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「フランシス・ベーコン展」

東京国立近代美術館で開催中の
「フランシス・ベーコン展」に行って来ました。


ベーコン展公式サイト:http://bacon.exhn.jp/

「20世紀最も重要な画家の一人で、現代美術に多大な影響を与えた」アイルランド出身の偉大な画家フランシス・ベーコン(1909-1992)の展覧会が実に30年ぶりに日本で開催されています。

「ベーコン展」を開催することが、如何に大事でまた同時に、如何に困難なことか、以前こちらの記事で書きました。目撃せよ。体感せよ。記憶せよ。「フランシス・ベーコン展」

展覧会を開催するのがもっとも難しいアーティストのひとり」であるフランシス・ベーコン。30年前の「ベーコン展」をご覧になった方が、今でも興奮気味に当時受けた衝撃を語ります。

しかし、現代アートにあまり詳しく無い方(自分も含む)にとってはフランシス・ベーコンの作品をどう観たらよいのか分かりません。何も予備知識無しで行くにはちょっと不安です。


「フランシス・ベーコン展」展示風景

と言う事で、今日の記事では、「フランシス・ベーコン展」の担当学芸員である保坂健二朗氏の解説をQ&A形式でご紹介しながら展覧会の魅力をお伝えしたいと思います。

【ここが見どころ】
・ 没後の大規模な個展としては日本初。アジアでも初。
・ 回顧展であると同時に、ベーコンにとって重要な「身体」に焦点をあてたテーマ展でもあります。
・ 英国、ドイツ、アメリカ、台湾、オーストラリア、ベルギーなど世界各地から作品が集まります。
・「 スフィンクス」をモチーフとする作品が4点集まるのは世界初。
・ ニューヨーク近代美術館所蔵の、最後の三幅対(トリプティック)を展示。
・ ベーコンにインスパイアされたヨーロッパと日本のダンサーの映像も紹介。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:移りゆく身体 1940s-1950s
2:捧げられた身体 1960s
3:物語らない身体 1970s - 1992
エピローグ:ベーコンに基づく身体



フランシス・ベーコン「肖像のための習作」1953年
フランシス・リーマン・ローブ・アート・センター蔵
Gift of Mrs. John D. Rockefeller 3rd (Blanchette Hooker, class of 1931)
© The Estate of Francis Bacon. All rights reserved. DACS 2013  Z0012

Q:フランシス・ベーコンと同時代の芸術家には誰がいますか?

A:
フランシス・ベーコン
(Francis Bacon、1909年10月28日〜1992年4月28日)
アルベルト・ジャコメッティ
(Alberto Giacometti、1901年10月10日〜1966年1月11日)
パブロ・ピカソ
(Pablo Picasso、1881年10月25日〜1973年4月8日)

Q:「ピカソとならぶ美の巨匠」と称される理由はどこから来たのでしょう?

A:1971年に、フランスの美術雑誌『コネサンス・デ・ザール』が選ぶ「現存重要作家ベスト10」の1位にベーコンが選出されました。ただし、このアンケートには、「ピカソを除いて」という条件がありました。つまり、トップのピカソに比肩するアーティストとして今から40年も前に認知されていたことになります。


レインコートを着たフランシス・ベーコン 1967年頃撮影
撮影:ジョン・ディーキン
© The Estate of Francis Bacon. All rights reserved. DACS 2013  Z0012

Q:ベーコンを日本の文脈で捉えてみると如何でしょう?

A:「フランシス・ベーコン」=「弗朗西斯・培根」とでも表記されるでしょうか(笑)
ベーコンの生没年を日本の年号に置き換えるとぐっと身近に感じるかもしれません。

明治42年10月28日〜平成4年4月28日

明治42年10月26日…伊藤博文がハルビン駅で暗殺される。
平成4年4月25日…尾崎豊が死去。

また、ベーコンと同時代の日本の著名人を列挙してみると…
フランシス・ベーコン(Francis Bacon、1909年10月28日〜1992年4月28日)

太宰 治(1909年6月19日〜1948年6月13日)
田中絹代(1909年11月29日〜1977年3月21日)
土門拳(1909年10月25日〜1990年9月15日)
上原謙(1909年11月7日〜1991年11月23日)
松本清張(1909年12月21日〜1992年8月4日)
杉山寧(1909年10月20日〜1993年10月20日)
淀川長治(1909年4月10日〜1998年11月11日)
浜口陽三(1909年4月5日〜2000年12月25日)


「フランシス・ベーコン展」展示風景

Q:ベーコンのイギリスにおける同時代の評価はどのようなものだったのでしょうか?

