青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< July 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 荒俣宏トークイベント:博物図譜をアプリケーションで楽しもう | main | 「ワンダフル・マイ・アートー高橋コレクションの作家たち」 >>

「牧野邦夫展」

練馬区立美術館で開催中の
「牧野邦夫―写実の精髄」展に行って来ました。


牧野邦夫―写実の精髄」展覧会サイト

正直この展覧会をどう紹介したらよいか迷っています。千万言を尽くしても牧野邦夫(1925-1986)の遺した作品を語ることは不可能だからです。

「レンブラントを師と生涯仰いだ」とのありきたりの枕詞も、牧野作品のほんの一部しか言い当てていません。


牧野邦夫「」1973年

牧野の写実表現は単なる写実ではない。細密な写実技法を駆使した自画像や静物画、裸婦などを描きながら、次第にそれを極めて「幻想的な光景」の内へと投入し、やがて怪奇に渦巻くマニエリスム的な空間へと変容させていくからだ。

牧野邦夫初体験だった、@okanonaokoさんのツイートがこの展覧会の尋常ならぬことを教えてくれています。

@okanonaoko: 練馬区立美術館 牧野邦夫展。自画像自画像幻想現実。自画像自画像裸婦裸婦自画像。幻想裸婦靴幻想。自画像邪保自画像写実自画像。裸婦幻覚裸婦。自画像牧野邦夫。


牧野邦夫「南京のキリスト」(芥川龍之介作品より)1969年

現在都内では国内外の名画を紹介する展覧会が数多く開かれています。何処に行こうか迷ってしまうほどです。そんな中にあって、美術団体に属さず61歳で癌で亡くなるまで、ひたすら自分の信ずる道を歩き続けた決してメジャーではない牧野邦夫の回顧展は他とはまるで違う光彩を放っています。

練馬区立美術館最寄駅「中村橋」で、某国立美術館の学芸員さんとばったりお会いしました。「やはり、牧野ですか?」と尋ねると「はい。観ておかなくてはいけない画家なので。」と即答。個人所蔵の作品がほとんどで美術館で拝見する機会はまずありません。

しかし、目利きと呼ばれる人は牧野作品をしっかりお持ちだったりします。知名度やどこの美術館に所蔵されていると言った物差しではなく、自分の確かな目で選んでいらっしゃる方には、牧野邦夫の凄さが分かるのでしょう。


牧野千穂夫人と、牧野コレクターの石坂浩二さん。

牧野邦夫(まきの・くにお/1925-1986)略歴
1925年、現在の渋谷区幡ヶ谷の生まれ。幼少期を小田原で過ごす。幻想小説家の牧野信一は従兄にあたる。父母を早く亡くし、ゴッホやレンブラントに魅かれて画家を志す。東京美術学校油画科に学ぶが、1945年学徒出陣し九州宮崎で終戦。戦後の1948年、東京美術学校を卒業。写実的な人物画で知られるようになり、1962年と65年の安井賞候補新人展に入選。1966年、オランダを中心に滞欧。美術団体に属さず、数年毎の個展にのみ細密写実による作品を発表し続けた。
レンブラント、ブリューゲル、ルオー、ドラクロア、ティントレット、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、エル・グレコ、セザンヌ、マチス、俵屋宗達、尾形光琳、伊藤若冲、葛飾北斎、河鍋暁斎、そして法隆寺を始めとする仏像いずれも牧野邦夫の作品を語る上で欠かせない画家ではあります。

しかし、「レンブラント風」「ドラクロア風」では決してないのです。様々な要素が混然一体となってキャンバスに抜群の画力で表現されています。まさに圧倒的な作品です。


牧野邦夫「海と戦さ」(平家物語より)1975年

正直まだ頭の中で、感想がまとめられていない状態です。でも、一刻も早くこの展覧会のこと(戦後日本にこんな凄い画家がいたことも含め)をお知らせしたいのです。一人でも多くの方に観てもらいたい展覧会です。

そして、新たな戦後日本美術の歴史には、牧野邦夫の名前が記載されることでしょう。小学館「日本美術全集」の発売が待ち遠しいです。

底知れぬパワーを貰うことのできた展覧会でした。テレビ東京「美の巨人たち」でも放送されるそうです。混雑する前に是非是非!練馬区立美術館は駅(西武線「中村橋」)から徒歩2分という好立地に建つ美術館です。


牧野邦夫「旅人」1981年

因みに、今年(2013年)大学入試センター試験国語(現代文)に出題され特異な文章表現が話題(スピンアトップ、スピンスピンスピン)となった『地球儀』の著者、小説家・牧野信一の従弟にあたるのが、牧野邦夫です。今年は「牧野」の当たり年かもしれません。

今年の国語、2問目の小説も、いまや知る人ぞ知る作家からの出題だった。戦前期に活躍し、小林とも交流のあった牧野信一(1896〜1936)。出題された「地球儀」は小説のなかに小説が入っている、重層的な作品だ。

「牧野邦夫展」は6月2日までです。絶対にお見逃しなきように!


