青い日記帳 

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『ヘンな日本美術史』

祥伝社より刊行された山口晃、初の書き下ろし「画論」! 『ヘンな日本美術史』を読んでみました。


ヘンな日本美術史祥伝社
山口晃 (著)

2008年と2009年に朝日カルチャーセンターの公開講座「私見 にっぽんの 古い絵」でお話されたことをベースに(1章〜4章)書き下ろし(5章)を加えた、山口晃さん初めての画論。

《参考》What's up, Luke ?より。
山口晃「私見 にっぽんの古い絵 -江戸絵画の楽しみ-」
山口晃「私見 にっぽんの古い絵 其の二 -とりとめもなく-」
(これ、うちのかみさんも聴きに行ったのですがイマイチ記憶にないそうです…)

まぁ、画論なんて言ってしまうととても堅苦しく思えてしまいますが、「鳥獣戯画」から川村清雄、河鍋暁斎まで山口さんのアンテナに良くも悪くもビビッと反応した絵師、そして作品を軽妙な山口節にのせて説き語る今までにない斬新な日本美術史。

「松姫物語絵巻」を「下手うま」ではなく「下手くそ」と言ってのけることなど朝飯前。「伊勢物語絵巻」は毒にも薬にもならない絵、雪舟の国宝「慧可断臂図」にはズバリ莫迦っぽい絵と言い放つ潔さ。

変に素晴らしい〜等と持ちあげるのではなく、現代人の眼から見てどう考えても「ヘンな」日本の美術をバッサバッサとなぎ倒していきます。


美術館「えき」KYOTO「山口晃展〜山口晃と申します 老若男女ご覧あれ〜」トークショー

なんて紹介してしまうと、さぞかし悪態をついたろくでもない本のように思えてしまうかもしれませんが、そこは時折、噺家としても才能を発揮する山口晃さんの洒脱で軽妙な毒気の無い(正確には感じさせない)語りが補って余りあるものとして効力を発揮しています。

《参考》
山口晃 落語「厩火事」「禁酒番屋」


ヘンな日本美術史【目次】
第1章 日本の古い絵ー絵と絵師の幸せな関係(鳥獣戯画、白描画、一遍聖絵(絹本)、伊勢物語絵巻、伝源頼朝像)
第2章 こけつまろびつの画聖誕生ー雪舟の冒険(こけつまろびつ描いた雪舟/なぜ雪舟は邪道を選んだのかー「破墨山水図」ほか)
第3章 絵の空間に入り込むー「洛中洛外図」(単なる地図ではない、不思議な絵/とっつきやすさの「舟木本」 ほか)
第4章 日本のヘンな絵ーデッサンなんかクソくらえ(松姫物語絵巻、彦根屏風、岩佐又兵衛、円山応挙と伊藤若冲、光明本尊と六道絵−信仰パワーの凄さ)
第5章 やがてかなしき明治画壇ー美術史なんかクソくらえ(「日本美術」の誕生、「一人オールジャパン」の巨人ー河鍋暁斎、写実と浮世絵との両立−月岡芳年、西洋画の破壊者−川村清雄)


「目次」をご覧になってもお分かりのように、この本の売りは何と言っても、学者ではない絵描きの視点から見た美術案内になっているところです。さまざまな絵について語りながら、それはそのまま山口さんの画業に対する考え方につながっています。

山口さんが普段どのように絵画と対峙しているか、謂わば「山口晃の眼」がここに記されているのです。

これだけでも今までにない日本美術史の本となっていますが、第五章の明治画壇について扱った箇所は特に類書無き部分です。

河鍋暁斎、月岡芳年、川村清雄ら明治の日本の絵描きたちがさまざまな試行錯誤をし、新しい時代と格闘したにも関わらず、彼らがが「生き埋め」になってしまうことを憂う記述からは、「日本人」として絵を描くことに対する思いがひしひしと感じられます。


↑「アゴの下を取ってから来い」岩佐又兵衛

また、普段なかなか山口晃さんのトークショーや講演会に来られない方にとっては最良の一冊かと思います。

小難しいことを考えないでも、トークショーでもおなじみのとおり、山口さんならではのユーモラスな言葉遣い(応挙と若冲をお好み焼きに喩えたり、日本での水墨画の広まりを「ジュリアナ効果」と呼んだり…)で日本美術を切り取ってくれています。

正直、日本美術なんてよく知らないという方にも「入門書」としてもおススメできます。もちろん、カバーの絵も、書き下ろし!本文中に登場する絵師たちがずらりと描かれている光景は壮観です。応挙、雪舟はすぐ分かりますよ〜

カラー図版も満載。掲載料の関係で割愛した作品を代わりに山口さんが描いてくれていたりもします。サービス精神旺盛です。いつもながら。

日本美術ファン&山口晃ファン必読の書です。
買って損なし!保証します!!


ヘンな日本美術史祥伝社
山口晃 (著)

自分が描いたということにこだわらなかった「鳥獣戯画」の作者たち。人も文字もデザイン化された白描画の快楽。「伝源頼朝像」を見た時のがっかり感の理由。終生「こけつまろびつ」の破綻ぶりで疾走した雪舟のすごさ。グーグルマップに負けない「洛中洛外図」の空間性。「彦根屏風」など、デッサンなんかクソくらえと云わんばかりのヘンな絵の数々。そして月岡芳年や川村清雄ら、西洋的写実を知ってしまった時代の日本人絵師たちの苦悩と試行錯誤…。絵描きの視点だからこそ見えてきた、まったく新しい日本美術史。


山口晃(ヤマグチアキラ)
画家。1969年東京生まれ。群馬県桐生市に育つ。1994年東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。1996年同大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了。大和絵や浮世絵を思わせる伝統的手法を取り入れつつ、時空を自由に混在させ、人物や建築物などを緻密に描き込む作風で知られる。

【関連エントリ】
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- | - | 2012/12/09 9:59 PM