『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
文藝春秋より刊行された『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』を読んでみました。

『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
文藝春秋
中野 京子 (著)
中野京子先生のブログ:「花つむひとの部屋」
こちら記事でも既にお伝えした通り、2012年12月10日(月)発売の月刊『文藝春秋』2013年 01月号
に2000字程度の書評を寄稿致しました。
書評欄のバックナンバーは、文藝春秋webにも掲載される予定です。
是非そちらを読んで頂けると嬉しいのですが、こちらでも簡単に『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
のレビュー記しておきます。
これまでもキリスト教絵画の見かたを手助けする書籍は何冊も発売されてはいますが、この本を数ページ読み進めるだけで、他のどの本とも違う斬新で、類型を破る中野京子ワールドがそこに展開されていることを悟るはずです。
また、同時に読者はもう後戻りできない魅惑の世界に足を踏み入れたことに気付かされます。『中野京子と読み解く』とタイトルにあるのは伊達や酔狂ではありません。

ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」1563年
ウィーン美術史美術館(オーストリア)
※写真は2012年3月にウィーン美術史美術館で撮影したものです。
【目次】
聖書の登場人物
旧約聖書の章(鼻はやめて指に—ミケランジェロ『アダムの創造』/知恵と引き換えの死—クラナハ『楽園』/マザッチョ『楽園追放』/人類初の殺人者—ブレイク『アダムとイヴによって見つけられたアベルの肉体』/コルモン『カイン』/天までとどけ—ブリューゲル『バベルの塔』/神様は謎かけばかり—レンブラント『イサクの犠牲』/カラヴァッジョ『イサクの犠牲』 ほか)
新約聖書の章(おめでとう、と言われても…—ダ・ヴィンチ『受胎告知』/ロセッティ『見よ、われは主のはしためなり』/誰も気づかない—ブリューゲル『ベツレヘムの人口調査』/有名人と記念撮影—アルトドルファー『東方三博士の礼拝』/ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』/洗礼と生首—フランチェスカ『キリストの洗礼』/クリムト『ユーディットll/サロメ』/弟子たち—カラヴァッジョ『聖マタイの召命』 ほか)
目次にざっと目を通しただけでも、全く気取らない普段着姿の「中野節」がいかんなく発揮され、噛み砕いた小気味良い表現で難解なキリスト教絵画の解釈が綴られているのが分かるはずです。
「バベルの塔」を“天までとどけ”「受胎告知」を“おめでとう、と言われても……”と簡潔且つ明瞭に表すなど思わず笑みもこぼれてしまいます。
また全編を通し砕けた表現、言い回しでも決してはすっぱなもの言いに陥らない絶妙のバランスが保たれいて、読んでいてとても心地好いのです。

『聖書』の物語は、ともすれば無味乾燥で単調な解説に終始してしまいがちですが、この本は逆に読んでいる最中から次の展開が気になり、仕方なくなってくるから不思議です。
その上、美麗な絵画が絶妙なタイミングでテキストの間に挿入されているのですから絵画ファンならずとも堪りません!

ジェイムズ・ティソ「十字架のキリストが見たもの」1886〜94年
ブルックリン美術館(アメリカ)
『旧約聖書』は人間の「欲」をひとつの大きなキーワードとし、古今の画家たちが表現した絵画を軸に、巧みな比喩表現等を用い語っていきます。ドロドロゴタゴタした豊潤で時に滑稽な人間ドラマが記されていて思わず笑ってしまう場面も。
『新約聖書』の章では「聖」を主たる柱として「受胎告知」から「最後の審判」までイエス・キリストの生涯を大河ドラマのように、壮大な物語として語られています。
稀代のストーリーテラー中野京子氏の本領を如何なく発揮している読み応えのある部分です。キリスト教徒でない者が読んでも心動かされ、時に涙するはずです。(自分もそのひとり)
「あとがき」にも書かれていますが、この本も読んでみると宗教画がより多面的に捉えることが出来るようになるはずです。

『名画と読むイエス・キリストの物語』
大和書房
中野京子・著
・『名画と読むイエス・キリストの物語』レビュー
『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』には名画の話しだけでなく、映画、文学作品、音楽、ミュージカル、そして食べ物からワイン、カクテル等々。関連付けられるありとあらゆるものを縦横無尽に繰り出されます。
無味乾燥な話しも、中野節にかかるとまるで京友禅の如く華やかな物語へと昇華されます。いつも思うのですが、中野先生の本は読み手に「飽きる」ということを完全に忘れさせ「読書」の楽しさをあらためて教えてくれます。

『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
文藝春秋
中野 京子 (著)
絵で知るキリスト教はこんなにも面白い!旧約【アダムとイブ、バベルの塔】から新約【受胎告知、最後の晩餐】まで、絵で読み解く21編の聖書物語。絵はすべてカラー掲載。
既刊の『中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇』と併せて是非!
中野京子(なかの きょうこ)
作家・ドイツ文学者、早稲田大学講師。
歴史や芸術に関する連載を新聞・雑誌に多数持つほか、テレビの美術番組に出演するなど各方面で活躍。著書には、『怖い絵』シリーズ(角川文庫)、『名画の謎』(文藝春秋)『ハプスブルク家12の物語』『ブルボン王朝12の物語』(共に光文社新書)、『「怖い絵」で人間を読む』(NHK出版新書)、『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社)、『危険な世界史』(角川書店)、『マリー・アントワネット 運命の24時間』(朝日新聞出版社)など多数。
中野京子先生のブログ:「花つむひとの部屋」
Twitterやってます!
@taktwi
この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3088

