青い日記帳 

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「歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎」

サントリー美術館で開催中の
「歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎 ―江戸の芝居小屋―」に行って来ました。


http://suntory.jp/SMA/

歌舞伎展と聞くと、ブロマイド的な要素で当時絶大な人気を博した役者絵がまっ先に頭に浮かびます。

ジャーニーズショップでアイドルの写真を買い求める姿と同じで、今と同じく江戸時代も贔屓の役者の錦絵ならば我先にと店先へ列をなしたことでしょう。

でも、今回の展覧会の主役は、役者絵ではなくサブタイトルに「江戸の芝居小屋」とある通り浮絵(芝居絵)に重きが置かれています。

ありそうでなかった、歌舞伎を演じる場に焦点を当てた展覧会なのです。


歌川豊国「芝居大繁昌之図」1817年

大勢のお客さんでまさに大入り満員となった歌舞伎小屋を描いた一枚。舞台では市川団十郎が見得を切っているとろろでしょうか。

ところで、舞台背後に義太夫節を演奏しているのは今と変わりませんが、舞台左右に鈴なりになっている人たちは一体何なのでしょう??

今回の「歌舞伎展」図録にも文章を書かれている田中優子氏が書いた「場の江戸文化」では、これら舞台上の人々(観客)をこう説明しています。

舞台の上には客席まであった。これらは「羅漢台」とか「吉野」と呼ばれ、舞台上の後ろ側に設置されていた。羅漢台とは、前面客席から見ると五百羅漢が並んでいるように見えるからだった。吉野とは羅漢台の二階部分で、舞台に吊られる桜の枝が目の前に見えることから来ている。このように舞台上に観客席をしつらえた結果、大入りの時には舞台が客でいっぱいになり、役者が演技する空間がほとんどない、ということもあったという。
「共視論―母子像の心理学」田中優子「場の江戸文化」より。


歌川豊国「芝居大繁昌之図」(部分)

座席指定でお行儀よく「観賞」する現在の歌舞伎とは大違いです。下を「羅漢台」、上を「吉野」または「通天」と呼んだそうです。役者を超間近で観られる謂わば「特等席」ですが、最も値段は安かったそうです。今だったら取り合いになりますよね。

このように、江戸時代の歌舞伎では、舞台と観客の区別がありませんでした。それ故、観客は、その芝居空間に身を置いて芝居と世界を共有し楽しんでいたのです。

それでも歌舞伎、それこそ歌舞伎であったろう。皆が劇場国の住人なのだから、劇場のどこにいようとかまわないのである。

役者も観客も芝居小屋にいる全員が共通の眼差しを持っていたわけです。なんと羨ましく贅沢な空間だったことでしょう。「吉野」や「羅漢台」から“成田屋!!”と言ってみたいものです。


重要文化財「阿国歌舞伎図屏風」桃山時代 17世紀 
京都国立博物館蔵

展覧会の構成は以下の通りです。

第一章 劇場空間の成立
第二章 歌舞伎の名優たち
第三章 芝居を支える人々


さて、画面の大半を芝居小屋に来ている市井の人々を描くのに割いている芝居絵を観ていると、大変賑やかな会場の中に自分も紛れ込んだ錯覚に陥ります。

面白いのは、芝居役者の声などはっきり言ってこれらの絵からは聞こえてきません。聞こえてくるのは専ら観客の笑い声やおしゃべり、はたまたお弁当を食べる音です。席を立ちあがって何処かへ行こうとしている人もいます。

お世辞にも上手いとは言えない日本で初めて透視図法(線的遠近法)を用いて描かれた芝居絵(浮絵)は、劇場を俯瞰し、絵の中にびっしりと様々な観客を描くことで、観る者を絵の世界に自然に招き入れることに成功しています。

今日の記事は第1章を中心に書きましたが、勿論2章、3章も見応え充分です。サントリー美術館と同じ隈研吾氏設計による新しい歌舞伎座もいよいよ2013年4月2日に開場します。

今回の展覧会では初期から最も新しい歌舞伎座に至るまでの変遷も貴重な資料と共に紹介されています。江戸の人々が愛してやまなかった歌舞伎をより身近に感じることの出来る内容です。

「歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎」展は3月31日までです。是非是非。


「歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎 ― 江戸の芝居小屋 ― 」展

会期:2013年2月6日(水)〜3月31日(日)
開館時間:10時〜18時
※金・土、および2月10日(日)は20時まで開館
※3月23日(土)は「六本木アートナイト2013」のため、24時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※shop×cafeは無休
休館日:火曜日
会場:サントリー美術館
http://suntory.jp/SMA/

主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス
特別協力:松竹株式会社、株式会社歌舞伎座、松竹大谷図書館、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館


重要文化財「歌舞伎図巻」(部分)

ホント色んな人がいますよね〜

【関連エントリ】
まなざしの共有

サントリー美術館次回展

「もののあはれと」日本の美
2013年4月17日(水)〜6月16日(日)

Twitterやってます。
 @taktwi

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3151

JUGEMテーマ:アート・デザイン


江戸時代に花開き、現代まで息づく歌舞伎は、日本を代表する伝統芸能として、さまざまな変遷を経て発展してきました。その歌舞伎の大きな特徴の一つに、劇場内で行なわれる〈役者〉と〈観客〉の応酬があります。歌舞伎の歴史は、この〈役者〉と〈観客〉とを結ぶ〈劇場〉を中心に展開してきたともいえます。
本展では、2013年4月の第五期歌舞伎座新開場を記念し、近世における芝居小屋から、現在へとつながる歌舞伎の劇場空間が成立するまでの歴史を、絵画作品を中心に展観します。
また、役者のブロマイドであった役者絵や、役者の愛用品、歌舞伎役者の紋や舞台衣装から影響を受け江戸で流行したファッションなどにも焦点を当て、歌舞伎の発展を支えてきた〈役者〉と〈観客〉の姿を浮き彫りにしていきます。

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