「牧野邦夫―写実の精髄」展
会期:2013年年4月14日(日)〜6月2日(日)
休館日:月曜日
(ただし4月29日(月曜・祝)、5月6日(月曜・祝)は開館、翌日休館)
開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)
主催:練馬区立美術館/日本経済新聞社/テレビ東京
協賛:ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2013
会場:練馬区立美術館 練馬区貫井1-36-16


牧野邦夫「インパール」(高木俊朗作品より)1980年

注:展示会場の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

「牧野邦夫展」のカタログ(図録)は一般書籍としてAmazonでも購入可能です。

牧野邦夫画集―写実の精髄
レンブラントへの憧れを終生持ち続け、圧倒的な描写力で61年の生涯を駆け抜けた画家、牧野邦夫。本格的なテクニックを駆使した高密度の作品群は近年ますます評価を高めている。最近の研究を元に可能な限りの作品を収録したファン待望の画集。

【関連イベント】

<ギャラリー・トーク>
「ゲストによるスペシャルトーク、牧野邦夫へのまなざし」 
事前申込不要
4月20日(土曜)五味文彦(画家) 
5月4日(土曜)諏訪敦(画家)
5月18日(土曜)石黒賢一郎(画家)
6月1日(土曜)山下裕二(明治学院大学教授)
ナビゲーター:野地耕一郎(当館主任学芸員)
※各日午後3時から展示室内で行います。
※当日の展覧会チケットが必要です。

<記念コンサート>事前申込不要
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013×練馬区立美術館」スペシャルコンサート
【演奏】長谷見 誠(フルート)、神永睦子(ピアノ)
【日時】4月27日(土曜) 午後3時から午後4時
【会場】美術館中央ロビー
【PROGRAM】フォーレ:シシリエンヌ/ロドリーゴ:ある貴神のための幻想曲/マレ:スペインのフォリアによる変奏曲/ドビュッシー:「子供の領分」より/ビゼー:カルメンファンタジー
※出演者、曲目に変更がある場合がございます。

「ハッピーバースデイ・コンサート、牧野邦夫が愛したギター曲」
5月27日生まれの牧野を祝います。
【演奏】三澤勝弘(フラメンコギター)
【日時】5月25日(土曜)午後3時から4時
【会場】美術館中央ロビー

<銀河万丈(声優)による読み語り> 貫井図書館と共同開催
事前申込制・抽選
【演題】江戸川乱歩「人間椅子」ほか
【日時】5月11日(土曜)午後3時から
【会場】美術館1階・視聴覚室
【対象】高校生以上、定員70名(抽選)
【申込締切】4月25日(木曜)必着
※展覧会チケットが必要です。(当日以外の半券でも可)
申込み方法はこちらで。

Twitterやってます。
@taktwi

Facebookもチェック!


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3205

JUGEMテーマ:アート・デザイン
牧野邦夫(1925〜86年)は、大正末に東京に生まれ、1948年に東京美術学校油画科を卒業しますが、戦後の激動期に次々に起こった美術界の新たな潮流に流されることなく、まして団体に属して名利を求めることなどからは遠く身を置いて、ひたすら自己の信ずる絵画世界を追求し続けた画家です。
高度な油彩の技術で、胸中に沸き起こる先鋭で濃密なイメージを描き続けた牧野の生涯は、描くという行為の根底に時代を超えて横たわる写実の問題と格闘する日々でした。レンブラントへの憧れを生涯持ち続けた牧野の視野には、一方で伊藤若冲や葛飾北斎、河鍋暁斎といった画人たちの系譜に連なるような、描くことへの強い執着が感じられます。また、北方ルネサンス的なリアリズムと日本の土俗性との葛藤という点では、岸田劉生の後継とも見られるでしょう。
生前に数年間隔で個展を開くだけだった牧野の知名度は決して高いものではありませんでしたが、それは牧野が名声を求めることよりも、自分が納得できる作品を遺すことに全力を傾注した結果でしょう。
本展は、1986年61歳で逝去した牧野の30余年にわたる画業から生み出された珠玉の作品約120点を紹介するものです。

展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(2)

この記事に対するコメント

弐代目 青の日記帳さま
とてもていねいな展覧会訪問記事を拝見いたしました。
直前で恐縮ですが、11日(土)「牧野邦夫を語るin練馬」という牧野邦夫について語り合う会を開催いたしますので、お知らせいたします。山下裕二先生・牧野千穂さんなど参加いたします。よろしかったぜひお運びください。(事務局 熊谷)
熊谷真理人 | 2013/05/10 5:20 AM
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://bluediary2.jugem.jp/trackback/3205
この記事に対するトラックバック
友人から、是非見に行くようにと言われ気になっていた、練馬区立美術館で開催中の牧野邦夫展にようやく行けた。 この美術館は、学生時代に住んでいた大泉学園のある西武池袋線の中村橋にあるけれど、途中下車したことはなく、初めて訪問した。 牧野邦夫は未知の画
描くことは救いか、はたまた更なる修羅への入口か | 新・クラシック音楽と本さえあれば | 2013/05/21 9:42 PM
練馬区立美術館 「牧野邦夫ー写実の精髄」  4/14-6/2 練馬区立美術館で開催中の「牧野邦夫ー写実の精髄」の特別内覧会に参加してきました。 いきなりですが、上のチラシの表紙。男の意思漲る目力。一体、この強烈なまでにインパクトのある肖像は何者なのか。この