『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
中野 京子 (著)
中野京子先生のブログ:「花つむひとの部屋」
こちら記事でも既にお伝えした通り、2012年12月10日(月)発売の月刊『文藝春秋』2013年 01月号
書評欄のバックナンバーは、文藝春秋webにも掲載される予定です。
是非そちらを読んで頂けると嬉しいのですが、こちらでも簡単に『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
これまでもキリスト教絵画の見かたを手助けする書籍は何冊も発売されてはいますが、この本を数ページ読み進めるだけで、他のどの本とも違う斬新で、類型を破る中野京子ワールドがそこに展開されていることを悟るはずです。
また、同時に読者はもう後戻りできない魅惑の世界に足を踏み入れたことに気付かされます。『中野京子と読み解く』とタイトルにあるのは伊達や酔狂ではありません。

ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」1563年
ウィーン美術史美術館(オーストリア)
※写真は2012年3月にウィーン美術史美術館で撮影したものです。
【目次】
聖書の登場人物
旧約聖書の章(鼻はやめて指に—ミケランジェロ『アダムの創造』/知恵と引き換えの死—クラナハ『楽園』/マザッチョ『楽園追放』/人類初の殺人者—ブレイク『アダムとイヴによって見つけられたアベルの肉体』/コルモン『カイン』/天までとどけ—ブリューゲル『バベルの塔』/神様は謎かけばかり—レンブラント『イサクの犠牲』/カラヴァッジョ『イサクの犠牲』 ほか)
新約聖書の章(おめでとう、と言われても…—ダ・ヴィンチ『受胎告知』/ロセッティ『見よ、われは主のはしためなり』/誰も気づかない—ブリューゲル『ベツレヘムの人口調査』/有名人と記念撮影—アルトドルファー『東方三博士の礼拝』/ボッティチェリ『東方三博士の礼拝』/洗礼と生首—フランチェスカ『キリストの洗礼』/クリムト『ユーディットll/サロメ』/弟子たち—カラヴァッジョ『聖マタイの召命』 ほか)
目次にざっと目を通しただけでも、全く気取らない普段着姿の「中野節」がいかんなく発揮され、噛み砕いた小気味良い表現で難解なキリスト教絵画の解釈が綴られているのが分かるはずです。
「バベルの塔」を“天までとどけ”「受胎告知」を“おめでとう、と言われても……”と簡潔且つ明瞭に表すなど思わず笑みもこぼれてしまいます。
また全編を通し砕けた表現、言い回しでも決してはすっぱなもの言いに陥らない絶妙のバランスが保たれいて、読んでいてとても心地好いのです。

『聖書』の物語は、ともすれば無味乾燥で単調な解説に終始してしまいがちですが、この本は逆に読んでいる最中から次の展開が気になり、仕方なくなってくるから不思議です。
その上、美麗な絵画が絶妙なタイミングでテキストの間に挿入されているのですから絵画ファンならずとも堪りません!

ジェイムズ・ティソ「十字架のキリストが見たもの」1886〜94年
ブルックリン美術館(アメリカ)
『旧約聖書』は人間の「欲」をひとつの大きなキーワードとし、古今の画家たちが表現した絵画を軸に、巧みな比喩表現等を用い語っていきます。ドロドロゴタゴタした豊潤で時に滑稽な人間ドラマが記されていて思わず笑ってしまう場面も。
『新約聖書』の章では「聖」を主たる柱として「受胎告知」から「最後の審判」までイエス・キリストの生涯を大河ドラマのように、壮大な物語として語られています。
稀代のストーリーテラー中野京子氏の本領を如何なく発揮している読み応えのある部分です。キリスト教徒でない者が読んでも心動かされ、時に涙するはずです。(自分もそのひとり)
「あとがき」にも書かれていますが、この本も読んでみると宗教画がより多面的に捉えることが出来るようになるはずです。

『名画と読むイエス・キリストの物語』
中野京子・著
・『名画と読むイエス・キリストの物語』レビュー
『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』には名画の話しだけでなく、映画、文学作品、音楽、ミュージカル、そして食べ物からワイン、カクテル等々。関連付けられるありとあらゆるものを縦横無尽に繰り出されます。
無味乾燥な話しも、中野節にかかるとまるで京友禅の如く華やかな物語へと昇華されます。いつも思うのですが、中野先生の本は読み手に「飽きる」ということを完全に忘れさせ「読書」の楽しさをあらためて教えてくれます。

『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』
中野 京子 (著)
絵で知るキリスト教はこんなにも面白い!旧約【アダムとイブ、バベルの塔】から新約【受胎告知、最後の晩餐】まで、絵で読み解く21編の聖書物語。絵はすべてカラー掲載。
既刊の『中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇』と併せて是非!
中野京子(なかの きょうこ)
作家・ドイツ文学者、早稲田大学講師。
歴史や芸術に関する連載を新聞・雑誌に多数持つほか、テレビの美術番組に出演するなど各方面で活躍。著書には、『怖い絵』シリーズ(角川文庫)、『名画の謎』(文藝春秋)『ハプスブルク家12の物語』『ブルボン王朝12の物語』(共に光文社新書)、『「怖い絵」で人間を読む』(NHK出版新書)、『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社)、『危険な世界史』(角川書店)、『マリー・アントワネット 運命の24時間』(朝日新聞出版社)など多数。
中野京子先生のブログ:「花つむひとの部屋」
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