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「アントニオ・ロペス展」

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の
「現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展」に行って来ました。


「アントニオ・ロペス展」公式サイト
http://www.antonio-lopez.jp/

Bunkamuraザ・ミュージアム「アントニオ・ロペス展」特集ページ

喜寿を過ぎた現在でもなお、絵筆を握り精力的に活動しているスペインが生んだ世界的巨匠アントニオ・ロペス(1936〜)の日本で初となる待望の個展が開催されています。

写真のように描くことが、本当の「リアリズム絵画」ではないことをまざまざと見せつけられる新鮮な驚きと感動に満ちた展覧会です。

ロペスの類稀な画力や絵に対する情熱を最も強く感じる作品の一枚が、今回の展覧会のメインビジュアルとして用いられているマドリードの交差点を描いたこちらの作品です。


アントニオ・ロペス 《グラン・ビア》 1974-81年 油彩・板 個人蔵
© VEGAP, Madrid & JASPAR, Tokyo, 2013
B0129

ある夏の早朝、昇りかけた太陽の光に照らされた人気の無いグラン・ビアを目にしたロペスは、その美しさと感動をカンバスに残すべく、朝の6時30分から約20分だけそこにイーゼルを立て制作に取り掛かりました。

勿論、どんなに天才であっても僅か20分でこれだけの作品を仕上げることは不可能です。夏の間ロペスは毎日朝6時30分にここに来て同じようにイーゼルを立て、毎日のように絵筆を走らせました。

それでも、一年のうちでロペスの心を捉えた「夏の光」がグラン・ビアを照らすのは、そう多くはありません。一年で仕上がらないのであれば翌年の夏もまた同じことの繰り返しです。


《グラン・ビア》を制作中のロペス 1978 年
© Fundación Colección Thyssen-Bornemisza, Unidad Móvil and María López archive

では、一体この作品を仕上げるのに何年かけたのでしょう?作品の制作年に注目するとその答えが分かります。「1974-81年」そう実に7年も「夏の朝の光に照らされるグラン・ビア」を求め制作を続けたのです。

7年間の時間の堆積がこの絵には含まれているのです。

単にリアルに写真のように描いたのでは、観る者の心をこれほどまでに惹き付け、魅了することはできません。

駅のポスターで初めてこの絵を観た知り合いの女性が、感動してしばし動けなくなった話してくれました。あながちあり得ないことではありません。ましてや本物を前にしたら…


アントニオ・ロペス 《夕食》 1971-80 年 油彩、コラージュ・板 カルメン・ロペス氏蔵
© VEGAP, Madrid & JASPAR, Tokyo, 2013
B0129

ロペスの作品が観る人の心に自然体で溶け込んでくるのは、描くモチーフがマドリードの風景や身近な家族といったごく近しい日常にあるからでしょう。

「夕食」も完成までにかなりの歳月を有しています。途中で右側の女性の顔は描く位置をずらしたようです。その痕跡をあえて消すことなく残したのは必要なことだったのでしょう。「写真のように描く」のではなく、「歴史」を描くロペスとしては。


アントニオ・ロペス「見上げるマリア」1963年
「マリとアントニオ」1961年(2011加筆)、「マリアの肖像」1972年

祖父母、妻(マリ)、子供(マリア、カルメン)、孫とロペスが、最も愛情を注いだ家族を描き、立体像までも手掛けました。

意外に感じるかもしれませんが、この展覧会には、何点かロペスが制作した立体作品も展示されています。

若い頃、美術館でロペスに最も感銘を与えたのが、古代ギリシア・ローマの彫刻であったことを知れば、逆に意外でも何でもなく、それこそ彼の原点であると思えてきます。


アントニオ・ロペス 《トーレス・ブランカスからのマドリード》 1974-82年 油彩・板 
マルボロ・インターナショナル・ファイン・アート蔵
© VEGAP, Madrid & JASPAR, Tokyo, 2013
B0129

「アントニオ・ロペス展」で最も長いこと時間を割いて観たのが、この「トーレス・ブランカスからのマドリード」です。

「グラン・ビア」同様にまるで写真のように観えますが、まるっきり違います。画像だけだといくら説明しても信じてもらえないのが残念でなりません。

超絶技法を用いて、細部まで細かく丁寧に描いているかと言えば、決してそうではなく、場所によっては絵の具をべた置きしているようなところまであるのです。ロペスの描くリアリズム絵画の秘密はそんなところにもありそうです。

この絵と対峙していると、一度だけしか行ったことのないマドリードの記憶がこの絵の前で鮮明に甦ってきました。あの街の音や匂いそして空気感と共に。


「バリューカスの消防署の塔から見たマドリード」1990-2006年
「カピタン・アヤからのマドリード」1987-96年
「トーレス・ブランカスからのマドリード」 1974-82年

今まで頭の中にあった「リアリズム絵画」の定義が根底から音を立て崩れ去り、それは決して「本物のように描く」ことではないのだということを痛烈に感じた展覧会でした。
リアリズムでありながら、シュルレアリスムの影響も見られる独自の世界。その作品は、観る者に時間の静止と神秘性を感じさせる。
「アントニオ・ロペス展」は6月16日までです。観ないと一生後悔する系の展覧会。想像の遙か上をいく作品群を前に言葉無く立ちすくむのみ。会期中無休です。是非!


現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展

開催期間:2013年4月27日(土)−6月16日(日)会期中無休
開館時間:10:00−19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、テレビ朝日

協賛・協力等
[協賛]
ビバ パエリア
[協力]
エールフランス航空、ヤマトロジスティクス
[後援]
スペイン大使館、セルバンテス文化センター東京、J-WAVE 81.3FM


アントニオ・ロペス「マルメロの木」1990年

マルメロを描くロペス自身の姿を撮った映画『マルメロの陽光』(監督:ビクトル・エリセ 1992年制作)に登場する「マルメロの木」も展示されています。

「アントニオ・ロペス展」公式サイト
http://www.antonio-lopez.jp/

Bunkamuraザ・ミュージアム「アントニオ・ロペス展」特集ページ

巡回先:
2013/6/29(土)− 8/25(日) 長崎県美術館
2013/9/7(土)− 10/27(日) 岩手県立美術館

注:展示室内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3240

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今日のスペイン美術を代表する作家アントニオ・ロペス(1936〜)は、その卓越した技術と観察力によってリアリズムを追求しながら独自の世界を描き出しています。また、マルメロを描く作家自身の姿を撮った映画『マルメロの陽光』(監督:ビクトル・エリセ)は、日本でも公開され話題を呼びました。ロペスは10年を経てもなお絵筆を入れるほど、制作期間の長い作家であり、そのため寡作家として知られています。
本展では、ロペスの日本初の個展として、初期の美術学校時代から近年までに手がけた油彩、素描、彫刻の各ジャンルの代表作を厳選して紹介します。

展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(3)

この記事に対するコメント

日曜美術館で見た驚きはちよつと筆舌に尽くしがたいものがありました。
一生のうちに何としてでも本物を見る機会を作ろうと思いました。
鈴木象陽 | 2013/07/29 11:22 AM
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     &nbsp;展覧会通いをしていると、それまで全く知らなかった作家の作品になぜか急に惹かれたりすることがありますが、アントニオ・ロペスはまさにそんな一人。同じような体験をしたのはヴィルヘルム・ハンマースホイ以来です。ロペスは作品どころか名前も全
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