青い日記帳 

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『はじめてのルーヴル』

集英社より刊行となった中野京子先生の新著『はじめてのルーブル』を読んでみました。


はじめてのルーヴル
中野 京子 (著)

『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』の書評を『文芸春秋』に書かせて頂いた、中野京子先生の待望の新刊が発売となりました。

☆書評は、現在「本の話WEB」でご覧いただけます。

気取らない「中野節」が奏でる 笑えて泣ける、聖書のドラマ
『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』 (中野京子 著)


『怖い絵』『危険な世界史』『名画と読むイエス・キリストの物語』と様々なアプローチから、日本人と西洋絵画との間にある微妙な「距離感」を縮めてくれる中野京子先生が、今回挑んだのは世界一の来館者を誇るパリ、ルーヴル美術館。

年間約970万人(2012年)もの来館者が世界中からやって来る泣く子も黙る巨大美術館です。因みにルーブル美術館の来館者970万人は何と韓国、ソウルの人口(2008年)と同じです!


(ガラス製のピラミッドの下はチケットカウンターになっています)

来場者数世界一を誇るルーヴル美術館ですが、他にも驚きの数字が幾つもあげられます。最も象徴的なのが、ルーブルの展示室の総延長距離。

驚くことなかれ約30km!これは実に東京から横浜の先までの距離に匹敵します。よく「一日ではとてもルーブル美術館は観きれない」と耳にしますが、オーバーな表現どころか、真実そのものなのです。

そうなると、観光でパリを訪れ限られた時間で効率良く「名画」を観ていかねばなりません。一般的にヨーロッパの大きな美術館はどこでも、目的とする絵画の展示場所を事前に確認しておかないと、折角行ったのに結局見つからなかったなんてことになりかねません。

実際自分も何度も痛い体験をしています。


ルーベンス「マリー・ド・メディシスの生涯〈マルセイユ上陸〉
ルーブル美術館 リシュリュー翼3階 展示室18

そんな「ルーブル迷子」の名ナビゲーターとして、はじめてのルーヴルが役立ちます。

近い将来目的の絵画までGPSを利用しスマホ画面で誘導してくれる便利ツールも登場しかねないほど、ルーブル美術館は「迷宮」です。方向感覚には自身のある自分でもルーブルは何度行っても苦手です…

「はじめて」ルーブル美術館へ行かれる方、そしてまた「はじめて」ではない方にも(最後まで読んで頂ければその理由が分かります)。つまり、全ての方に強力にお勧め出来る一冊なのです。


ダヴィッド「ナポレオンの戴冠式
ドゥノン翼2階 展示室75

取り上げている作品全て(ひとつの章のメイン作品プラス数点)に丁寧に、ルーブル美術館内展示場所が記されています。館内のフロアガイドもこの本の最初のページに部屋ごとに色分けし掲載されています)

四六判/240ページ。ボリューム満点です!集英社WEB文芸「レンザブロー」に連載していた文章に加筆し、紙媒体用に読みやすくレイアウトされています。中野京子先生に今回のルーブル本を上梓するにあたり、工夫なされた点や、苦労なされた点などをお聞きしました。

各章メイン絵画には「名画の謎」と同じように引き出し線をつけて説明しました。またそれぞれの作品がルーヴルのどこに飾られているかの地図も載せました。これは担当編集者さんの友人でパリ在住の方に、印刷直前に何度か現地へ行っていただいて作成してもらったものです。何しろ時々場所変えをするものですから、美術館案内書も当てにならず(それに「地図の読めない女」であるわたしの記憶はさらに当てにならず)、その上、ルーヴル・ランスもできたので、現時点でできるだけ正確に、と心がけました。

【目次】
なんといってもナポレオンーダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』
ロココの哀愁ーヴァトー『シテール島の巡礼』
フランスをつくった三人の王ークールエ『フランソワ一世肖像』
運命に翻弄されてーレンブラント『バテシバ』
アルカディアにいるのは誰?-プッサン『アルカディアの牧人たち』
捏造の生涯ールーベンス『マリー・ド・メディシスの生涯“肖像画の贈呈”』
この世は揺れる船のごとーボス『愚者の船』
ルーヴルの少女たちーグルーズ『壊れた甕』
ルーヴルの少年たちームリーリョ『蚤をとる少年』
まるでその場にいたかのようーティツィアーノ『キリストの埋葬』
ホラー絵画ー作者不詳『パリ高等法院のキリスト磔刑』
有名人といっしょーアンゲラン・カルトン『アヴィニョンのピエタ』
不謹慎きわまりない!-カラヴァッジョ『聖母の死』
その後の運命ーヴァン・ダイク『狩り場のチャールズ一世』
不滅のラファエローラファエロ『美しき女庭師』
天使とキューピッドーアントワーヌ・カロンまたはアンリ・ルランベール『アモルの葬列』
モナ・リザーレオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』
あとがき



ルーヴル美術館の公式ウェブサイト - Musée du Louvre
http://www.louvre.fr/jp (日本語)

17章からなるはじめてのルーヴル。メイン作品に補助作品数点(ルーブル美術館以外の作品もあり)当然全てカラー図版で掲載されています。

しかし、中野先生のご本の真骨頂は、やはりその文章にあります。一度読めば必ず虜になってしまう魅力たっぷりの語り口は今回も健在です。それどころか尚一層磨きがかかっているように思えます。


