青い日記帳 

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高梨光正氏に聞く、美術館での作品調査の実践。

元・国立西洋美術館学芸課 主任研究員(現・愛知県立芸術大学准教授)の高梨光正氏に、「美術館での作品調査の実践〜18世紀以前のオールド・マスターの作品調査の場合」についてお話を伺って来ました。


国立西洋美術館公式サイト

高梨氏は「パルマ展」や「ベルリン国立美術館展」等の大型展覧会を企画担当されることもありますが、“本職”はバックヤードで作品の調査研究を行っていらっしゃいます。

2013年4月から、愛知県立芸術大学准教授となられるということで、国立西洋美術館を退館される前に是非ともお会いしてお話をお伺いしたく、お邪魔して来ました。

西洋美術館のバックヤードで実際にどのようにして作品調査に当たっているのか、またその際の基本的な心構えなど、あれこれとお聞きしました。

素人の自分にとっては、目にするもの耳にするもの全てが新鮮な驚きに包まれている宝物のようなお話でしだったことは言うまでもありません。

(イメージ画像)

以下、当日の頂戴した資料(レジュメ)を紹介させて頂きます。美術品の調査・研究がどのように行われているか、また調査に対する基本的な姿勢など、大変分かり易くまとめられています。

【調査の心構え】

1)図版等の複製で作品を考えない
2)調査対象がどのような作品であれ、偏見を持たない。
3)外部から提供されたデータはまず疑ってかかる。とくに、作者、主題、制作年。
4)自分の趣味、好みは捨てる。
5)調査の実施にあたっては、調査対象を美的鑑賞の対象として見ない。
6)経験から得た知識の中に参考となる情報が見当たらない場合・軽率な半断は控える。調査の継続を念頭に、判断を保留する。
7)作品調査は「鑑定」ではない。

【調査手法】

1)状態調査
《技法、支持体、寸法、作品の状態などの基礎データの収集》

・必要な機材:カメラ、メジャー、ルーぺ、点検用ライト、紫外線ライト、筆記用具

・確認する内容:板絵の場合には板の材質、'カンヴァスの織目、紙の質や透かし、顔料の色目と種類(分かれば)、補彩箇所、裏打ちの有無、作品の裏のエチケット(張り紙)や書込み、封蝋印など。



2)美術史的調査
《様式の分析、史料分析による作者、制作年代、来歴の特定作業》

・様式分析の実践:地域、時代、個人の特徴を、あくまで作品が示す特徴から、経験上あるいは研究上得た知識や経験値と比較検討する。美術史的調査の最も基本的かつ美術品調査の基本作業。それにより、作者および制作年代の推定を行なう。しかし最も難しい。

・史料調査:作品にかかわる史料の発掘と読解により、作品の来歴に関する情報を収集する。結果を出すのは極めて難しい。

・内容の分析:描かれている主題や内容の分析。図像解釈の作業。

上記3項目の作業を同時平行して行い、他の作品との構図、様式上の類似、また各調査結果の齟齬がないことを確認しながら、作品の歴史的意味と価値を再構成する。

(イメージ画像)

3)科学的調査
・技法や顔料、物理的組成を確認するために行われる調査。基本的に非破壊検査と破壊検査に大別される

1非破壊検査
※紫外線ランプによる蛍光反応の目視:近年の修復、補彩箇所の確認。

※赤外線カメラによる調査:炭素成分を含む顔料等で記された下描きの存在や、金属系顔料(とくに鉛白、丹)の存在の確認。

※X線撮影による調査:特定の顔料、支持体の構造などを確認(主に修復家、専門技術者との共同作業)。


ラファエロ「大公の聖母」X線撮影及び赤外線撮影
(「ラファエロ展」図録より)

2破壊検査
※絵具層の積層分析:サンプルを採敢し、薄く削り、顕微鏡で絵具層がどのような層になっているかを確認し、用いられている顔料、結合材・技法的手順を確認する(おもに保存科学担当者の仕事)。

科学的調査の場合、より重要なのは、「見える結果」ばかりではなく、「見えないこと」の慎重な解釈。また、1点の作品のデータで完結するものではなく、様々な作品の比較例の蓄積が最も重要。

4)調査結果の扱い
・美術品調査の結果は、単なる学術成果に留まらず、市場原理、すなわち美術品の価格そのものに直接影響するものであるため、美術館研究員・調査官の倫理として、作品購入時の価格の適正さを判断するために慎重な調査を行なう必要がある。一方では、一般所蔵者あるいは画商の価格設定の参考となるような「鑑定」は絶対に行なわない。美術館研究員は、「何でも鑑定団」のような仕事ではない。

・所蔵品にかかわる調査結果は、公的美術館として、常に将来的な観客サービスヘの還元を目指しながら、長期的視野に立って、文化財保護と未来の子孫のための運用が必要である。

【参考】
旧松方コレクションに由来するイタリア絵画の調査報告


国立西洋美術館公式サイト

如何でしたでしょうか。次回、国立西洋美術館へ行かれる際は必ず、常設展示もご覧下さい。高梨氏のお話を思い出しつつ。見慣れた作品もまた違って見えてくるはずです。きっと。

高梨光正さん!ありがとうございました。新天地でのご活躍をお祈り申し上げます。また会えますよね。きっと。
(それにしても西美をお辞めになってしまったのは惜しい…)

☆国立西洋美術館特別展最新情報☆

ポーラ美術館と国立西洋美術館―国内屈指のモネ・コレクションを誇る2館の共同展覧会が今夏から開催されます!「モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新

第1会場
ポーラ美術館:2013年7月13日(土)〜11月24日(日)
第2会場
国立西洋美術館:12月7日(土)〜2014年3月9日(日)

印象派を代表する画家、クロード・モネ。「モネは眼にすぎない、しかし何と素晴らしき眼なのか」と、セザンヌが評したように、モネは、生涯、戸外の光の表現を追求し続けましたが、その眼は自然の様相だけでなく、自らの記憶のなかで純化された、画家の内なるヴィジョンともいうべき、喚起力に満ちた風景を描いていきます。光と色彩、筆触分割、あるいは近代都市の主題といった観点から、これまで何度も取り上げられてきましたが、国内有数のモネ・コレクションを誇るポーラ美術館と国立西洋美術館の共同企画である本展覧会では、絵画空間の構成という観点から、他の作家の作品との比較を通して、風景に注がれたモネの「眼」の軌跡をたどります。

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