青い日記帳 

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「アラブ・エクスプレス展」

森美術館で開催中の
「アラブ・エクスプレス展 アラブ美術の今を知る」に行って来ました。


アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る公式サイト

たとえ2,3回否5回、10回と幾度もシリーズ化し開催したとしても、アラブ諸国のアートを理解することは不可能なのではと思わせる展覧会。しかしそれはアラブに対する絶望的な見方ではなく逆に「幾らでも彼らのことを知りたい」という前向きで貪欲な欲求に由来するものです。

自国の国の芸術ですら、西洋的価値観に立脚せねば満足に理解出来ぬ我々が、そもそも生活習慣から信仰、言語、アイデンティティまでほぼ全ての面でイコールで結べないアラブ諸国をたった一度足を運んだだけで分かった気になるのはおこがましいにも程かあります。

「一度観たら基本それで満足。」と言った展覧会が大半を占める中、この「アラブ・エクスプレス展」は何度も何度も時間を見つけて足を運びたい展覧会であります。ヨーロッパやアメリカよりも地理的には近いはずなのに、文化的には遥か彼方にあるアラブ諸国。新鮮な驚きと一筋縄ではいかぬ懐疑に満ち溢れています。


アハマド・マーテル (サウジアラビア生まれ、在住)「マグネティズム」

この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。

メッカのカアバ神殿をイスラム教徒が巡礼している風景と思いきや、良く見ると磁石にひきつけられる砂鉄(鉄粉)が写されたものです。宗教と科学の類似点を提示しているとのこと。

「やられた!」と思わず声をあげてしまいそうになりました。イスラム教徒がメッカを巡礼している映像や画像を何度か目にし、それがひとつのアラブを表す記号化されていました。知らぬ間に。本質を理解しようと試みる前に。

アハマド・マーテルの写真ひとつとってもこのざまです。W杯で同じ「アジア枠」として戦っている国のことろくに知ろうともせず、上から目線で見ていた代償を会場内の随所で払わされました。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:日々の生活と環境
2:「アラブ」というイメージ;外からの視線、内からの声
3:記憶と記録、歴史と未来



マハ・ムスタファ (イラク生まれ、カナダ/スウェーデン在住)「ブラック・ファウンテン」

この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。

マハ・ムスタファのように西洋の文化圏で現在活躍をしている作家もいるので、余計複雑で難しく考えてしまいます。彼がどんなスタンスで原油をテーマにしたインスタレーションを作ったのか。

展覧会を拝見している時は、てっきり今回の出品作家は全てアラブ諸国(自国)で活躍をしているものだと思い込んでいました。(その方がまだスムーズに観られたのですが…)

ただし、立ち位置の覚束ない展覧会のように思えるのは、こちら側にも問題があります。教科書的な「文化相対主義」等軽々に口に出来ないものが会場内に漂っています。


ハリーム・アル・カリーム (イラク生まれ、アラブ首長国連邦/アメリカ在住)「無題(「都会の目撃者」シリーズより)」

この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。

かつてイラクを支配したサダム・フセインの圧政を批判する作品であることは、一目見て明らかです。作家自身も身の危険を感じたことが幾度となくあったそうです。

現在ドバイとアメリカ、デンバーで活動を続けるハリーム・アル・カリーム。彼もまた一筋縄で分かった気になってしまうのは余りにも危険です。そう考えるとアラブ諸国は今でも激変の最中にあり「分かる」こと等、素手で鯨を捕まえようとするのと同じなのかもしれません。

つまり、それは不可能であり、滑稽なこと。

翻って考えればそれは何もアラブ諸国に対してのことだけではなく、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ等異なる文化と接する時に須らく意識しておかねばならぬ当り前のことなのです。

という訳で、リベンジします。この展覧会何度でも。こんな素晴らしい展覧会開催してくれるの森美術館さんしかありませんからね。

一分でわかるアラブ

「アラブ・エクスプレス展」は10月28日までです。是非是非。

一部作品を除き写真撮影可能です。(作品写真の使用条件はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で許諾されています。)


アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る

開催期間:2012年6月16日(土)〜10月28日(日)[会期中無休]
時間:10:00〜22:00(火曜のみ17:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
場所:森美術館 (森タワー53F)
主催:森美術館
企画:南條史生(森美術館館長)、近藤健一(森美術館アソシエイト・キュレーター)
後援:外務省、財団法人中東調査会、日本アラブ協会、財団法人中東協力センター、バーレーン王国大使館、エジプト大使館文化・教育・科学局/エジプト学・観光局、フィンランド大使館、フランス大使館、ヨルダン・ハシェミット王国大使館、クウェート国大使館、レバノン共和国大使館、オマーン国大使館、アラブ首長国連邦大使館、イエメン共和国大使館
協賛:株式会社大林組、トヨタ自動車株式会社、三建設備工業株式会社、新菱冷熱工業株式会社、株式会社九電工
メディア・パートナー Nafasアートマガジン、Brownbook
特別協力:エッジ・オブ・アラビア、マトハフ・アラブ近代美術館、シャルジャ芸術財団
協力:シャンパーニュ ニコラ・フィアット、ボンベイ・サファイア
アドバイザー:ワッサーン・アル・フダイリ(マトハフ・アラブ近代美術館館長)、フール・アル・カーシミ(シャルジャ芸術財団代表)、エハーブ・エル・ラッバーン(第12回カイロ・ビエンナーレ コミッショナー)、サルワ・ミクダーディ(エミレーツ財団 芸術・文化部長)、ムハンマド・タラアト(カイロ芸術館元館長)


ラミア・ジョレイジュ (レバノン生まれ、在住)「ベイルート ある都市の解剖」

この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。

こういう作品好きなんです。民俗学的な見地からも。どんな作品かは是非会場で!

Twitterやってます!
@taktwi

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JUGEMテーマ:アート・デザイン


急速に変化を遂げるアラブ世界は、生活習慣からアイデンティティに至るまで決して一括りには語れない文化の多様性を持っています。アーティストたちは、その中に息づく伝統、信仰、慣習、気候風土に由来する独特の美意識や、人々の日常生活と社会の現実を、さまざまな美術表現を通して鮮やかに映し出しています。また、ここ数年、欧米の美術館ではアラブ現代美術を紹介する展覧会が頻繁に開催され、アラブ世界においても、ドーハ(カタール)にマトハフ・アラブ近代美術館が開館(2010年)、アブダビ(アラブ首長国連邦)にはルーブル美術館とグッゲンハイム美術館が建設中であるなど、アート産業が成熟しつつあります。日本で初めてアラブの現代美術に焦点を当てる本展では、アラビア半島を中心としたアラブ諸国のアーティスト約30組を紹介、その一端をいち早くリポートします。

※この展覧会は、日本とバーレーン王国、オマーン国、カタール国、アラブ首長国連邦との国交樹立40周年、及びクウェート国、サウジアラビア王国との国交樹立50周年を記念して開催されます。

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