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「福田美蘭展」

東京都美術館で開催中の
「福田美蘭展」に行って来ました。


東京都美術館「福田美蘭展」サイト

「福田美蘭展」公式Facebookページ

様々な展覧会で1,2点これまでも福田美蘭の作品を目にすることはありましたが、正直好きでも嫌いでもなく日本を代表するグラフィックデザイナー福田繁雄の娘さん程度の認識しかなかったことをまず最初に謝ります。

期待していなかった展覧会に限って行ってみたら大当たり!だったりする「展覧会マーフィーの法則」が今回も発動しました。さらっと観て帰るつもりが、いつの間にか長居してしまうことに。

そうそう、同じく都美館で開催中の特別展「ルーヴル美術館展—地中海 四千年のものがたり—」http://louvre2013.jp/も、その類の展覧会でした。


福田美蘭「銭湯の背景画」2002年
作家蔵

銭湯の壁絵(タイル絵)と言えば富士山です。そんなポピュラーな銭湯の富士山絵も福田美蘭の手にかかるとちょっと(かなり)違ったものとなります。

一見しただけでは、違いは分からないかもしれませんが、よく見て下さい。「銭湯の背景画」にはあちこちに現代の企業ロゴマークが隠し文字として忍び込んでいます。父親譲りの一種「伝統芸」の領域に達しています。

「マツモトキヨシ」「すかいらーく」「JTB」「リポビタンD」そしてKFCのあのおじさんの顔もどこかに紛れています。宝探しをするように世界遺産の富士山絵をとくとご覧あれ!


福田美蘭「象牙(スプーン、マドラー、ストロー)」2000年
作家蔵

ワシントン条約により輸入が事実上禁止されている象牙。象牙で出来た製品に接する機会はほとんど日常生活ではありません。

そんな象牙を用いて、最も身近にあるマクドナルドのストローやマドラーを制作。高価な象牙を使い、身の回りにあるもの(チープなファストフードのマドラーやスプーン)を作りだす。

日常と非日常がいとも簡単にシャッフルされ目の前に提示されても、すぐには(時間を要しても)中々目の前にあるものを認識出来ず、当惑します。

個人的に最もツボだったのがこの作品でした。「ブッシュ大統領に話しかけるキリスト」もう随分前の出来ごとのように思えますが、2001年9月11日にアメリカ同時多発テロを題材にしています。


福田美蘭「ブッシュ大統領に話しかけるキリスト」2002年
新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵
福田美蘭「道頓堀」2001年
群馬県立近代美術館蔵

自分たちが生きた時代の象徴的な事件やショッキングな出来事を、福田は、諧謔的に(と言っても嫌味はありません)表現してくれます。まるで我々の代弁者であるかのように。

9.11テロの後、アメリカは一方的に報復を行いました。正義の名の下にやりたい放題。しかしそれに対し誰も何も出来ず、ただ傍観者を決め込むだけでした。

そんなアメリカ(ブッシュ大統領)に対し、「お前、それでいいのか?」と面と向かって言える存在はもはやイエス・キリストしかいないと福田は悟り、それをウィットに富んだ表現で表しました。

これは必見です。ブッシュの困惑した表情とキリストの指先に注目です!


「福田美蘭展」展示風景

展覧会の構成は以下の通りです。

1:日本への眼差し
2:現実への眼差し
3:西洋への眼差し
4:今日を生きる眼差し


飄逸な福田のいたずら心、人を楽しませる気持ちは、展示会場の思わぬ所に目立たぬように設置された前川國男を描いた作品にも見て取れます。



展示会場写真の丁度中央付近に小さなバルコニーがありますよね。そこから会場を覗きこむようにしている人物こそ、この東京都美術館を設計した前川國男に他なりません!


福田美蘭「バルコニーに立つ前川國男」2013年
作家蔵

東京都美術館旧大彫塑室(ギャラリーA)リニューアルした空間を設計者である前川氏に見てもらえたらな〜と思いこのパネル作品をこしらえたそうです。

知らないと、うっかり見落としてしまいます。要注意です。そして出来たら双眼鏡を持参されると良いかもしれませんね。

今回の展覧会は地下2階にあるギャラリーCと地下3階のギャラリーA、Bを使用しています。中でもギャラリーB「西洋への眼差し」は西洋絵画ファンにとっては堪らない展示室となっています。


福田美蘭「床に置く絵」2000年
作家蔵

典型的な西洋絵画をイメージして描かれた作品の上を土足で歩くという、まったくあり得ない体験自体を作品とした作品。

踏むか踏まないかは、鑑賞者に委ねられていますが、いざ踏むとなるとかなりの抵抗を感じます。実際思っている以上に。その抗う気持ちこそ我々が絵画に抱いている想いそのものなのでしょう。

この他にも冷蔵庫の内側に風景を描いた「冷蔵庫」(ドアを開けると絵が見えます)、自発的に絵画鑑賞を試みる体験がいやでも出来る「開ける絵」等、既存の絵を観るという行為に思い切り揺さぶりをかけてくる作品が並んでいます。実にユニークな試みをみせてくれます!

