青い日記帳 

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「筆あとの魅力─点・線・面」

ブリヂストン美術館で開催中の
「筆あとの魅力─点・線・面」展に行って来ました。


http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

筆あと(痕跡)を残さずに、描くのが良しとされていた時代が、絵画の歴史では長いこと続きました。しかし、写真の登場によりその歴史に終止符を打たざるを得なくなりました。

どんなに腕のたつ画家が、幾ら上手く描いても「本物通りに表現する」ことは、シャッターを押すことに敵いません。写実的に描くことを第一義として画家の存在自体を脅かすことに。

印象派の誕生も故に、偶然ではなく必然であったわけです。「仕上げられていない描きかけの絵」、「腐った肉のよう」、「不快極まりない下劣な絵」等々発表当時散々な酷評の嵐にさらされながらも、新しい写真とは違う道を模索せねばならなかったのです。

つまり、しっかりと筆あとを遺さなくてはならなくなったのです。

モネ、ルノワールなどの印象派からセザンヌ、そしてマティス、ピカソなど20世紀に至る西洋美術の巨匠たちが、どのようにして、筆あとを遺したのでしょう。

「筆あと」に注目することで、今まで目にしたことのあるブリヂストン美術館の優品たちもまた違った見方が出来るように工夫されている、目の付け所の良い展覧会です。


ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃

静物画や風景画を支えてき旧来の思想は、譬喩的にいえば、電子顕微鏡や天体望遠鏡の驚異的な発達に比例して、根本的にゆるがされているのである。ゴッホやセザンヌの風景、静物を二十世紀において最もよく継承したのは、クレーやヴォルス、フォートリエやデュビュッフェ、ポロックやデ・クーニングであった、というような考え方が、あながち荒唐無稽とはいえないような自然観の変化というものが、今私たちの中に生じつつあるといっていい。これらの画家の、微視的な、また巨視的な画面構造には、二十世紀の自然科学が、天文学から生理学まで、物理学から科学まで、サイバネティックスから位相幾何学まで、その総体において達成した自然窮理の一段階の、正確な造形的対応物があるといえるかもしれないのである。
(大岡 信『抽象絵画への招待』より)


ポール・シニャック《コンカルノー港》1925年

自然を「死んだ」あるいは「静止した」様相においてとらえる考え方は、早晩それ自体終焉を迎えねばならないだろうということである。抽象絵画が一つの「思想表現」であり得るとすれば、それはこういう事態と切り離すことのできないものとしてなのである。かつては「自然」として明確に意識されたり対象化されたりしなかった諸要素が、われわれの自然概念に多様さと複雑さを加えはじめている。(中略)能産的自然natura naturansは、自然界の根源的な「生成力」「形成力」であり、その力は、まさに「人間」のうちにも流れているのである。それゆえ、現代の絵画は、人間自身の生成力、形成力の自己証明であるような絵画をめざす画家たち、形の彼方のフォルムを追求する画家たちを、必然的に生むことになった
(大岡 信『抽象絵画への招待』より)


ピート・モンドリアン《砂丘》1909年

この展覧会を観ている途中で、ぼんやりながらも頭に浮かんできたの大岡信氏の『抽象絵画への招待』の一節でした。一部引用して掲載しましたが、あくまでも「一部」なので未読の方は是非。

線や点で抽象化することにより、自然との接し方にも明らかに変化が見受けられます。セザンヌはまだ自然と格闘していますが、次第に自然を移ろうもの、本来捉えられないものとの認識が芽生えてきたかのように見えます。

ザオ・ウーキーの普段見たことのない作品や、日本人画家による作品も加えての構成となっています。小さなコレクション展ながらも非常に見応えのある、そして新しい発見に出逢える展覧会です。

キャプションを是非丁寧に読んでみて下さい。
「筆あとの魅力─点・線・面」は3月10日までです。


ブリヂストン美術館コレクション展─印象派から抽象絵画まで
筆あとの魅力ー点・線・面

開催期間:2013年1月8日(火)〜2013年3月10日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
開館時間 10:00〜18:00(祝日を除く金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
主催:公益財団法人 石橋財団 ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/



次回の展覧会は「パリ、パリ、パリ」

テーマ展「Paris、パリ、巴里 ─ 日本人が描く 1900–1945」
2013年3月23日(土)-2013年6月9日(日)

【ブリヂストン美術館展覧会スケジュール】
ブリヂストン美術館コレクション展
色を見る、色を楽しむ。—ルドンの『夢想』、マティスの『JAZZ』…
2013年6月22日(土)-2013年9月18日(水)

特別展
ギュスターヴ・カイユボット展 (仮称)
2013年10月10日(木)-2013年12月29日(日)

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新藤 信(日本パウル・クレー協会),林 綾野(日本パウル・クレー協会)
講談社

風景画、人物画、抽象絵画といった主題やジャンルにかかわらず、どんな絵でも平らな面の上に一つまたは複数の色が塗られています。画家たちはきっといろいろなことを考えて筆を動かしたことでしょう。目の前の風景をできるだけ正確に再現してみせようと思ったかもしれませんし、自分の心の中の理想のイメージを何とかして表現したいと考えた画家もいたかもしれません。あるいは美しい色やかたちを並べて楽しんでいた場合もあったかもしれません。しかし、どんな場合であっても、画家たちが実際に画面に描いたり塗ったりするのは線やかたちであり、多彩な色です。たとえば、花の姿をできるだけ正確に再現しようとした場合でも、花そのものを作るわけではなく、かたちや色を使って実際の花に見えるようなイメージを実現しているのです。今回の展示では、そうした絵画表現の基本要素である色とかたちに残された「筆あと」に注意を向け、当館のコレクションから「点」、「線」、「面」の筆あとが特徴的な作品28点をご紹介いたします。筆あとに注目しながら、モネ、ルノワールなどの印象派からセザンヌを経てマティス、ピカソなど20世紀に至る西洋美術の展開を中心に、藤島武二や青木繁などの日本近代洋画、そして戦後の抽象絵画までブリヂストン美術館のコレクション約170点をお楽しみください。

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&nbsp;筆あとの魅力 点・線・面 印象派から抽象絵画まで@ブリヂストン美術館を見てきました。今までに見た作品が多いが点描画が数多く展示されていました。パウルクレーの点描画 島は今回初めて見たと思います。セザンヌ、カンディンスキー、ザオ・ウーキー、ゴ