A:イギリスの一部の批評家の例ですが、ジョン・バージャーは『見ることについて』(1980)でベーコンをこのように記しています。

ベーコンの芸術は、実際のところは、順応主義である。だから、それを何かと比べるのだとしたら、その相手は、ゴヤや初期のエイゼンシュテインではなく、ウォルト・ディズニーにするべきだ。

ふたりの男は、ともに私たちの様々な社会にみられる疎外された振る舞いについての提案をしようとしている。ふたりとも、違うやり方でではあるが、それが何かを見る者に受け入れさせようとするのだ。ディズニーの描く疎外された振る舞いは、面白いしセンチメンタルなので、受け入れ可能である。しかしベーコンは、そうした振る舞いを、これまで起こった最悪の可能性という観点から解釈し、拒否するのも希望を持つのも無意味だと提案する。

手足が歪められ、身体を全体的な形として扱い、人物像同士、あるいは人物と背景との関係を強調する。またきちんと仕立てられたスーツを着用させ、手に動きを与え、色彩を様々に使うなど、ふたりの作品が形式上驚くほど似ているのは、ふたりが、同一の危機に対して、相補的態度を取っていることに起因する。


Q・ベーコンを一言で言うと?

A:ジョン・ラッセルが「A randy old dog」とベーコンのことを呼んでいます。「randy」とは「好色な、エッチな、淫らな」といった意味を持つ言葉です。(因みに、田口ランディさんのランディと同じです)

Q:randyな同性愛者だったベーコンが交際した人物は分かっているのですか?

A:几帳面な性格だったのか?!年代ごとに相手が違います。それぞれ当時付き合っていた男性をモデルにして描いた作品が偶然にも今回の展覧会に出展されています。

40年代 エリック・ホール
50年代 ピーター・レイシー
60年代 ジョージ・ダイア
70年代 ジョン・エドワーズ
80年代 ホセ・カペッロ

ポスターやチラシに用いている「ジョージ・ダイアの三習作」やこちらの作品のモデルは、皆当時ベーコンが交際していた男性をモデルに描いています。


フランシス・ベーコン「三幅対」1991年
ニューヨーク近代美術館蔵
© The Estate of Francis Bacon. All rights reserved. DACS 2013  Z0012

Q:フランシス・ベーコンの作品の特徴はズバリなんでしょう?

A:誤解を恐れずに言うならば「下手なのに上手い」ということです。

Q:「下手なのに上手い」とはどういうことでしょうか?

A:線遠近法ができなくても、人物の骨格が捉えられなくても絵は描けます。「肉」をあるいは「叫び」をあるいは「感覚」そのものを「油絵具」で描けば、それでOKなのです。

例えば実際にモデルを使って描くとベーコン作品特有の歪みが表現出来ず、どこかぎこちなくなってしまいます。しかし、写真を使って描いた作品は当館所蔵の安井曾太郎「金蓉」のような絶妙なバランスの取れたものとなります。

また、絵具の使い方も滅茶苦茶上手いことが実際に作品を見てもらえれば分かります。


「フランシス・ベーコン展」展示風景

Q:今回のベーコン展は世界各地からベーコン作品を集めたそうですが、その内訳は?

A:所有者の居住区で区分すると…以下の通りです。
アメリカ 12
英国 6
日本 5
台湾 3
ドイツ 2
オーストラリア 2
ロシア 1
ベルギー 1
デンマーク 1

33点というと少ないように感じるかもしれませんが、6点の三幅対(そのうち4点がフルサイズ!)の数え方を変えれば45枚となります。


フルサイズの三幅対(トリプティック)に囲まれる快感はもう二度と日本では味わえないかもしれません。

Q:最後にセクション名に「移りゆく身体」とありますが、これにはどんな意味があるのでしょうか?

A:ベーコンの作品に描かれた人物像が有する両面性を表わしています。
例えば…

リアル⇔フィクション
此岸⇔彼岸
人間⇔動物
聖⇔俗
個人⇔無名
社会的身体⇔動物的身体


こうした関係性が作品の中に常に見てとれるのです。実際にベーコンはエクトプラズム(ectoplasm)を思わせるような写真も所有していました。

保坂健二朗学芸員から最後の一言。「会期中にベーコンの命日がやってきます。4月28日(日)。この日は自分も美術館に居るので何かイベントをやれればと考えています。

保坂学芸員のツイッターアカウント要フォローです!@kenjirohosaka


「フランシス・ベーコン展」展示風景

歪んだ人間の身体が大きな画面に描かれている作品(一点だけ犬を描いた作品がありました)の前に立つと、絵の中に自分も引きずり込まれそうな感覚に襲われます。

ベーコンは身体の有する両面性を描きつつ、鑑賞者に対してもそれを求めていたのかもしれません。否、間違いないと思います。展示室内には、以下のような注意書きがありました。

【ガラスの反射について】
ベーコンは、そのほとんどの作品について、「ガラス+金縁の額」という仕様での額装を指示していました。ガラスの独特の存在感が、見る人と絵の間に「隔たり」を生むことを好んでいたのです。そうした作家の意図を尊重し、多くの所蔵者が額装を当時の仕様のままにしています。その結果、反射が強くみづらいケースもあるかと存じますが、ご了承ください。


土方巽やペーター・ヴェルツ&ウイリアム・フォーサイスの映像作品も必見です。

何だかはっきりとは分からないけど、「ベーコン展」観たくなりましたでしょ!何事も経験・体験です。20年後、30年後に「えっ?あの時のベーコン展観てないの??」なんて言われない為にも、竹橋の近代美術館まで是非是非!