また、西洋絵画の巨匠たちも福田の手にかかるとひとたまりもありません。


福田美蘭「リンゴとオレンジ」2000年
群馬県立近代美術館蔵

セザンヌの空間表現やデッサンにはかなりのズレがあります。また絵具の塗り残し等も。福田はまるで美大の先生のように容赦なくマジックで「ここをこう直しなさい」と書きこみます。

近代絵画の父メンツ丸つぶれです(笑)

ところで、この作品どこかで見覚えあるな〜と思い本棚を探したらありました、ありました!1999年10月号の『美術手帖(BT)』のセザンヌ特集がほぼ同じものでした。


「福田美蘭展」展示風景

セザンヌの他にもばったばったと様々な角度から西洋絵画の巨匠たちを手玉にとっていきます。それに全く嫌味を感じさせないどころか、ある種のオマージュさえ感じる点に福田作品の心地よさがあります。

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ベラスケス、ルーベンス、フェルメール、レンブラント、カラバッジョ、ミレー、ゴッホ更にはギルバート・アンド・ジョージまで、この空間だけでも満足度かなりのものがあります。

レンブラントとドラえもん、ルーベンスとディズニー「不思議の国のアリス」とのコラボレーション?も見ものです!


福田美蘭「秋―悲母観音」、「冬―供花」2012年
作家蔵

最後のセクション「今日を生きる眼差し」では、この展覧会の為に描かれた作品と共に、東日本大震災をテーマに描いた「春夏秋冬」シリーズがやはり最も目にとまります。

ここでも、辛い現実を描きつつも、そこには福田の優しい眼差しが同時に描き込まれています。少しオーバーな表現かもしれませんが、4点の作品の前に立つと心が浄化されるような気がします。いや実際されたのです。

ミュージアムショップでは、チャリティー版画が一部1000円で販売されています。売上は東日本大震災被災文化財復旧支援事業に全額寄付されるそうです。詳しくはこちらを。


(クリックで拡大)

この展覧会の出品作品には一点一点、作家自身が簡潔で分かりやすい解説を付けてくれているので、現代アートがちょっと苦手な方でも安心して鑑賞でき、十分楽しめます。

「福田美蘭展」は9月29日までです。万人にお勧めできる展覧会です。是非!


福田美蘭展

会期:会期:2013年7月23日(火)〜9月29日(日)
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
http://www.tobikan.jp/
休室日:毎週月曜日、9月17日(火)、9月24日(火)(9月16日(月)、9月23日(月)は開室)
開室時間:午前9時30分から午後5時30分まで(入室は午後5時まで)
夜間開室:金曜日は午前9時30分から午後9時まで
(入室は午後8時30分まで)

【「福田美蘭展」関連事業】

記念講演会「福田美蘭を読む」
講師:建畠晢(京都市立藝術大学学長)
日時:7月28日(日)14時から15時30分
会場:東京都美術館 講堂
定員:230名
聴講無料
当日13時より、会場となる講堂前で整理券を配布します。(整理券は無くなり次第、配布終了)

担当学芸員によるギャラリートーク
日時:7月27日(土)、8月10日(土)、8月24日(土)、9月14日(土)、9月28日(土) いずれも14時から15時
参加無料 (ただし、観覧料がかかります。)
当日ギャラリーAにお集まりください。

※会期中の8月上旬にブロガ―向けの特別内覧会を予定しているそうです。
「福田美蘭展」公式Facebookページ要チェックです!

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

東京都美術館では「ルーヴル美術館展」も同時開催中です!


【特別展】「ルーヴル美術館展—地中海 四千年のものがたり—」

会期:2013年7月20日(土)〜9月23日(月・祝)
公式サイト:http://louvre2013.jp/

Twitterやってます。
@taktwi

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最年少での安井賞や、国際展でも受賞するなど、他にあまり類を見ない独自の作風を切り拓き、旺盛な活躍をみせている作家、福田美蘭。本展では、1990年代以降の代表作と、この展覧会のために制作した新作20点をあわせて約70点を展示し、福田美蘭芸術の多彩な表現の世界をご紹介いたします。

東京都美術館は、創設当時から公募団体展等の発表の場として、日本の近・現代の美術の発展に務めて参りました。この、同時代作家と歩んできた歴史と伝統を踏まえて、昨年春のリニューアル後の企画展として、このたび美術館とゆかりのある現役の作家の個展を開催いたします。
 第1回目として、福田美蘭(1963〜)をとりあげます。東京生まれの福田美蘭は、東京藝術大学に学び、卒業制作展、修了制作展を経て、現代日本美術展での受賞及び日本国際美術展への出品など、まさに当館を主な舞台としてキャリアを積んできた作家です。
 天井の高い吹き抜けの空間を活かした作品や、また当館の設計者である前川國男への敬意をこめた作品など、建築と一体化した空間構成でまさに“美蘭ワールド”を楽しんでいただける展覧会となるものと思われます。

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- | 2013/07/24 9:06 PM
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   時々思わぬ展覧に出くわします。  意表を突かれたというか、やられた、というか。  その驚きが体全体の血流を元気にします。  そんな展覧に行ってきました。  「福田美蘭展」  どういった方なのでしょう?  何も知らないで見るという事のワクワク度は想
福田美蘭展 ・東京都美術館 | あべまつ行脚 | 2013/08/06 10:42 PM
 福田美蘭は、安井賞の最年少受賞者、大原美術館の有隣荘特別公開展の初回展示者という華々しい経歴を有している画家である。  しかし、美蘭の作品を見たのはBunkamura で開かれた「奇想の王国 だまし絵展」の《壁面5°の拡がり》が初めてだった(画像はこちら)
福田美蘭展 @東京都美術館 | Art & Bell by Tora | 2013/08/23 8:24 AM