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木下史青氏に聞く東洋館リニューアルのポイント

東京国立博物館の東洋館が2013年1月2日に「アジアを旅するミュージアム」として、リニューアルオープンしました。


東京国立博物館公式サイト http://www.tnm.jp/

2012年12月20日に今回の東洋館リニューアルに際し、展示と照明デザインを担当された、東京国立博物館デザイン室室長の木下史青氏に、詳しいお話を伺って来ました。

これを読んでから新しくなった東洋館行かれると何倍も楽しめ、一歩踏み込んだマニアックな見方もできるはずです。


東京国立博物館
学芸企画部 企画課 デザイン室長 木下史青(きのした・しせい)

1965年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。東京藝術大学美術学部デザイン科助手、(株)ライティング プランナーズ アソシエーツを経て、現在、独立行政法人国立文化財機構・東京国立博物館デザイン室長。『国宝・平等院展』『プライスコレクション 若冲と江戸絵画展』『国宝 阿修羅展』などの数多くの特別展の展示を手がける。『東京国立博物館 本館日本ギャラリーリニューアル』(2004年)で平成18年度日本デザイン学会年間作品賞を受賞。著書に『博物館へ行こう』(岩波ジュニア新書)、『昭和初期の博物館建築』(共著・東海大学出版会)


【東洋館 展示・照明デザインについて】

あくまでも耐震補強工事ですから通常でしたら「ブレース」(筋交い・ばってん)で補強するので、東洋館館内にも“ばってん”が入っていたかもしれません。(こんな感じでしょうか)または「増し打ち」という、竹橋の東京国立近代美術館(同じ谷口吉郎建築)で行ったような工事を行っていたかもしれません。

東洋館も「増し打ち」による耐震補強です。(ただし附属棟の一部ではブレースを使用しています。)

東洋館は「ピン」と呼ばれるものに大屋根がのかっているのが5階(最上階)まで行くと分かります。今回はこの東洋館の建築の魅力を最大限に生かそうと、建築と展示がいかにして一体化して展示を構成できるかを主眼にリニューアルを考えました。



当初の考えでは耐震改修工事をしてそのまま昔の展示ケースを戻し、大型の壁面ケースだけは新調しようとスタートしました。

しかし、当館の学芸の担当研究員が「今までの展示はもうやめよう。まったく今までとは違う、金メダルクラスの世界で一流の展示を目指そう」と盛り上がり、昔の展示ケースは一切使うのはやめ、展示の仕方もまったく違ったものにしました。

私の専門は照明ですので、照明については、当初の設計(3年前)は、蛍光灯あるいはケース内の光ファイバーを使ったものを考えていたのですが、この3年の間にLEDの技術が驚くほど進歩し、それと同時にコストもどんどん安くなってきました。

天井についているスポットライトは、一部を除いてすべてハロゲンランプを用いたスポットです。そして3室(考古/工芸)・4室(工芸)・8室(書画)などの展示ケースのライン照明は、元設計では蛍光灯だったものが、すべてLEDに変わりました。



例えば3室奥(西域)と、8室(書画)の壁面ケースをご覧いただくと、1種類の白い「色温度」の展示ケースに見えますが、実は2色の「色温度」のLEDを交互に並べ、それを個別にコントロールして、夕焼けのような赤みに光から朝の青白い光までをスムーズに変えていくことができるようになっています。

こうすることで、自然光や灯火のような変化を擬似的に再現して、書画などの作品を様々な光のもとで鑑賞し、楽しむことができる可能性がひろがってきたわけです。

地明かりとして使用されるダウンライトも、白熱ランプや蛍光灯※からLEDに全て変わりました(※竣工時のオリジナル設計は白熱ランプ使用 → その後省エネのためコンパクト蛍光灯が使用されていた。)

専門的な話をすると、1室ごとにDMXという512回路の装置を設置して、ダウンライト1灯1灯を1%刻みで調光できるシステムになっています。これで通路上は明るく、ケース上は暗く、または消灯するなど細かい設定ができるわけです。


改修前の東洋館の展示風景(撮影:木下史青)

改修前の天井付のダウンライトが星空のようにまぶしい天井になっていますが、輝度のより強いLEDになると、更にまぶしさが増してしまう可能性があります。そのまぶしさをなるべく排除すべく、ダウンライトの設計極めて深いものとし、大きな仏教彫刻の姿が浮かび上がるように工夫しました。

それに加え、解説パネルも分かりやすく見られるように、解説(情報)と空間、そして建築が一体となって見やすい展示になるように考えました。展示室にお入りいただいて空間を楽しんで頂くのがよろしいかと思います。



展示ケースの中は湿度を一定に保つような性能の展示ケースです。近寄っても自分の顔がほとんど映らないのが実感できると思います。これは低反射ガラスを用いているからです。

映り込みしにくくするコーティングが施されたガラスをダブル(2枚)で挟んで、その間に飛散防止フィルムを入れています。ですから外から照明をあてても、その光が直接ぎらっと光らない為、展示物が浮かび上がって見えるわけです。



そして、そうした展示を支える技術が免震装置です。厚さ4ミリの鉄板を重ねた「ミューソレーター」という新しい免震装置を使っています。その間を電源が通ってLEDが点灯させています。今回は青銅器や彫刻など展示物(素材)に合わせ3色の色温度のLEDを点けられるようにしています。

その免震装置を通してLEDを発光させています。一般的にLEDは熱を出さないとされていますが、非常に熱を発します。

エアタイト(「気密性」)の中で熱を発する場合も温度が3度以上上昇しないように、その設計の時に様々な実験を重ねました。

LEDの素子は、青色発光ダイオードではなく、近紫外の発光原料を使った世界でもトップクラスのLEDをこの展示の為に開発しました。



天井に付けたスポットライトはハロゲンですが、染織の展示ケース(8室・13室など)にはLEDスポットを使用しています。その理由は、LEDは調光で暗く落としていっても色温度が変わらないとう特色を持っているからです。

100ルクス以下の調光レベルでも夕陽のようなオレンジ色になりません。織色品がほかの展示物と比べてもまったく見劣りしないほど美しく見えるはずです。

《関連エントリ》
木下史青氏に聞く「誕生!中国文明展」のヒミツ
東京国立博物館 東洋館リニューアルオープン

木下氏は、平成24年度版3年生の中学校「国語」教科書(光村図書出版)に「光で見せる展示デザイン」を書かれています。光村図書出版のサイトに掲載されているインタビュー記事も必読です!


東京国立博物館公式サイト http://www.tnm.jp/

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この記事に対するコメント

こういう生の声を聞けるっていいですね。
リニューアル楽しみです。個人的には井浦新さんにも会いたいんですけど。。
ウインバレー | 2013/01/03 11:20 PM
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