「フランシス・ベーコン展」は、5月26日までです。


フランシス・ベーコン展
Francis Bacon

会期:2013年3月8日(金)〜5月26日(日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
※入館はそれぞれ閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日(ただし3/25、4/1、4/8、4/29、5/6は開館)、5/7
会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
http://www.momat.go.jp/

主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社
後援:ブリティッシュ・カウンシル、アイルランド大使館
協賛:新日本有限責任監査法人、損保ジャパン、大伸社、トヨタ自動車、UBSグループ
協力:日本貨物航空、日本航空、フランシス・ベーコン・エステート


BACON'S WORLD
http://bacon.exhn.jp/world/index.html

「ベーコン展」の音声ガイドナビゲーターの熊川哲也(ダンサー)をはじめ、荒木経惟(フォトグラファー)、杉本博司(現代美術家)、森山大道(フォトグラファー)、鈴木芳雄(美術ジャーナリスト)、ヴィヴィアン佐藤(非建築家、美術家)、光嶋祐介(建築家)、塩田千春(現代美術家)、佐渡裕(指揮者)、加藤泉(美術家)他ベーコンへの熱い想いがぎっしり詰まっているスペシャルサイトです。

中越典子(女優)×保坂健二朗(フランシス・ベーコン展担当学芸員)フランシス・ベーコン展特別対談もあります。

【「ベーコン展」連続講演会】
3月30日(土)14:00〜15:30「ベーコンについて 初級」保坂健二朗(当館主任研究員、本展企画者)
4月5日(金)18:30〜19:30 「ベーコンについて 中級」桝田倫広
4月13日(土)14:00〜15:30「ベーコンについて 上級」保坂健二朗

講演会の詳細及び他のイベントに関してはこちらでチェック

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。


リース・ミューズ7番地にあったフランシス・ベーコンのアトリエ
© The Estate of Francis Bacon. All rights reserved. DACS 2013  Z0012

Twitterやってます。
@taktwi

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3月25日『芸術新潮』ベーコン特集号発売!

芸術新潮 2013年 04月号』 [雑誌]

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3185

JUGEMテーマ:アート・デザイン


アイルランドのダブリンに生まれたフランシス・ベーコン(1909-1992)は、ロンドンを拠点にして世界的に活躍した画家です。その人生が20世紀とほぼ重なるベーコンは、ピカソと並んで、20世紀を代表する画家と評されており、生誕100年となる2008年から2009年には、テート・ブリテン(英国)、プラド美術館(スペイン)、メトロポリタン美術館(アメリカ)という世界でも主要な美術館を回顧展が巡回しました。 主要作品の多くが美術館に収蔵されており、個人蔵の作品はオークションで非常に高値をつけているため、ベーコンは、展覧会を開催するのが最も難しいアーティストのひとりだと言われています。そうしたこともあってか、日本では、生前の1983年に東京国立近代美術館をはじめとする3館で回顧展が開催されて以来、30年間にわたり個展が開催されてきませんでした。

今回、没後20年となる時期に開催する本展は、ベーコンの「世界」を、代表作、大作を多く含むベーコン作品33点により紹介するものです。そのうち、ベーコンを象徴する作品のフォーマットである三幅対(トリプティック)も、大きなサイズが4点、小さなサイズが2点と多数含まれているので、実際にはもっと多く感じられることでしょう。
企画内容は完全に日本オリジナルで、単なる回顧展ではなく、ベーコンにとって最も重要だった「身体」に着目し、その表現方法の変遷を3章構成でたどろうとするテーマ展でもあります。また、ベーコンが「同時代」のアーティストに与えた影響を確認しようとするパートも、エピローグとして用意しています。

このように、日本はもとよりアジアでも没後初となるこのベーコン展は、さまざまな意味で画期的だと言えるでしょう。その趣旨に賛同する形で、日本に所蔵が確認されている5点はもちろん、テート、ニューヨーク近代美術館、ハーシュホン美術館(ワシントン)、ヴィクトリア国立美術館(オーストラリア)、ヤゲオ・ファウンデーション(台湾)など世界各地の重要なコレクションから作品が日本にやってきます。
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フランシス・ベーコン展 | 映画的・絵画的・音楽的 | 2013/04/15 8:03 AM