青い日記帳 

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中野京子氏「怖い絵で読み解くレーピン展」

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催された中野京子氏(作家、独文学者)による「怖い絵で読み解くレーピン展」(「レーピン展」記念講演会)に行って来ました。


中野京子(なかの きょうこ)
作家・ドイツ文学者、早稲田大学講師。

歴史や芸術に関する連載を新聞・雑誌に多数持つほか、テレビの美術番組に出演するなど各方面で活躍。著書には、『怖い絵』シリーズ(角川文庫)、『名画の謎』(文藝春秋)『ハプスブルク家12の物語』『ブルボン王朝12の物語』(共に光文社新書)、『「怖い絵」で人間を読む』(NHK出版新書)、『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社)、『危険な世界史』(角川書店)、『マリー・アントワネット 運命の24時間』(朝日新聞出版社)など多数。


中野京子先生のブログ「花つむひとの部屋

中野京子先生のお話しは、次から次へと関連する事柄が矢継ぎ早に湧き出てきます。立て板に水とはまさにこのこと。ぐいぐいと中野ワールドへ惹き込まれてしまいます。

とても全ては上手く書き取れませんでしたが、メモしてきた興味深いお話をご紹介したいと思います。これ読まれると「レーピン展」観に行きたくなっちゃいますよ!

「怖い絵で読み解くレーピン展」(中野京子氏講演)

北海道の長い冬が終わり春の訪れとともに、タンポポ、アジサイ、ヒマワリが一辺に咲いてしまうように、ロシア芸術は19世紀になって音楽、文学、絵画が一気に開花しました。(一度開花すると勢いよく咲き開きます)

レーピンの作品は、ヨーロッパやアメリカへ渡っていないので世間的にあまり知られていませんが、こうしてまとめて観ると、一言「上手い!」ですね。

レーピン自身はロシアの激動期を生きた画家です。王政からいきなり共産主義になったロシア。レーピンは都合7人の指導者の下で生きたことになります。

ニコライ一世、アレクサンドル二世、アレクサンドル三世、ニコライ二世(帝政ロシア最後の王)それにケレンスキー、レーニン、スターリン。

これだけ長い期間を生きたレーピンだからこそ、彼の作品は歴史的にも作品的にも面白いのです。

《スライドを用いての作品解説》

顔の描き分けがレーピンは上手い。肖像画家としての腕前は一流。王侯貴族から芸術家まで多くの肖像画の依頼を受け描いた。


イリヤ・レーピン《文豪レフ・トルストイの肖像》
1887年 油彩・キャンヴァス
国立トレチャコフ美術館所蔵
©The State Tretyakov Gallery

世界三大悪妻の一つがトルストイの妻ソフィア。因みに残りの二人はソクラテスとモーツアルトの奥さん。

ソフィアは夫であるトルストイの思想を真っ向から否定し「農奴たちは、だらしがないから駄目なのだ」と完全な上から目線で、農奴解放を支持した夫を否定。

トルストイ自身は当時からカリスマ性があった。



イコン画家により1913年に切り付けられ大きなダメージを負った。修復は難しいと思われたが何とか元の姿に。ただし痛みは激しく移動が困難な作品になってしまった。

イワン雷帝と織田信長は生没年がほぼ同じ。知名度もそれぞれの国で高い。イワン雷帝は糖尿病の影響ですぐカッとなった。杖で大事な跡継ぎ息子を殴ってしまい、こめかみに当たり致命傷に。気づいた時にはもう取り返しのつかない状況に。手前に杖が転がっている。

この絵の背景にあったのは、スターリン時代に、保守的な勢力が若者を殺してしまった事件が起こった。レーピンは現政権の批判を歴史画を通して表した。

ところが、興味深いことに、「取り返しのつかないことをしてしまった」といった感情の方が現代人にシンクロし、そのように解釈されている。

絵画作品というものは、このように時代時代によって「一人歩き」するもの。



レーピンよりも一昔前のゴーゴリを描いた作品。ゴーゴリは、小説中の人物描写がとても面白く、レーピン作品同様バラエティーに富んでいる。

(この「ゴーゴリの『自殺』」に関してのトークが、中野先生自身の思い入れも強く、最も盛リ上がりました。あまりにも面白く話しに集中してしまったので、メモ取ってません。スミマセン。)


イリヤ・レーピン《トルコのスルタンに手紙を書くザポロージャのコサック》 習作
1880年 油彩・キャンヴァス
国立トレチャコフ美術館所蔵
©The State Tretyakov Gallery

1976年、ドニエプル川のそばでウクライナ・コサックが本営を張り国境を守っていると、負けているトルコのスルタン、メフメト四世から「降伏して臣下になれ」と手紙が来た。それに対しコサックたちが返事を書いている場面。

返信の内容は罵詈雑言の嵐。言いたい放題の悪口。「おまえらが悪魔の糞をおうと知ったことじゃない。ブウブウ音をたれる肛門驢馬野郎め!肉屋の野良犬めが!!」

文字の書けないコサックが書記を雇って手紙を書かせている。口述筆記を耳にして周りの皆が大笑いしている場面。

因みに当時(1897年頃)の識字率は、ロシアで21%。日本(1898年)滋賀県で73%、岡山県で60%だった。


文藝春秋 2012年 10月号 [雑誌]

尚、この《トルコのスルタンに手紙を書くザポロージャのコサック》は『文芸春秋』に連載中の「中野京子の名画が語る西洋史」でも取り上げられています。(文藝春秋 2012年 10月号)こちらも要チェックです!

【関連エントリ】
「レーピン展」
Bunkamuraザ・ミュージアム「レーピン展『ブロガー・スペシャルナイト』」
亀山郁夫氏「レーピン展」記念講演会


国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展
会期:2012年8月4日(土)〜10月8日(月・祝) 開催期間中無休
開館時間:10:00−19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横) 
http://www.bunkamura.co.jp/
主催:Bunkamura
後援:ロシア連邦外務省、ロシア連邦文化省、在日ロシア連邦大使館、ロシア連邦文化協力庁、ロシア文化フェスティバル組織委員会
協力:日本航空
企画協力:アートインプレッション

巡回先:
浜松市美術館 2012年10月16日(火)〜12月24日(月・祝)
姫路市立美術館 2013年2月16日(土)〜3月30日(土)
神奈川県立近代美術館 葉山 2013年4月6日(土)〜5月26日(日)

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。


怖い絵 死と乙女篇』(角川文庫) 中野京子

発売になったばかりの中野京子先生の『怖い絵 死と乙女篇』(角川文庫)の表紙を堂々と飾る「皇女ソフィア」(「レーピン展の目玉作品です!)。

中野先生の本はどれも豊富な知識と深い人間観察力によって綴られています。文庫化され書き下ろしも加わり更に充実。読書の秋に読む本にまず一冊加えて下さい。

Twitterやってます。

@taktwi


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