ボス「愚者の船
リシュリュー翼3階 展示室6

第7章「この世は揺れる船のごとーボス『愚者の船』」では、まずはじめに「悪魔を創らせることにかけては右に出る者がいない」と言われたネーデルランドの奇想画家ヒエロニムス・ボスについての基礎的な知識を中野節で語ります。

「さて、ルーブル美術館」の場合。

と話題を転換し、プラド美術館(主要作品を多く所蔵)やウィーン造形美術アカデミー美術館(画像はこちら)等。
各国の美術館にボス作品は散在し、希少価値の高いボス作品をどこも手放すつもりはないという状況下。もはやルーブルがボスを入手する見込みはなさそうに思えた、そんな時―すでに20世紀も20年近く過ぎていた―個人から寄贈されたのが、この『愚者の船』だった。
まさかルーブルのボス作品にこんな来歴があったなんて…知っていればもっと見え方も違ってきたのに〜本書ではこの後ボスについて美術以外の話題も含め解説。そしてこうボスについて閉めます。
『愚者の船』はボスの他作品同様、謎だらけで、未だ解明はなされていない。霊媒にでも頼んでボスの魂を呼び出さない限り、全てを知るのは永遠に不可能ではないか。そのため逆に、いっそう見る者を夢中にさせる。
作品解説ももちろんたっぷり書かれています。読んでいると今すぐにでもフランスへ飛んで実物を見ながら細部を確認したくなるほど、魅惑的な語り口です。章の最後は少々シニカルに。これが中毒性があり、すぐ次の章を読みたくなってしまうのです。
ヒエロニムス・ボス(1450ころ〜1516)自らが本作のタイトルを付けたわけではなく、売買時に画商か美術史家が付けたと思われる。最初の日本語訳はブラントの翻訳書に倣い、ちゃんと『阿呆船』だった。ところが阿呆はなぜか差別用語とされるようになり、『愚者の船』などと響きのよろしくないタイトルが一般的になってしまう。この分ではいつか「アホウドリ」も「グシャドリ」になるのではないかと心配だ。
まさに職人技の粋に達しています。中野先生のリピーター、ファンが多いのも納得いくはずです。


ルーヴル美術館の公式ウェブサイト - Musée du Louvre
http://www.louvre.fr/jp (日本語)

最後に、中野京子先生より、青い日記帳をご覧の皆さまにメッセージが届いていますのでご紹介します。


いつも拙著でくり返しているのですが、どういうふうに西洋絵画を鑑賞していいかわからない、という人の多くは、「よけいな先入観をもたず、見て感じなさい」という美術教育を受けてきたのが一因ではないでしょうか。

知識は余計なものどころか、知識あってこそ楽しめることもありますよ、というのがわたしのスタンスです。名画にまつわるさまざまな物語や歴史を知って絵の面白さに気づいてもらえて、美術館通いが楽しいものになってほしいなあ、と思って書きました。

青い日記帳の読者の方々は美術愛好家がほとんどでしょうけれど、それでも苦手な分野があろうかと思います。できるだけ各時代各地域の名画を選びましたので、これを機会に今まで嫌っていた絵にも関心を持っていただけたら嬉しいです♪



アンゲラン・カルトン「アヴィニョンのピエタ
リシュリー翼3階 展示室4

個人的に、次にルーブル美術館へ行く時に真っ先に観たいと思ったのがアンゲラン・カルトン「アヴィニョンのピエタ」です。作家に始まり読んでいると何とも突っ込みどころ満載の作品のようです。

巷にあふれるルーブル美術館のガイドブック的な本とは違い、ルーブルの作品を通し、西洋絵画の魅力を深く深く知ることの出来る良書です。

初心者から玄人さんまで、幅広い層の方に読んで頂け、そしてそれぞれ満足感を得られる稀有な一冊です。迷わず読むべし!


はじめてのルーヴル
中野 京子 (著)

ダ・ヴィンチ『モナリザ』、ルーベンス『マリー・ド・メディシスの生涯』、ダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』など、ルーヴル美術館の至宝の絵画を独自の視点で読み解く、これまでにない美術館名画案内。

中野京子(ナカノキョウコ)
作家、ドイツ文学者。早稲田大学講師。西洋の歴史や芸術に関する広範な知識をもとに、美術エッセイや歴史書などの執筆、講演を精力的にこなしている。


中野京子のブログ「花つむひとの部屋


『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』

【書評】
気取らない「中野節」が奏でる 笑えて泣ける、聖書のドラマ
『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』 (中野京子 著)




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この記事に対するコメント

管理者の承認待ちコメントです。
- | 2013/08/06 10:03 PM
>希少価値の高いボス作品をどこも手放すつもりはないという状況下。もはやルーブルがボスを入手する見込みはなさそうに思えた、

ずいぶん古い記事へのレスは恐縮ですが、あまりに荒誕だったので、
「愚者の船」の連れとされる「放浪者」がボイマンス美術館の後援ファンドによって買われたのが1931年、もう一つの連れのワシントンの「死神と貪欲者」がナショナルギャラリーに入る前の所有者サミュエル・クレスによって買われたのが1951年 いずれも、ずっとあとです。
山科 | 2018/01/06 3:58 PM
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