、それだけで美術関連本の良質なレファランスができ
そう。

展覧会レビューはそれこそ網羅的で貴重なレファランスになりますね。
| ike | 2012/06/26 9:08 AM |

本おもしろそうですね^^。ルネサンスというと美術面しかほとんど調べものをしないのですが、庶民の生活など時代背景がつづられているようでとても興味深いです。
(私も日本史じゃなくて世界史を選んでおけばよかったです…)
| MUE@ルネサンス美術特徴 | 2012/09/08 11:40 AM |










http://bluediary2.jugem.jp/trackback/2912
『ルネサンス 歴史と芸術の物語』
ルネサンス:神や教会を中心とする中世の考え方から脱し、古代ギリシア・ローマの人間中心の考え方を復興する文化運動。その根本精神はヒューマニズム(人文主義・人間主義)である。また、現実主義・個人主義...
| オレンジのR+ | 2012/07/18 10:08 PM |
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