青い日記帳 

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『名画と読むイエス・キリストの物語』

大和書房より刊行された『名画と読むイエス・キリストの物語』(中野京子著)を読んでみました。


名画と読むイエス・キリストの物語大和書房
中野京子・著

中野京子先生のブログ:「花つむひとの部屋

名立たる画家が遺したキリスト教絵画の名作と共にイエスの生涯を紹介する一冊。

こう紹介すると、似たような本が幾つか頭に浮かんでくるかと思いますが、いずれも『名画と読むイエス・キリストやの物語』の右に出る本はありません。圧倒的な読み応えという点に於いて。

決して大げさでも嘘でなく、手にした翌日の夕方には220ページ以上あるテキストを読み終えていました。次の展開が気になって気になって仕方ないのです。

しかし、初見の推理小説ならいざしらず、これまで幾らでも見聞してきたイエス・キリストの生涯です。新しい展開や新事実(あったら大変ですけど)など書かれているわけではありません。

それでは、どうしてそんなにも名画と読むイエス・キリストの物語は読み手である自分を虜にしたのでしょう。その理由は3つあります。

1つ目は、『怖い絵』ほかでもお馴染みの中野京子さんの偉容を誇る圧倒的な知識に裏打ちされた流麗な読み手を飽きさせることのない文章力。中野京子さんの講演会を拝聴して分かったのですが、次から次へと溢れ出る知識の源泉をいくつもお持ちなのです。

今年9月、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催された中野京子先生による「怖い絵で読み解くレーピン展」(「レーピン展」記念講演会)


フラ・アンジェリコ『受胎告知』

2つ目は、イエス、マリアそれに使徒といった聖書の登場人物がまるで、その場所で今まさに語っているかのような「リアルさ」にあります。例えば、聖母マリアが、神の子イエスをそのお腹に身ごもったシーンはこう書かれています。
何より、生まれてくるのが神の子なら、我が子であって我が子でない。どれほど慈しんで育てようと、いずれは「わが母とは誰ぞ」と言われるのも覚悟せねばなるまい。さらに辛いのは−もうすでにマリアは知ってしまったのだった−イエスが現世で「犠牲の仔羊」となる定めだということ、母子とも世俗的な幸せは諦めねばならぬこと、愛しい息子が荊の道を歩むのを、ただ血の涙を流しながら見守るしかないことを。
マリアの感情の代弁者の如く記されているのです。クリスチャンでもなく男性である自分ですら、この時のマリアの気持ちになって読めてしまう巧みさがあるのです。

3つ目は、「既視感」です。高校生の時分、日本史が大好きだった自分が父親に薦められ手にした司馬遼太郎さんの歴史小説を読んだ時に得た、身震いするような感覚が、数十年の時を経て再びこの名画と読むイエス・キリストの物語を読み味わうことが出来ました。こんな嬉しいことはありません。

そうこの本は、中野京子さんによってイエスの生涯を「大河ドラマ」に仕立て上げた極上の歴史小説なのです。

【目次】
幼子イエス
洗礼
荒野の修行
伝道
奇蹟
女たち
使徒たち
エルサレム
最後の晩餐
ゲッセマネ
裁判
磔刑
復活



ヤコボ・ティントレット『ピラトの前のキリスト』

誕生から、洗礼、「神の国」運動、磔刑、復活まで。43点(オールカラー)の世界的名画とともにイエス・キリストの三十数年の軌跡に迫る一冊。

ここまで感情移入して読んだキリストの生涯を綴った本他には見当たりません。そして今後も出てこないでしょう。途中なんども泣きそうになったほどです。恥ずかしながら。

超絶おススメの名著です!


名画と読むイエス・キリストの物語大和書房
中野京子・著

誕生から、洗礼、「神の国」運動、磔刑、復活まで。豪華四十点以上の世界的名画とともにイエス・キリストの三十数年の軌跡に迫る。

中野京子(なかの きょうこ)
作家・ドイツ文学者、早稲田大学講師。

歴史や芸術に関する連載を新聞・雑誌に多数持つほか、テレビの美術番組に出演するなど各方面で活躍。著書には、『怖い絵』シリーズ(角川文庫)、『名画の謎』(文藝春秋)『ハプスブルク家12の物語』『ブルボン王朝12の物語』(共に光文社新書)、『「怖い絵」で人間を読む』(NHK出版新書)、『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社)、『危険な世界史』(角川書店)、『マリー・アントワネット 運命の24時間』(朝日新聞出版社)など多数。


中野京子先生のブログ:「花つむひとの部屋

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